ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第七十三話 攻撃は最大の弱点

 

 という訳で翌日、気を取り直した私は再び荒野を疾走していた。

 

 流石に昨日は、機体を組みなおす気力がなかったので試作型ホバー機のまま。ただし、武装はアップグレードしている。

 

 見よ、腰のハンドグレネードの代わりに搭載されたこのジャイアントバズーカを! 原理的には単なる無反動砲だが、現実のそれが一発で終わりなのに対しこれは砲弾そのものに無反動機構が組み込まれているので、マガジン式で連続で3発まで撃てる。まあ砲身はまじで唯の筒で、ロケット砲弾が勝手に飛んでいく感じだな。砲身の意味は軌道を安定させるのと、砲弾の保護って所か。

 

 威力の方も及第点。道中で遭遇したチーター型にぶち込んでみたが、至近距離の爆発でも十二分に木っ端微塵に出来るだけの威力がある。弾薬費と持ち運べる弾丸の数で狩りには向かないが、攻撃力は十分だ。敢えて言うなら弾速がクソ遅いのでちょっと複雑な動きをする相手にはあたりそうにない事か。対人戦にはやはり向いていない。

 

 ……なおビーム兵器と比べてはいけない。

 

 いいさ、いいさ。こっちはたんなる攻撃だけに終わらずこうしてホバー機構の動力になってるし、なんだったら実質弾数無限だもんね。一本積む負荷だけで、バズーカ本体とその予備弾薬を限界数まで搭載してもお釣りがくるとか、そういう正論は気になりませーん。

 

 嘘。

 

 ちょっと気にしてる。

 

「しょぼん」

 

 威力がどうにもならないなら装備負荷軽減してくんないかなぁ……。いやでも、敵以外の環境や物質に与える影響は据え置きだからそういう訳にもいかないのかなあ……。

 

 仮に威力に見合った負荷……せめて半分ぐらいの重量と消費ENになったらいいんだけど、そうなったらまず間違いなく悪用するしな。私が。

 

 ビーム砲を並列にいくつも並べて空を飛ばすとか……サブエネルギーに依存しないからほぼ無限に飛べてしまいそう。そんでもって遥か上空から爆弾とか投下するとか……害悪すぎる。

 

 まあ実際は、このゲーム物理法則とかエネルギーの法則とか結構重視してるから、武器として転用できるビーム発生装置がどうしてもエネルギー馬鹿食いするし重量も重くなるという事なんだろう。

 

 リアル志向なのはいいんだけどね。

 

 そんなこんなで、時折遭遇するチーター型メタルインセクトをバズーカで吹き飛ばしつつ、以前移動要塞が埋まっていたあたりまでやってきたのだが。

 

「……いないな?」

 

 荒野に、砂に埋もれた巨大建造物の姿はない。

 

 となるとやっぱり、一度起動したボスはあのまま歩き回っているという事か。

 

 結構な速度で動く移動要塞を見つけて、そこからさらに接近する過程が居るのか。うんざりしながら、砂を巻き上げながら丘を越える。

 

 確か、移動要塞はこっちの方に歩いて行ったはずだが……。

 

「え?」

 

 だが、小高い丘を越えて視界が開けた私の目に入ったのは、赤錆の荒野、その向こう側で擱座する、巨大な移動要塞の残骸だった。

 

 一見すると、前線基地か何かに、六つの巨大ビルが倒れ掛かるように崩れた、砂に沈んだ大都市のように見えるそれ。だがよく見れば、倒れ掛かるビルは奴の足であり、前線基地は移動要塞の本体である事が分かる。

 

 よくわかんないけど。ボスはどうやら、死んでいるようだ。

 

「ええ……」

 

 困惑しながらも残骸に近づく。

 

 ある程度近づけばそれが確かに、私の交戦した移動要塞である事に間違いはないようだ。各部に見覚えがある。

 

 しかしなんで?

 

 オフラインプレイだから、私の知らない間に誰かに倒された、という事はないだろうし。

 

 もしかして……。

 

「あの最後の爆発、私をフッ飛ばしただけじゃなくて移動要塞も爆殺してた……?」

 

 見れば、移動要塞の本体部分は真ん中でばっきり二つに折れてしまっている。私がしこたま爆発物を積み上げた所と、場所が大体同じ。

 

 えーと、つまり。

 

 私がこれでもかと積み上げた爆発物を影響激化スキルを乗せたビームで起爆した結果、その爆発は装甲をぶち抜いてコアごと移動要塞の本体をへし折った、という事?

