ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
ホームに戻って早速カタログを確認すると、案の定新型のビーム兵器がばっちり追加されていた。
「うおおぉおおー……」
思えば雪山以降、あんまり先に進んでいなかったので随分と久しぶりの新兵器である。
私はウキウキでその性能緒言を確認した。
「すっげー、やっぱり供給出力で性能が向上するタイプだ。浪漫の塊みたいな仕様じゃん」
「あー、それな。ちょこちょこ、ビーム兵器の運用が見直されるにしたがって、ギルドでも投入されつつあるモデルだな。俺達も結構色々考えてるんだぜ……まあお前程じゃないけど」
「へーえ。ビーム兵器も立場が向上したもんだなあ」
素直にうれしい話である。うへへへ、帰ったら早速テストしなきゃなあ。
まずは限界出力の検証をして、それから応用を模索してー、うへへへへへ……。
そうだよこれだよ。
最近は変な方向を直走ってたけど私がビルドロボオンラインでやりたかったのはこういう事なんだよ! いや氷炎攻撃とかステルス機とかも滅茶苦茶楽しかったけども!!
やっぱ王道はビームぶっぱなんだよなあ……。
「おうおう嬉しそうなこって。……ま、既存のビーム兵器であれこれするならそうおかしな事もしないだろうしこっちもその方が気が楽か……」
「? あ、それより悪い、せっかく一緒に遊んでたのにこっちの都合で引き返しちゃって」
「今更かよ。ま、気にすんな。貸し借りで遊んでる訳でもあるまいし」
おおぅ、流石マイフレンド。話が分かる。
そんじゃ早速。今日はこの辺りで……。
「ああ、待て待て。それよりちょっとリクエストがあってな」
「?」
「今日の埋め合わせを求めても別に構わないだろう? 実はちょっとお前に手伝ってほしい事があってな」
「近々。オンライン版のクラウド・センチピードに挑んでみようかと思ってるんだ」
とっておきの悪戯を打ち明けるようにして、友人はそんな事を囁いた。
私は興味深く耳を傾けた。
なんせ私も、オフライン版は倒したがオンライン版は到底挑める気がしない。間違いなく体力が増えているであろうあの強敵に、合体機体でギリギリだったのだ。現状ではまだ挑むのは時期尚早である。
しかしそれに、友人は挑むという。
勝算あっての事か?
「ほうほう?」
「勿論、策はばっちりあるぜ。顔見知りと討伐隊を編成して、ドローン対策の訓練中だ。仕上がったら挑むつもりだが、どうしてもちょいと火力不足でな。そこをお前に補ってもらいたい」
「ほふーん。そういう事ならいいけど。オフライン版は倒したの?」
私が確認すると、友人は笑って目を逸らした。
おいおい。
「そんな目で見るなって。いや、オフライン版とオンライン版じゃ明らかに勝手が違うだろ? あとお前の言ってたおびき出して不意討ちってやり方、オンライン版だと通じなくてなあ。マンモスをエサにおびき出す所までは上手くいったんだが、そこでどうしてもこちらの存在を気取られる。多分、ホスト問題か何かで、オフラインとは挙動が違うんだろう」
「あー。そういう事もあるのか」
昔やってた狩りゲーでも、一人で近づかないと問答無用で察知されるボスとかあったな。カエルで釣れるんだけど、皆で行くと絶対察知されるから一人だけで釣りにいって、吊り上げたらチャットで合図、みたいな。
「てかその口ぶりだと既になんどか挑んでるじゃん。なにが近々だよ」
「あっはっはっは。いやまあ、細かい事はいいっこなしで。まあそんなだから、ドローン対策とかも場数踏んでてそれなりに手慣れてるつもりだ。あとはバリアを破れる高火力があれば完璧って訳でな、どうせならお前にそれを担当してもらいたい」
「ふーん……。なるほど、そういう事ならまあ、わかった」
普段色々お世話になってるしな。それに、運用を決めてから機体を組むというのも悪くはない。
こちらも、オンライン版のクラウド・センチピードには興味がある。オンラインじゃないとあの高射砲の内部には入れないようだし、いつかは挑むべき壁だった。
その機会が向こうからやってきたのだ。むしろこれ幸いと思うべきだろう。
「おっけい。クラウド・センチピードのバリアをぶち破れるぐらいの火力と、奴と殴り合えるぐらいの格闘性能、山岳地帯に適応する汎用性をご所望ってとこかな」
「え? そりゃあ、性能は高ければ高い程いいけど……できんの?」
「出来る出来ないじゃないよ、やるんだよ! うひょー、楽しくなってきたぞぉ!!」
私一人じゃ色々不安だけど、こっちにはテレサも居るんだ!
