ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第二十八話 灼熱の海を越えろ

 

 

 溶岩に落ちるハズが、ぷかぷかとその上に浮いている私の愛機。いや、実際には溶岩に触れる事なく斥力場で浮いているのだから、空中浮遊に近い状態なのだろうけど。

 

 本来ならば、あっという間に底をつくはずのサブエネルギーの減少がじわじわと遅い。それは消費よりわずかに少ないぐらいの勢いでサブエネルギーが回復し続けているから。

 

 そうだ。溶けた液体金属、ゲーム的な都合もあって現実のそれより大幅に温度が低いのだろうけど、それでもプラズマビーム砲のオーバーヒート並みの熱量を持っているはず。斥力場防壁で直接触れなくても、熱そのものは伝わってくるわけで……それをエネルギーに再転換すれば、継続的に浮いていられるのか?

 

 機体の温度がどんどん上昇しているから、それでもこのままじっとしていればオーバーヒートして全機能が停止してしまうけど、だったら……。

 

「ロケットブースター……いけるか!?」

 

 機体をちょっと傾ける。それで拮抗が崩れて、足先が溶岩に沈みそうになるけど、それで角度は取れた。ロケットブースターの第一弾を起動すると、それによって機体が勢いよく溶岩の上を滑り始める。気分はジェットサーフィンだ。

 

「やっほう!!」

 

 溶岩の海をかき分けながら、高速で滑走する。機体を傾けてUターンすると、浮島とその上にたたずむボスの姿が見えてきた。

 

 ボスの足元には、ふたたび爆弾岩がバラまかれている。

 

 ところで、ふと疑問。

 

 ボスが自分で爆破した爆弾岩でダメージを受けた様子はなかったが、これ、こっちが起爆した時もダメージは入らないのかな?

 

 実験……してみようか!!

 

「プラズマビーム……発射!!」

 

 お返しと言わんばかりにビームを放射する。極太の青い粒子が、浮島の上を薙ぎ払い、爆弾岩をかたっぱしから起爆させ……爆発。

 

 浮島の上を逃げ場のない爆発が覆いつくし、溶岩の湖面を衝撃波が薙ぎ払った。

 

 そしてボスはどうなったかというと……。

 

『ギルルル……』

 

「効いてる!」

 

 ごっそり減ったボスのHPバーに勝機を確信。なるほど、相手の攻撃を利用するタイプのボスだったか。

 

 本来あれだけの爆発を起こしたらプレイヤーもただでは済まないが、溶岩の上をサーフィンしてるこっちには関係ない。

 

 このまま溶岩島に向かうと同時に、角度を変えて二つ目のロケットブースターを起動する。

 

 がくん、と機体が加速し、溶岩の湖面から斜めに浮かび上がる。

 

 シールドを振りかぶり、そのままボスの顔面めがけてシールドバッシュを叩き込む。

 

「くたばれえ!」

 

『グギギィイ!!?』

 

 ロケットで十分な加速を得た、重量級機体のシールドバッシュ。それをダメージでふらついている状態で叩き込まれたボスが、悲鳴と共にバランスを崩す。

 

 浮島に突き刺して体を固定していた足の爪が抜けてぐらり、とその巨体がかしぎ、そして。

 

『オロロロォ!?』

 

 そのまま、ボチャーンと溶岩の海に倒れこむ。

 

 真っ赤な金属の海にその巨体が沈み込み、逆さになった足を湖面から突き出してじたばたしていたが、それもやがて動かなくなった。

 

「ふぅ……なんとかなったか……あれ? いやまて、そういえばアイツ、殻に爆弾岩をたくさんくっつけてなかったっけ?」

 

 明らかにボスの絶命を思わせる演出に安堵したものの、ちらり、と戦いの様子から嫌な考えが頭によぎる。

 

 それを裏付けるように、赤く輝く溶岩の海が、それでもなおはっきりとわかる光によって水底から膨れ上がるのが見えた。

 

 慌てて浮島に身を伏せた直後、溶岩の湖から巨大な水柱が立った。いや、この場合水柱でいいのか? 火柱?

 

「おわわわわ」

 

 ざぶんがくんと揺れる浮島から振り落とされないようにしがみつく。猛烈な高波にさらわれて、浮島がどこかに流されていく。そして……。

 

 ガァン、という音。

 

 気が付けば、漂流していた浮島は、どこかの岸辺に乗り上げるようにして停止していた。周囲には剣山のような形の岩が無数に張り出しており、足元には冷えて固まった金属の結晶。

 

 どうやら押し流されて、反対側の岸辺にたどり着いたらしい。

 

 機体を起き上がらせ、よろよろと丘に映る。コクピットのモニターにはいろんな警報がビービーやかましく鳴っていて、機体の動作もぎこちない。

 

 熱によるオーバーヒート寸前だ、斥力場シールドも使えないし、ビームも撃てない。

 

