ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第八十一話 ビームVS砲弾

 

 

 

 

 砂塵を巻き上げ、荒野を行く灰色の機体。

 

 スラスターによる移動はなかなか快適で、時折襲ってくるチーター型との戦いでいい感じにサブエネルギーの補給もできる。

 

 速度自体はホバー移動には及ばないが、継続して移動できる、という点ではやはり正規の手段の方が優れている。

 

「ふーむう……」

 

『どうしましたか?』

 

「ああいや。プラズマジェットエンジンとかホバー機構とか変な事色々やってたけど、たまには王道に立ち戻ってみるべきだなーと改めて実感してたところ」

 

 型を知った上でそれを破るから型破りという。勿論、正規のスラスターをはじめとするパーツが全然出そろってなかった頃の試行錯誤だから天邪鬼精神で王道を無視した訳ではないが、やはり運営が想定して用意していたパーツの方が使いやすいのは決まってるんだなあ。

 

「なんか、こう。負けた……って言ったら変だけど、ちょっとしょんぼりした気分」

 

『はあ。イマイチお気持ちは理解できませんが、ショウさんがやってきた事に意味がないとは思いませんよ?』

 

「そうかい?」

 

 テレサはあまり、これまでのトンチキ機構に否定的ではない模様。まあでもプレイヤー支援用のAIだしね、基本的にこっちを否定するような事は言わない、という前提で話さないといけないよね。

 

 そう思って適当に相槌を打つのだが。

 

『はい。プラズマジェットエンジン機構はサブエネルギーを消費せずに推進力を得られる、という意味で唯一無二です。現状、製品ラインナップに並んでいるパーツはあくまで10m級機動兵器の運用に特化しているものです。機動戦以上の事をしようとすると、どうしてもエネルギー効率と推力の比率に問題が出てきます。そういう意味で、自前でエンジンを作ろう、という模索は不要とはいえません』

 

 思ったよりも現実的な回答が返って来た。

 

「え、そう思う?」

 

『はい。例えば今の機体も、メガアームではなくビーム兵器を転用したプラズマジェットエンジンを搭載し、スラスターと併用すれば通常では考慮していない超高高度も飛行できるんじゃないでしょうか?』

 

 あー。確かに。

 

 プラズマジェットエンジンは現状だと短時間しか推力を得られないから、飛び上がった後は滑空する形になる。けどその間隙をスラスターで埋めればいいのか。

 

 エネルギー再転換スキルを複数積めばサブエネルギーの回復に回せるし。

 

 なるほど。それもまた面白いかもしれない。

 

 武器をどうするか、という問題はあるけども、案としては悪くない。

 

「ふむ……」

 

 ふとより高度を、という話を聞いて、友人と一緒に探索した雪山の高射砲の事を思い出した。

 

 あの地域を飛んで越えようとした機体は全部撃墜されたという話だけど、それはどのぐらいの高度の話なんだろうか。サブエネルギーを消費する以上、飛行時間には限界があり、つまり取れる高度も限度があったはずだ。もし、プラズマジェットエンジンの併用でより高い高度を取れれば、対空砲の有効範囲の上を飛び越えてしまったりできないかな?

 

 ふふ。なんだかちょっとやる気が出てきたぞ。

 

 運営を困らせるような裏道ばかり模索してるのはこの際、横に置いておく。

 

 ビームを必要以上にへぼく設定した彼らが悪いんだい。

 

『あ、見てください。荒野マップの終わりが見えてきましたよ!』

 

「おっ、ほんとだ」

 

 背後からテレサが身を乗り出してモニターを指さした。指摘された先、見えている地形が変化の色合いを見せている。

 

 赤錆びた荒野が、俄かにゴツゴツと荒々しく変化する。見えている風景も黒々とした岩山になり、その合間に時折濃い緑の木々が生い茂っている。

 

 荒野の果てに広がっていたのは……。

 

「岩山……鉱山か?」

 

『そのようですね。センサーに感あり。地下に多数の金属反応を検知』

 

 足裏から火花を散らしながら減速、停止する。周囲を見渡す間に、早速優秀なサブパイロット様は周囲の調査を始めてくれていた。この仕事の早さは有難い。

 

「鉱山かあ。……ここで掘り出した鉱石を、荒野を渡ってあの工業地帯に運び込んでた感じか?」

 

 思えば荒野側の工業地帯ホーム出口は、なんていうか荷物受け入れのプラットフォームみたいな造りだった。散々ビームの発射実験で壊していたけど、ゲートの大きさも道路も大型トラックみたいなのが通るにはちょうどいい。

 

