ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
「を、ほんっ! ええっと、うん! とにかく似合ってる!」
長く続いた停戦状態。このままでは埒が明かないと判断した私は、とにかく褒め倒す事にした。
女性が綺麗だと思ったら、とにかく褒めるに限る。他に手はない。
「流石テレサさんだね、何着ても似合うというか、体のラインが綺麗だね! そういう水着はスタイル良くないと駄目だけどとてもにあうよ!」
『あ、ど、ど、どうも……』
「正直眼福っていうか、うん、額縁に入れて飾っておきたいぐらいだね! スクショとってもいいかな!」
『そそそそ、それは困りますぅ……あっ、でも、ショウさんが本当にそうしたいなら、わ、私はその……』
怒涛の誉め攻勢に、目をぐるぐるさせながらもじもじするテレサ。明らかにこちらが優勢を取った事で、心理的余裕も出てくる。そうすると、心の中で悪魔と天使のテレサが揃って旗を振り回し始めた。
『いいですよ、このまま攻めて攻めて攻めたおすのである!!』
『甲斐性の見せどころですよ! このまま打ち倒して勝利首を上げるのです』
いや、何言ってるのお前ら。
奇怪な心の声に一周回って冷静になった私は、とにかく場の仕切り直しに入った。
「うん、まあそういう感じでものすごく似合ってるけど……どうしたの、突然?」
『え、えっと。その……さ、最近! 最近、ショウさん他所に出かけてばっかりじゃないですか……』
「うんうん。そうだね」
頷きつつ、なんだかちょっと嫌な予感。
今の優勢を一発でひっくり返されそうな気配が……。
『で、ですから! こういう恰好をすれば、また、私の相手をして貰える、かなあ、って……その……』
「そ、そうか……」
いじらしさ全開のテレサに、こちらも言葉を失って俯いてしまう。そんなこちらの反応を見て、テレサももじもじしながら、そっぽを見ながら体をかきだく。
その仕草がやたら煽情的で……いやいや、うん。今はそこは置いておこう。
冷静になれ、相手は触れられもしない数字の羅列だぞ? 二次元に劣情するのがいけないとは言わないが、そろそろ慣れてきてしかるべきだろう? あ、いや。今は触感グローブあるから触れられる訳で……いかんいかんいかん話が逸れた。煩悩退散! 煩悩退散!! キエエーー!!
「と、とにかく。最近疎遠にしてたのは悪かったけど、別にそういう事しなくていいからな? 恥ずかしい事を強要するつもりはこっちにはないから。いいね?」
『は、はい。わかりました。でも……』
「?」
でも、何?
首を傾げる私に向かって、テレサはもじもじしながらも上目遣いで、胸を強調するように腕を組んで……。
『わ、私は。ショウさんにそういう目で見られるの、嬉しい、ですよ? だから、強要じゃないです……』
「そ……そ、そう……」
思わず顔を逸らしながら、必死で頭を回転させる。
ええと、こういう時はなんて言い返すのが気の利いた言葉なんだ? 胸の奥のおっかさんは何もいってくれない。教えてくれ悪魔のテレサ、天使のテレサ! 私はどうすればいいんだ?
『押し倒せばいいと思うよ』
『押し倒すに決まっているでしょう?』
ええい役にたたん! 結局最後に頼れるのは自分だけか!!
くっそこれもVRの臨場感が悪い! そういう事にしておこう!!
「……は、はいはい。そういう冗談はレーティングにひっかかるから程々にしておこうね! とにかく、金ビキニは着替えて。いつもの恰好に。ほらハリーハリーハリー!」
『ええ、冗談じゃないのに……』
「いいから!!」
『ハーイ。わかりました……ベツニチャンスハホカニモアリマスシネ』
肩を押す……のはなんか怖いから仕草でテレサをVIPルームに追い返す。彼女は口をとがらせて不満そうだったが、大人しく部屋に戻ってくれた。
ふぅ、これで一安心。テレサは聞き分けの良い子だから、いつもの恰好にこれで着替えてくれるだろう。
「あーもう、びっくりした……やれやれ。何動揺してるんだか、たかがビキニを着ただけのAIアバターだぞ?」
そもそも最近のソシャゲとか美少女キャラとかインフレと過激化が進んでビキニぐらい何の特徴にもならなくなって……は言いすぎか。流石に黄金ビキニはキャラが立ちすぎている。
とはいえその程度で我ながらいくらなんでも動揺しすぎである。陰キャか。陰キャだったな。
「いやいやいや。変にリアリティがある映像が悪い……そう、全部運営と開発が悪いんだ。私は何も悪くない」
そもそも優勝賞品に黄金ビキニってのがまずおかしくない? 優勝者が女性だったらどうすんだ、セクハラかよ。あと全部のAI対応っていってたけど男型のAIサポーターが出たらどうすんだ?
