ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第四十四話 霧の工場

 

 回転率が上がれば狩りも楽しい。出来るだけ密集している雑魚はさけて、1~2匹で孤立しているグループを狙う。そのやり方は正しく、弾薬を消費しないビーム兵器の特性も相まって、気が付けば随分奥地まで入り込んでいた。

 

 このエリアのボスらしきものは既に倒したが、テレサを連れてる状態で未知の区画に深入りするのは正直避けたいところだ。

 

 大分稼いだし、ビームカービンの性能も把握した。ここらが切り上げ所だ。

 

「テレサさん、そろそろホームに……」

 

『ショウさん、あれを! 火山地帯が途切れて……あれは、工業地帯?』

 

「え? なんだって?」

 

 テレサの言葉に画面に目を凝らすと、視線を追う様に画面が拡大される。

 

 あれは……確かに。赤と黒で彩られた火山地帯が途切れて……その向こうに広がっているのは……。

 

「鉄パイプ……大きな配管?」

 

 そう。黒い岩の大地に霧が立ち込め、その中からいくつもの配管が溶けた金属のマグマ湖に伸びている。まるで水のようにマグマを吸い上げているそれらの配管は、直径何メートルもあり、まるで列車が通るトンネルのようにも見える。

 

 そんなものが、折れ曲がりながら無数に霧の向こうに見え隠れしている。これまでと違って、明らかに自然の光景ではない。

 

 メタルインセクトの基地だろうか? いや……。

 

「そういえば、山の上には対空砲基地があるって話だったな……」

 

 友人であるMimizuの性格なら、メタルインセクトの巣ならそう言うだろう。となると基地というのは例えではなく、本当に人間が建造したような施設がこの星にはあるという事か?

 

『行ってみましょう! 興味深いです!!』

 

「んー……」

 

 本音を言えば、テレサを未踏破地区には連れて行きたくないが、彼女のサポートが助かるのもまた事実。気まずさと利便性を天秤にかけて、私は結局後者を取った。

 

「少しだけ様子を見て見よう。危ない、と思ったら即座に引き返す、周辺に警戒してくれ」

 

『了解しました!』

 

 速度を落として、慎重に霧の立ち込めるエリアに踏み込む。

 

 しばらく歩くと、足元は黒い地面が見えない程の無数の配管に覆われ、凸凹とした地面が続くようになる。大きな配管、小さな配管、それらが入り混じって這いまわっている様は、まるで機械の内臓の上に立っているようだ。

 

 見れば、ところどころでぼんやりと青い光が人魂のように燃えているのが見える。どことなくプラズマビームの誘導コイルの発光と似ている気がする……配管の内容物を電磁コイルで流しているのだろうか?

 

 あるいは、動力にプラズマを用いているのか。思ったよりハイテクだが、サイズを考えればおかしな話ではない。

 

 しかし、なんだろうな、これは?

 

 霧に包まれた周囲を見上げると、その向こうに何か大きく聳え立つ影が見える。近づいてみると、それは巨大な建物のようにも、柱のようにも見えた。

 

 ……工場?

 

 何つくってるんだろ。まさかメタルインセクトの製造工場じゃないよね?

 

『解析結果でました……ショウさん、この区画では迂闊にコクピットから出ないでください』

 

「? まあ降りるつもりもないけど……なんで?」

 

『この霧は有害な重金属や酸性物質で構成されています。人体には極めて有害……このエリアはどうやら、極めて大規模な工業地帯のようです』

 

 なるほど。イギリスの産業革命時代の惨状を思い出す話だ。

 

 全長10mを越えるロボットが、さらに見上げるような規模の工業地帯。排出される汚染物質もすさまじいものになるだろう……だが、誰が、何の為に?

 

 メタルインセクトではあるまい。人類が、この工業地帯を建造した、という事だろうか?

 

「この工場はまだ動いているのか?」

 

『高度にオートメーション化されているようです。ですが、こちらからのアクセスには応答がありません、システム系統が完全に違うようです』

 

「んー。まあいいか。人間の作った工場というなら敵はいないだろうし……いや、まて。今、霧の向こうで何か……」

 

 ビームカービンを手にする。

 

 気のせいじゃない。

 

 確かに今、白い霧の向こうで何かが動いた。こっちに向かって、走ってくる……。

 

 戦闘は避けられない!

 

『ギギィ!』

 

「ちっ、そんなに甘くないか!」

 

 白い霧の向こうから走ってくるのは、甲虫に似た姿のメタルインセクト。大きなアゴを持っているその姿は一瞬クワガタムシを連想させるが、クワガタはあんなに早くは走れない。見た目からすると、オサムシあたりが近いか? 接近しての大顎での噛みつきが武器と見た。

 

『気を付けてください、この霧のせいでビームの威力は減衰する恐れがあります!』

 

「了解!!」

 

 軽く背後に後退しつつ、彼我の距離を調整する。ひきつけて、ひきつけて……。

 

「今だ!」

 

 バババ、と細いビームの閃光が迸る。それは突っ込んでくるメタルインセクトの甲殻に命中し、黒い装甲を赤熱させて凹ませた。相手のHPバーがぐっと減る……が、倒しきれていない!

 

「こなくそ!」

 

 跳躍して空中から飛び掛かってくるメタルインセクトに、プラズマピストルを抜き撃ち。空中でプラズマビームの直撃を食らった敵は木っ端みじんになって残骸を周囲に降り注がせた。

 

 

 

《メタルストーカー を 撃破しました》

 

 

 

「データは取れたか?」

 

『空中の霧でビームの威力は減衰していますが、100%ならダメージ限界には影響ありません。ただ、どこまで下げられるかは検証が必要かと思われます』

 

「フォトンビームは環境の影響を受けにくいんじゃなかったのか?」

 

 ここに来てただでさえ不利なビームにとってアウェーな環境なんて勘弁してほしい。

 

『受けにくいだけで、全く受けない訳ではないです。この霧が重金属を含んでいるのが恐らくよくないのかと。エネルギーが大気中の金属粒子を通して伝播してしまっているようです』

 

「なるほど。となるとプラズマビームも駄目そうだな。……荷電粒子砲ならどうだろう?」

 

 私の質問に、ちょっと考える気配をおくもののすぐに返事が返ってくる。

 

『もともと荷電粒子砲は大気中では様々な影響を受ける兵器です。多少、有効射程や威力に影響は受けるとは思われますが、他の二種と比べても質量・運動量において秀でた武装の為、相対的な影響は少ないと思われます』

 

「なるほど。試す価値はありそうだな。そうと決まったら、撤退……したいところだが」

 

『周囲に敵反応。複数体に囲まれています!』

 

 泣きっ面に蜂というが、嫌な事は畳みかけてくるものだ。

 

 霧の向こう、工場施設の間で蠢く不気味な影。一つや二つではない。

 

 踵を返し、撤退に移る私。追うメタルインセクト達。

 

 決死の鬼ごっこが始まった。

 

 

 

◆◆

 

 

 

 

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