ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第六十七話 鉄のスカート翻し

 

 まあそういう訳でテレサに悲しい顔をさせる事になってしまい、罪悪感に苛まれたままログアウトした翌日。

 

 私はきまずーい顔で、ホームに再び戻ってきた。

 

「た、ただいまー……」

 

『あ、ショウさんお帰りなさい!』

 

 私がこっそーり、と顔を出すと、とてとてと走ってくる金髪赤目の美少女。相変わらずの様子の彼女からは、こちらに対して何か含むところは見て取れないが……。

 

『? どうかなさいましたか?』

 

「ああいや、その。昨日の事はごめん……ね?」

 

 私がそういうと、テレサの笑顔がピシリと固まった。

 

 どっちだ?

 

 取り繕っていただけなのか、記憶を思い返して処理中なのか、どっちなんだ? コメントに困る反応はやめてくれ。

 

『え……ええと。まあ。その、お気になさらず……』

 

「そ、そう?」

 

『私はあくまでその、ショウさんのご厚意で機体に乗せて頂いているだけですので……ええ。文句をいう視覚などありはしませんので……ええ……』

 

 目を伏せて、悲しさを押し隠しつつも気丈に振舞うテレサ。この健気な仕草が開発の狙って組んだモーションだというなら、きっとソイツは女を泣かせまくっている酷い男に違いない。なんでこんなに情感籠ってる仕草をAIが出来るんだよ。

 

 とてつもなく気まずい気分を味わいながら、私はなんとか話題の方針転換を試みた。

 

「とっ、ところで、機体の方は仕上がってる?」

 

『あっ、は、はい! こちらにどうぞ!!』

 

 ハンガーの前に向かい、機体を確認する。

 

 1号機は昨日とそんなに大きな違いはない。損傷を修復した上で、背中に大型のバランサーを二枚、唾さのように生やしている。機能的にはこれである程度安定性を担保できているはずだ。

 

 だがそれよりも注目するべきは2号機である。ハンガーの中には、ずんぐりむっくりとした重量二脚の機体が収まっていた。カラーリングは勿論、デザートカラー。

 

 今回、脚部は魔改造せずにそのまま利用し、その積載量を生かして重装パーツで固めてある。プラズマビーム砲はバックパック内部に搭載し、砲身が胴体を貫通する形で前方に突き出している。コクピットは右胸にあり、分厚い耐熱素材で保護しているのでいつぞやみたいに発射と同時に焼け死ぬ事はないはずだ。そのバックパックの下には、機体の後ろ半分を構成する巨大なスカート。ホバークラフトを半分に切ったような形状のそれは、さらに砂塵フィルターを組み込んだ吸入ファン及びに左右に装備したプロペラとセットになっている。

 

 そう。ホバークラフトは吸い込んだ空気の圧力で機体を浮かすが、こいつは吸い込んだ空気を圧縮した上でプラズマビームの熱で膨張させ、それによって機体を浮かす……つまり、重装ホバー機なのである!

 

 ほらあるじゃん、有名な黒い奴!

 

 三機でコンビネーション攻撃しかけてくる的な!

 

「おぉー、良い感じじゃん良い感じじゃん」

 

『機体を飛ばせるジェットエンジンの推力を、ホバリングに使用するんです? 不思議な事考えますねえ……でも確かに、荒野は平坦な地形が続くし、ところどころ足場が悪くて設置圧の高い脚部だと沈み込んでしまうし、ありかもしれませんね……』

 

 なるほどー、と考え込むような仕草をするテレサ。いや、悪いけど、そこまで考えてなかった。

 

 作れそうと思ったらもう一直線だったからさ……。

 

 あとは武器にバズーカを使えれば一番よかったんだけど残念ながらスキルツリーを全く伸ばしてなかったのでそれっぽいものは作れなかった。代わりに、腰回りに初歩的なハンドグレネードを装備して、主要武器はマシンガンである。

 

 まあこれはこれで……アリ! かな?

 

「それじゃあ早速出撃してくるよ! 留守番よろしくー!」

 

『あ……っ。……はい、どうぞお気をつけて。無事のお帰り、願っています』

 

「よーし、出撃だ!」

 

 

 

 という訳で、工業地帯のホームから出発である。

 

 この光景にも見飽きてきたので、荒野のホームも早いとこ確保しないとな。

 

「まずは普通に歩いて、と」

 

 ガション、ガションと床の上を歩くが、その動きは懐かしくて涙が出るぐらいに緩慢である。工業地帯のゲートから荒野に出るまで、それだけで10分ぐらいかかりそうだ。

 

 やっぱこの脚部罠だよな……。中盤ぐらいまでいっても積載量がトップクラスなのは有難いんだけど。

 

 懐かしい脚の遅さを堪能した上で、さっそくホバー機能の実験だ。

 

 この広場は地面が硬いうえに平たい。テストにはもってこいだろう。

 

「とりあえず、適当に狙って、と」

 

 胸部プラズマビーム砲を、適当な煙突目掛けて発射する。青白いビームが放たれ、直撃を受けた煙突は被弾部分が真っ赤に変色。その部分から崩れるようにへし折れた。

 

 ガラガラガラ、と崩れ落ちる工場施設はほっといて、吸入ファンを起動。周囲の空気をスカートの下に送り込む。

 

 すると……。

 

「おっ、浮いた浮いた」

 

 ファアアン、と地面に風を巻き起こしながら、重量級機体が小さく浮かび上がる。地面にギリギリ擦れるか擦れないか、といった感じか。

 

 とりあえずホバーが機能しているのを確認して、プロペラを回転させる。風の流れにおされて、ふわー、と巨体が横滑りを始めた。

 

「はっはっは、これはおもしれー」

 

 すいー、っと、すいーっと。氷の上をすべるように流れていく重量二脚の機体。ふんばりが効かなくてこちん、こちんと障害物にぶつかったりするし、ちょっと機体を傾けると足の裏が床に擦れて火花がでたりするが、少なくとも歩くよりはずっと速度がでてる。

 

 それに思ったより、地形の凹凸に強い。広場を出て配管がのたうつ地面の上を通過してみるが、時折こすれて減速する以外には大きな問題は感じなかった。

 

「一応、ゲーム的な補正はかかってる感じか。あるいはプラズマ炉を用いた熱エンジンが、思ったよりも強力なのか」

 

 そうこうしている内に、プラズマ砲の冷却が完了する。熱膨張が停止し、ギギィ、と軋む音を立てながら機体の足が地面と擦れる。

 

 ホバーが使えなくなると、またもとの鈍足に逆戻りだ。

 

「短時間で長距離移動したいなら、ロケットブースターの併用は必須か。砂塵の多い環境でなければ、プラズマジェットエンジンと併用して推力を得るのもありだな」

 

 重装機体に移動能力を付与する手段としては悪くない。機体そのものの装甲も結構厚くできたから耐久力もあるはずだし、最悪ホバー機能は目的地までの移動手段として割り切ってもよさそうだ。戦闘中は、被弾衝撃もあるし、プロペラを破壊される恐れもある。

 

 考えなければならない事は多いが……新しい事を試すという楽しみの前では些細な事だ。

 

 俄然やる気が出てきた。

 

「くくく、楽しくなってきた」

 

 ゲートまでの僅かな距離を歩き、解放されたシャッターの向こうには荒野が広々としている。

 

 私はご機嫌で地平線に向かってプラズマビームを放ち、展開されたホバー機能で一路まだ見ぬエリアに向かって機体を滑らせた。

 

 

 

 

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