 今、敵に襲われたら一巻の終わりだ。

 

「どこか、どこか安全地帯はないのか……?」

 

 ノイズ混じりのモニターに必死に目を凝らす。せめて、すこしでも温度が低い場所があれば……。

 

「……ん?」

 

 そうやって目を凝らしていた私はふと、無数の岩山の中に、妙な物が混じっている事に気が付いた。

 

 とがってないというか、材質が違うというか……これは……。

 

「突き出した……エレベーターシャフト?」

 

 近づいてみると、モニターに反応。まだ生きているようだ。傾斜しているが……角度は浅い。なんとか乗れそうだ。

 

 恐る恐る機体を乗せると、ガコン、という音と共にエレベーターが降下しはじめる。

 

 高速で流れていくシャフトの映像に、私はふぅ、と安全地帯にたどり着けた事に安堵の息を吐いた。これで、一安心。

 

 さすがにボス戦の後にホームを用意していないほど運営も鬼畜ではなかったか。いや、あのボス本当なんなんだろうね、オンラインでもいるの?

 

「まあいいや、それよりこれで……うふふふふ」

 

 先の事を考えて思わずにやけ笑いが出る。

 

 ふふふ……すごい事を思いついたのだ。もしかするとこの火山地帯、楽勝かも……?

 

 

 

◆◆

 

 

 

 まず、基本に立ち戻って考えよう。

 

 ビーム砲アセンに置いて最大の問題は、威力ではなくその重量による足回りのヘボさである。

 

 威力事態は、熱ダメージで追加を狙ったり、弱点部位を狙い撃ったりでなんとかなる。だが機動力だけはどうにもならない。

 

 高出力のジェネレーター、重たいビーム砲、それを支える積載量の多い脚部は、どうしても機動力に劣る。

 

 だが逆に言えば、機動力さえあればすべては解決する。敵から距離を取り続けられればビーム砲を冷やす時間もあるし、敵に対してイニシアチブを常にとれる。戦闘を避けて無駄な消耗を押さえる事もできるだろう。

 

 その為にロケットブースターを装備したり、スキッドを装備したり色々やってきた訳だが、ここにきて私は新しい発想を得た。

 

 そう、つまり……。

 

「斥力場装甲そのものを、足場にする……!」

 

 溶岩の上にさえ反発力で浮かぶことができた不可視の防壁。あれを最初から、移動用に割り切って搭載すればホバー移動できるようになるのではないか?

 

 サブエネルギー消費の問題も、溶岩の上を移動するようにすれば解決できる。熱源=エネルギーであるならば、むしろ積極的に本来ならば通れないような高熱地帯に突っ込んでいくべきだ。

 

 もちろん問題もある。熱エネルギー再転換スキルは、余剰熱エネルギーをサブエネルギーに変えるが、熱量そのものを消してくれるわけではない。ずっと高温にさらされれば、機体はやがてオーバーヒートしてしまう。どれだけ強力な冷却装置を搭載してもこれは解決しないだろう。

 

 ではどうするべきか?

 

「機体をできるだけ大型に……そんでもって、設置面積を増やして、安定性を……」

 

 モニターの中で機体を汲み上げていく。形になりつつある新しい機体は、到底人型とは言えない異形の姿をしていた。

 

 そして……。

 

「ゲットした新しいアイテムからできるのは……これか?」

 

 ボス戦前、囮として置かれていた謎のアイテム。幸いな事にこれはジャンクなどではなく、ちゃんと使い道のあるアイテムだった。これを使う事で、いくつか新しい武器・パーツが作れるようになるようだ。

 

 そしてその中に、全く新しい粒子砲系列の武器があった事を、私は見逃さない。

 

「ふむふむ……モータル・ブラスター……ねえ」

 

 説明書きによれば、原理的にはプラズマビームに近いようだ。核融合炉を持ち、電磁誘導で発生させたプラズマを放出する。ただ違うのは、この融合炉は起動時に周辺にきわめて有害な放射線をまき散らすとの事だ。防護処置をしていない相手を敵・他プレイヤーの区別なく汚染にさらし、内部ダメージを与える。基本的にはプラズマビームと同じメリット・デメリットを持つが、装備するだけで周囲を巻き込むというのはなかなか豪快だ。パーティープレイではなくソロプレイなら、味方を巻き込む心配もない。

 

 なんかイレギュラーウェポンとかいうアイコンもついてるし、心の中二病がウキウキする。

 

 新しい機体の主砲としてふさわしい。

 

「くくく……結構出費もかさんじゃったけど、大暴れして返してもらうとするか」

 

 ハンガーの中でせわしなく動き出すロボットアームにひとしきり悦に浸り、私はログアウトの準備に入った。

 

 お楽しみはまた明日。

 

 いやあ、楽しみだ!

 

 

 

◆◆

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