ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第二十四話 新たなる矛と盾

 

 

 

 

 本日もお仕事終了。ご飯食べて、お風呂はいってー、洗濯機を回したら、ゲーム機を起動。

 

 ヘッドセットを被った先に広がるのは、植物の根っこに浸食されたホームの光景。

 

 そこに佇む愛機の建造が完了しているのを確認して、私はいそいそと出撃準備に入った。

 

「よし、出撃ー!」

 

 新しい愛機……その名を“ブレイズシルト”を早速出撃させる。

 

 昏い森の中に踏み出した愛機は、鈍い動きで一歩を踏み込んだ。

 

「やっぱ重量二脚は足遅いなあ。やっぱ歩いていくのは無理筋か」

 

 まあそれが分かっているからスキッドを装備したのだが、とりあえずこれを試すのは後だ。

 

 安全地帯であるホーム周辺で、まずは新装備のテストである。

 

「じゃじゃーん、“斥力場装甲シールド”ぉー」

 

 てれってー、と左手に掲げるのは市販品の装甲シールドの表面に、ペタペタと斥力場装甲展開装置を張り付けたものである。見た目、ホッチキスの芯で飾られてるみたいになっている。

 

 まずはこれがどれぐらいのエネルギーを食うのか、どれぐらいの防御力があるのかチェックしなければ。

 

 ワクワクしながらスイッチを入れる。途端、発生装置がヴォオオオオ……と低い音を立てて唸り始めた。

 

 それで……。

 

 それで…………。

 

「……見た目は特に変わらないな……」

 

 盾の表面を見る限りではこう、光が出るとか分かりやすく空間が歪むとかはないようだ。まあ、ヤドカリがそうだったもんな。あれがもうちょっとわかりやすく光ったりしていたら、私もすぐに気が付いた。

 

 とりあえず、本当に力場とやらが発生しているのか、手近な木に押し付けてみる。

 

 すると。

 

「おわっ!?」

 

 木に押し付けた途端、まるで何かにぶつかったような反動が返ってくる。反動に耐えかねてシールドを握っている左手がガクガク揺れるが、それ以上にびっくりしたのは押し付けられた木の有様だ。

 

 まるで見えないノミで削られているように表皮が剥けて、ついには機械部品を剥き出しにする森の機械樹。さらには機械部分も火花を散らして抉られ始めるのを見て、私は慌てて盾を引いた。

 

 だがすでに時遅く、根本近くの幹を抉られた大木が傾き始めている。慌てて退避する目の前で、一本の大木が振動と共に地面に身を横たえた。

 

「うひぇー」

 

 驚愕と共にシールドに目を向ける。あの掘削力というか反発力がそのまま攻撃の相殺に使われているなら、結構な防御力になりそうだ。だが……。

 

「消費エネルギーも半端ないな」

 

 そう。起動していた時間は10秒程度でしかないが、それでサブエネルギーはすっからかんになってしまっていた。一度消費したサブエネルギーは自然回復しないらしいので、補給しない限り、一度の出撃で僅か10秒程度しか斥力場装甲シールドは使えない事になる。

 

 あくまで補給しなければ、だ。その補給の方法も、これから試す。

 

「よぉし、次はコイツの試射といこうか」

 

 ガコン、と構えるのは、強化型プラズマビーム砲だ。配線やコイルがむき出しになった試作品じみたデザインはそのままに、さらに大きく、重く、強化改良されている。前は丸かった砲口も、今は縦に長い楕円に代わっており、いかにも強くて太いビームが出ますよ、という説得力に満ちている。

 

 流石、安全性や運用性を考慮するどころかそれを度外視して威力上昇に努めた逸品である、ハザードストライプが描かれたケーブルや砲身が実に危険な雰囲気だ。こういうの大好き。

 

「よぉし、いくぞぉ」

 

 狙いは、たった今倒れた大木だ。

 

 さきっちょから根本まで焼却してやる意気込みで、私はプラズマビーム砲の引き金を引いた。

 

 フォオオオ、と長めに溜めた後に、青白い閃光が放射される。ジュワアアア……と水の蒸発するような音と共に放たれるプラズマビームは太く、そして終わらない。

 

 照射時間がすげー長いぞこれ。

 

「こいつは凄いな……!」

 

 そのまま連続照射されるビームを薙いで、大木を焼き払う。1秒近い照射の後に、水が途切れるようにビームが勢いを失っていき、やがて途切れた。

 

 ビームで焼かれた大木は、今や真っ赤に燃え上がってメラメラと燃えていく。特大のキャンプファイヤーだ。放っておいたらこの森中に広がっていきそうな炎から思わず距離を取る。

 

 そして撃ち終えたプラズマビーム砲も、それに負けないぐらい赤熱化している。コイル部分は放射を終えても懐中電灯の如く青白い輝きを放ち、砲口は真っ赤に灼けて煙を吹いている。ビーム砲の基部にある警告灯らしきものが赤いランプを光らせてぐるぐると回り、コード類はバチバチと火花を散らす。

 

 今にも爆発しそうな有様だ。

 

 実際、ヒートゲージは100%オーバーというとんでもない数値を示している。いくら解放率100出力100で撃ったとはいえ、あとほんの少しで爆発するというのはちょっと心臓に悪い。これ火山地帯に持ち込んで大丈夫?

 

「んで、サブエネルギーは……っと。おっ、回復してる、回復してる!」

 

 そして一番肝心の、熱エネルギー再転換スキル。それがどのぐらい機能しているのか確認してみると、確かに空になっていたサブエネルギーがどんどん回復しているのが見えた。

 

 しばらく経つと目の前のキャンプファイヤーの火も消え、プラズマビーム砲の冷却も完了する。最大出力でぶっ放したのが冷却完了するまでに、サブエネルギーは3割ほど回復していた。

 

 都合、三発撃てば回復する計算である。あの爆発寸前までオーバーヒートしていたプラズマビーム砲の有様を考えると、そんなに効率がいいとは言い難いが、大事なのはあくまでオマケで回復できるという事である。攻撃しながら、防御の為のリソースを生み出せるというのは実にお得に感じられる。

 

「ま、基本的には先制攻撃、一撃必殺を心掛けるのは一緒だしな。あまり当てにすると足元をすくわれそうだ」

 

 それにまあ、そもそも火山地帯の高熱環境でぶっ放して、ヒートゲージが限界超えちゃわないか、という疑問もあるしね……。

 

「ま、それは実際にぶっ放して試すしかないか」

 

 とりあえず、火山地帯へのルートに移動しよう。そこまで移動すれば、ひっかかる根っこや藪はないから、ロケットで滑っていける。はず、なんだが……。

 

「そ、そこまでが大変だなこれは……うぉっと?!」

 

 スキッドが根っこにひっかかり倒れそうになるのをなんとか堪える。こ、これは、その道に辿り着くまでがまず一苦労だぞ……。

 

 とほほ。次からは、スキッドは予備も含めて背中に背負って出撃しよう……。

 

 丘に上がったペンギンのような歩みの愛機の中で、私はやれやれと嘆息した。

 

 

 

◆◆

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