クラウド・センチピードがなんぼのもんよぉ! やる気が漲ってきたぜぃ!
「ふっふふふふ、まあ吉報を待っててくれ!! ふふふふふ!!」
「まあ、楽しそうならいんだけど……チョットハヤマッタカナ」
そうと決まれば、帰りにちょっと本屋よってくかな。ホビー雑誌とか読んで、イマジネーションを補給せねば! あ、そうだ、せっかくだからなんかメカ設定本でも買っちゃおうかな! うふふふふ!
そんな訳で、私はルンルン気分で本屋を3軒ぐらい回り、その夜にテレサに相談するべくゲームにログインした。
「たーだいま、テレサさーん……およ?」
気分的にスキップしながらホームに顔を出すが、いつもであればすっとんでくる金髪美少女の姿がない。
相変わらずの生物兵器模様の内壁に首を傾げながら、私は頼れる相棒の姿を探してきょろきょろとした。
「んー、居ない?」
もしかして狩りにいってるのだろうか? ハンガーに目を向けるが、彼女の機体はおさまったままだ。となると、ロッカーの中とか……あ、もしかしてVIPルームで昼寝してるとか?
だとしたら覗き込む訳にはいかないなあ、と考えていると、ガチャリ、とそのVIPルームに繋がっている壁の一部が開いた。
そこからひょこり、と顔を出す金髪赤目の美少女の姿。
『ショ、ショウさん、おかえりなさいー……』
「あ、いたいた。ただいまー。そこで何してるの?」
『あ、えと、そのちょっと。着替えてまして……』
えへへ、と愛想笑いをするテレサ。着替えって……そういや、DLコンテンツの衣装セットをまとめ買いしたんだっけ。トーナメント優勝の記念に。
まだまだ袖を通してない衣装が一杯あったね。なんだか恥ずかしがってあまり着替えてくれなかったけど、ようやく着てくれる気になったのか。
いや、正直私は女性の服装って何が良いのかわかんないけど、まあテレサなら何着ても似合うし。あと母親から女性の服装はとりあえず褒めとけ、とも仕込まれてるしね。
「何々、どんな服着たのん? 見せてよ」
『は、はい。それでは、い、いきます……!』
何やら重大な決意を込めて、扉から体を晒すテレサ。
そんな大げさな……と苦笑する私だったが、露になったその恰好を見てその苦笑も凍り付いた。
『ど、どうでしょう……!?』
私の目の前に出てきたテレサは、ほぼ9割がた生まれたばかりの姿であった。露になってはレーティング的にクソ不味い所を金色に下品に輝く布切れが覆っているだけで、ほぼマッパといっても過言ではない。普段、分厚いブーツや手袋で覆われた足先、指先までもが晒されていて、切りそろえた形のよい爪までもがはっきりと見える。
いや、それだけではない。ぷりっとした前からでも見える尻たぶとか、普段チラ見えしている鼠径部が丸見えとか、インフレの果てに今は普乳だけど現実的に考えたらド級のおっぱいとか細くて折れそうな首とか傷一つない柔肌とか。そういったもろもろが全部私の目の前に。
黄金ビキニ。
トーナメントの優勝賞品としてもらったソレ。
なるほど、確かにこれは……水爆級の衝撃……。しかも背景が不味い。宇宙生物とか這いまわってたり粘液でベタベタしてそうな有機的な部屋を背景に、煽情的な格好の彼女が立っているのはなんていうかこう、いかがわしいアニメとかゲームのワンシーンのようだった。
「……っ、……?!」
『あ、あの、その……えっと……変、ですか、ね……? えっと……何かいってもらえると、嬉しい、んです、けど……』
しかも当のテレサは恥じらいに顔を真っ赤にしつつも顔を逸らさずに正面からこちらを見据えているのである。なんていうかそこには覚悟が感じられた。何の覚悟かはわからないんだけどとにかくすごい決意と決心の元にこれを見せてきているのは明白だった。
私。
私が、彼女にとるべき反応は。
えと。その。
「………………ぐ、グッジョブ……」
『?! ……そ、そうですか、ええと、その、ありがとう、ございます……?』
「あ、はい。こっちこそ、ありがとうございます……?」
お互いにぎくしゃくと何故かお礼を言い合って、そのまま静寂が流れる。
ええと。こういう場合、なんて言えばいいんだろう?
『「あの……いや、なんでもないです……」』
とにかく何か話さねば、と上げた声が重なって、お互い引っ込んでしまう。
そのまま無言で、チラチラ相手の様子を伺いあう私達。
謎の牽制合戦は、その後数十分ほど続いたのであった。