ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
「んじゃあ次は灼熱と行こう」
『了解しました。プラズマ炉出力最大、高熱源転移』
白い霧の向こうで、チカチカと光が瞬く。熱は熱で、目視しやすいとかプラズマ粒子採取の際にスタビライザーが溶けちゃうとか問題があるんだけど、さあてどうかな。
とか思っていたら、霧の向こうでもはっきりとわかる大爆発がいくつも起きた。なんぞ?
『どうやら支援機の爆装が誘爆した模様。多少の被弾では大丈夫なように設計していても、プラズマ粒子による高熱は想定外だったようです』
「まあ、そりゃあね。焚火というよりも焼却処理場に突っ込んだようなもんだしな」
とにかくこれで支援機はあらかた片付けた。残りの戦力は流石にこのままとはいかないか。
爆発の影響か時間経過か、霧も晴れてきたので次のフェイズに映る。各地に展開したステルスドローン達に、本体の立体映像を投影させる。
ミリタリー部相手にやったのと同じ手段だ。ただ今回は霧が天然のスクリーンになっているおかげで立体感がマシマシである。
それにあわせて、再び炎と冷気の投射攻撃も続行する。忽ち戦場は大混乱の有様になった。
『な、なんだこりゃあ!?』
『土偶のお化けが襲ってくるぅ!』
『何だ、何が起きてる!?』
当然と言えば当然だがワールドチャットは断片的な悲鳴で溢れかえっている。いやあ、ごめんね。しかし考えてみれば炎はともかく冷気に関してはメタルインセクトも使ってこないからピンと来ないのかな。そりゃそうか。
しかしながら流石にギルドの部隊。漂う冷気や灼熱だけではそうそうやられてくれはしない。混乱しつつも、漂うそれらに触れてはいけないと理解したのかスラスターを用いた高機動で範囲外から脱出していく。
「ほんじゃま、駄目押しで」
そこを、目からビームで撃墜。出力を調整して、チカチカッ、チカチカ。
加速しながら上昇していた機体がスラスターを破壊され、ぼてっと地面に落ちる。そんな彼らを待ち受けるのは冷凍地獄だ。冷気は底にたまるからね。
次々に前衛機も無力化され、残るはギルドを問わず6機ばかりの機体。そこでようやく、彼らはこちらの存在に気が付いた様だ。
『て、てめえ……これをやったのはお前か!?』
「…………」
『そうか、お前が野生のレイドボスってやつか! いいぜ、俺達に喧嘩を売った事を後悔させてやるぜ!! いくぞお前ら、今ばかりは停戦だ!』
『お前が仕切るなよ! まあいい、異存はない。奴の首を上げて名を上げるチャンスだ!!』
怯むどころかなんかテンション上がってるご様子の敵の皆さん。ゲーマーだねえ。
ちらり、と友人に視線を向けるが、彼は今んとこ介入するつもりはないようだった。
「いや手伝えよ」
「ここで割って入ったら空気読めない奴じゃん。風向き悪そうだったら助けてやるよ」
「調子いいんだから……」
しぶしぶ、こちらもスラスターを噴射して敵に向かい合う。
生き残っている敵機はいずれも遊撃担当の前衛機。両手にもったバトルライフルをこちらに向けて連射してくる。
幸いにしてまだ距離があるのと、シャッコーキが装甲の分厚い曲面装甲であるおかげで大したダメージは受けない。とはいえ、棒立ちで食らい続けても平気な程、この機体も常軌を逸した防御力ではない。
「反撃する。転送装置、最大でいく!」
『了解しました。プラズマ炉心、冷却装置、どちらも最大運転。極寒と灼熱の嵐で敵を粉砕します』
ぶおおおお、と周囲の空気が超低温と超高温で激しく歪む。吹き荒れる冷気と灼熱の炎は、混ざり合って相殺する事なくシャッコーキの周りに吹き荒れた。
その気温さによってか、渓谷の上空に強風が吹き始める。スラスターで飛翔している機体ですら流されるほどの暴風。
なおも放出される炎熱によって地上は冷気によって凍り付き氷柱が聳え立ち、それに反してその上空は灼熱の対流が渦を巻いている。
な、なんか。大げさな事になってきたな……。
『こ、こいつは……』
『このレイドボスは自然現象を操るっていうのか!?』
何やら盛大に買いかぶってる様子のギルドの皆さんだけど、うん、見た目が派手なだけでそんなに脅威ではないよ、これ。とはいえ見た目が明らかにヤバそうなせいか、操縦を誤った一機が冷気にもろにつっこんで墜落し、もう一機が熱波を被って炎上、ボンボン、とスラスターから黒煙を吐きながら墜落していった。
んでもってこちらも冷却が完了した目からビームで正面の敵を撃墜。さらに背後から迫ってきた相手に、上半身を回転させながら体当たり。ぐるぐる回る腕に武器を弾かれた敵機に、至近距離からビームを叩き込んで壁に激突させる。
その機体を踏み台にして高度を取り、私は高台の上に着地すると、飛翔する敵機に向けて頭部を回転させた。
どうしたどうした、この程度で終わり?
