ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第四十七話 引き金を引いて照準を合わせろ

 

『そ、そんなー』

 

 駄目なもんは駄目。

 

 見た目が見た目だから、あまり顔を突き合わせていると絆されそうだ。とっとと切り上げてコクピットに乗り込む。

 

 モニターに、キャットウォークにしがみついて涙目でこっちを見上げているテレサの姿がちらっと映るが、心を鬼にして無視だ、無視。

 

「よぉし出撃だー!」

 

 という訳で火山地帯の出撃地点に。

 

 まずは手にした武器を確認してみる。

 

 今回装備しているのは荷電粒子砲なのだが、例によって手持ち武器として小型化洗練されている。

 

 というより、他の二つと比べても普通の銃器によく似ている。

 

 見た目は大口径のオートショットガン(ドラムマガジン付き)、という感じだろうか。黒光りするデザインも相まって、キワモンではあるがぱっと見は普通の銃器だ。

 

 まあドラムマガジンに見えるのは円環粒子加速器なのだが。随分小型化したな……まあ理論上、円環型であるなら小型化しても粒子の加速はできるだろう。

 

 早速試し打ちだ。

 

「どれどれ……」

 

 荷電粒子砲の性質を考えるといきなり実戦は厳しい。まずは手ごろな岩に向けて引き金を引く。

 

 引く、が。

 

「あれ?」

 

 弾が出ない。何度かカチカチ引き金を引いてみるがうんともすんとも言わない。一応、引き金を引くと円環加速器が発光するから壊れている訳ではないと思うのだが。

 

「もしかして……」

 

 あえて引き金を引きっぱなしにしてみる。すると、加速器が少しずつ輝きを増し、ウォンゥオンという動作音が聞こえてくる。やがてそれがキィイン、という高音になり……発射。

 

「うぉぅ」

 

 相変わらずの強烈な反動で機体が仰け反る。発射された荷電粒子ビームは例によって拡散しながら広がり、およそ50mほどの範囲の空間と物質を抉り取った。

 

 ヒートゲージは……90%ぐらいか。

 

 それよりも、今の挙動……。

 

「引きっぱなしにして粒子加速させないと発射できない、ってか? また独特の使用感だな……」

 

 その後、何度か試した結果、この武器の仕様がはっきりした。

 

 引きっぱなしでチャージを始めるのは間違いない。だが、ある程度チャージした段階で発射でき、またチャージをずっと維持する事もできない。最初のはチャージ時間維持限界に達したために自動的に発射されたようだ。

 

 勿論チャージ時間が足りないと発射できない。また、チャージ中もヒートゲージが上昇していくため、ある程度ヒートゲージが溜まっている状態だとチャージが終わる前にオーバーヒートする。

 

 一言でいうと。

 

「扱いづらい……」

 

 もともと使いづらかった荷電粒子砲がさらに使いにくくなった感じだ。低負荷になったおかげで取り回しがしやすくなり、敵機にも接近しやすくなったがその代償がこれでは。

 

「あとは威力だな。これだけ使いづらくて他と変わらない、とかだと泣けるぞ」

 

 とりあえず、ヤドカリあたりで試してみようと周囲を見渡すと、いたいた。

 

 少し離れた所で都合よく単機で這いまわっている見慣れた姿。

 

 トットッ、と駆けよっていくと、遅れて敵もこちらに気が付いた。もぞもぞ振り返ってミサイルランチャーの発射準備に入る。本来ならここらでこちらが先制攻撃するのだが、荷電粒子ショットガンの有効射程にはまだ遠い。いっそ、出来る限り近づいて撃つべきか?

