ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
まずは、合体機構の改良である。
まあよく考え直すでもなく、ロケットブースターで飛び上がって合体は失敗だった。機体に無駄に負担をかけすぎる。
なので、もっと地味で確実な合体方法に変更だ。
内容としては、下半身担当の2号機の背中に、滑り台のようなレールを二本、バランサーの左右に配備する。んでもって、干渉を避けるためにバランサーに可動部を増設。
合体する時はこのレールの上に乗って、2号機の上まで移動すればいい。これなら機体に与える負担は最小限で済むはずだ。
問題は反動の方だ。
何かいい方法がないかとカタログを見ていた私は、近接武器の項目で手を止めた。
「パイルバンカー……そうだ、これにしよう」
火薬で杭を打つ、ロボットアニメ定番の浪漫武装だが、本来これは武器として使うものではない。どちらかというと、機材を地面に固定する固定器具とか、そっち系の工事用器具である。その本来の使い方をする事にしよう。
折り畳み式のアームの先にパイルバンカーを装備したものを、ロケットブースターの代わりに機体に装着。ビーム砲の発射時はアームが伸びて、地面にパイルバンカーを突き刺すという寸法である。
上半身を地面に固定する事で、ジョイントを強化しなくとも反動で千切れるという事はなくなるはずだ。
そして、ビーム砲の扱いも変える。
フォトンビーム砲だけでなく、プラズマビーム砲も可動式のアームで懸架する。そして発射時には二種類のビーム砲を機体前面にもっていって、ロックパーツでがっちりと固定する。さっきの実験結果からはそういった問題は見て取れないが、機体の固定を万全にすればその分反動は砲身に行くはずだ。ビーム砲がぶれて合成ビームが暴走、大爆発とかいうオチを、今の段階で潰しておく訳である。
私だって学習するのだ。
そうやってあれこれパーツを追加していると、ふと、そのシルエットが見慣れた形に見えてきた。
「なんか恐竜みてーな見た目になってきたな。いっそバランサーをもっと大きく太くして尻尾に、ビーム砲の固定パーツに装甲被せて恐竜の頭みたいにするか。ふふ」
『……あの、それに何の戦術的意味があるんですか?』
「見た目だよ見た目。でも馬鹿にならないぞ、人間って単純だからな。怖い見た目の相手には臆するし、しょぼい見た目の相手には油断する」
そのあたりは何を期待するかだろう。
極端な話、ホラーゲームのボスとしてピンク色の毛玉が出てきたら、多分プレイヤーはそんなにビビらずに果敢に応戦すると思う。でもそれが悍ましい、血で汚れてなんかグロイ内臓とかはみ出してたら、ちょっとビビって及び腰になる……なるよな? 私自身はホラーゲーム苦手で遊ばないから、ああいうのを好んでいる人の心理はイマイチ分からない。
まあともかく、オンラインで他人にあまりちょっかい仕掛けられたくないなあ、と思うなら、可能な限り威圧的なデザインにしておいた方が良い。
理性というのはすなわち、よくわからないが攻撃的なデザインの物体に手を出さないという事なのである。
あとかっこいい機体は乗ってて気分が良い! これは大事である。
まあでも私自身にはセンスがないからカラーリングはいつもロービジか単色なんだけどねー。
「よーし、良い感じに機体が設計できたぞ!」
ぐりぐり3Dモデルを回転させて仕上がりを確認する。
時計を確認すると、もうそろそろ良い時間だ。今から高速建造チケットを使っても遊ぶ時間がない。
今日はこのあたりでお開きにしよう。
「じゃあ、私はそろそろ休む事にするよ。おやすみなさい」
『わかりました。いらっしゃらない間に、稼ぎとかいっておいたほうがいいですか?』
「んー、そうだね。無理しない程度によろしく頼むよ」
2号機のビーム砲は飾りだけど、マシンガンなら装備している。
ここらの雑魚を狩るぐらいなら、あれで十分なはずだ。
テレサに軽く指示を伝えて、私はゲームを終了した。
◆◆
翌日。
仕事の休憩時間にSNSを眺めていると、友人からの通達があった。
「ふぅん。決行日が決まったのか。どれどれ」
どうやら、企業ギルドによる見せかけの辻斬りギルド粛清、その日付が確定したらしい。彼らはその横合いから乱入して一泡吹かせるつもりのようだ。
……大丈夫かな。
それなりに人数が集まったみたいだけど、人が多ければそれだけ秘密も漏れやすくなる。企業側に襲撃を把握されて返り討ち、なんてことにならなければいいんだけど。
「そういや、どこが戦場なんだろ。辻斬りギルドの本部ってどこだ?」
