ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
そんな訳でやってきました工業地帯の我がホーム。
中央のメガフレームのサンプルに軽く頭を下げて、ハンガーに向かう。
「おーおー出来てる出来てる」
ハンガーに鎮座するテスト機体に、私は腕を組んで一しきりご満悦。
今回のテスト機体は、こないだの転送ブレードを採用したのと同じトライポッド型の脚部を採用している。安定性が高く、地形走破力に優れ、積載量もあるといいことづくめだからだ。履帯も決して足が遅い訳ではないのだが、凸凹に弱いし、即応性にどうしても欠けるからね。
何が起こるか分からない試験機にはこっちの方がいいだろうと思ったのだ。
そして機体の背中には、三本の大型レーザー砲を扇状に装備している。それぞれ最新型のフォトンビーム砲、プラズマビーム砲、そして荷電粒子砲。いつもだったら一個ずつ持ち歩いてテストするが、アップデートで装備負荷とか重量とか改善したからね、いっきに全部やってしまおうという訳である。
んでもって両腕はなく、代わりに追加のジェネレーターを収めたポッドが接続されている。正直ちょっと割り切りすぎる構造かと思ったが、まあテレサが護衛してくれるから通常戦闘の事は考えなくてもいいだろう。
あくまで試験機である。こいつで得られたデータを元に、本命の機体を作るのだー。
あ、ちなみに攻略サイトの情報は覗いていない。もうこれを設計した以上、データとってから裏取りに使うつもりだ。やっぱさ、こうさ、産廃だった頃からビーム使ってたプライドっていうか拘りみたいなもんがあるんだよねぇ~。
「しかしテレサさんの姿が見えないな……まさか……」
先日の悪夢なのかなんなのかよくわからない出来事が頭をよぎり、きょろきょろと周囲を見渡す。
まさか二回連続ではないとは思うけど……。
ホームを見渡して歩き回ると、ちょうどオブジェを挟んで反対側の床に座り込んでいるおなじみの金髪の後ろ姿。
「あ、いたいた、テレサさーん、来たよー」
『…………』
「ん? あれ、テレサさん?」
呼びかけても反応がない。こんな事は初めてだ。
不思議に思いながら近づいてみるが、彼女は私の足音にも反応せず座り込んでいる。回り込むと、ぼけーっとした表情で虚空を見る彼女の顔が見えた。
「おーい、テレサさん?」
『…………』
「??」
顔の前で手を振ってみても反応がない。
ええと、なんだこれ? バグった?
座り込んでいるテレサのまじまじ観察すると、頭の上になんか浮いているのに遅れて気が付いた。
「なんだこれ……ロードアイコン……?」
彼女の頭の上に浮いているのは、いわゆる読み込みを示すアイコンである。ピザだかミカンだかに分割された円状のアレ。それがゆっくりと回転している様子を見て、私は首を傾げた。
「はあ……アップデートか修正ファイルのダウンロードの最中……?」
これまでそんな事なかったけど、タイミングの問題かな。
考えてみればうちの回線はクソ回線だし、時間帯によってはそういう事もあるかあ。
しょうがないので彼女の前に座り込み、起動するのを待つ。
しかしあれだな。いつもはコロコロ表情が変わるから意識した事ないけど、テレサって顔立ちそのものは冷たい系美人だよな。こうして表情が変わらないと氷の美人って感じ。表情って大事だなあ。
「改めてみるとほんっと美人な顔だな……CG制作班気合入れすぎだろ……」
間近で顔を覗き込むと、透き通ったルビーのような瞳に、ぴんと立った長いまつ毛。くすみ一つない肌……非人間的なまでの美貌だと思う。
「……美人だなあ……」
『…………』
まじまじ至近距離から覗き込んでいると、彼女の赤い瞳にこっちのヘルメット顔が移りこんでいる。こういう時、自分の不細工な顔が映らないのはVRのいいところかな?
なんて、おもっていたら。
『…………??』
パチパチ、とテレサの瞳が瞬きして、こっちに焦点を合わせた。赤い瞳の中で、虹彩がぎゅぎゅっ、と収縮する。
その意味に私が気が付くのに、何秒もかかってしまった。
『あ、あの……マス……ショウさん?』
「はっ!?」
声をかけられて我に返る。咄嗟に私は背後に後ずさり、しゃきーんと立ち上がった。
「や、やあテレサさん! おはよう!」
『えっと、おはよう……?』
テレサはこちらの挨拶にぼんやりと反応したあと、ぺたぺたと自分の顔を触った。そして、私がさっきまでしていた存在に手を伸ばして、さわさわと虚空を撫でた。
『あの……今、何を? すごく、近かったような……』
「いやややや何も何もしてないよ? テレサさんがぼーっとしてるのは珍しいから、ちょっとこう眺めてただけ!」
『そうですか……?』
テレサはぼややん、と首を傾げた後、よっこいしょ、と立ち上がった。
『ふふ、お騒がせしました』
小さく笑って、テレサは両手を胸の前で合わせて可愛らしくポーズを取る。
『ふふ。しかし、たまにはぼんやりしてみるものですね。目覚めでよい物が見れました』
「あ、いや、その、だな……ええと……」
何とか誤魔化しを考えるが、だいぶん厳しいかな……。というか考えてみればAIとはいえ相手の寝ている所を至近距離からまじまじ眺めるのは……失礼では……。
『ふふ、私は気にしてませんよ。もっとやってほしいくらいです。……とと、冗談はこのあたりにして、前線基地に出かけましょうか。ショウさんの時間は有限ですからね』
「あ、うん。じゃあさっそく出かけようか」
確かにテレサのいう事もごもっともである。仕事の後の自由時間はさして長くはない。風呂洗ったり洗濯したりやる事はあるものね。
さっさと機体に乗り込んで地上に向かう。後からついてくるテレサの機体は、この間と同じくバッタ脚を背中に背負った機体だ。
「その機体気に入ったの?」
『ええ、まあ。それなりに』
「ふぅーん……」
まあ確かに、疑似的な多脚機構を搭載している機体なら砂漠にも強いだろう。私は深く考えず、ゲートを通って赤錆色の砂原へと進みだした。
砂の海を、シャッシャカと走って渡る。
三本足は先端がとがっているので砂に埋まるかも、とちょっと不安があったが、今のところは問題なく機能している。まあ考えてみれば人型ロボって設置圧がめちゃくちゃヤバいから、そのあたりを考えてゲーム側で何か補正か都合の良い地形をしているのだろう。でないとこんな砂漠、数歩歩いたら脚が埋まって動けなくなってしまう。
むかーし鳥取砂丘を歩いた事があったが、あれはやばかった、マジで。砂漠はあんなのが延々と広がっているというなら、行き倒れて死ぬ人が出るのも納得である。
そんな事を考えながら歩いていると、地平線の向こうに土煙が立つのが見えた。映像を拡大すると、砂漠を疾走するホネホネチーターの姿が。
懐かしい顔だなあ。そういえばこんな奴がいたっけ。
『ショウさん、私が排除しますのでお下がりください』
「いや。ここはビーム砲の試運転といくよ」
護衛の役割を果たすべく前に出るテレサを押しとどめて、背中のキャノン砲を地面と水平まで降ろしてみる。
ガコン、と極太のビーム砲が、まっすぐに地平線を睨むように展開された。
さあ……新型ビーム砲、どれほどの威力か、見せてもらおう!!