 

 弧を描いて発射されるミサイル。その下を潜り抜けるようにして接近するし、背後で爆発するミサイルを尻目に引き金を引く。

 

 チャージ開始、3、2、1……。

 

「ゼロ」

 

 至近距離まで接近し、銃口をヤドカリに押し付けるようにして引き金を離す。

 

 迸った荷電粒子ビームが敵の機体を膨らませ、内部から破裂させるかのように粉微塵に粉砕した。

 

 ガラガラと砕けて飛び散る殻の残骸をよそにヒートゲージを確認する。

 

「一撃か……悪くないな」

 

 本来なら大分先のエリアで手に入る武器だっていう事を考えるとまあ当然の話ではあるのだが。

 

 どうやら荷電粒子ビームは強い運動エネルギーを伴うせいか、ダメージ計算の天井が他の二種よりも高いのかもしれない。まあそれでもリスクに見合った威力かというと首を傾げる所だが。

 

 しかし、最初はどうなる事かと思ったが意外と使い勝手は悪くない。

 

 機動力さえあれば戦闘のイニシアチブはこちらが取れる。強制されるチャージも、思ったよりも制限にならないというか。

 

「とりあえずなんとかなりそう、かな?」

 

 

 

 

 

『ギシャア!』

 

「やかましいわ!」

 

 牙を剝いて霧の向こうから飛び掛かってくるメタルインセクト。その顔に銃口を向けて引き金を離す。

 

 放出された荷電粒子ビームはその頭部を粉微塵に粉砕して、有り余る運動エネルギーはこちらにむかってきていたその躰を反対側に弾き飛ばした。

 

 配管の上をバインバイン跳ねて転がっていく残骸にけっと吐き捨てて、銃口から立ち昇る煙を振ってかき消す。

 

「悪くないな。なかなか使えるじゃないか」

 

 何度目かの襲撃を押し返して、私は周囲に敵がいない事を確認して一息ついた。

 

 見ての通り、荷電粒子ビームの至近距離での直撃ならこのあたりのメタルインセクトも一撃だ。拡散した飛沫を浴びせるのではなく、至近距離から全粒子を直接捻じ込んでいるから、というのもあるだろうけど、流石に2、3エリア先の武器だけあって威力は十分だ。

 

 逆に言うと、同じ条件であったはずのビームカービンやプラズマがイマイチぱっとしない所を見ると……なんていうか、強化が進んだ結果荷電粒子砲に追い抜かれたような感じがする。

 

 最初は一番使いにくいのが荷電粒子砲だったんだけどなあ。

 

「いや、距離を置いて戦えるのはやっぱアドバンテージだし、リスクに見合ったリターン、って事なのかね」

 

 あとは状況の噛み合いもあるか?

 

 仮に、弾速の遅いミサイルとかではなく、普通に銃弾をぶっぱなしてくるメタルインセクトが相手だったら接近するまでにこちらが被る被害も馬鹿にならない。

 

 霧に包まれて視界が悪く、敵も味方も接近戦をせざるを得ないこの環境だからこそ輝いている感じか。

 

「しかし、視界が悪い中で突然現れる敵をショットガンでしばくって、ある種のホラーゲームみたいな状況だなあ」

 

 ちなみに、私はホラーゲームが苦手である。

 

 ちょっとびくびくしながらも先に機体を進ませる。

 

 さらに何匹かメタルインセクトをしばき倒して進んだ先で、急に霧が開けてきた。

 

「おっ」

 

 広がった視界に見えるのは、大きな崩落地点。地面が深くえぐられて、大量の配管がそこで閉ざされてしまっている。中身が全部漏れ出てしまったのか、それとも塞がれたのか、配管からは何もできていない。

 

 あの大爆発地点だ。

 

 思った以上にでかい爆発になっている。

 

「こりゃひでーな……というか、ある意味道が途切れてしまってるような……どうしよ、これ」

 

 ちょっとやそっとで飛び越えられるような幅の崩落ではない。

 

 飛び越える専用のロケットブースターがいるかもしれないな……そう思って下を覗き込んでいると、ある事に気が付く。

 

「あれ? これ……下に空間が広がってる?」

 

 どうやら、地下施設らしきものが爆発の影響で露出しているようだ。

 

 明かりの無い真っ暗な空間……なんだろう。お宝の気配がする。

 

「……行ってみるか」

 

 そういう事に、なった。

 

 

 

 

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