ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第三十話 初めてのレイドボス

 

「どうしたもんかなあ……」

 

 仕事を終えて帰宅途中、私の頭の中にあるのは愛機をどう扱ったらいいのかだった。

 

 とりあえず、フォトンビーム砲は使えるからそれで敵を倒してお金を稼いで、あの呪いの装備を外すのが一番いいのは間違いない。だけどフォトンビーム砲の発熱はやはり物足りなく、どうしても活動時間が短くなってしまう。どのみち高熱環境で突っ立ってるだけで機体がダメージを受けていくというのもあるし、とにかく稼ぎが少なくとも何度も出撃してお金を稼ぐしかないのだろうか。

 

「はあ、どっかに居ないかな。ビームでも倒せてお金がっぽがっぽ落とすカモみたいな敵……」

 

 愚にもつかない妄想をしながらアパートの玄関をくぐる。

 

「あれ、大家さん」

 

「小鳥遊さん、こんばんわ」

 

 と、そこではいつぞやのように、作業員の作業を見守っている大家さんの姿。

 

「もしかしてインターネットの工事です?」

 

「そうなのよ。この間のリベンジね」

 

「はあ……」

 

 まあ、繋がったのはいいけど速攻で落ちたからな。他の部屋からも苦情があったのかもしれない。

 

 大体今の時代、オンラインゲームすら出来ないようなヨワヨワ回線では人も入ってこないだろうしな。もっと早くその事に気が付いて投資してほしかったけど。

 

「今日は時間限定ね。しばらく動かして負荷とかチェックして、後日また工事するそうなの」

 

「なるほど」

 

 とりあえずちゃんとつながるようになるならなんでもいいです。

 

 私は適当に大家さんに相槌をうって部屋に向かった。

 

「いや、待てよ……?」

 

 ふと思い当たる事があって携帯端末を取り出す。

 

 さくっと確認した企業の攻略HPには、本日特定時間にのみ出現する火山地帯のレイドボス戦についての通達が書かれていた。

 

 

 

 レイドボス・バーンフォッスル。

 

 火山地帯に生息する古代魚型のメタルインセクト。

 

 最大の特徴が、地上ではなくマグマの中に生息している事。その為、一般的な機体ではこのボスに直接攻撃する事はできない。

 

 その為、岸辺から攻撃して、その全身を守る耐熱スケイルを破壊するのが攻略法。一定枚数破壊するとボスは潜行する度にダメージを受けるようになり、やがて自滅する。

 

 ポイントなのが、この耐熱スケイル一枚一枚がエネミー判定な事である。例えボスを直接撃破できなくともこの耐熱スケイルを破壊さえできれば、一般的な雑魚を狩るよりも多くの経験値と報酬を得る事が出来る。その為、このボスの出現が告知されると各サーバーはお祭り騒ぎになり、さながらゴールドラッシュのような有様になる。

 

 という事である。

 

「つまり、私のバーニングスフィンクスの独壇場って訳だ」

 

 ゲームを立ち上げながらにししと笑う。天は私を見捨ててはいなかった、まさかこんなおあつらえ向きのレイドボスが都合よく巡ってくるとはね。

 

 軽く調べた限り、スケイルを10枚も破壊できれば現状の資金難からは脱出できる。それに加えて、溶岩上の戦いというのも都合がいい。

 

 いくつか動画を見たが、基本的に溶岩の上を移動するような機体は存在していない。スラスターで飛行可能な機体でも、莫大な輻射熱を浴びる溶岩の真上を飛ぶのは自殺行為らしい。それは即ち、マジでビームが使われていないせいで熱エネルギー再転換スキルという神スキルが全く知られていないという事実を示してはいるが、まあそれはこの際どうでもいい。ライバルが少なくて済む。

 

「普通の機体はサブエネルギーの量自体を増やしたり、消費を減らすスキルやアビリティで対応してるんだっけな。あとは高所からの落下衝撃を変換するとか」

 

 一応他の武器スキルにも類似の効果があるらしいなー、と思い返している間にゲームの立ち上げが終了する。

 

