ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第二十二話 殻が硬いのは当たり前

 

 

「えげつない目にあった……」

 

 ガレージに帰還し、私はげっそりと床に座り込んだ。

 

 目の前ではガラガラと戻ってきた愛機の姿。その姿は焼け焦げ、冷えて固まった金属塗れになっている。多分コクピットの中身は金属で染み込みチョコみたいになってるんだろうな。ゲームじゃなかったら修理どころかまるごと廃棄である。

 

 ……というか、修理せずに分解し始めたぞ。そっか、スクラップかあ。

 

「ゲームの仕様状修理って扱いになるだけで新造よねこれ」

 

 バチバチバチ、と溶接を始めたアームの動きを見ながら、アセンブル画面を開く。

 

「さーて、どうしようかねえ」

 

 火山地帯の敵は向こうも射撃武器を使ってくる。それはつまり、距離をただ稼げば安全というこれまでの戦い方が通じないという事だ。

 

 そもそもビーム狙撃は森での環境に最適化した戦術だ。そのまま火山地帯で通じると考えたのが浅はかだったか。

 

 かといって、他にどう戦おう。

 

 普通のプレイヤーなら、アサルトライフル二挺持ちとかで、やられる前にやる、を実践できるのだろう。あるいは機動力で反撃を回避するのか。

 

 ミサイルを撃ってくるとはいえ、速度はかなり遅かった。あれなら見てからでも回避は不可能ではない。

 

 問題はビーム装備の機体には難しい、という事だ。

 

 なんせビーム砲は基本的に重い。比較的軽いフォトンビーム砲でもあの様だ。となると、とにかく火力を集中させてやられる前にやるしかないか?

 

「……とりあえず、あれこれ考えるのは火山地帯のガレージを見つけてからにしよう。あんな即死地形のエリアなんだから、間違いなくあるはず……あるはずだよな?」

 

 ちょっと不安になってきた。

 

 考えてみれば、オンラインを覗いた時には森を切り開いた大規模な道路が出来ていた。火山地帯への同行を呼びかける声もあったし……もし火山地帯にガレージがあればそっちで呼びかければいい話だ。

 

 もしかして……火山地帯に、安全地帯はない?

 

「いや、当然といえば当然か……?」

 

 基本的にガレージは地下施設だ。地殻変動やらなにやらで常に揺れているような活火山の地下に、そんなもんを作れるはずがない。

 

 え。そうなると毎回、この森を突っ切って火山地帯に向かわないといけないの? 大変じゃない?

 

「……まずは最短ルートを確保する所から始めるかあ」

 

 とりあえず、そういう事になった。

 

 

 

 んでもって、愛機の修理が終わるまでちょっと家の事をして、再び再開。

 

 踏破マップと睨めっこして、出来るだけ敵と遭遇しなさそうなルートを探る。

 

「そういや森の敵はあまり積極的に襲ってこなかったけど、あれは待ち伏せっていう戦術の他に、アクティブな敵に絡まれると火山地帯へのアクセスがしんどいっていう理由もあったのかなあ……」

 

 頭部カメラで敵の姿を探し、接触を避けるようにして周囲を探索する。

 

 できるだけ平坦で、藪の少ないルートがあればいいな……そんな都合のいい事はないだろうと思っていたが、案外あっさりとそれっぽい道は見つかった。

 

 なんていうのか、これまでは気が付かなかったのだが、森の中に獣道みたいなものがあるようだ。これを辿っていけば、火山地帯まで敵との接触を最低限でたどり着けそう。

 

「そりゃそうか、これはゲームだもんな」

 

 それにしても違和感なく隠してあるものだ。先の火山地帯への到着を最優先にしていなかったら、些細な違和感は覚えても気にもかけなかったと思う。

 

 その道を辿って森を抜けると、目の前に広がるのは荒涼とした岩山地帯。その向こうに、溶岩を噴き上げる火山がちらりと覗いている。

 

 正規の入口はこっちか。私は知らずして横から乗り込んでいたらしい。

 

 罅割れから溶岩の光がうっすらと覗いている荒地を踏みしめて先に進む。と、岩の向こうに見覚えのあるシルエットを見かけ、コントローラーを握る指に力が入った。

 

 ヤドカリみたいなメタルインセクト。早速リベンジの機会がやってきたようである。

 

