ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第三十六話 類は友を呼ぶ

 

 

『まあ、まあ。そんなに落ち込まないでください、ね?』

 

「うむ……」

 

 命からがら、文字通り這いずってホームに戻ってきた私は、ハンガーに吊り下げられる愛機を前にしょんぼりと肩を落としていた。

 

 そんな私を、テレサは必死に励まそうとしている。まあ多分、人間が喜びそうな言葉を適当に選んで出力しているだけなのだろうが、見た目が美少女ってだけでなんかこう、元気がもらえる気がする。

 

 人間って単純だねえ。

 

『それにしてもこの状態でよく帰ってこれましたね』

 

「まあ、そこはなんとか」

 

 本体負荷がなく、引き金さえ引ければ機能する実弾武器が主力装備だったからなんとかなったというか。あの状況でクーリングとかいるビーム兵器だったら間違いなくスクラップだった。

 

 やっぱビームは駄目なのかな……いやいや。

 

 初志貫徹。

 

 半ば意地になってるのはわかるが私はビームがいいんだ。

 

 一方、テレサのほうは破損した機体に興味があるらしく、しきりにハンガーを色んな角度で覗き込んで首をひねっている。多少わざとらしいモーションだが、まあ可愛げはある。

 

 なんていうか……あまり不気味の谷を感じないNPCだなあ。いっそ現実離れした美少女顔なのが幸いしているのかもしれない。ほぼ猫人間だし。

 

『その……原因は何だったんですか?』

 

「原因って……」

 

 そしてなんていうか、変なAIである。人工知能にそのような概念が適用されるのかはわからないが、随分と好奇心の強いAIだ。

 

 私が掻い摘んで説明すると、テレサは考え込むようにふむふむと頷いた。

 

『なるほど……反動で……』

 

「まあそういう訳だから、私は今日はもう落ちるよ。おやすみなさい」

 

『あ、はい! お疲れ様でした!』

 

 オプション画面を開いてゲームを終了する。

 

 そういえば、ゲーム内NPCから見るとログアウトしたプレイヤーってどんな風に見えてるんだろうね。

 

 いや別にどうでもいい事か、あっちはどうせ数字で世界を認識しているんだし。

 

 それよりも、明日は友人とのオンラインの約束がある。

 

 修理はそれまでに終わっているだろうが、満足いく形に仕上げられなかったのが心残りだ。

 

「まあ、飛行中に発砲しなければ大丈夫か……」

 

 しかし、さて。

 

 友人はどんな機体に乗っているんだろうね?

 

 

 

 

 

◆◆

 

 

 

 そして約束の時刻。

 

 メニュー画面からプライベートアクセスにログインした私は、常と変わらぬホームを見渡した。

 

「アイツはまだ来てないか」

 

 オンラインでもプライベートアクセスだと、パスワードが通じる相手しかログインしてこない。その為、ホームはがらんとしていて他のプレイヤーの姿は無い。それでもオンラインモードだからか、テレサの姿はそこにはなかった。

 

《Mimizuさんがログインしました》

 

「おっ」

 

「やっほうマイフレンド。久しぶりだな」

 

 メッセージと共に姿を現すのはオレンジ色のパイロットスーツ。ボイスチャットで語り掛けてくる相変わらずの伊達男に、私は苦笑しながら手を振った。

 

「おっす。今日はよろしく」

 

「おっけいまかされた」

 

 パンパン、と手を違いに打ち鳴らし、まずは打ち合わせである。

 

「今日はどこ連れてってくれるんだ?」

 

「ミドガルズ大峡谷ってとこ。まあ、早い話が雪山マップだな。移動はちょいと大変だが、ここの雑魚はHPは多いが柔らかい。後半のMAPは場所によっちゃあマシンガンやライフルじゃまともにダメージが通らない雑魚がうろうろしていたりするから、そいつらを倒せないようなアセンの奴には良い狩場になる」

 

 なるほど。このゲームはロボットカスタマイズだから、プレイヤーのレベルを上げても武器の攻撃力がそこまで大きく上昇する訳ではない。それでも敵の耐久力や防御力は後半ステージほど上昇していくから、最終的に特化アセンじゃないと歯が立たなくなる訳か。

 

 ネットの書き込みでも亀がどうとか蟹がどうとか書いてあったな。

 

