ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第二十一話 溶け落ちる程ヒート!

 

 

「ほえー……未発見のレイドボス、ねえ……」

 

 何とはなしに攻略サイトを覗いた私は、トップ画面の下にずらずらと並ぶ最新コメントに目を止めた。

 

 そこには、つい最近初期エリアで発見されたという隠しレイドボスについての話題で盛り上がっている。

 

「ほへえ。高い所に居座って、光学迷彩で身を隠しながら高出力ビームで撃ち殺してくる? なんだそれ、おそろし」

 

 私も森に籠ってビームでスナイプしていたからわかるが、あの環境だとビームの特性が有利過ぎる。恐らく襲われたというプレイヤーはまともな反撃も出来ずに壊滅させられたのではないか?

 

 それにしても、コメントを見る限り、プレイヤー側は一撃で一機ずつ仕留められていったらしい。私の機体だと、エネミー相手でも弱点を正確に狙撃してなんとか、という感じだから、それとはくらべものにならないぐらい屈強なプレイヤー機を一撃で仕留めるとか威力が違いすぎる。

 

 どうやら動画も上がっているようだが、撮影者はシールドを構えた上からビームで消し飛ばされてる。そんなんありか、ずるいなあ。

 

「いいなあ、私もそれぐらい強いビーム撃ちたいなあ」

 

 正直、装備負荷を考えると今の倍ぐらい威力が出てもバチは当たらないのではないか。

 

「そんな事考えてもしかたないか……」

 

 それにしても昨晩は色々惜しかった。

 

 帰ったら、ネット回線復旧してないかな。

 

 

 

 

 

 しかしながら、そうは問屋が卸さなかったらしい。

 

『新しい設備が不調のため、従来の通信回線に一端戻します。次回工事は未定です。管理人より』

 

「……まあ、回線遅くてもつながってないよりはマシだけど……」

 

 どの道これではオンラインには繋げないようである。

 

 またしばらくはソロ確定のようだ。

 

「ま、仕方ないね……」

 

 肩を落としつつ、私は部屋に戻った。

 

 そんでもって、夜。

 

 マイホームに戻ってきた私は、再び愛機を出撃させた。

 

 今日は、どうするか。森に籠って蜘蛛狩りに精を出してもいいが……なんか、昨日の事があるから、どうにもあんまり気分が乗らない。

 

 数時間かけて書いた書類が、PCトラブルで全部吹っ飛んだのを書き直すような、そういう徒労感をちょっと感じてしまう。

 

「どの道新しいパーツとか、出てないしなあ。ある程度稼ぎはあるし、火山地帯に顔を出してみようかな」

 

 そういう事になった。

 

 という事で、私は開拓されていない、見通しの悪い森の中をマップ頼りに一路、火山地帯に向かった。

 

 道中、進路上に居る蜘蛛を狙撃で先んじて排除しつつ、ひたすら進むとコクピットの表示に変化がみられるようになってくる。

 

 外気温の上昇。

 

 さらにエネルギースキャナー画面に、真っ白に塗りつぶされた何かが蠢いているのが見えるようになってくる。通常の視界に戻すと、真っ暗な森の梢の向こうに見える赤い光。それに半比例するように、見上げる枝の隙間から見える空は暗い。

 

「そろそろかな」

 

 ナイフを引き抜き、行く手を遮る藪を払いながら森を出る。

 

 果たしてそこには、この世と思えぬ赤い世界が広がっていた。

 

「うへえ……」

 

 流れていくのは、赤く輝くマグマの河。全てが焼き尽くされた大地は黒い岩がむき出しとなり、草木一本生えてはいない。地上が赤く輝くマグマに覆われているせいか、空は薄暗く、曇天と化しており、遠くには今も活発に溶岩を噴き上げる活火山が炎を吐き出している。

 

 絵にかいたような火山地帯である。鋼鉄の樹木もこれには近寄れないのか、ブツリと鋏で切ったように森が途絶えているようだ。

 

「すげーな……」

 

 目に痛いほどの輝きに目を瞬かせ、画面の輝度を調整する。少し明るさを落としてようやく普通に見れるようになるが、そのせいでマグマ以外はぼんやりと薄暗い。注意しないと敵の姿を見落としそうだ。

 

 それにしても、随分と粘土の低いマグマである。まるで川のようにさらさらと流れていくその勢いはかなり早い。確か一般的に、マグマというのは温度が高いほど粘性が低いのだったな。

 

 一体外気温はどのぐらいだというのだろう。私は遅る遅る温度計に目を向けた。

 

「……? ……あれ?」

 

 外気温はおよそ90度ほど。高いには高いが、思ったより低いというか……。これほどサラサラした溶岩が流れていれば、周囲の気温はもう紙に勝手に火が付き水が沸騰するレベルなのではないか?