 あの工業地帯は火山から重金属マグマを吸い上げていたが、あの金属はやたら融点が低かったようだしちゃんとした工業製品を作るにはあれだけでは足りないのだろう。

 

『マップの地表面積はさほど広くないようです。ここからさらに北上すれば雪山です。いかがなさいますか?』

 

「……雪山は前に友人と行ったことがある。今は、この鉱山エリアを詳しく調べよう。……鉱山って事は、地下方向に広がっているのかな? まずは入口を探そう」

 

『了解しました。エリアサーチを行いますので、適当にマップ内を探索してください』

 

 指示に従って、再び移動を開始する。ブーストダッシュをすると、機体の足裏が地面に擦れてガリガリと盛大な火花が散った。どうやら地表の岩石の時点で金属含有率がかなり高いらしい。……足がすり減って無くならんよな? 戻ったら足裏を強化した方がいいかもしれない。

 

 そうやって特に当てもなく周囲を散策していると、不意に画面にロックオン警告音が鳴り響いた。

 

「狙われてる、どこだ!?」

 

『! 9時方向、熱源反応を確認!』

 

「9時……左か!」

 

 振り返った先、山の斜面で動く何かが見える。

 

 下草か苔のように生い茂る低木の中に紛れた、朽ちかけた鉄色。三つの筒を互い違いに上下させながら、ゆっくりと旋回してこちらに照準を定めるそれは、メタルインセクトではなく……。

 

「要塞砲!? マジノ線かよ!?」

 

 慌てて退避を試みるが、しまった。今、こちらが立っているのは遮蔽物の無い平地だ。このままだと良い的だ。

 

「引き返して山陰に隠れる!」

 

『了か……いえ、間に合いません! 敵砲塔の砲身固定を確認、撃ってきます!』

 

「ちいっ」

 

 機体重量が重いのもあって、スラスターを最大出力にしても瞬発力が足りない。腕を盾にして攻撃をこらえるか?

 

 いや、敵の砲撃の威力がどれぐらいか、連射できるのかできないのかもわからない以上、守りに入るのは不利だ。

 

 となると、やる事は一つ。

 

「……迎撃する!」

 

 メガアームを大きく広げ、指先からのビームを交差させて空中にビームの網を展開する。それを砲台目掛けて振り下ろすように叩きつけると同時に、相手の三連砲が火を噴いた。

 

 大量の噴煙と共に、砲弾が発射される。目視不可能な速度で撃ちだされた砲弾はしかし、恐らく空中でビームの網に衝突したのだろう。空中で巨大な爆発が生じ、その衝撃で機体がビリビリと震えた。

 

『きゃああ!?』

 

「ち……砲台はどうなった!?」

 

 姿勢を崩しながらも、なんとか後ろ足を踏ん張って転倒は免れる。吹き付ける黒い煙をメガアームで振り払って、敵砲台の状態を確認する。

 

 視界には砲台のHPバーが表示されている。振り下ろしたビームが命中したのか、それはある程度削れているがそのダメージは少ない。オブジェクトではなく、エネミー判定だった事でダメージのカウントストップが生じたのだろう。

 

 まあ、それは承知の上。私の狙いはそこではない。

 

 噴煙が晴れ、相手の様子が露になると私は小さくガッツポーズを決めた。

 

「……よし!」

 

 強烈な砲撃を繰り出してきた敵砲台。そのご自慢の三連砲塔は、しかし今や真っ赤に赤熱して捻じ曲がっていた。最初からこちらの狙いは武器破壊だ。これまでの経験で、武器そのものは敵判定にならない事は分かっている。広げたビームの網を叩きつければ、あわよくば砲弾を迎撃しつつ砲身を破壊できるのではないかと思ったがドンピシャだ。

 

「よし、これで砲台はほぼ無力化……でもないか」

 

 私の早合点を否定するように、砲台の根元から何やら土煙が。砲台自身もギッシギシと揺れながら、その根元から突き出してくるのは複数の節足。私の見ている前で地面から体をひっぱり起こした本体が、纏わりついてくる土を払うように身動ぎする。

 

 朽ちかけた砲台を背負う、深紅の甲殻類じみたメタルインセクト。ぎらり、とその両手の鋏が危険な色を放つ。

 

 なるほど。なんで人類の設備っぽい防衛砲台が攻撃してきたのかと思ったけど、そういう事か。

 

「ヤドカリの亜種……というか大分大きいな。オオヤドカリってところか?」

 

 久しぶりに普通に強そうなメタルインセクトだ。

 

 私は気合を入れなおして、ぐっ、と操縦桿を握り直した。

 

 

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