ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第六十二話 竜の叫びを聞け

 

 

 待ちに待った合体の時間。

 

 頭の中でBGMを流しながら機体の軸を合わせて、後方から突入。リフトを駆け上って2号機の上に乗り、位置を微調整。ジョイントが互いに接続して、バチン、と火花を散らして噛み合った。同時に、シュルシュル、と伸びてきてケーブルが、両者の間で接続される。

 

 ガコン、と音を立てて、2号機の装備していたプラズマビーム砲がジャッキアップされる。それは上半身を構成する1号機の左肩レールマウントに接続。反対側のレールマウントには、1号機のフォトンビーム砲。

 

 さらに1号機の機体上面を覆っていた、恐竜の頭部を模した装甲が前方にスライド、合体形態での頭部になる。この頭部には斥力場障壁発生装置が取り付けられており、敵からの攻撃を防御する。

 

「よし、合体完了。いそいで岩山に向かう」

 

 ステータスは問題なし。各部オールグリーン。私はずっしりとした手応えの機体を踏み出させ、一目散に目的地点へと進撃を開始した。

 

 そう、進撃だ。

 

 二体分の重量、そして頭部の斥力場障壁。この二つが合わされば、初期マップにすぎない森林の障害物など屁でもない。立ちふさがる根を頭突きで文字通り粉砕し、踏み砕き、時々出てくるメタルインセクトは大型ビーム砲やマシンガンで薙ぎ払う。無人の荒野を行くがごとく戦場を蹂躙し、やがて私は目的地にたどり着いた。

 

「ここだな」

 

 森林の勢いが衰え、徐々に枝葉や根っこが減っていく。その先に抜けると、突如として灰色の巨大な壁が目の前に現れた。

 

 斜面どころではない、ほぼ垂直と見まがうような岩壁だ。

 

 上を見上げると、高すぎてモニターに頂上が写らない。あからさまな、隔壁としての地形。これは流石に、飛行機体であったとしても、飛び越えて進むのも難しい。

 

「よし」

 

 マップをよく見て位置関係を確認すると、私は早速砲撃形態に入った。

 

 コンソールを操作し、ビーム砲をレールに沿って前方でスライド。同時に、頭部装甲を大きく顎を開くように展開し、その左右から回り込んだビーム砲砲身がドッキング。それを上下で挟み込むように固定。

 

 ……あれから何度も試射をして、いくつか発覚した事がある。

 

 合成ビームは、二つの粒子の干渉させ方で、発生の仕方が変化する。角度をつけて、ぶつけ合わせるようにして発生させると合成ビームは拡散し、広範囲に降り注ぐ。逆に角度をつけず、並行に溶け合わせるように照射すると、ビームはまっすぐ飛んでいくし、反動も小さくなる。

 

 最初に撃った時は、メガフレーム胴体の左右ジョイントから角度をつけてビームを干渉させるという、恐らく最大限反動が大きくなる形で撃ったから胴体が反動でもげた。逆に二回目は、比較的角度が浅かったので反動も小さく済み、ビームも比較的まっすぐ飛んだ、という訳である。

 

 なので、このぴったり並列に重ね合わせた状態が、合成ビームの発射形態としては一番適切だ。

 

 ただし問題がある。

 

 結局甚大な反動は発生するし、何よりも致命的なレベルの爆熱が解決できていない。

 

 仮にビーム発射後、砲身を離して冷却したとしても、そもそも大型ビーム砲が放つ高熱が無くなる訳ではない。そんなものを二発同時発射した事で、機体にもラジエーターの限界を越えた熱が溜まってしまうのだ。

 

 テレサの見立てだと、撃てるのは三発。

 

 それ以上は、機体か砲身が熱暴走して爆発する。一応、緊急分離によって熱量を2号機に押し付けて離脱する事は出来るが……。

 

「ま、やるだけやってみるか」

 

 照準を、眼前の岩壁に合わせる。果たしてこれを、合成ビームは抜く事が出来るのか……勝負!

 

「合成ビーム……発射!」

 

『ゴガアアアア!』

 

 並列に放たれた二つのビーム。それが、互いに引き寄せ合う様に、螺旋を描いて交じり合い七色の閃光と化す。岩壁を貫く虹色の光線……視界が光に包まれるなか、モニターが自動的に遮光、輝度を調整する。

 

 みるみる溶けていく硬い岩盤。やがて数秒の照射が終わった時には、ドロドロと真っ赤に溶けたマグマの河と、反対側から光の指す長いトンネルがそこには出来ていた。

 

 ぶしゅうう、と白い蒸気を吹き出しながら、機体が通常状態に移行する。真っ赤に灼けた砲身を機体左右に分離、隔離しつつ、頭部装甲が閉ざされる。

 

 機体のステータスはイエローを表示しているが、時間経過である程度は回復するだろう。ラジエーターはちょっち悲鳴を上げているが、まだ機体温度は危険域ではない。

 

 それよりも、目の前のトンネルだ。

 

「おぉー……やれるもんだなあ」

 

 影響激化スキルがあるとはいえ、やはり規格外の威力だ。元々、エネミー以外には見た目通りの威力を発揮していたビーム兵器だが、合成ビームはさらに強烈だ。

 

 もしかすると敵にぶち込んでも威力が出るのかもしれないが……発射時に大仰に機体を固定する必要があるせいで、実戦で運用するのは難しかった。アニメやゲーム、漫画なんかで、アンカーで機体を固定した状態からぶっぱなして当ててるのって凄いんだなあ、と改めて実感するね。

 

「アチアチだけど、通れるかな?」

 

