ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第七十話 突撃、ボスの足の上

 

 

 ずずぅん、と地面を揺るがして踏みしめられる巨大な足。それの巻き起こす砂埃をかぎ分けながら、移動要塞の下部に潜り込む。

 

「一見動きが鈍そうだけど、でかいから実際はクソ早い、ってのはお約束だよあなぁ……!」

 

 プロペラを最大速度で回さないと追いつけない。遅れればこいつの体の外に出てしまう、つまり山ほどあった大砲から鴨撃ちだ。せっかく至近距離に潜り込めたのだからこの状態を維持しないと。

 

 っていうかこれ万が一負けたら近づく所から始めないといけないのか? あの砲撃の嵐をかいくぐって?

 

「考えたくねえな……」

 

 とりあえず、こうして体の下に居れば安全なハズ……いや、本当にそうか?

 

 私がこれの設計者だったとして、そんな明確な死角、そのままにしておくか?

 

 カメラを上にむけて、移動要塞の腹部を観察する。

 

「やっぱりそう簡単にはいかないよなあ!?」

 

 そこにずらりと並んでいたのは、速射砲の類。黒い銃身が旋回しながら狙いを定め、黄色いマズルファイアが瞬いた。

 

 前方の地面が銃撃で掘り起こされる。その弾幕に突っ込まないよう進路を変えるが、これ以上は外にでる!

 

 どうすればいいんだ、これ!?

 

「わっと」

 

 再び地面に振り下ろされる巨大な足。至近距離に振ってきたそれをなんとか回避した私は、そこにふと違和感を覚えた。

 

 ビルのようだ、と思った巨大な足だが、なんかこうして至近距離でみるとますますビルっぽいというか。

 

「っていうか入口みたいなのがある!!」

 

 よく見れば、足の付け根にぽっかりと開いた出入口らしきもの。見ればその上に赤い▼みたいなカーソルが表示されている。あきらかにここから乗り込め、というシグナル。

 

 限界一杯のプロペラに鞭うって速度を上げ、乗り込み口へ一直線に向かう。が、その進路を阻むように降り注ぐ速射砲の弾幕。

 

 ええいままよ、と私は装甲に物を言わせてまっすぐ突き進んだ。

 

「乗りこめー!! って、おわああ!!」

 

 ガキンガキン、と装甲を銃弾が撃ちぬく怖気の走るような衝撃。機体のHPがガリガリと削られ、視界の端で砕けたプロペラの羽が荒野に転がっていくのが見えた。

 

 途端、機体が安定性を失ってブレ始める。それでもなんとかねじ込むようにして、私は機体を出入口に叩き込んだ。

 

 衝撃。

 

 視界が激しく揺れながら、壁か何かに激突してようやく機体が停止する。

 

「……やったか?」

 

 モニターに映るのは薄暗い廊下の光景。しばらくじっとしていると、ぐぐ、っと何か機体が地面ごと持ち上げられるような浮遊感を感じる。

 

 なんとか機体を立ち上がらせ、光の差し込んでくる方に顔を出す。

 

 遥か下に、赤錆の荒野が広がっているのがちらりと見えた。周囲を見渡すと、巨大な建物のような足がうごめいているのと、標的を見失った腹部の速射砲がざわざわとうごめいているのが確認できた。

 

 どうやら、無事に内部に乗り込めたようだ。

 

「よし」

 

 何かの拍子に放り出されないよう、私は顔を引っ込める。

 

「なるほどな、巨大ボスといえば内部に乗り込んでコアをぶち壊す……お約束だ。という事はこのまま進んでいけば、足を通って胴体に迎えるのか」

 

 状況が確認できた所で、奥に向かってのそのそと機体を引きずるようにして歩く。幸いこんなところでも時代はバリアフリーなのか、内部は上にむかって緩やかに傾斜しているスロープ状になっていて歩きやすい。

 

 しかしながら結構な距離がありそうだ。プロペラが壊れてしまったのでホバー機構を起動させても浮くだけで前に進まない、となると素の機動力だよりになるが、これはなかなか厳しいものがある。

 

 こんな所で敵と遭遇したらちょっと大変だが、幸い、今回の機体は重装甲。閉鎖空間ではそれなりに有利が取れる筈。

 

「地下駐車場への呼び出しは必勝法だからな」

 

 古い古い時代の卑怯な戦術を思い出して小さく笑う。

 

 来るなら来い、なんて考えたのが良くなかったのか。

 

 そこで前方、通路の曲がり角の向こうからガシャガシャという音が聞こえてきて、私は機体の足を止めた。やっぱりな。

 

「来るか」

 

 照準をあらかじめ合わせて待ち構える。

 

 万全の準備で迎え撃つ私の前に、ボスの体内を守るメタルインセクトが姿を現した。

 

 骸骨のような、二足歩行のメタルインセクト。それらが手にしてるのは閉所戦闘用のショットガンと思わしき装備。

 

 それらが火を噴く前に、マシンガンの引き金を引く。

 

『ギギギィ!?』

 