 

 そりゃあちょっと距離をとったぐらいでコチラも助からない訳だ。

 

「……いや、変な事をしたのは自覚があるけど……影響激化スキル、影響大きすぎない?」

 

 工業地帯で戦った合体ロボにも特攻だったし、変な所で影響力の大きいスキルだ。スキル名そのまんまといえばそうだけど。

 

 いやでも、敵を倒したならメッセージに表示されるはずだよな? でもそんなの無かったし……相打ちだったからか?

 

 困惑に困惑を重ねながら、破壊された本体部分に近づく。以前は六つの足に支えられて宙に浮いており侵入は困難だったが、今は斜めに倒れ込んだ本体が砂地に埋まっている。接近は容易だった。

 

「む」

 

 一応注意していたのが功を奏し、私はとっさに転がる残骸の影に隠れる。遅れて、複数の機銃弾が瓦礫を穿った。

 

 本体に取り付けられた無数の対空機銃。そのいくらかはまだ生きているようで、接近してきた私に攻撃を仕掛けてきたようだ。

 

「まだ本体は生きてる……?」

 

 首をひねりながらも、勢いをつけて飛び出すなりバズーカを撃ち込む。機銃が迎撃の弾幕を張るが、運よくロケット弾はそれに引っかかる事なく直撃し、爆発が纏めて機銃を破壊した。

 

 当面の障害を排除した所で、亀裂に接近する。念のため大型砲台や対空砲の前に立たないようコースを選びながら、私は引き裂かれた装甲版の中を覗き込んだ。

 

 途端に、画面に表示されるHPバー。

 

 もうほとんど残ってなくて10%かそこらだが、間違いない。ボスのHPだ。

 

「むむ」

 

 この状態でよく残ってるもんだな。もしかすると相打ちになると、ボスのHPが何割か残った状態で次に回されるのか? だとしたら良心的だなー。

 

「とりあえず、トドメを刺しにいくか……」

 

 えっちら、おっちら、破損部分から艦内に乗り込む。こうでこぼこしているとホバー機構なんて使えるはずもないので一苦労だが、しょうがない。

 

「再設計する時は分離機構とかつけとこう。こういう段差こえる時は重しにしかならないね」

 

 改良項目がまた増えた。

 

 とにもかくにも、重たいバズーカとホバー機構をかかえて、メガテリウム脚ののろのろした動きでやっとこさ艦内通路に侵入するも、こちらも傾いている上に瓦礫が転がっていてホバー移動できそうにない。しかたなく、もたもた歩いて中枢を目指す。HPバーが目印になって迷わなかったのがせめてもの救いか。

 

 そしてたどり着いた中枢だが……まあ、ここもロクな事になってなかった。

 

 戦闘するのにちょうどいいだだっ広い四角い部屋。入口とは反対側の壁には大きな丸いコアが埋め込まれ、その周囲に螺旋を描くように無数の配管が這いまわっている。そのエネルギーで壁面は脈動し、さらに天井や壁からは無数の迎撃システムがアームを伸ばして侵入者を排除する……はずだったのだろう、本来ならば。

 

 今となっては傾いた物置小屋だ。天井は崩れてケーブルが切れて垂れ下がり、壁のアームは皆へし折れるか瓦礫に潰されて力なく転がっている。ひび割れた壁からは外の日差しが差し込み、物陰では時々火花がパチパチっ、と弾けていた。

 

 コアも死にかけで、時折明滅するように光るだけのなんていうか……切れかけの蛍光灯といった有様だ。LEDみたいにブツッといきなり途切れるよりはマシかもしれないが。

 

「え、えーと……なんか御免」

 

 昨日はあのまま落ちたから、この状態でボスは丸一日放置されていた事になる。

 

 ちょっと申し訳ない気分になる。生殺しは屈辱だったろう……。

 

 とりあえず抵抗する余力もないようなので、バズーカを構え……そこで気を取り直し、私はプラズマビームの照準をコアに向けた。

 

 二重の意味で申し訳ないが、ある意味で武器スキルを成長させる絶好の機会でもある。申し訳ないが私のビームの為に死んでくれ。

 

「ポチッとな」

 

 引き金を引くと同時に迸る青白い閃光。

 

 

 

 なお、コアにトドメを刺すのに二発必要でした。

 

 

 

◆◆

 

 

 

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