 岩に身を隠すようにして、相手の様子を伺う。

 

「二匹か……」

 

 こちらに気が付いた様子もなく、カサコソしている敵の数は二つ。……悪くない展開だ。一匹を弱点狙撃で撃破し、岩を盾に冷却を待って残り一匹を集中砲火で仕留める。それでいこう。

 

 私はこっそり身を乗り出し、ビーム砲の照準を敵に合わせた。空気の歪みを計算して、ちょっと照準をずらして発射。

 

 放たれたビームは、狙い通りに軽く曲がりながらも敵に命中した。殻の上にマウントされたミサイルに粒子が直撃し……爆発。

 

「よっし!」

 

 狙い通りにいってガッツポーズ。いや、ちょっと曲がり方が想定と違った気がして焦ったけど結果オーライ!

 

 これで一匹は仕留めた……あれ?

 

「??」

 

 おかしいな。爆発の中に、まだHPバーが残っているような気がするぞ?

 

『ギシシ!』

 

『ギシィ!』

 

「見間違いじゃなぁい!?」

 

 慌てて岩陰に身を隠す。

 

 たちまち無数のミサイルが直撃し、爆発音が轟く。身を隠した大岩に出現したHPバーが、ごりっと削れて黄色になった。

 

 連続でどんどこ撃ち込まれてくるミサイル。明らかに一匹の弾幕ではない。

 

「なんで?! 弱点撃ち込んだら即死じゃないの?!」

 

 混乱しつつも、私はライフルの冷却を確認してさっと反対側から顔を出した。

 

 視界には、確かに二匹のヤドカリが健在である。そのうち一匹は、殻についたミサイルランチャーの一つを失い、殻が真っ黒に焦げて破損し中身を露出した状態で動いていた。

 

 そうか。あの殻が、ミサイルの誘爆ダメージを軽減したのか。

 

「つまりこの敵、滅茶苦茶硬いって事かぁ」

 

 狙いをつけて速射。ビームは確かに命中したが、HPバーを削り切れない。やむなく、オーバーヒート覚悟でもう一撃撃ち込んでトドメを刺す。

 

 硬すぎる。

 

 急いで身を隠したところに、残り一匹からのミサイル攻撃が降り注ぐ。再び削れる岩のHP。手数が減ったから、すぐに岩が砕け散る事はないと思うが……。

 

「……よし」

 

 こっそり、こっそーり、その場を離れる。岩を挟んで反対側にいるであろうヤドカリに見えないよう距離を取ると、そのまま身を低くしたまま、左右に回り込む。

 

 そうこうしているうちに、ミサイル爆撃で岩が砕け散った。ところがその向こうに私の姿が確認できなかったせいか、戸惑ったようにヤドカリは攻撃を中断し、カサカサと破壊した岩に近づいていく。

 

 その様子を横から見つつ、私はビーム砲の照準を合わせた。

 

 最初の一発はミサイルランチャーに。誘爆で生じた爆発に吹き飛ばされるように転がるヤドカリ……その、爆発で空いた穴目掛けて二発目のビームを撃ちこむ。

 

 オーバーヒートと同時に、ガリッと削れたヤドカリのHPバーが消滅する。

 

 少し遅れてヤドカリが文字通り爆発四散するのを見届けて、私はようやく息を吐いた。

 

「ふぅ……強敵だった」

 

 足元にカンラコロコロ、と転がってくる殻の破片を見ながらログを確認する。

 

 ドロップアイテムもゲットできたようである。

 

 しかし、なんていうか……とにかく硬い敵だった。

 

「なんか、正攻法の倒し方があるっぽい敵だなあ。まさか誘爆で倒せないとは……」

 

 逆に考えると、誘爆しても耐えられるから、あんな殻の外にミサイルランチャーをポン付けしているのかもしれない。火山地帯という事も考えると、ふってくる落石や溶岩に耐えるだけの防御力が無いと、とても活動できないだろう。なんでそこまでして火山に居座る必要があるのかは別として。

 

「ヤドカリ……殻の中身が柔らかいというのはお約束だったな。もしかして正面から撃ち合った方が早かったりするのか?」

 

 まあ、考えていても仕方がない。

 

 とりあえずは試してみよう。私は敵の姿を追い求め、その場を後にした。

 

 

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