ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第六十六話 砂浴びする翼

 

 

 空中で姿勢制御を失い、墜落した愛機。

 

 なんとか地上に不時着したものの、その実態は墜落となんら変わらない。

 

「うひぃ。なんとか助かったか……」

 

 まだ爆発四散していないなら勝ちだ。軋む機体を立ち上がらせると、周囲は高い壁に覆われていた。

 

 いや、違う。

 

 これは壁なんじゃなくて、こっちが埋まってるんだ。

 

「マジか」

 

 振り返ると、スロープのような滑走痕。どうやら、斥力場装甲で地面をガリガリ削りながら地面にめり込んでいった状態らしい。このありさまでも機体を守り抜く斥力場装甲の防御力は大したものだが、流石にサブエネルギーが底をついた。プラズマジェットエンジン用のタービンも微量ながらサブエネルギーを使うしね。

 

 プラズマ機関を冷却中だから、ある程度は回復するとは思うけど……。

 

「確か、他の武器スキルは高度変化とか、着地衝撃とかでサブエネルギーが回復するスキルが手に入るんだっけ。そっちも取ったら併用で回復量も増やせるかな?」

 

 そんな皮算用をしながら、えっちらおっちら地上に這い出る。

 

 外は一面の赤錆の荒野。ただスタート地点よりも風が強く、大気に赤い粒子が漂っている。ここでタービンを回転させたらエンジンが破損しそうだ。

 

「まあ、ロケットブースターで高度を稼ぐから問題ないな」

 

 こういう時、純粋な内燃機関であるロケットは本当に潰しが効く。まあ燃料消費が激しすぎて一瞬で燃え尽きるのが難点だけど。

 

「さて、と。……敵さんのお出ましか」

 

 周囲の地面に渦巻く流砂のエフェクト。その下から姿を現すのは、無数のサソリ型のメタルインセクト。墜落後、しばらく動けずにいたのが静止判定になったらしい。

 

 ただ、以前に比べればさほどではない。やっぱりあの時はおかしかったのか。

 

「まあ、少ない訳でもないけど」

 

 ぱっと見、5体ほど。これ以上の増援があるかは不明だが、とにかく今はこれを凌がなければ。

 

「とりあえず……くらえ、バルカン!」

 

 正確にはマシンガンだけど。

 

 胴体に内臓されたマシンガンが火を噴き、正面の敵を粉微塵にする。やはり極端な軽量化の為に耐久力は低い。

 

 だが数は多い。さらに二機の敵を撃破する間に、一機の接近を許してしまう。回避行動に移るが、足場の不安定な砂地は思った以上に動きが鈍くなる。

 

 計算が狂い、振動カッターの一撃を受けてしまう。

 

「くそっ!」

 

 咄嗟に足で突き放し、マシンガンを撃ち込んで撃破する。あと一匹……不意に背後からの衝撃が機体を襲った。

 

『ギシシ』

 

「背後から!?」

 

 バックモニターに蠢く足がちらっとだけ映っている。慌てて機体を旋回させて振り払おうとするが、敵はしっかりしがみついてきて剥がれない。そうこうするうちに、振動カッターが機体を背中から解体する音がし始める。HPが目に見えて減っていく。

 

「だったら!」

 

 ロケットブースターのスイッチを押し込む。上空に飛び上がる勢いで振り払う、そう考えたのだが……。

 

「あ、あれ?」

 

 押しても押してもうんともすんとも言わない。

 

 ステータスモニターを確認すると、機体に外付けしていたロケットブースターの表示が真っ赤に染まっていた。どうやら、さっき一撃食らった時に損傷したらしい。

 

 え、どうしよう。

 

 残っているのはプラズマジェットエンジンだが、あれはタービンを十分に回すには速度がいるし、この砂塵塗れの環境で回したら一瞬で壊れてしまう。

 

 万事休すか? いや……。

 

「タービン回さなくても、ある程度の推力なら……!」

 

 オプション画面からタービンをOFFにして、トリガーを引く。熱による空気の膨張、飛行するだけの推力が得られなくても機体を回転させるぐらいの勢いは得られるはずだ。

 

 腕を互い違いに傾けて、噴射するビームの尾で地面を焼く。さっきとは逆に、意図的に機体を高速回転させる!

