ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第七十二話 処理オチ

 

 巨大移動要塞の甲板上に放り出された私。

 

 とりあえず動けるようになってからもそもそと周囲を探索したものの、どうやら甲板上には出入りできるような場所はないようだった。

 

「どうしたもんかなー」

 

 途方にくれる私。恐らく、正規ルートはあの脇腹にあったシャッターを開いて、内部に突入するというものなのだろうけど……。

 

「上から飛び降りても入れそうにないんだよなあ」

 

 甲板から下を見下ろしても、着地できるようなスペースが見えない。下から見上げた場合、鼠返しみたいになっているようで、それは逆に上からも下に降りるのが困難、という事なのだろう。

 

 一応、足の上に再度飛び降りる事で、正規ルートに戻る事はできそうな気もするが……。

 

「この死にかけの機体で飛び降りてもなあ……」

 

 そういう事である。そもそも、メガテリウムは滅茶苦茶歩くのが遅い脚部だ。無事着地できても、足を渡る間に対空機銃で蜂の巣にされるのが見えている。

 

 かといって、この出入口の無い甲板にずっといてもしょうがない。もうかれこれ10分近く居るが、甲板にならぶ主砲が攻撃してくる様子もなければ、敵の迎撃戦力が湧いてくるという事もない。

 

 早い話がここは安置ではあるが何もできない、といったエリアなのだろう。普通の方法では辿り着けなさそうだし。

 

 ずらりと並ぶ対空砲を横目に、さてどうしたものか、と思案する。

 

 一番建設的なのは、さっさと飛び降りて何らかの形で死んで、最初からやり直す。その場合は移動要塞に接近する所から始めないといけないが、まあ案外、失敗したら埋まってる所からやりなおしなのかもしれない。というかそうでもないと無理ゲーが過ぎる。

 

 それが分かっていても、なんとかここまでこれたんだし、なんとかならないかなー、と考えてしまう。

 

「……うーん。そもそも、ボスの撃破方法はどうなってるんだろう」

 

 甲板上には艦橋だか管制塔だか、そんな感じの建物があるが、どうにもこれは見た目だけのものらしい。ボスのHPバーを探して首を巡らせると、要塞中央部、今の私から見たら下の方に表示が見える。多分、あそこにコアか何かがあって、要塞内部を駆け抜けてあそこに辿り着き、攻撃を加えて破壊する……という感じだと思われるが……。

 

「普通にやったら厳しそうだな。機動力と耐久力と火力全部が求められるし、マッピング力も必要そうだ」

 

 前哨戦であった脚部の中はかなり単純な構造だったが、本丸もそうとは考えづらい。さらに言えば迎撃戦力も色々強いのが居そうだ。

 

 本来の、オンラインで攻略する分には面白そうではある。多分、ギルドの仲間とパーティーを組んで、わいわいガヤガヤ攻略するんだろうな。複数のルートで突入して、通信越しにやられたー、だの、突破したー、だの言い合うのはなんていうか、賑やかで楽しそうだ。

 

 が、残念ながら私はボッチでオフラインである。

 

 一人で何とかするしかない。

 

「うーん、どうしたもんかなー」

 

 手慰みに、ぽちぽちステータスを確認する。今使えるのは、プラズマビーム砲とハンドグレネードぐらいのものだ。ビーム砲が無事なのはちょっと意外だったが、砲身を胴体内部に収納していたのが保護みたいになっていたのだろう。あるいはスカート状のホバーユニットのカウリングが潰れる際、衝撃を吸収してくれたのかもしれない。

 

 とはいえ、プラズマビーム砲もハンドグレネードも要塞内部で使うには不向きな武器だし……。

 

「……いや。まてよ?」

 

 ふとした思い付きに、私はぐるりと甲板上を見渡した。

 

 甲板上には、艦上構造物や砲台の他にも、いろんなものが並べられている。よくわからないタンクみたいなものとか、ミサイルハッチとか、いろいろ。

 

 つまり。可燃物には事書かない訳で。

 

「……にやり」

 

 いい事、思いついちゃったかも。

 

 

 

◆◆

 

 

 

 という訳で、甲板上に放置されている可燃物を片っ端からかき集める。

 

 こういう時、メガテリウムの極端に多い積載量が役に立つ。普通の脚部では到底担げないような大容量の燃料タンクでも、この脚部なら抱えて運搬が可能だ。まああまり大きいのは片手じゃ持てないから、ゴロゴロ転がす訳なんだが。

 