聞いてみると、すぐに答えがあった。
「げ、すぐ近くじゃん」
どうやら、工業地帯の次のエリア、その中央部にあるらしい。
随分と活動拠点に近い。オフラインで遊んでなかったら、私も辻斬りの被害にあっていたかもしれない。なんでこんなとこに……と考えたが、なるほど、辻斬りするなら相手は弱い方がいい訳で、そうなると初心者を狙った方が効率がいい。そして初心者を狩るなら当然、初期エリアに近い場所に拠点を構えた方が楽だ。
それこそ初期エリアの隣とかじゃないのは、目的が企業ギルドへの誘導なら、ガチのニュービーを出撃しては殺される、みたいな事にしてしまうと心が折れてゲーム自体をやめてしまうからだろう。ある程度の、自信が出てきて、かつ、今やめるのは勿体ない、ぐらいに考えるプレイヤーを狙っている訳だ。
やはりよく考えているが性格が悪いと言わざるを得ない。
「んー。でもこれなら、私も参加できそうだな」
いっそ黙ってサプライズ参加してみるのもいいかもしれないな。
ちょっとだけビームでちょっかいしかけるとか。
「ま、とりあえず、機体の仕上がり次第だけどね」
さて、今晩が楽しみだなー。
そういう訳で、帰宅して家事を済ませたら早速ログイン。
ホームに顔を出すと、待ってましたと言わんばかりにテレサが駆け寄ってきた。
『お帰りなさい、ショウさん! 機体はきちんと修理しておきましたよ!』
「お、ありがとう」
どうやら、言いつけ通りに軽く稼いでいたようだ。
ハンガーには多少傷ついた状態の2号機が鎮座しているが、その傷は瞬く間に修復される。
これなら何の問題もない。
「よし、今日こそ合体を成功させるぞ」
『わかりました!』
そして早速、リフトから出撃。
昨日と同じように広場に出た私達は、早速合体フォーメーションを取った。
「レッツ・ドッキング!」
『ドッキングゴー!』
よっこいせ、と膝を折りたたんで膠着姿勢になる2号機の背中から、滑り台みたいなスロープが降ろされる。私の乗る1号機が、キュラキュラ履帯を鳴らしながらそれに昇っていく。
問題なく、2号機の上に覆いかぶさる私の機体。微調整しながら、ジョイント同士の位置を合わせた。
「よし、ぴったりのはずだ。ジョイントを接続する」
床の下から、ガコン、という音と共にジョイントが接続されている。画面の表示が変わり、ステータスモニタが更新される。
合体が完了したら、デッドウェイトであるキャタピラとスロープはパージ。邪魔にならないよう折りたたんでいたバランサーを展開し、機体を起き上がらせる。
ドッキングが完了したら、次はビーム砲の展開だ。懸架アームを動かして、二つのビーム砲を機体前面にもってくる。1号機の胴体正面に増設されたハンガーユニットに、ビーム砲を接続。バイパスが通った事を確認して、懸架アームを収納する。あとは剥き出しのビーム砲を保護する為のカバーユニット、恐竜の頭部を模した装甲版が1号機背面からアームで引っ張り出されてきて、がぽり、と被せられる。
うんうん、良い感じじゃない?
まだ試験段階だからカラーリングはロービジのままなんだけど、そろそろ色も考えとかないとな。赤とかどうだろう。
「よし、よし、よし。各ステータスオールグリーン、今の所、問題は無し……と」
『こちらでも異常は観測できません。どうしますか、ビームの発射実験を早速やりますか?』
「その前に、この状態で運動テストをしておきたい。ビーム一発撃って終わり、じゃないからな。ある程度格闘戦や機動戦もできないと」
一応そのために、マシンガンも装備している訳だしな。
操縦桿を操り、軽く広場を走らせてみる。
「う、お。ちょっとクセが強いな……」
歩幅が広い事による独特の操作感は慣れてきたが、今回はどちらかというと二機が合体している事による質量の増大がクセ強だ。メガフレームの脚部は二機分の質量をしっかりささえていて危なげはないのだが、なんていうか慣性が強い。
重いものは動かしにくく、かといって動き出すと止まらない。そんな感じか。
バランサーを大型化、強化したのは完全に見た目が理由だったが、それで正解だったかもしれない。
「テレサさん、大丈夫か?」
『ちょ、ちょっと揺れが凄いですけど、まだ大丈夫です』
「そっかー」
ううむ。やはり、合体後は2号機のコクピットは排除して完全に一人乗りにした方がよさそうだな。コクピットには小さなエンジンとタイヤでもつけて車みたいにしてみるか? それならテレサもホームに帰るのが楽だし。
ま、それは戻ってから考えよう。
『さて、軽く雑魚相手に実戦テストだ』
ふふふ、果たしてどうなるかなー?