 

 今も、岩べりで波しぶきを上げた溶岩が飛び散り、冷えて青白い岩塊に……おや? マグマって冷えたら黒い岩になるんじゃなかったっけ?

 

「あ、これって、もしかして……」

 

 私は恐る恐るマグマの縁に近づくと、そっとナイフを差し込んで軽くかき回して引き抜いた。

 

 ナイフの先についた灼熱の液体が、見ている前でどんどん固まっていく。青みを帯びた銀色の塊となったそれを軽く装甲に打ち付けてみると、キィーンと軽い音がした。

 

「ははあ。ここ、流れてるの何かの金属か……」

 

 ものにもよるが、岩より金属の方が溶けやすいはずだ。この河を流れているのが、融点の比較的低い金属であるというなら、外気温の低さも納得である。いや、人間は普通に死ぬ環境だが、ロボットに乗っていればさほど問題ではない。

 

 考えてみれば、マントルじみたサラサラのマグマが流れるような環境、どんなハイテクロボットでも長居できるものではない。火山帯というシチュエーションと、そこで活動するというリアリティの間をとっての設定だろう。

 

 事実インパクトはものすごかった。

 

「うーん、ダイナミック」

 

 一しきり納得して、私は真っ赤に輝くマグマの運河、その畔に広がる岩石の道に目を向けた。

 

 こんな環境ではエネルギーサーチャー視点は使えない。

 

 薄暗い光学観測に目を凝らし、敵の姿を探しながら奥に進んでいく。

 

「お、いたいた」

 

 少し進んだ先で、第一エネミーを発見。

 

 マグマが冷えて固まったような、地表に流動の跡が残る広場に、数機のメタルインセクトが徘徊している。

 

 見た目は……ヤドカリが近いかな。コンテナ状の殻から足を出して、地表を這いまわっている。殻にはいくつか突起物があって……あれはなんだろうな。

 

「とりあえず、一匹仕留めてみるか」

 

 周囲を見渡し、ちょうどいい感じの丘があったのでそこに昇って狙撃姿勢をとる。

 

 まだ距離があるからか、ヤドカリ達はこちらに気が付いていないようだ。

 

「うーん……」

 

 問題は、どこを狙うかだ。視点を切り替えても画面が真っ白になってしまうので、このまま狙うしかない。一番確実なのは動力炉を狙う事だが、あのエネミーの動力炉がどこにあるか、というと殻の中だろう。

 

 しかし、コンテナ状の殻は見るからに装甲が分厚く、ビームでは一撃で貫通できるかちょっと怪しい。となると、狙うべきはその表面の突起物。

 

 見ようによっては、ミサイルか何かに見えなくもない。

 

 ワンチャン誘爆を狙って、私は引き金を引いた。

 

 ビシュウ! とビームが飛んでいく、が……。

 

「あ、ちょ、そっちじゃない」

 

 狙いは正確だったはずだ。しかしビームは僅かにそれて、エネミー達のすぐ近くの地面に命中してしまう。流石にそれで攻撃に気が付いたエネミーが臨戦態勢をとるのが見え、私はあちゃー、と頭を抱えた。

 

「そりゃそうか。こんな灼熱地帯、上昇気流だかなんだか、空気の歪みも相当なはずだよ」

 

 蜃気楼とかが有名だが、灼熱地帯では光もまっすぐに飛ばない。フォトンビーム砲はフォトン粒子の特性上、環境の影響を受けづらいとはいえ、全く受けないとは書いてない。この灼熱環境では多少狙いが逸れてしまうのもやむを得ないか。

 

 仕方ない、と狙いを付け直す。ズレた分を加味して、今度こそ命中させる……と、画面の中で周囲を見渡していたエネミーが、一斉にこっちに振り返ったのが見えた。

 

「げ」

 

 この距離でバレた!? しかもエネミーはその場で体を震わせると、殻から生えた突起物を一斉にこっちに向けて発射してきた。

 

 やはりあれはミサイルだったようだ。初めての射撃武器を搭載している雑魚敵である。

 

「言ってる場合じゃない~~!」

 

 慌てて機体を立ち上がらせて退避行動に入るが、もたもたしている間にミサイルはすぐ近くまで飛来してきている。丘を飛び降りた直後、背後で爆発。爆風に押されて、機体がぶわあ、と宙を舞う。

 

 その先は、ザバザバと流れるマグマの河である。

 

「あ、ちょ……うわああ!?」

 

 ざっぱあん、と真っ赤な河に落ちる私の愛機。

 

 あとはまあ、言うまでもない。

 

「うわ、ちょ、ステータス画面が真っ赤だ! 動け動け……オーバーヒート!? 動力停止……あ、ちょ、コクピットになんか入ってきた! 熱い、いや熱くないんだけど熱い! おわあああ……!!?」

 

 

 

 

 

 プレイヤー:ショウ、DEAD。

 

 死因:熱傷死。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆

 

 

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