ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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外伝3 上位企業ギルドの視点

 

 俺達の計画は完璧だったはずだ。

 

 巷に溢れかえる、目的も計画性もない中立プレイヤー達。

 

 そいつらを企業ギルドに誘導し、勢力を強め、最上位で争う天上人達を出し抜くという計画。

 

 あの化け物達に追いつくためには、ただゲームを遊んでいるだけではダメだ。もっと計画的に、資産を、勢力を高めなければ。複数のギルドと密約を交わし、俺達は計画を進めた。

 

 極秘計画“A LOWS”。

 

 そのために数か月の準備と、膨大な資産を消費した。わざわざ、この計画の為だけに辻斬りギルドも作り上げたのだ。

 

 情報漏洩も意図的なものだ。一部の、正義感を振りかざす馬鹿なプレイヤーをおびき出す為にわざと漏らした。

 

 奴らは計画の最後の仕上げだ。

 

 企業ギルドこそが正統で、中立ギルドなんて単なる愚連隊と世間に印象付けるための一芝居。その為の生贄の羊。

 

 全ては計画どおり。連中は最後の抵抗のつもりだろうが、それこそが俺達の狙い。

 

 部隊に紛れ込ませた、情報戦機。コイツらの能力により、連中のモニターに映る映像は欺瞞される。それによって、奴ら自身の視点からも、まるで中立ギルドが辻斬りギルドと協力して企業ギルドを攻撃するように見えているはずだ。

 

 普通の情報戦機は、せいぜいスクリーンショットの阻害をするぐらいだが、それではゲーム機やパソコンの機能そのものによる証拠撮影は防げない。こいつらは、俺達が今回の作戦の為に用意した門外不出の秘密機体だ。発見したのも偶然で、量産体制に入るのにとんでもない出費を強いられたが、その甲斐はある。

 

 そしてその、偽造された映像は今、リアルタイムでオンラインに流している。

 

 中立ギルドの連中が何を言おうと、世論は俺達の味方をするだろう。

 

 それによって、一般プレイヤーの企業ギルドへの誘導は決定的なものになる。すべては順調……そのはずだった。

 

 あの、化け物が現れるまでは。

 

 戦場を貫く、虹色の閃光。

 

 突如として頭上を走り抜けたその光は辻斬りギルドの本拠地を直撃し、備蓄燃料、融合炉を巻き込んだ大爆発を起こした。

 

 それに巻き込まれ、一瞬にして辻斬りギルドという名目で出向していた、ギルドの精鋭部隊は壊滅。さらに爆発の被害で、企業ギルド本体にも大きな被害がでる。

 

 愛機にのって最前線で指揮をしていた俺自身も、それに巻き込まれた。壁のように押し寄せる衝撃波によって機体が押し倒され、高価で繊細なセンサー類がエラーを吐く。

 

「な、なんだ?」

 

『隊長! 緊急事態です!!』

 

 通信は、情報戦機の指揮をさせていた部下からのもの。切羽詰まった口調に、嫌な予感がする。

 

『今の爆発によって生じた電磁パルスの影響で、情報戦システムがフリーズ! 映像が、未加工の状態でオンラインに流されています!!』

 

「なんだと!? すぐにシャットダウンしろ!!」

 

『すでにやってます! ですが、ネット上には中立軍の連中の映像が、今も……!』

 

 思わず己の膝を叩く。

 

 何てことだ。まさか、企業勢力戦で使われるEMP爆弾にも耐える情報戦機の防御システムを突破するほどの電磁障害? 今の攻撃はなんだったというのだ?!

