ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第五十八話 咆哮はフリー音源から

 

 霧に包まれた工業地帯を闊歩する、巨大な怪物。

 

 ずしん、ずしんと歩く足の下で、踏みつけられた配管がへしゃげて蒸気を噴き出した。

 

 それを気にも咎めず進軍する私……いやまあ、図体がデカすぎてどうにも気が回らないだけなんだけどね。

 

「お、第一エネミー発見」

 

 霧の向こうにメタルインセクトの姿を確認し、私は早速マシンガンの照準を合わせた。

 

 合体して肥大化した巨体からすると、2号機の腕はなんていうか、位置的にもサイズ的にも肉食恐竜のちんまいお手手みたいである。貧弱そうに見えるけど、装備しているのはちゃんとしたマシンガンだ。火力的には問題ない。

 

 バタタタタ、と放たれる弾丸が、メタルインセクトを蜂の巣にする。ギリギリ1マガジン使い切るか、という所で撃破するが……それに反応して、複数の敵がこちらに向かってくる。

 

 ここからが本番だ。

 

「ふんぬ!」

 

 マシンガンのリロードが終わるよりも早く至近距離に近づいてきたメタルインセクト。それを、巨大な脚で蹴り飛ばす。

 

 いつも通りといえばいつも通りの常套手段。が、規格外のサイズであるメガフレーム脚部は、その蹴りの威力も規格外だった。

 

 せいぜい突き飛ばして距離を取るつもりでの一撃が、そのままメタルインセクトを壁にめり込ませてHPバーを文字通り吹っ飛ばす。砕け散る敵の姿を確認して、思わず歓待の声が零れた。

 

「ひゅー。デカイのは飾りじゃないのね」

 

『背後、別の敵が来ます!』

 

「おっと」

 

 テレサの警告で後ろを取られていた事に気が付く。壁か何かを走ってきたので見落としたか?

 

 後ろに振り返ろうとして、しかしガツン、という衝撃と共に機体がつっかえた。

 

 これは……工業施設に頭と尻尾がひっかかって……。

 

「うげえ、動きづらい!」

 

『敵、攻撃体勢に入りました! 跳躍してきます!』

 

「ええい、これならどうだ!」

 

 テレサの声に合わせて、機体を今度は逆方向に旋回。

 

 大型化したバランサーである尻尾を、勢いをつけて振り回す。それは確かに、背後から飛び掛かってきたメタルインセクトを捕らえると。そのまま勢いのままに反対側の壁へと叩きつけた。

 

 一撃とはいかなかったが、工場の壁にめり込んで動きを停めるメタルインセクト。

 

 私は素早くコンソールを操作し、機体側面に搭載したアームを動かし、パイルバンカーを展開した。

 

「くたばれ!」

 

 そして射出。

 

 可動範囲の広いアームの先端に取り付けられたパイルバンカーが、今度こそメタルインセクトを串刺しにしてトドメを刺した。

 

 周囲に敵がいない事を確認して、大急ぎでバックしてその場を抜ける。広い所まで後退して、私はほっと息を吐いた。

 

「思った以上に動かしづらいな。機体の状態は?」

 

『地形にぶつかったせいで機体各部にイエローシグナル。あとテールバランサーにレッドアラート、機能低下。バランサーはぶつけて使うもんじゃないですよ、もう』

 

「ごめんごめん。問題は山積みだな」

 

 とりあえず、バランサーは強度をもっと確保しないと。あと、機体各部に地形と接触しない為にセンサー増設するかな、接近しすぎたらアラートならすとか。

 

 というか、恐竜の形してるからって、ついついそのつもりで動かしてしまう。実際は繊細な部品の塊なんだから、もっと気を付けないと。

 

「まあ、そのあたりは次でどうにかしよう。んじゃ、機体が壊れる前に、ビーム発射実験に戻ろうか」

 

 ノシノシ歩いて、スタート地点に戻ってくる。

 

 その中央で、機体を低くしゃがませると、機体側面に備わった計四つのパイルバンカーを起動。アームで伸ばしたそれらで地面を貫き、機体をがっちりと固定させる。

 

『固定確認。いつでもいけます』

 

「了解。ビーム砲角度調整、合成ポイント、機体の全面60m。照射開始まで、3、2、1……0。発射!」

 

 トリガーを引くと、ビームのチャージが始まる。光り輝く、青とピンクの閃光……そして、スピーカーから怪獣の雄たけびみたいな音声が響き渡る。

 

『ガゴォオオ!』

 

『なんで叫び声が?!』

 

「当然、かっこいいからだ!」

 

 そして、発射!

