ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第三十七話 湧きどころ

 

「この大渓谷は、大陸マップを東西に分断する要衝なんだよ」

 

 雪深い道を足を滑らせないよう、注意して歩く。慣れた様子で先に行く友人は、えっちらおっちら歩く私が追いつくまで待ってくれながら、マップについて説明してくれる。

 

「あっちの雲の上に出てる山があるだろ? あの上に渓谷全体を射程に収めてる高射砲があって、この山脈付近を飛行して渡る事が出来ないようになってるんだ。だから、初めて向こうに行くときは、誰でもこの渓谷を歩いて越えないといけないのさ」

 

「そいつはまたスケールのデカイ話だな……誰かその高射砲を壊そうとは思わなかったのか?」

 

「そりゃ当然、いくつものギルドが攻略を試みたさ。が、残念ながら、どのサーバーでも、高射砲は絶賛稼働中。理由は簡単、高射砲の置かれてる基地が廃人でも持て余す超高難度ダンジョンになってる上に、そもそもたどり着くまでの道に複数の超大型レイドボスが徘徊してるのさ。雲がバリバリしてるだろ、あれ自然の雷じゃなくてそのレイドボスが出してる放電なのさ」

 

 通信の向こうで肩を竦めて見せる友人に、私は思わず山頂の方に目を向ける。確かになんかバリバリしてるけど……あれがボスの放電……? どんだけでかいんだ、そのレイドボス。

 

「過去何度か組まれた討伐隊は全滅。方向性を変えてレイドボスを無視して基地に向かったチームもいたけど、中に入ってしばらくもたたないうちに壊滅って有様さ。少なくとも、中に比べれば外のレイドボスを倒すほうがまだ簡単らしい。現状じゃ、プレイヤーはまだあそこに挑む程に至ってない、ってのが今の結論さ」

 

「運営、随分遠くを見すぎてない?」

 

「正直同意だな、調整ミスってんだろ。あ、ちなみに渓谷の下の方もクソヤバだから落ちるなよ。こっちは単純にデカくて硬くて強い雑魚がミッチミチに犇めいてる、時々廃人ギルドが稼ぎの為に潜りはするけど、基本的に即死ゾーンだ」

 

 その言葉に、私は黙って谷から距離を取った。友人はそんな私をカラカラと笑って先に行く。

 

「っと、そろそろお出ましだ。このマップの主要雑魚が出てきたぞ」

 

「へえ? どれどれ?」

 

 武器を構える友人の横に並び、私も敵の姿を確認する。見れば、道の上の方、切り立った崖の上から複数のメタルインセクトが飛び降りてきて、勢いよく斜面を滑走しながらこちらに向かってくる。

 

『ウギギギィ!』

 

『ケケキャキャ!』

 

 こちらに向かってくるのは、雪に融け込む白銀色のメタルインセクト。長い前足に短い後ろ足、蛇のように細長く伸びる尻尾……四つの手足で地表を駆ける、猿型のメタルインセクトだ。インセクトとはなんだったのか。

 

 こちらに向かってくる敵の背中で、何かが動いている。あれは……ロボットアームで保持されたキャノン砲か何か……?

 

「連中は氷の弾丸をカタパルトで撃ちだしてくる、一発一発はさほどでもないけど纏めて当たるときついぞ、気をつけろ」

 

「了解!」

 

 言うが早いかひゅんひゅんと飛んでくる礫を回避して、二人して山道を駆け上る。軽量さとスラスター推力を生かして、一気に友人が崖の上に飛び上がるのを見て、私もロケットブースターのスイッチを入れた。

 

 大推力で機体が一気に上昇する。そのまま渓谷の上まで上昇しながらプラズマジェットエンジンに切り替える。

 

 向かうのは先ほど雑魚が駆け下りてきた、切り立った崖の真上だ。私達目掛けて飛び降りてきた猿達の頭上を飛び越えるようにして、大きな岩の張り出した崖の上に着陸する。

 

「おいおい、なんだそれ。ジェットパックってお前の進行度で作れたっけ?」

 

「とっておきさ。凄いだろ?」

 

 スラスターの勢いをかりて崖を駆け上ってくる友人機を尻目に、私はマシンガンを構える。

 

 眼下では、勢いのままに駆け下りる猿達と、引き返してこっちに向かってこようとする猿達がぶつかり合って団子になっている。あれではせっかくの機動力も生かせまい。

 

 そこに向かって、私はマシンガンの引き金を引いた。

 

 ドラムマガジンの大容量弾幕が、敵の群れに叩き込まれる。

 

「…………!」

 

 反動は結構きつい。それでも気持ちバースト射撃を心掛ける事で、照準の跳ね上がりは押さえられる。降り注ぐ弾丸が次々と敵に風穴を開け、多数表示されるHPバーがごりごり減っていく。

 

「おっと、お前だけに美味しい思いはさせないぜ、っと」

 

 そこで崖上に追いついた友人が隣に立ち、サブマシンガンの引き金を引く。

 

 濃度を増した弾幕に、次々と雑魚は倒れていった。

 

 ややあって、軽くなったドラムマガジンが雪原の上に投げ捨てられる。

 

 弾切れだ。だが、もう引き金を引く必要もない。

 