 

『くそ、撃ってきたのはなんだ?! 中立軍の伏兵か? いったい、どこから……』

 

『あ……ああ……た、隊長、アレを……アレを見てください! 部隊後方、5時方向です!』

 

 部下の報告に眉をひそめる。

 

 5時方向? そっちには、プレイヤー機では越えられない大山脈がある。伏兵が居るとしてもそっちから来るなんて……。そう思いながら機体を振り返らせた俺は、確かに見た。

 

 壁のような大山脈を背景に広がる高台。その上に、一機の機体が佇んでいた。

 

 でかい。遠方からでもはっきりと見えるその巨体は、明らかにメガフレーム……プレイヤー機には一つしか使えないはずのメガフレームで全身を構成した、獣型の機体。

 

 長い尻尾を揺らしながら、恐竜のような頭部から光と共に煙を放出するそれ。見ている前で大顎が大きく開くと、その内部に収められていた砲身が分離、機体の左右にレールでスライドするように格納されると、開かれていた大顎が噛み合わされる。

 

 そのシルエットは、ある古代生物を否応にでも思い返させた。

 

「……ティラノサウルス型のメタルインセクト!?」

 

 馬鹿な、そんなものは聞いた事がない。

 

『まさか……最近噂の、未確認レイドボス?!』

 

「馬鹿な、あれは単なるうわさ話の筈だ!!」

 

 確かにその話は耳にしていた。森林に現れた謎のスナイパー、マグマ地帯に現れた謎のフロート機体。だがどちらも、詳細は分からないが通常プレイヤーでもやれない事はない。再発見されていないこともあって、どこかの物好きが一発ネタにチャレンジした、そう企業ギルドは判断していたが。

 

 だが、今のは。

 

 今の、基地を一撃で消滅させた超威力のビーム、あんなものはプレイヤーではありえない。それにあの機体は、明らかにプレイヤー機がカスタマイズして作れる規模を遥かに超えている。

 

 まさか、本当に……本当に、未確認のレイドボス?!

 

『く、くそ! 撃て、撃てー!』

 

『所詮、このあたりに出現するレイドボスだ、たかが知れてる! これだけの数の集中砲撃を受ければ……!』

 

 部下達が独断で反撃を開始するが、それを止める必要は感じなかった。

 

 彼らの言う通りだ。例えレイドボスといっても、こんな脱初心者程度のマップに出現するならたかが知れている。超威力のビームをもつならなおさらの事、耐久力は低いはず。

 

 中盤エリアのレイドボスでも数分で削りきるだろう圧倒的な弾幕が降り注ぐ。その攻撃の前に、謎のレイドボスが合えなく撃破される様を俺は想像した。

 

 だがそれは幻想だった。

 

『ば、馬鹿な……攻撃が効かない!?』

 

『斥力場シールド!? こっちの攻撃が、全部防がれて……?!』

 

 だが、爆発の煙から姿を現した奴は、全くの無傷だった。

 

 継続して降り注ぐ猛攻をそよ風のように受け流しながら、奴はその場に佇んでいる。その周囲の空間が衝撃に揺れているのを見て、その絡繰りを看破する。

 

 斥力場障壁。

 

 確かにそれなら、あれほどの猛攻も防げるだろう。だがあれは尋常ではないサブエネルギーを消費するはず。そんなものを長時間展開できるなんて……。

 

 ぞくり、と過去のトラウマが蘇る。

 

 あの、高射砲攻略ミッション。最精鋭、最新の装備を用いて挑みながら、手も足も出ず逃げかえる事すらできなかった、圧倒的敗北。

 

 雷鳴の中に佇む、巨大な長虫。こちらのあらゆる攻撃を、装甲に触れる事なく弾き返す、現状攻略不能とすら言われたレイドボス。

 

 まさか。

 

 奴は、あれと同格だとでもいうのか!?

 

 混乱に呆然とする。だが俺達に、いつまでも棒立ちしている自由は許されなかった。

 

『た、隊長、中立軍の連中が……!』

 

「な、何!?」

 

『奴ら、こっちに突っ込んできます!!』

 

 見れば、さっきまで劣勢だった中立軍の連中は、もはやなりふり構わずこちらの陣営に深く食い込んでいた。殴り合うような距離で引き金を引き、自ら進んで敵の前に身を投げ出す。

 

 同士討ちを恐れて発砲を控えた結果、敵はもう引きはがせないほど深く陣に食い込んでいた。

 

「不味い……!」

 

 これでは数の有利が生かせない!