 

 正面に向けて放たれる、二種類のビーム。それは指定通りの距離で交じり合って、虹色に輝く光の球を作る。その向こうに伸びる、合成ビームの光の柱……。

 

「む?」

 

 なんだろう。光の球が前回よりも小さく見える。それに、放射される合成ビームの軌道も安定しているようだ。前回は収束率が悪くてかなり広範囲に拡散していたんだが……。

 

 しかしながら、それ以上の事はよくわからない。前がまぶしすぎて、ビームがぶち込まれた場所がどうなってんのかまるで見えない。サングラスもつけるべきだったか。

 

「……あと、やっぱり反動もきついな」

 

 機体がメシメシと軋む音が聞こえる。モニターには、各部関節部がイエローアラートを表示しており、反動の強さを訴えている。特にビーム砲をマウントしたハンガーユニットの負担が大きい。やはり予想通り、想定以上の負荷にビーム砲の砲身が微振動を始めている。が、それを装甲カバーが拘束して押さえ込んでいるようだ。

 

 ふふふ、私ってばかしこーい!

 

 そうこうしている内に、数秒のビーム照射が終了した。ビームの光が途絶え、砲身がけばけばしい光を放って冷却を開始する。固定用のパイルバンカーを引っこ抜いて、機体を立ち上がらせる……あっ、一個取れた。

 

 格闘戦に使った奴か……もっと強度ないと駄目だな。

 

「まあいいや、照射は上手くいった。で、威力の程は……おおっと」

 

 突然、強い突風にあおられて機体がたたらを踏む。何とかこけずに済んだ私だったが、突如響いた警告音に目を白黒させる。

 

「え、何!?」

 

『機体温度が異常上昇中! ラジエーターをフル稼働させてますが止まりません!』

 

「なんで、って、あっ」

 

 咄嗟に目を向けるのは、恐竜の顔を真似た装甲で結束されたビーム砲の銃身。あれだ、反動を抑えるために二つをくくりつけてたから、互いの熱量が干渉しあって爆熱になってるのか。んで、砲身は強力な冷却システムがあるけど、機体はそうじゃないから熱暴走しそうになってる……?!

 

 慌てて装甲版を解除するけど、熱量の上昇が止まらない。

 

 このままだと爆発しちゃう。

 

『すいません、介入します!』

 

 テレサの声と共に2号機の懸架アームが伸びた。それはプラズマビーム砲をがっちりととらえると、ぺいっとハンガーユニットから引き離す。

 

 それと同時に、警告音が停止する。九死に一生を得て、私はほうと息を吐いた。

 

「た、助かった、ありがとうテレサ」

 

『いえいえ』

 

「しかし、これだとビーム砲は発射する時だけ固定して、それ以外の時は距離を置くようにした方がいいなあ。可動レールとか、考えておくか……。とにかく、どうなった? 合成ビームの威力は……」

 

 また一つ改善点が増えた。

 

 キリがないなあ、と思いつつ、私は顔を上げてビームを撃ち込んだ地帯の様子を確認する。

 

 そして、絶句。

 

「……は?」

 

 発射前、私達が立っていたのは工業地帯の真ん中付近、大きな工場の資材搬入広場か何かだった。

 

 平らにならされた地形の向こうには、道路のような道と、その周辺に広がる無数の配管や建物が、霧の向こうに広がってたはずだ。

 

 しかし、今はもう何もない。

 

 地平線の向こうまで続くかのような、一直線に続く灼けた道。それだけを残して、何もかもが倒壊し、溶解し、ドロドロに崩れたガラクタの山と化していた。

 

 立ち込めていた霧も全て消し飛び、青空の下で遠くまでよく見える。

 

 その向こうには、工業地帯を取り囲む壁が見えて……そのど真ん中に、大穴が開いていた。

 

「……え、ナニコレ?」

 

 想像の10倍ぐらいの威力に、私は思わずドン引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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