「うぉーし、敵全滅! まあざっとこんな感じだ、動きは早いしタフだけど、防御力は低いから連射性能の高い武器があれば楽勝。流石に他のゲームで慣らしてるだけあって悪くない腕だな」

 

「まあね。この手のゲームはついこないだまでプレイしてたから」

 

 お互いの健闘をたたえ合っている間にも、ガチャガコとぎこちない手つきで愛機がマシンガンを交換する。さっそくドラムマガジンを一つ使い切ってしまったが、得られた報酬は大きい。

 

 大量の経験値にアイテム、お金。

 

 先のエリアらしく、実入りは大きい。今の一戦で、バーニングスフィンクスを修理してもお釣りがくるぐらいだ。

 

「よぉし、この調子でガンガン狩ろうぜ。見た所機動力もあるし、効率のいい稼ぎ場にいくか! 登るのが大変だけどいいところがあるんだ」

 

「そいつは有難い、是非」

 

「こっちだこっち、ついてこい」

 

 そういって友人が向かったのは、山脈の間、大渓谷の上を飛び越えて進んだ先。崩落した橋のような岩山の上を飛んで渡ると、その向こうには斜面一面に猿型モンスターが群生しているエリアがあった。ここにいる奴ら全員が襲い掛かってきたら一溜まりもないが、どうにもここに居る連中はくつろいでいるというか、ノンアクティブな様子。

 

 刺激しないように距離を置いてさらに上に上がると、まるで山頂を削ってつくったような平地に出た。

 

 そこには数体の雑魚が徘徊しており、こちらは私達を見つけるとすぐに襲い掛かってきた。

 

「ここは俺にまかせな!」

 

 前に飛び出した友人の機体が、軽快に機動しながらサブマシンガンを放つ。弾丸を受けて動きが止まった所に、回転するローターブレードが襲い掛かった。本人が言っていたように、まるで両刃剣を振り回すような動きと共に、回転する刃がメタルインセクトを滅多切りにする。

 

 機能を停止し崩れ落ちる雑魚には目を繰れず、素早くバックステップしながらの射撃で、さらに2体が立て続けに葬り去られた。

 

 傍らにドスン、と友人機が着地する。思わず私は拍手を彼に送った。

 

「お見事。成程、そのブレードを叩き込む隙を作るためのサブマシンガンか」

 

「そういう事、相手の対弾性に関わらずダメージを与えやすい大口径を選んでる。ま、近接武器を好んで使う奴は珍しいんだけどな」

 

「そうなのか? いや、それもそうか」

 

 思い返せば、上位ギルドの勢力戦でもほとんど近接武器は見かけなかった。当然だ、近づいて行って近接武器で攻撃するより、射撃武器で攻撃した方が手っ取り早く効率がいい。

 

「ま、俺だって勢力戦に参加する時のガチ装備は射撃オンリーだけどな。狩りぐらい好きな武器で戦っていいだろ」

 

「まあ、そうだな。ところで、その武器、お前以外に使い手って……」

 

「オンラインの狩場でも他に見た事はないな! オンリーワンだ!」

 

 さいですか。

 

「それより、ほら、おいでなすったぞ! ここ、近くに雑魚のポップ地点があるから、騒ぎを起こすといくらでも向こうからやってくるんだ! 連中、上から飛び掛かるのは得意だが山登りは不得手みたいでな、ほら、そこの崖で詰まってる!」

 

 友人の言う通り、平地の縁、崖の方から次々に猿型メタルインセクトがよじ登ってきている。が、腕を伸ばして平地に這い上がってくるその動きに先ほどまでの俊敏さはない。

 

 モーションの都合か、奴らは一息に平地に飛び上がってくるという事が出来ないらしい。故に、さしてきつくもない段差でいちいちああやってよじ登るモーションを取らざるを得ず……その間は完全に無防備な姿を晒す事になる。

 

 のたのた身を持ち上げるその体に、弾丸を叩き込む。

 

 入れ食いという奴だ。

 

「弾切れになったら言えよ! 前にでてフォローする!」

 

「頼む!」

 

 ビルドロボオンラインで通信プレイするのは初めてだが、Mimizuとは長い付き合いだ。当然ほかのオンラインゲームで遊んだこともある。

 

 息は……正直多少微妙でも、合わない事はない。

 

「弾切れだ、フォロー頼む!」

 

「あいよぉ!」

 

 私の機体がもたもたとドラムマガジンを交換する間に、友人の機体が前に出て猿達と交戦する。マシンガンの弾を節約するために、適切に近接攻撃を繰り出していく。

 

 しかし多勢に無勢、たった一機で突出したMimizuの機体を、前後左右から猿達が包囲し……それを切り裂くローターブレード。

 

 冗談めかして両刃剣みたいだろ、などといっていたが、その動きは扱いの難しい武器を完全に使いこなしているように見える。流石というべきか。

 

「リロード完了、下がれ!」

 

「あいよっ!」

 

 友人が下がったのと入れ替わりで弾丸を叩き込む。つられて足を止めていたメタルインセクト達は、敢え無く連射の餌食となった。

 

「はーっはっはー、この調子で枯れるまで狩りつくすぜ!」

 

「おうよ!!」

 

 そのまま、私達は新しい雑魚が出現しなくなるまで武器の引き金を引き続けるのだった。

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