 

『けっ、誰もいかないならあのレイドボスはこっちで貰うぜ!』

 

『あっ、こら勝手な……!』

 

 さらに、一部の腕利きが独自判断で戦場を離脱する。狙いはあのレイドボス……馬鹿め、数機程度で何とかなる相手か!

 

 高台の向こうに身を引いたレイドボスを追って、3機の高機動型が飛び込んでいく。それから僅かな時間で、そいつらの信号は途絶した。

 

 言わんこっちゃない!

 

「おのれ……むっ!!」

 

『よう! お前が指揮官か!』

 

 はっと我に返り、咄嗟の所で眼前に迫る敵機体の攻撃を受け止める。

 

 極端な高機動型……左手にプロペラのようなブレードを備えたソイツは、俺が攻撃を受け止めたとみるや否や素早くバックステップ。周囲の味方にショットガンの猛打を浴びせて混乱を助長する。

 

 さらに回転する刃を振り回して大暴れ。馬鹿みたいな装備だが、確かにこの状況だと有効だと認めざるを得ない。

 

 そもそも、少数で多数に突っ込んでくるのが常軌を逸しているのは置いておく。

 

「貴様ら……! 状況が分かっているのか?! このままでは、俺達も貴様らも、まとめて全滅だぞ!?」

 

『望むところよ! さっきまでコッチだけが全滅しそうだったんだ、道連れにできるなら万々歳だね! 少数勢力なめんな!』

 

「馬鹿め……!」

 

 この戦闘狂どもめが!

 

 歯ぎしりする俺の視線、ふとそれが目に入る。

 

『おーい、ティラノ野郎。こっちだこっちー』

 

 何を考えているのか、挑発するようにレイドボスに向かって手を振る中立軍の機体。

 

 馬鹿、そんな事したら……。

 

『グルルゥ……』

 

「あ、ああ……」

 

 高台から姿を現したレイドボスが、挑発に応じるように動きを見せた。大きく足を開いて機体を固定し、上下に裂けんばかりに大顎を開く。その内部に、左右からスライドしてきた砲身が収まってドッキング、顎が降ろされて固定する。

 

 砲身に、青とピンクの光が満ちていく。

 

 次の瞬間、放たれたビームは融け合うように融合し、虹色に輝く閃光になって部隊の最後方へと突き刺さった。モニターの中から、友軍反応が消しゴムで消すように消えていく。

 

 そのまま薙ぎ払われるビームが、目の前に迫ってくる。

 

「ま、まだだ……!」

 

 俺の機体は耐久性に優れた重量級。ダメージもまだほとんど受けていない、ビーム如き、一発なら耐えられるはず!

 

 そう信じて機体に防御態勢を取らせた直後、オーロラのような輝きが視界を埋め尽くした。

 

 全てが。

 

 泡のように溶け崩れていく……。

 

「馬鹿な、この俺が……こんなところで……?!」

 

 

 

 

 

 

 

《“■■■■■■■” に 撃破されました》

 

 

 

 

 

 企業ギルドと辻斬りギルド、そして中立ギルドの大部隊を、もろとも壊滅させた謎のレイドボス。

 

 ついに、リアルタイムでオンライン上に暴露されたその謎の存在に、ビルドロボオンラインの全ユーザーは燃え上がる事になる。

 

 文字化けしていた機体名から、運営の没データが何らかの形で流出したのでは、あるいは外部からのクラッキングなのでは、という憶測も飛び交ったが、運営からはそれについて具体的な返答もなく。

 

 ただ一言、新たなるイベントについて公開されたのみであった。

 

 

 

 

 

 “第一回 ビルドロボオンライン全ワールド大戦 開催決定”。

 

 

 

◆◆

 

 

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