ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第四十二話 カモシカのような健脚

 

 

 その、はずだったのだが。

 

「ええっと……まじかあ……」

 

 翌日。PCに届いたメールの文面には、次のように書かれていた。

 

『この度は不具合のご連絡ありがとうございます。支援用AI:テレサがお客様のアカウントに添付されている件ですが、これは運営側の不手際になります。こちらの責任ですので、当該AIはそのままご使用して頂いて問題ありません。もし不要でしたら、お手数をおかけしますが設定画面から当該AIサポートの支援を停止してください。この度はご迷惑をおかけし、大変もうしわけありませんでした』

 

 との事である。

 

 つまり、どうやらテレサは引き続き使っても問題ないようだった。

 

「ありがたいし、理想的な対応ではあるけど……」

 

 まあ企業から見た場合、全体の売り上げからすれば一個人に有償サービスを間違って付けた、ぐらいはどうってことは無いのだろう。特にクレームのようなものでもないし、躍起になって取り消して悪印象を与えるより、そのままユーザーに使ってもらってあわよくば宣伝に……と考えるのもおかしくはないか。

 

「しかし、一体どういう不手際でそんな事になったんだろうな」

 

 それだけがちょっとひっかかるが、まあ考えても仕方ない。

 

 貰えるものは貰っておこう。

 

 私はその程度に考えておくことにした。

 

 

 

「ただいまー」

 

『あ、おかえりなさい、ショウさん』

 

 ゲームにログインすると、待ちかねていたかのようにテレサが駆け寄ってくる。

 

 見納めのつもりだった顔がホームに居る事に、なんだかちょっとだけ私は申し訳なさを感じた。雑に扱ってごめんね。

 

『? どうかしました?』

 

「うんにゃ、なんでも。あ、それでさ、ちょっと気が変わったんで、機体を複座仕様にしたいと思うんだけど……乗る?」

 

『いいんですか?!』

 

 単座から複座への仕様変更はすぐに終わる。モジュール式のコクピットブロックを引き抜いて差し替えるだけだ。まあスペースそのものは変わらないのでちょっと狭くなるが、個人的には狭苦しいコクピットの方が安心する。

 

 所謂全周囲モニターってやつはあるけど、あれは正直肌に合わない。色々見えすぎて情報量が過大すぎて集中できないし、そもそも後ろや足元が見えるからなんだというのだ。凡人は足や後頭部に目はついていない。

 

 うぉほん、話が逸れたな。

 

「ほんじゃ、テレサは後部座席に乗ってくれ」

 

『はい、わかりました!』

 

 という訳で、早速複座の前の席に乗り込んで、って。私が先に乗ったらテレサが乗り込めないか。

 

 むむ、意外とめんどくさいなこれ。次からはコクピットが迫り出すようにしないといけないな。

 

「よぉし、出撃だー」

 

『レッツゴー!』

 

 お、ノリがいいね!

 

 そんな訳で、出撃した先は火山地帯。

 

 あいもかわらず、溶けた金属が河のように流れている。周辺に敵の姿が無い事を確認して、ぴょん、とエレベーターから飛び降りる。

 

 今回の主装備はフォトンカービン。そして腰にはプラズマピストルを装備している。驚くべき事に、これらの装備は重量も消費ENもこれまでに比べてかなり控えめだった。精々、実弾武器でいうとバズーカとかスナイパーライフルぐらいの重量であり、特化機を組まなければ装備できなかったこれまでのビーム兵器とは雲泥の差である。ただその分、表示攻撃力も控えめなので、実際にどのぐらいの威力が出るかはちょっと怪しい所もある。

 

 こればっかりは試してみるしかないか。

 

「テレサさん、今日は新機体の性能評価と、手に入れた武器の試射が目的だ。本格的な戦闘をするつもりはないけど、もし危険を感じたらすぐにいってね」

 

『いえ、大丈夫です。ちゃんとお手伝いさせてもらいますね!』

 

「そ、そう?」

 

 背後から帰ってくる明るい声。これまでずっと一人でやってたから、呼びかけに返事が返ってくるのはなんか不思議な気分。独り言とか出来るだけ控えるようにしよう……。

 

 あれ。でもちょっと待てよ。

 

 これってつまり、今、機体を撃破されたら私だけでなくテレサも死ぬって事……?

 

 一応設定的には私も彼女も再生人間だから、死んでもまた拠点で再生産されるだけなんだろうけど……。

 

『……? どうかしましたか?』

 

「い、いんや、なんでもない」

 

 出来るだけ、生きてホームに戻れるように頑張ろう。私はひっそり心に決めて、敵の姿を追い求めて機体を歩かせた。

 

「うぉう!?」

 

 途端、独特な加速度に機体がおもわずつんのめる。慌てて減速して機体を安定させるが、コクピットはガクンガクン揺れたままだ。

 

 なんていうか、あれだ。竹馬? 小学生の頃はまったアレになんとなく感覚が似ている。オートバランサーである程度調整してくれるとはいえ、生身の感覚と歩幅の感覚が違いすぎてズレがある。

 

 ちょっとこれは慣れがいるかもな……そう簡単にはいかないか。

 

「大丈夫、テレ……さっ、さん」

 

『えっと、はい、大丈夫です』

 

「さよけ、それならよかった」

 

 動揺のあまり声が変になった。

 

 振り返った先でばるんばるん揺れていた物を出来るだけ早急に記憶から消し去る。ええいもう、誰だあんな変な設定したの! 古いって、コンプライアンスとかやかましいでしょ今時!

 

「ちょっと機体バランスが独特で苦戦しそうだ。少し揺れるから気を付けてね」

 

『わかりました!』

 

 どうやら当人は気が付いていないらしい。いや、まあ、AIだしそこまでの機微は無いとは思うけど……。いや数字に欲情してどうするんだよ私は……。

 

 色々と複雑な気分になりつつも、操縦桿を手繰って機体を走らせる。

 

 なかなか反応が敏感だ、ちょっと傾けるだけですぐに加速する。スラスターや車輪による加速は等加速でだんだん速度が速くなっていく感じだが、延長した歩幅による移動は動き出しからマックス速度、という感じだ。それが重心移動による利点ではあるのだが、わかっていても少々戸惑う。

 

 またバランスも失いやすく、ちょっと踏み外すとひっくり返りそうになる。これは……バランサーをもっと強化しないと厳しいものがあるな。

 

 普段は意識しない、トップヘビーの不安定さをこれでもかと思い知らされる気分だ。それでも乗っている内に、少しずつ慣れてきて、たったかと機体を走らせられるようになってくる。

 

 そうやって移動していると、後ろの席から警告が飛んだ。

 

『ショウさん、敵の姿を確認しました。10時方向に2』

 

「10時方向?」

 

 ええと、時計版に重ね合わせると……斜め左か。

 

 機体を減速させつつ旋回させると、歩いていた崖の下に湖岸が広がっており、そこにヤドカリが二匹蠢いているのが見えた。危ない、普通に見落とす所だった。

 

「ありがとう、助かる」

 

『いいえ、これもサブパイロットの仕事ですから!』

 

 顔は見えないけど、ふんす、と小鼻を膨らませているのが幻視できそうな、満足気な返事。表現力凄いね。

 

 それはともかく、敵はまだこちらに気が付いていないようだ。

 

 ちょうどいい。新兵器の試し撃ちと行こう。

 

 

 

◆◆

 

 

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