 私の操作キャラが立っているのは傾いたホーム。目の前のハンガーには、資金不足で8割ほど修理が完了しているバーニングスフィンクスの姿。ちょっと煤けているけど、まあ戦うには問題ない。

 

「あとはオンライン状態だけど……一応通信は良好なはず。心配だけど、やるしかないか……」

 

 不安も感じながら、機体に乗り込んで出撃する。

 

 ハンガーがエレベーターの中をぐんぐん上昇している中で、最後にぽちぽち、ステータスを確認。

 

「さっさとこの呪いの装備からオサラバしたいぜ……」

 

 忌々しい思いでモータル・ブラスターの項目を睨みつけながら、出撃の時を待つ。

 

 …………。

 

 ……。

 

「長いな」

 

 目の前には、案の定グルグル回る読み込みを示すアイコン。通信良好とは何だったのか。

 

 永遠に上昇を続けるエレベーター内で溜息をつく。もしかして今日はこのまま脱落か?

 

 がっかりしていた私だったが、不意にアイコンが消失。それと同時に、視界に光が差してくる。

 

「おっ、通信が回復したか……えっ?」

 

 気を取り直してコントローラーを握るも、目の前に広がっていた光景に言葉を失う。

 

 なんだか。

 

 ものすごく高い所にいる。

 

「おわーー!?」

 

 自由落下を始めた機体のバランスをなんとかして取り戻す。風圧でグラグラ揺れる機体の中、モニターにはぐんぐん迫ってくる火山地帯の全景が一望できた。

 

 どうやら、ホームの出撃位置の遥か上空に出現してしまったらしい。通信ラグか何かで位置情報が狂ったか。いやまあ、多分よくある事のような気がするけどいくらなんでもズレすぎではない?!

 

「じ、地面……は駄目だ、斥力場展開しても粉微塵になる! ええと、ええと、なんとかして溶岩地帯に……!」

 

 この高さから落ちたら例え水面でもコンクリートの地面にたたきつけられたようなもんだろうが、斥力場を介すれば話は別だ。というかその一抹の可能性にかけるしかここを生き延びる方法はない。

 

 脚部を下にして、空気抵抗で軌道を調整しつつ、眼下に流れる真っ赤な河目掛けて落ちていく。ぐんぐん近づいてくる地面、もう一刻の猶予もない。

 

 あと地表まで、3、2、1……。

 

「斥力場最大出力!」

 

 不可視の防壁を、溶岩に叩きつけるようにして着地する。数度、バウン、バウン、と機体が湖面で水切りのように跳ねたが、フロートを踏ん張らせてなんとかひっくり返らないようにバランスをとる。やがて勢いも落ち着いてきて、私は安堵の息を吐いた。波に、機体がじゃぶじゃぶと揺れる。

 

「ふう、吃驚した。……まあ、なんとかなったので結果オーライか」

 

 肩を回して、状況を確認する。

 

 どうやら、ここはちょうどレイドボスの出現するマグマ湖のようだ。岸辺には、いろんな色や形の機体がぐるりと見渡すかぎり集まっていて、まだかまだかとレイドボスの出現を待ち望んでいるようである。多少出遅れたが、結果としては人垣を越えて湖の真ん中にショートカットできた訳だし、まあ、災い転じて福となす、という奴だろうか。

 

「ふふーん? それにしても、いろんな機体がいるなあ」

 

 見た感じ、鱗剥がしに特化して連射武器が多い感じか。一発の重いキャノンやバズーカは、外すと痛いから持ってない感じか? ほとんどの機体は両手にマシンガンを持ち、それでいて出来るだけシンプルな機体のようだ。ボスそのものはそんな強くないらしいし、修理費用を押さえて少しでも黒字を増やす工夫だろうか。

 

 そんな事を考えながらプレイヤーの機体を観察していると、聞き覚えの無い警報がコクピットに響いた。

 

「ん?」

 

 ボス出現の予兆かな? そんな風に考えながらモニターのメッセージを確認した私は、そこに表示されていた文字列に凍り付く。

 

《ロックオンされています》

 

 直後。

 

 岸辺に佇むプレイヤー機のうち、少なくない機体のマシンガンが一斉に火を噴いた。

 

 

 

◆◆

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