 燃料だけじゃないぞ、VSLと思わしきハッチもこじ開けて、中のミサイルを引っこ抜いていただく。幸い、ボスは身体の上で這いまわっている蟻ん子には気も留めていないようで、こうやって色々失敬してるのも毛を抜かれたぐらいにしか思ってないのかもしれない。とはいえ油断は禁物、あまり砲台の前とかは通らないように注意する。

 

 そうして、ボスのコアがあると思われる場所の上に、とにかく只管可燃物を積み上げた。山のようになっている危険物の山を見て、一仕事終えた満足にひたる。

 

「よしよし」

 

 あとは、この山から出来るだけ距離を取って、と。

 

「この辺でいいかー」

 

 要塞の先っちょ、艦首にあたる場所まで大きく距離を取る。

 

 背後からは、荒野の地平がよく見える。見渡す限りの赤錆の荒野……その向こうに微かに見えるのは、この先に広がっているエリアだろうか。興味はあるが、それはまたあとで。

 

 今はとにかく、このボスを倒すのが先決である。

 

「さて、と」

 

 振り返り、可燃物の山に照準を合わせる。

 

 撃ち込むのはプラズマビームだ。ただでさえ大量の爆発物、それを影響激化スキルを乗せたビーム砲で点火したら、果たしてどうなるかな?

 

「誘爆狙いをするのは森以来か。あれから、悠長に狙撃させてくれるような環境が無かったからなあ」

 

 思えばあれ以降、遠距離射撃に集中できるような環境はとんとなかった。火山の連中は、ヤドカリを始めとして誘爆狙いは効果が薄かったし、その次の工業地帯は霧のせいで見通せないし、さらにその次の荒野地帯はそもそも近づくまで敵が出現しないわ敵の動きが早すぎて狙いづらいわ、とそんな攻撃手段があったのを忘れる程度には相性が悪かった。

 

 ここで思い出した自分を褒めてやりたいくらいである。

 

 さて。

 

 色々パワーアップした今、どれぐらいの爆発が起こせるものかな?

 

 うまくいけば、甲板に大穴を開けて突入口を作れるかもしれない。なんせ、全長10mぐらいある燃料タンクとか、直径3mぐらいあるクソでか砲弾とか、機体と同じぐらいのサイズがある垂直ミサイルとかが文字通り山になってる訳だしね。ちょっと見た事ない量の爆発物だ、ワクワクする。

 

 これに点火したら、現実の産油国の油田プラントをまとめて着火するぐらいの爆発がおきるんじゃないか? ふっふっふ。

 

「そんじゃま、発射!」

 

 ガチリ、と引き金を引く。

 

 胸部プラズマビーム砲の砲口に青い光が満ちて……発射!

 

 青白いプラズマビームがまっすぐ、吸い込まれるように爆発物の山に突き刺さって、そして……。

 

 ザッ、とモニターの映像が乱れて停止する。

 

「ハレ?」

 

 あれ、と操縦桿の引き金をカチカチ……したつもりが、私の体も固まったまま動かない。

 

 いや。これは、どっちかというと、時が止まっているというか……。

 

「……処理落ち?」

 

 直後。

 

 モニターどころか私の視界が真っ暗に染まり、全ての情報が遮断された。

 

 そして目の前に浮かび上がってくる、メッセージウィンドウ。

 

 そこにはこう書かれていた。

 

 

 

《自機損壊により 撃破されました》

 

 

 

《ペナルティにより、経験値、資金がマイナスされます》

 

 

 

《付近に使用可能なホームが存在しないため、初期エリアに戻されます》

 

 

 

「え、ええ~……」

 

 どうやら、あの程度の距離では到底足りなかったようだ。恐らく、吹きあがった爆発に巻き込まれて自機が蒸発したのだと思われる。んで、システムはそれが爆発に巻き込まれたとかじゃなくて、私自身の自業自得、自爆と判断した、と。

 

 うーん、かしこい。

 

 これが文字通りの処理オチです、なんちゃって。

 

 ……がっくり。

 

 気を落としていると、段々視界に光が戻ってきて、気が付けば私はホームに突っ立っていた。

 

 とててて、と私を見つけたテレサが子犬のように駆け寄ってくる。

 

『あ、おかえりなさい。今回はどうでした?』

 

「……ゴメン。今日は疲れたからもう寝るよ……」

 

『え? わ、わかりました。お疲れ様です』

 

 しょんぼり。無愛想でごめんね……。

 

 私は塵一つ残っていないハンガーを眺めながら修理ボタンを押すと、そのままゲームをログアウトしたのだった。

 

 

 

◆◆

 

 

 

 

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