「……着るのか?」
一瞬、むくつき男が黄金ビキニを無理やり装着しているのを想像してみる。
…………。
無いな。
あまりに悍ましい想像に、あれだけ跳ねていた鼓動は一瞬で平常に戻ったのであった。
『はーい……もどりました。ってあれ、ショウさん、どうしました? あれ?』
「イヤナンデモナイヨ。ホントニナンデモナイヨ」
『????』
とまあそんな感じで妙な騒ぎはあったものの、普段の恰好にもどったテレサと一緒に機体のカスタマイズを開始する。
やっぱりいつもの恰好は落ち着くね。いや、でもちょっとばかり露出が多いか? これに慣れたら色々と不味くない……?
いやいやいや、雑念退散、煩悩退散。
何だか落ち着かない気分になりつつも、ビーム砲のデータを取る為の試作機を組んでいく。
『おや、これは新しい武器パーツですか?』
「そんなところ。供給出力で威力が可変するらしいから、まずはそこから調べていこうと思って」
『まあ、それは実にショウさん好みですね! でもそれでしたら、先人の調べたデータを拝見すればいいのでは?』
テレサの突っ込みで、はたと打ち込みの手が止まる。
『…………ショウさん、まさか……』
「いやいやいや、何事もまずは自分の手で確かめてみないとね、ほら、ね?」
内心冷や汗だらだらで言い訳するけど、いやまあ確かにテレサの言う通りだ。ビーム兵器は以前と違って完全ド産廃じゃなくなったんだから、攻略サイトに少しは情報が載っているはず。友人だって言ってたじゃないか、このモデルはギルドでも最近ちょこちょこ使われてるって!
あまりに不遇時代が長かったせいでそういう発想が自然と抜け落ちていた……!
ま、まあ、それはともかく置いといて、と。
今回の機体はビーム砲の運用テストという事もあって、とにかく三種類のビームを搭載する事を最優先。それに加えて、ジェネレーターを複数搭載し、それぞれのビーム砲に必要出力の三倍近いエネルギーを供給可能!
ひゃっはー、三倍だぜ三倍。どれぐらい威力があがるのか楽しみだなあ。
あっ、でも威力をチェックする方法はどうしよう?
メタルインセクトを的にするのはいいんだけど、威力過剰すぎたらどれぐらいの変化なのか分からないし……ううむ……。
「テレサさん、ビーム砲の威力確認するのに何かいい方法ないかな?」
『え? そうですねえ……それでしたら、私が以前、前線基地で実験に使っていた金属板を用いてはどうでしょうか? 何枚貫通できたとか、溶け具合とかで威力が間接的に判別できると思います』
「おお、それいいね!!」
そういえば、前線基地にもしばらく顔だしてないなあ。
機動要塞が御釈迦にされた後、気分が萎えていじってなかったっけ。
久しぶりに顔を出すかあ。
「ほんじゃ、明日は前線基地でテストしようか」
『それがよろしいかと思います。では、私の方で場を整えておきますね』
「ありがとー」
いやあ、気が利いてよろしい。やはり持つべき物は優秀なAIサポーターだよ。
私が上機嫌でカスタマイズ画面を閉じると、ハンガーの方で機体の建造が始まった。バチバチバチ、と火花を散らして動き回る作業用アームを尻目に、私はログアウトの準備に入る。
「じゃあ、今日はこの辺りで落ちるね。明日は工業地帯のホームに移動してから、そこから前線基地に向かうけど……」
『それでしたら、私も準備が終わったら工業地帯のホームに移動しておきます。移動中に何かトラブルがあってはいけませんし、護衛をしますよ」
「ほんと? 助かるわー。いやあ、いっつもテレサさんには助けられてばっかりだね。恩に着るよ」
私が素直な感謝の念を露にすると、テレサは照れ照れと頬を赤くした。
『いやあ……私も好きでやってる事ですから……はい……』
「そう? まあ、とにかく、おやすみなさい。また明日ねー」
『はい、おやすみなさい、ショウさん』
テレサさんと互いに手を振って、ログアウト準備に入る。
ふふふ、明日は久しぶりにビーム兵器三昧だー!