ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第八十三話 蟻さんだー

 

 襲い掛かってくるメタルインセクトの数はざっと10以上。

 

 指ビームの薙ぎ払いに怯んだのか一時的にその足を止める事は出来たが、すぐに硬直から復帰して群がってくる。

 

 狭まってくる包囲網。ハンドガンを連射しながら、エレベーターホール向けて後退する。

 

 スラスターで一気に逃げたい所だが、こいつら相手に背を向けるのはちょっと怖い。それに応戦しながらのバック運転は事故ったらお終いだ。

 

 ここは安全策をとって堅実に対応すべきである。

 

「とはいえ、ええい、数が多い!」

 

『で、ですが、先制攻撃が効いているようでがむしゃらに距離は詰めてきません!』

 

「でもさ、そうなるとさあ……」

 

 顔面にハンドガンを叩き込まれて後退する蟻。その背後、前が渋滞してこちらに詰めてこれない蟻達が、なにやらお腹を振りかざすような動きをしている。

 

 鋭くとがったお腹の先端から噴出される何か。銃弾でも爆弾でもなく、液体状のそれはこちらにむかって降り注ぐ。バシャ、と地面やメガアームの袖にかかった焦げ茶色の液体が、シュワア、と嫌な音と共に煙を立てた。

 

「さ、酸だー!!」

 

『だからなんで嬉しそうなんです!?』

 

 いやあ、ごめんごめん。このシチュエーションだと言わなきゃいけないと思って。

 

 でもまあ、あまりふざけても居られないか。

 

 ここでやられるって事は、酸で溶かされて死ぬって事だ。私はともかく、テレサにそんな死に方はさせられない。何としても生きてこの場を離脱しなければ。

 

「よし、エレベーターに辿り着いた!」

 

 なんとか入口まで後退し、エレベーターに乗り込む。顔を突っ込んでくる蟻達の顔をメガアームでぶん殴って遠ざけて、スイッチをON。蟻達を置き去りに、地下を後にする。

 

 ぐんぐん上昇していくエレベーターに、ほっと一息。

 

「ふぅ、吃驚した。だけどなんとかなったな」

 

『はい。でもあんなにたくさんメタルインセクトがいるんじゃ、調査もままならないです。どうしましょう?』

 

「そうだなあ。どうしたもんだか」

 

 流石にどこぞの惑星防衛軍よろしく100体とか200体とかってスケールで襲ってくる事はないとは思うけど、どっちにしろ数が多い。

 

 仮にマシンガン装備で来てもきつそうな気がする。元ネタがそうだしね。

 

 となると、何か他の手段がありそうな気がするが。

 

 考えていると、ガタン、と床が揺れて上昇速度が低下した。

 

 そして、床下から聞こえてくるギシギシという音。これは……。

 

『これは……下にメタルインセクトの反応多数! エレベーターシャフトを昇って追いかけてきたみたいです!』

 

「ちいっ」

 

 がくん、と床が落ちる。咄嗟に見切りをつけて、スラスターで上に向かって跳躍。一瞬遅れて、床を突き破って生えてきた巨大なアゴが噛み合わされた。

 

 無数の兵隊蟻が、次から次へと姿を現す。たちまちエレベーターの床は噛み砕かれて破片となって落下し、地下まで続く奈落には無数の赤い光が点々と輝いていた。

 

 これはヤバイ。

 

「地上まで一気に飛ぶ! 捕まってろ!」

 

『で、でも計算だとエネルギーが足りませんよ!?』

 

 テレサの指摘どおり、表示されるサブエネルギーの数値はみるみる目減りしていく。機体が重たいから速度もでないしな。

 

 だけど考えがない訳じゃない!

 

『エネルギー尽きます!』

 

「だったらあ!」

 

 スラスターが切れる前に、メガアームを大きく広げ、つっかえ棒にしてシャフト内に固定する。

 

 これで少なくとも墜落の心配はない。

 

「このまま、シャフトをよじ登っていけば……!」

 

 内壁の凹凸に指をかけて地上を目指す。エレベーターとスラスターで大分距離を稼げたみたいで、地上の光が窓のように見えてくる。

 

 だが……。

 

『駄目です、おいつかれます!!』

 

「くそ!」

 

 眼下には、もうすぐそこまで迫ってきている蟻の群れ。差し込む日差しで、黒光りする甲殻が闇の中に浮かび上がっている。

 

 ビーム砲の冷却は……くそ、まだ終わってない! そもそもこんな狭い中で撃ったら崩落の恐れがある。

 

 もう一つの武器のハンドガンはメガアームのグリップと一体化させちゃったから下に向けて撃てないし、誰だこんな構造にしたの! 私だよ!

 

 ええい、こうなったら通常腕で頑張ってやる!

 

 あちょー、と機体に格闘戦の構えを取らせて、兵隊蟻を待ち受ける。

 

 連中は重力をものともせずにシャフト内を登攀してきて、こちらに迫り来る。

 

 迫り……せまって……あれ?

 

「おや?」

 

『あれ?』

 

 急に、蟻達の動きが止まる。

 

 電撃に撃たれたように固まった彼らは、やがてゆっくりと、ついには急ぎ足で地下へと戻っていく。押し寄せていた黒い波濤が引いていくのを見て、私はテレサと思わず顔を見合わせた。

 

「……あきらめた?」

 

『みたい、ですね。なんででしょう?』

 

「さあ……?」

 

 首を傾げつつも、私はふと思いついて顔を見上げた。

 

 遥か頭上では、入口から差し込んだ光が天窓のように輝いている。

 

 まさか。そういう事なのか?

 

 だったら、何とかなりそうな気もする。とにかく一度戻って、武器カタログを見ない事には始まらないが。

 

「まあとにかく助かったからよいとしよう。で、それで、ここからどうするかだけど……」

 

『……サブエネルギー、ほとんど空っぽですねえ』

 

 そう。

 

 蟻の追撃はやんだけど、エレベーターは壊れちゃったし、エネルギーも底をついている。依然として機体はシャフトの中で宙ぶらりんだ。

 

「しかたない、地道に登っていこう」

 

『が、がんばってください!』

 

 えっちら、おっちら。

 

 テレサの声援をうけながら、シャフトの中をよじ登る。

 

 結局、私達が地上に脱出できたのは、それから10分後ぐらい後の事だった。

 

 這う這うの体で出口から這い出し、差し込み光を体一杯で浴びる。

 

「ああー、地上だー! なんか随分久しぶりの気分」

 

『実時間では30分も居なかったんですけどねえ』

 

 冷静なつっこみありがとう。

 

 何はともあれ、今日はこれでしまいだ。寄り道せずにまっすぐ帰ろう。

 

 ……なのだが。

 

「サブエネルギー一度尽きちまうとホント大変だな……」

 

『ですねえ』

 

 のそのそ歩いての帰り道。敵と遭遇する事を考えるとビームは無駄撃ちできないし。

 

 結局、探索しながら坑道に向かった前半と同じぐらいの時間をかけて、私達は前線基地に戻ったのであった。

 

 

 

 

 

◆◆

 

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