「ようは二線級の狩場って事だな。分かった。だがお前はともかく俺はどうやってそこまで移動するんだ?」

 

「一時的に俺のギルドに入ってくれればいい。ああ、ギルドといっても他のメンバーは殆ど引退済みの過疎ギルドだ。各種サービスを受けるためにまだ所属してるだけで、実質機能してない。挨拶とかはいらないよ」

 

 前から思っていたが、コイツの交友関係どうなってんだろうな。私からしたら数少ない友人だが、彼からしたら私は数多くいる友人の一人でしかない筈だ。まあそれでもこうやってやり取りしてくれるから、気安い相手とは思ってくれているんだろう。

 

《ギルドへのお誘いが届きました》

 

「オッケー。わかった。ぽちぽち、と。これでいいのか?」

 

「ああ。じゃあ早速大峡谷に……っと、その前に武器渡しとかないとな。とりあえずこれ装備しとけば大峡谷でも戦えるだろう」

 

 そういって送られてきたのは、マシンガン系の武器。ドラムマガジンが特徴の大型マシンガン……所謂分隊支援火器、と呼ばれるカテゴリに位置するものだ。見た目通り、総弾数が無茶苦茶多い。

 

 まあこのゲームでは弾幕張ったぐらいでは敵が止まらないから、その大容量は直接敵にぶち込むために使われるのだが。

 

「うし。とりあえず装備できる」

 

「よっしゃ。じゃ、早速移動しようぜ」

 

「ああ。そういえば、お前の機体はどんな感じなんだ?」

 

 ふとした思い付きで訪ねてみると、オレンジ色のヘルメットのアバターはぐっと親指を突き出してサムズアップしてみせた。

 

「そいつは、実際に出撃してのお楽しみ、という事で」

 

「さよか。じゃ、さっさと出撃するとしよう」

 

 おしゃべりはその辺にして、拠点移動から早速出撃する。

 

 エレベーターを上がりきった途端に、真っ白な光がモニターを埋め尽くす。一瞬目がチカチカするほどの光量に慣れた後に広がるのは、見渡す限りの雪景色だった。

 

「ほわあ……」

 

 まるでエベレストの一角。切り立った岩山が、分厚い雪のベールで覆われた、それはそれは本州住まいの人間からするとテレビの中でしか見た事がないような絶景が広がっていた。

 

 空を覆う曇天の切れ間から、太陽の光が差し込んでいる。それを目で覆うと、山脈が続いていった先が雲の上に突き抜けているのが見えた。逆に視線を降ろしていくと、下には深い渓谷が黒々と続いている。

 

 見知らぬマップの新鮮さに魅入っていると、私の降りたエレベーターが再び何かを運んできた。

 

 上昇してくるリフトにのっているのは、群青色の軽量機体。

 

 ヘリのキャノピーみたいなのが埋め込まれた胴体に、太ももは太いのに膝から先が棒のように細い脚部、両腕は普通のように見せかけて、左手は手首から先が横向きのプロペラに差し替えられている。背中には大型のスラスターを装備しており、主武装はサブマシンガン。

 

 高機動を武器とする軽量タイプのようだ。

 

 どうやらこれが友人Mimizuの愛機らしい。

 

「いい機体じゃないか。その左腕のプロペラはなんだ?」

 

「へへー、こいつはローターブレード! 接近戦用の武器さ!」

 

 腕を掲げ、ギュイン、とプロペラを回転させて見せる。なるほど、その高速回転する刃をグラインダーのように押し当てて敵を切り裂く訳か。

 

「……使いづらくない?」

 

「ビーム砲にはまってる奴にいわれたきゃねーよ! これはこれで軽くていいんだ、双刃剣みたいでかっこいいだろうが」

 

 まあ、たしかに言われてみればそう見えなくも……ないか……?

 

「そういうお前はちゃんとマシンガン装備してるな、よし。……ところで背中のそれはなんだ?」

 

「まあ、それは後のお楽しみ、という事で。ここからどうする」

 

「そうだな……まずはこのまま真っすぐ、山の中腹を歩いていこう。このマップについては歩きながら話すよ」

 

 友人がマップにビーコンを打つ。その反応を追って、私も積もった雪の中を、サクサクと歩き始めた。

 

 

 

 

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