ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
HPがゼロになったコアが崩壊していく。色あせた球体が、俄かに安っぽい質感になってバラバラと罅割れ、ハラハラと床に散っていく。同時にその終焉は移動要塞全体に及んでいく。こうしている間もどこかで動き続けていた機関の音が途絶え、散っていた火花が静かになっていく。
やがて数秒の後には、移動要塞は今度こそ単なる巨大な鉄くずへと変わり果てていた。あとはこの荒野の砂と風が、時間をかけてこの巨体を大地に帰すのだろう。
「お疲れ様でした」
ボスの最後を見届けて、私はメッセージに目を向けた。
《『粒子砲スキル』がレベルアップしました! 新たに『粒子偏向』スキルをゲットしました!》
《特定のボスを撃破した事で『前線基地建築』が可能になりました!》
《『前線基地構築キット』を一つ入手しました!》
「お、おう?」
ビームのスキルアップは予定通りだが、それに加えて表示されたスキルに首を傾げる。
前線基地建築?
ちょっと考えて、私はかつて破壊した辻斬りギルドの拠点の事を思い出した。
「もしかして、自分だけの基地を作れるスキルだったりする?」
こうしちゃいられない。早く内容を確認しないと。
「ええっと、ボスを倒したから周辺にホームが解放されるはずだけど……」
少なくともこの移動要塞残骸の中には無いだろうと、急いで外に飛び出す。あたりを見回してみるが、それらしきものは何もない。というかこの荒野はどこもかしこも砂と荒地ばかりで、ホームの目印らしきものも全然ない。これまでは、ホーム近辺はあからさまに安全地帯、といった様子だったのだが。
「おかしいな……うん?」
周囲を見渡していると、ガサガサ、という音が聞こえてきて首を傾げる。
嫌な予感に警戒していると、モコモコ、と足元の地面が盛り上がってきて私は慌てて機体を退避させた。
『ギシャシャ』
「お前かよ!」
地面から這い出してきて身震いするのは、件のサソリ型エネミー。脚を長時間止めてると出現するはずだが……あ、そうか、ボスの部屋で立ち止まってたのが静止判定になったのか!? 今、移動要塞は地面に擱座してる訳だし……いやロクでもないな!? 安全地帯って概念がないじゃん、この地表!?
サソリが襲ってくる事を予期してバズーカを向ける。こいつなら複数纏めて撃破できるから、できるだけ多くを引き付けて……そう思って機を伺う私だったが、予想に反しサソリ型メタルインセクトはこちらには一切の関心を示す事なく、その場で反転するともそもそと瓦礫の山に向かった。
そして、鋏で鉄とコンクリートとその他が混ざり合った廃材をツマツマし始める。
「えー……?」
困惑しながらバズーカを降ろし、周囲を見渡すと、居るわ居るわ。コアに向かう前には間違いなく居なかったのに、今やそこら中にサソリ型が溢れかえって移動要塞の残骸に群がっている。
共食いかよ、という言葉が一瞬頭に過ぎったが、考えてみればコアは破壊されて機能停止してるし、同族であっても死体になったら関係ないよな。そもそもこいつら機械だし……。
そこら中に何十匹どころか何百匹ものサソリ型が溢れかえり、残骸をツマツマしているのを尻目に、私はそっと刺激しないようにその場を離れた。
「とりあえず地表はよくない。高台に昇ろう」
高台は急勾配だが、まっすぐ上るのではなく螺旋を描くように昇っていけばそんなに登頂するのは難しくない。えっちらおっちら、頂上まで登り切った私は一息つく。
これで安全は確保された。
あとは……ホームの問題なのだが。
「多分、これが関係してるんだろうなあ」
手に入れた『前線基地構築キット』なるアイテムを確認する。これは地雷などと同じく、マップで使えるユーズドアイテムのようだ。周囲を見渡して本当に敵がいない事を確認して、アイテムを使用する。