『お、おい、まずいぞ!』
『ち……っ、こうなりゃやけだ、アレをやるぞ!』
『りょ、了解!!』
と、そこで生き残った2機の機体が左右に分かれながらこちらに向かってきた。
その手にはバトルライフル……いや、なんか背中から出してきたぞ。
なんだかバチバチピンク色の光を放っているあれは……もしかしてバレル開放型のフォトンビーム!? うひょー! まだ見た事ないモデルだ、このあたりの素材で作れるのかな!?
しかも単発で撃つんじゃなくて、二機のうちの一機が背後について、エネルギーケーブルっぽいものを味方に接続している。
うひょー! 合体ビーム砲!? もしかして機体出力に比例して威力が上がる出力可変型!? 何それ素敵すぎる、私も使いたい!!
『レイドボス野郎、お前の大好きなビーム兵器だ!』
『最大出力だ、喰らえ!!』
そして放たれる極太のビーム兵器。
見た事ない程の高出力ビームに、ようやくはたと私は我に返った。
あ、駄目だこれ。装甲が多分耐えられない。ビームについてはちょっとわかるから断言できる。ああいや、レイドボスの無敗伝説もこれまでかあ。でもま、私にしては頑張ったと思うし、よくやったよくやった……。
『マスター。お言葉ですが、ご自身で装甲に何を組み込んだか、お忘れではないですか?』
「え? ……あっ」
TLSの指摘に我に返った直後、ビームが直撃する。それは曲面装甲を沸騰させながらも形にそって流れ、ショットトラップ部分に注ぎ込まれた。
そう。そこにダメージ軽減の目的で仕込まれた、耐粒子超硬度セラミックスの装甲に。
ビームを吸収したセラミックス部分が許容量を超えて、ピンク色に輝き始める。
『耐粒子超硬度セラミックスの吸収エネルギー飽和を確認。崩壊を避けるために外部に向けて放出します』
TLSのメッセージと同時に、メインモニターが光で包まれる。先ほどとは違い、まるで自分が爆発の中心にいるような、自分自身が電球になってしまったかのような白い閃光。
何も見えない。
『な……っ』
『うぉ……っ!?』
そして、光が晴れた後には。
シャッコーキを中心として、半径50mぐらいの範囲でごっそり抉られた地形だけが残されていた。
敵反応は無し。
文字通りの全滅である。
そんなこんなで、はた迷惑なギルド同士の抗争は喧嘩両成敗と相成ったのであった。
「うーん、なんていうか……野生のレイドボスっぽい働きをしてみたつもりではあるけど……どうだったかな……痛い奴じゃなかったかな……」
『ご立派でしたよ、マスター』
「お前がレイドボスじゃなかったら普通のレイドボスが泣くから……」
一応、普通のレイドボスを知っている友人からはそのようにお褒めの? 言葉を頂く事ができたのであった。
まいっか。
それより、ふふふ! 一旦ホームに帰ってカタログ確認しよーっと。
久しぶりのー、新型ビーム兵器! たっのしみぃ!!
「おいおい……まあいっか、そっちの機体もボロボロだし。漁夫の利を持ってかれるのもなんだ、一度引き返すか。護衛はしてやるよ」
「やったあ嬉しい、優しい。さっすが我が友」
帰り道の安全を確保するべく飛び出していく友人機を見送り、私もまたシャッコーキをキュラキュラ旋回させてその後を追うのだった。
最後にちらりと振り返ると、戦場となった区画は炎と氷が相変わらずゆらゆら揺れている。ま、そのうち消えるでしょ、あれも。
「しかしやっぱり、考える頭が合って機動力が高い相手には、炎と氷を投射するだけじゃだめだなあ」
もっと転送できる熱量が大きければいいんだろうけど……流石に何もない所から触れたら溶解する熱量が飛んで来たらインチキにも程がある。
流石にこれぐらいが、炎熱転送機の限界かな?
ま、また新しい小細工を思いついたら試してみよう。
それより今はビーム、ビーム♪
『ふふ。マスターが楽しそうで何よりです』
「わははー」