「ご苦労さん!」

 

 こういう時の鉄則は、角からできるだけ距離を取る事だ。

 

 余裕があればなんという事はない。現れた数体の敵を蹴散らして、先に進む。

 

「あんまりちんたらしてると、無限に敵が出てきそうだな……」

 

 こっちも残弾には限りがある。さっさと先に進みたいが、ホバー移動用のプロペラは壊れている。

 

 となると……。

 

「こうするしかないか」

 

 機体に後ろを向かせて、壁に向けてビームの照準を合わせる。

 

 発射。

 

 発生した高熱でホバー機構が起動。融けた壁を全力で蹴り飛ばして、後方にスイーッ! 気分はあれだ、コロコロのついた椅子で思い切り滑るアレである。

 

 第一回ホバー競争、開催!

 

 後ろ向きのドライブでちょっと勝手が違うが、重装甲のおかげで壁にぶつかりながら曲がっても機体はなんともない。さすがの防御力、速射砲の弾幕をつっきっても生き残っただけあって、壁にぶつかったぐらいじゃHPはほとんど減らない。

 

「バックしまーす、ってね!」

 

 そのまま勢いのままに、壁を蹴りながらピンボールの弾になったような気分で上を目指す。途中で何体か迎撃のメタルインセクトが出てきたが……。

 

『?!?!』

 

「ストラーイク!」

 

 がしゃーん、と重装甲がボーリングのピンのようにメタルインセクトをなぎ倒す。たぶん量産性とか収納性を最優先でフレームだけのメタルインセクトは、浮き上がって転がってくる重装甲の直撃をくらってバッラバラになった。

 

 マシンガンの弾も節約できて一石二鳥だ。

 

「んで、ここが終点、と」

 

 勢いも衰えてきたところで、行き止まりにぶつかるようにして機体を停止させる。

 

 スロープ状の通路もここで終わりだ。

 

 すぐ目の前では、ゆっくりと動く途方もなく巨大なモーターのようなものが見学できる。この脚部の関節部だろうか? これだけのサイズの物を稼働させるとあって、モーターのサイズも尋常じゃない。冷静に考えると、このサイズの物体が動くと関節への衝撃とか負担とか半端じゃないと思うのだがモーターの軸が単分子か何かで出来ているのだろうか?

 

「プレイヤーでこういう巨大構造体を動かすのは無理なんだろうなー」

 

 ゲーム的補正がかかってないとそもそも自重でつぶれそうだ。

 

 これを壊せば、ある程度ボスにダメージを与えられたりするだろうか?

 

「……うーん。今はやめとこ。動かなくなった脚をパージとかされたら打つ手がなくなっちまう」

 

 もしかしたらそれを繰り返してボスを動けなくするのが正攻法かもしれないが、ここに乗り込めたのもほとんど偶然みたいなもんだった。すくなくとも今のホバー機体で繰り返せる攻略法ではない。

 

 とりあえず今はこのまま先に進んでみよう。

 

「どれどれ……」

 

 内部の通路がそのままボス本体につながっているのかと思ったら、ここはどうも行き止まりだ。となると、どうやってボスの元に向かえばいいのか……。

 

 何かあるはず、と周囲を見渡すと、傍らにひっそりとリフトらしきものがある事に気が付いた。

 

「おっ」

 

 さっそく乗ってみると、ガコン、とリフトが上昇していく。頭上の天上が開いて、青空が覗く。

 

 そしてリフトが上がった先は……。

 

「外かあ」

 

 びゅうびゅうと吹き付ける風に、見晴らしのいい光景。

 

 どうやら私は、ボスの巨大な足、その膝の上にいるようだ。地上から見上げた時は訳が分からなかったボスの巨体が、ここからならある程度見通す事ができる。

 

 やはり、サイズが規格外でもメタルインセクトなのだろう。六本の脚で、台地を踏みしめて歩く巨大な移動要塞……その脚部は体の下ではなく側面に向けて生えているので、膝のところで130度ぐらいに曲がっている。それを重たげに持ち上げて前にずらし、その巨体を前進させているようだ。

 

 そして目の前には、膝から本体に向けての関節部分が、ハイウェイのようにまっすぐ伸びている。太いとはいっても、さっきまで私が昇っていた末端部に比べるとかなり細い。

 

 内部に道は通ってなさそうだ。となると……。

 

「まさか、この足の上を渡っていけ、って事か……?」

 

 私は恐る恐る、足の上から地面を見下ろした。

 

 ……ちょっと覗き込んだ事を後悔する。巨大な脚部の上から見下ろした地面ははるか遠く、落下したらどう考えてもただでは済まなさそうだった。

 

 そして、目の前、足の道に目を戻す。

 

 そう極端に細い訳ではないが、ガードレールとか手すりとかの安全装置のない高所の道を、それなりの距離、まっすぐ渡らないといけない。

 

「ごくり」

 

 生唾を飲み込む。

 

 ……今更だけど、私はちょっと高所恐怖症の気があるのである。

 

「どうしよ」

 

 

 

◆◆

 

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