ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

72 / 97
第六十九話 一寸法師

 

 荒野を徘徊する、チーター型メタルインセクト。

 

 最初こそその機動性に翻弄されたが、慣れてくれば耐久力も攻撃力もさほどではなく、おちついて戦えばそう大した相手でもない。

 

 むしろ、あっちから近づいてきてくれるのだから、考えようによっては良い鴨だ。

 

「おーし、こっち来いこっち来い~」

 

 今も、砂埃を上げて駆け寄ってくる敵二匹と交戦中。

 

 後ろ向きでマシンガンの反動で交代しつつ、敵に弾幕を浴びせかける。耐久力の高くない相手はそれでHPがゴリゴリ減っていくが、ここで仕留めないのがポイントだ。

 

 ある程度の所で攻撃をやめ、わざと距離を詰めさせる。

 

 そしたら、そこでハンドグレネードの出番だ。

 

 ぽいっちょ、と荒野に投げ捨てたグレネードが、こちらとあちらの間で爆発する。愚直にまっすぐ向かってくる敵は自分から爆発に飛び込む形になり、逆にこちらは爆風に煽られるようにして一気に後退。

 

 安全圏まで離脱してから、プロペラ推進でUターン、敵の姿を確認する。

 

 ……こちらを追撃する砂埃が立ち上がる様子はない。

 

「よしよし」

 

 敵の全滅を確認。

 

 安全を確保した所で一か所に留まらないように緩く移動しながら、戦闘中は確認できなかったシステムメッセージに目を通す。

 

《『機関銃スキル』がレベルアップしました! 新たに『移動エネルギー再転換』スキルをゲットしました!》

 

《『爆発物スキル』がレベルアップしました! 新たに『爆発範囲強化』スキルをゲットしました!》

 

「おぉー」

 

 夢中で戦っていたから気が付かなかったが、結構レベルアップしてる。

 

 とりあえずこれで、マシンガンのサブエネルギー回復手段は確保だ。友人と雪山で結構経験値荒稼ぎしてたから、こっちは割と早かったな。

 

 んでもって爆発物は……地味に強い奴だこれ。古今東西、爆発範囲を強化するスキルは実質的な攻撃力強化スキルであり弱かったためしがない。

 

 スキルレベルもそれなりに上がったし、そろそろバズーカとかその類が作れるようになってるかもしれない。ビーム兵器みたいに、新しいスキルを開放しないと武器種が増えない、ってタイプじゃなかったはずだ。

 

「まあ、先のお楽しみという事であえて攻略サイトのカタログには目を通さなかったからな」

 

 こういうのは塩梅が難しいよねえ。

 

 記憶は消せないから、うっかり深刻なネタバレみちゃうとプレイ意欲に影響するし。でも凄く欲しい武器パーツが、この先で手に入るとしっていればやる気になる事もある。

 

「そろそろホームに戻るかな。いや、でももう少し、頑張ってみるかな……」

 

 しばし躊躇ってから、プロペラを再び回す。

 

 資金には余裕があるし、もうちょっと先まで進んでみよう。

 

 すいー、すいーっ、っとな。

 

「……ん?」

 

 と、進んでいった先、地平線に何か妙な違和感を覚えて脚を止めた。

 

 変な例えだが、地平線がまっ平らでなくて、ちょっと凸凹しているような……。

 

 進路を少しだけ変えて、そちらに向けて進んでみる。

 

 進むにつれて風が出てきて、周囲がセピア色のヴェールに包まれ始める。方向感覚が怪しくなる中、それでもマップを頼りに真っすぐ進んでいったその先にあったものは……。

 

「……基地?」

 

 そう。

 

 そこにあったのは半ば砂に埋もれた何かしらの人工物。工業地帯ほど広くはないが、単一の建物というには大きい。言うなれば、拠点とか、前線施設とか、そんな感じの代物だ。

 

 今まで見た中で一番近いのを上げるとしたら、そう、あれだ。

 

 辻斬りギルドの作った基地が、一番近いか?

 

「なんだろこれ……工業地帯みたいな、人類が残した設備が地下に埋もれた? だとしてもなんでこんなとこに」

 

 首を傾げながら周囲をうろつく。

 

 すると……。

 

「……?」

 

 カタカタ、と小さな振動。

 

 最初はホバーの不調か、と思われたそれは瞬く間に勢いを増し、大規模な地震の如く地面が揺れる。こうなるともうホバーどころではなく、私の機体はふらふら左右に振り回されたあげく、傾いて地面にめり込んだ。

 

「な、なんだぁ?!」 

 

 地響きと共に地面が持ち上がる。いや、違う。地面の下にあった何かが、地上に出てこようとしている?

 

 爆発のような砂柱と共に、嵐のような砂煙が襲い掛かってくる。砂塵に飲み込まれたモニターがブラックアウト……ややあって、光が戻ってくる。

 

 身動ぎしてカメラにこびりついた砂を振り払い、その向こうに私が見たものは……。

 

「……わあお」

 

 一瞬、それを私はビルだと認識した。サイズ的には、駅前の企業ビル。通りの向こうに軒を連ねて並んでいるそれと同じぐらいの四角く太く高い柱。

 

 それが、見ている前で動いている。

 

 ぐぐ、と地面から底を持ち上げ、前に進んで、振り下ろされ。地面との接触面は爆撃でもされたかのように土煙が巻き上がり、規格外の質量の激突に水面のように歪む。

 

 それが、いくつも。

 

 目の前で、巨大なビルが何軒も縄跳び競争をしているような異様な光景。その上を見上げると、黒い天蓋のような何かが、私の頭上を覆っていた。

 

 ……そう。

 

 それらはビルではない。“脚”だ。

 

 そしてそれらに支えられて動いているのは、先ほど私が基地だと認識した構造物。

 

 

 

 移動要塞。

 

 それが今、私の目の前で荒野の大地から動き出したものの正体だ。

 

 

 

 

 

 困惑する私の目の前で、移動要塞の中心部にHPバーが出現し、同時にBGMがロック調のボス戦BGMに切り替わる。

 

 つまり。

 

 こいつが、このエリアのボスらしい。

 

「え、ええー……」

 

 正直冗談でしょ? としか思わないが、数秒たっても状況は変わらない。巨大な移動要塞が、ゆっくりと動いているだけだ。

 

「いやいやいやいや、ちょっと待てよ。どうしろっていうんだ」

 

 なんせ相手はデカイとか大きいとか超越して歩く基地である。全長10mのロボットから見ても、探索に時間を有しそうな巨大な設備相手に、一体どうしろと。

 

 自主封印した合成ビームをぶち込んでも、巨大なボスの一部が欠けるだけだと思うんだけど。

 

「何を、どうしろって……うん?」

 

 チカチカ、と基地の一角で光が瞬く。直後、私の周囲の地面が、爆発したように弾け飛んだ。

 

 砲撃?! 狙われてる!?

 

「おわあああ!?」

 

 慌てて射線上から退避し、巨大な脚の影に逃げ込んだ。巨大なビルのような脚は、ちっぽけな私の存在など意にも介さず、地面をしっかり踏みしめると土煙を巻き上げる。

 

 その土煙に塗れながら、私はコクピットで混乱のままに叫んだ。

 

「ど、どうしろっていうんだー!?」

 

 こうして、荒野地帯のボスとの戦いは始まったのだった。

 

◆◆

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。