 おっかなびっくり、大穴に身を投じる。念のため、斥力場装甲も展開。時折滴り落ちるマグマの滴を払いのけながら、真っ暗なトンネルの中を歩いていく。足元でマグマを踏んだ足が、ジュウゥ、と音を立てた。

 

 そして反対側に抜けると、そこは……。

 

「おぉー……」

 

 そこに広がっていたのは、まだ見た事のない景色だった。

 

 風光明媚な高原というべきか? マップの構造的には、砂鉄の荒野、そしてその先にある山岳地帯を越えた先にあるマップだ。本来なら私の機体ではまだまだたどり着けない場所だが、ショートカット大成功だ。

 

 本当ならのんびり観光と勤しみたい所だが、今日の目的はそちらではない。

 

 マップを広げて、私は友人に教えてもらった辻斬りギルドの本部の位置を確認し、ルートを設定する。

 

「んーと、ここをこうして、ここからいけば……多分、戦場の裏に出られるな」

 

 いつまでもここにいてメタルインセクトに絡まれても事だ。

 

 私は急ぎ足でその場から移動を開始した。

 

 そして、恐らく事前に雑魚狩りがされていたのだろう、大して敵に遭遇する事もなく、私は戦場の裏手、ちょっとした高台に回り込み、そっと頭だけを出すようにして戦場を見下ろした。

 

 普段であれば、高原植物の生い茂るのどかな丘陵……しかしそこは今や、複数の勢力が入り乱れる戦場と化していた。

 

 主な勢力は三つ。

 

 一つは向こうに見える高台の上に聳え立つ要塞のような拠点と、そこから出撃してくる無数の機体。トゲとか角とか、やたらヒャッハーな感じの外見が目立つそれらの機体は、皆一様に交差した刀のエンブレムをつけていた。彼らが悪名高い辻斬りギルドの構成員で間違いない。

 

 もう一つは、それとは逆に整然とした、同じようなデザインのパーツで固められた機体の集団。多分、こちらが企業ギルドの差し向けた精鋭という奴だろう。複数のデザインラインがあるように見えるが、恐らくそれは複数の企業の合同軍だからか? カラーリングも違う。鋭くて細い、先進的な感じのデザインで固めた青い部隊と、分厚く野暮ったく実戦向きといった感じの茶色。そして丸くて玩具みたいな感じの緑色の部隊、大きく分けて三種類か。企業にはあまり関心がなかったのでどれがどれか分からないけど。

 

 そして最後は、その二つから攻撃を受けている勢力。こちらはカラーリングも武装もてんでバラバラ、エンブレムすらも統一感がない。ただ全員がガチ装備で、数に勝る辻斬りギルドと企業合同軍相手に必死に食い下がっている。あれが恐らく、友人Mimizuが参加した中立ギルドのカチコミ特攻隊だ。

 

 しかし、これは……。

 

「隠すことなく企業と辻斬りが共同戦線張ってるじゃん」

 

 そうなのだ。

 

 明らかにこの二つは手を組んで、襲撃してきた中立ギルド隊を迎撃してる。いや、これ、どうなの? この戦闘シーンを流出させたら、八百長が一発でバレない?

 

 首を傾げながら見ていると、ふと、私は企業ギルドの中に、戦闘に参加しないくせに比較的前線に出張っている、やたらと大きい皿みたいなパーツを回転させてる機体が居る事に気が付いた。

 

 あれって……。

 

「……まさか、電子戦機?」

 

 どう見ても、早期警戒管制機とかが背負ってる、円形レーダーみたいな感じに見える。もしかして……あれでスクリーンショットとか動画とか取ったりされるのを妨害してる?

 

 もしそうならやり方がいくらなんでも汚すぎる。が、考えてみれば辻斬りギルドを利用して中立プレイヤーを企業所属に追い込もうとする連中だった。いくらでも汚い事するに決まってるか。

 

「うわあ」

 

 ドン引きである。

 

 とりあえずこっちには影響ないからスクショ取れるだけとっとこ。

 

 結託の証拠を撮影したので、ある意味これで目的は果たしたが……。

 

「なんか、友人達やばそうだなあ」

 

 流石に数で劣っているので、どうにもならなさそうだ。恐らく、辻斬りギルドと企業が形だけとはいえ交戦をしている所を襲撃して、有耶無耶に乱戦に持ち込む目算だったと思われるが、まさか即座に名目すら投げ捨てて結託してくるとは思わなかったのだろう。

 

 いや、あるいは。

 

 最初から、この討伐戦が犯行勢力をあぶりだす作戦だったのかもしれない。有力な中立ギルドプレイヤーの首を取って、企業ギルドの力を誇示する、あるいは彼らを孤立させる為の狂言。

 

 卑怯者のやりそうな事だ。

 

 ……なんかむかっぱらが立ってきたぞ。

 

 私はそういう、筋の通ってない事が大嫌いなんだ。

 

「よし。……やるか」

 

 出来るだけ目立ちたくなかったが、思った以上にあくどい事してたお前らが悪いんだからな。

 

 私は機体を合成ビーム発射形態に移行させる。

 

 狙いは……辻斬りギルドの本拠地。その中でも、燃料とか備蓄してそうなタンクが密集してるポイントに照準を定める。

 

 あそこから次々に出撃してくる辻斬りギルドが厄介みたいだからな。まずは、拠点ごと消し飛んでもらう。対物破壊ならビームは十分な威力があるはずだ。

 

「……発射!!」

 

『ガルゴォオオオ!』

 

 迸る虹色の閃光。

 

 無法者たちの居城を貫く光の柱……一瞬置いて、大地を揺るがす大爆発が天を衝いた。

 

 

 

 

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