すると、機体の手の中に大きなコンテナが出現する。それをめぼしい所に置いてみると、自動的にパタパタとコンテナが展開され、中から出てくるわ出てくるわいろんなものが。
折りたたまれていた赤い鉄骨のようなものが展開されると、ドリルのようなものが地面を掘り進めはじめ、同時にアンテナみたいなものが伸びてどこかに電波を送り始める。鉄骨のほうもアームでどんどん拡張されて、見ている前であっという間に機体を預けられるような簡易ハンガーとパイロット用の小屋が出来ていた。
「へえー……」
感心しつつ、機体をハンガーに預けてコクピットから降りる。
途端、砂風が吹き付けてきてうっとおしくおもいながらも、ワイヤーリフトを伝って地上に足をつける。久方ぶりの地面である、まあ特に感動する要素は何もないが。
そのまま歩いて小屋に向かう。プレハブ小屋の中身は、これまた飾り気のないソファとモニター、パソコンが置いてあるばかりだった。
パソコンに近づくと、自動的にメッセージが立ち上がる。
《前線基地へようこそ! ここで出来る事は、目の前のパソコンから確認できます。自分だけの前線基地の構築を目指して頑張ってください!》
「へえー……」
所謂秘密基地という奴か。ただ、その完成形があの辻斬りギルド本拠地というのなら、それなりにデカイ設備が作れるはず。
ふふ、なんか楽しくなってきたぞ。
さっそくパソコンを開いて、説明を確認する。何やらやたらと項目があってどこから見るのか迷うが、とりあえず目についた面白そうな要素からチェックする。
「ふむふむ……資源を投入する事で規模をどんどん拡張できるのか。あ、でも面積に関してはプレイヤー数で決まっていて……ははあ、大きな基地をつくるには複数のプレイヤーの前線基地をドッキングさせる必要があるのね。んで、一人当たりの基地はコンテナに収納して運ぶ事ができる、と。ふぅん……」
なかなか面白い事がある。
ちょっと懸念したのが基地を適当に設置したせいで、移動させたりするとまた最初からになるのかと思ったが、どうやらコンテナはゲーム的な都合の四次元コンテナになってるらしく、発展した基地であっても変わらず収納でき、持ち運んで好きな処に再展開できるらしい。ただ、コンテナそのものはかなり重いので、その場合運搬専用の機体を構築する必要があるらしい。一度使用するまではアイテムだが、それ以降は部品、という扱いなんだな。
……どっちにしろ軽率に展開したのは失敗だったんじゃない、これ……。
「ふぅん。んで、展開した前線基地は機能を限定したホームとして働く、と。……あー、荒野、もしかして固定のホームがないのか? 広いマップなのに、固定のホームがあるとその周辺にプレイヤーが固まっちまうみたいな……ボスが移動要塞だったのもその辺の兼ね合いかね?」
読んでいくと、どの道前線基地は一度展開しない訳にはいかないようにできているようだ。
しかしこれは、上手く使うと今後のマップで攻略の役に立ちそうだ。ホームとホームの間には結構な距離があるし、毎回毎回、ボスにやられる度にホームからマラソンするのも面倒だ。あらかじめ、ボスの近くに前線基地を設置しておけばリスポンしやすくなる、というのは有難い。
つまり今後はホームと前線基地の二本立てで頑張ってね、という事かな。
となると、早いとこ資源を投入して前線基地を発展させる必要があるな。ついでに2号機も、ホーム運送用の機体に改造した方がよさそうだ。ああなるほど、これで予備ハンガー買わせようという目論見もあるのか、ちょこざいな。
「ふんふんふん……」
その他にも気になった項目に目を通してみる。防衛設備とか、形状の設定とか……。
いいね。楽しみが増えた。
早速試してみたい事もある。
「よおし、頑張って前線基地を発展させるぞ!」
その為には、まずは稼ぎに行かなければ。
ちょうど、都合がいい稼ぎ場所がすぐ近くにあるしね。
私は愛機に乗り込むと早速出発した。
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