 

「と、ん、で、けぇー!」

 

 視界がぐるぐる、身体もぐるぐる。プレイヤーのHPもちょっとずつ減っていくが、バックモニターに映る足が少しずつ離れていく。

 

 直後、機体にしがみついていた何かが引きはがされて、バランスを失った機体が前につんのめる。慌てて体勢を立て直して振り返ると、砂地にひっくり返ってジタバタしてる敵の姿があった。

 

「バイバイ!」

 

 容赦なく全力でトリガーをひく。過剰なまでの猛射撃がメタルインセクトを粉砕した。

 

 敵の全滅を確認し、ふぅ、と息を吐く。

 

 ……増援はないようだ。なんとかこの場は乗り切った、が……。

 

「ボロボロだな。一旦、ホームに戻るか」

 

 今日の探索はここまでだな。いや、いう程探索していないんだが。

 

 まさか、推進器を二つに増やすだけでこうもコントロールが難しくなるとは。環境もあまり向いてないし、別の方法を考えるべきかも。

 

 そう考えて身を休めていると、ふいにふわりと機体が傾いだので慌てて操縦桿を引いて姿勢を正す。

 

 なんだ? 足元が崩れたにしては妙な感触だった。

 

 と、いうか……これ、もしかして。

 

「……あれ? なんか……浮いてる?」

 

 そう。

 

 よく見たら、機体の足先が、地面からほんの僅か浮き上がってふよふよしている。周囲の砂地には、強い風が常に吹き付けるように波紋が刻まれ、機体を中心に砂地が水面のように波打っている。見れば、両腕のプラズマジェットエンジンの噴射口から揺らぐような熱気が噴き出して、地面を押して機体を持ち上げているようだった。

 

 そうか。さっき自分で考えた事だ。飛行には及ばずとも、プラズマ核融合炉の発する甚大な熱量はある程度の反作用を生む。つまりこれは……。

 

「……ホバー移動、って事?!」

 

 ぴこーん。

 

 私の頭の中で、新しいアイディアが閃く音がした。

 

 

 

◆◆

 

 

 

 アイディアが思いついたら善は急げ。

 

 全速力で帰り道を急ぐ。

 

「いっそげいっそげ、戻れ戻れー!」

 

 途中でオアシスとか宝箱的なものとか新しいメタルインセクトとか見えたけど、無視だ無視!

 

 大急ぎで工業地帯のゲートを越えて、息堰切らせてホームに飛び込む。

 

『あ、おかえりなさい、ショウさん。探索はどうでし……』

 

「ごめん話はまたちょっとあとで!」

 

 挨拶もそこそこにカスタマイズ画面に飛び込む。

 

 呼び出すのは、もう長い付き合いになるメガテリウム脚。

 

 こいつの問題だった機動性を、ついにどうにかできるかもしれない。

 

 んでもって、採用するのはプラズマビーム砲の強化型……あとついでにそうだ、マシンガンも採用する事にして……よし! いけそうだ!

 

「ふはははは、いける、いけるぞ!」

 

 いい感じに新しい機体が組めそうだぞ!

 

 あとは1号機をバラすかどうかだけど、こっちはバランサー強化しての飛行能力を引き続きテストしたいから、2号機! 合体ロボの下半身だったこいつを初期化して、一から組み直して。

 

「これを、こうして、こうやって……よし、建造開始!」

 

 たちまち作業用アームがハンガーの中でバチバチ言い始める。

 

 作っておいたレンタルハンガー! これで、明日には飛行型と新しいコンセプトの機体、両方がテストできる訳だね。

 

 ふふふ、たーのしみー!

 

 ハンガーを見上げて悦に入っていると、背後から小さな囁き声がした。

 

 

 

 

 

『あ……私の機体……』

 

 

 

 

 

 あっ。

 

 振り返った先では、テレサが悲しそうな顔で、解体されていく自分の機体を見上げていた。

 

 …………。

 

 ご、ごめんね……。

 

 

 

◆◆

 

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