ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~ 作:SIS
「ふぅー」
プレイを終えて、VRヘッドセットを取り外す。
スタンドに預けて、ソファに転がったまま携帯端末をぽちぽち。
数時間のプレイ中に何か連絡が来てないか気にしたが、特にメールの類はない様子。ついでに、SNSをチェックして、新しい情報がないか軽く目を通す。
「おっ」
どうやら、ビルドロボオンラインの公式アカウントから新しい通達があった模様。見ると、どうやら先日告知された大会のルールについての発表があったようだ。
「へえー。大会は専用フィールドを用いてのバトルロイヤル? 各プレイヤーはチームを組んで、自らの前線基地を防衛する……へえ……?」
つまりは領地戦、という事になるらしい。
プレイヤーは拠点を持ち、それを奪い合う。これだけ聞くと簡単そうではあるが、やはり色々ルールがある。
まず敵拠点を奪うには、特定の地点で一定時間待機し占拠ゲージを一杯にするか、中枢コアを破壊するか、二つの方法がある。ただ当然、拠点には防衛設備を配備できるし、何より総出で敵拠点に攻撃をしかけてしまうと、がら空きになった自分の拠点を奪われる恐れもある。
そうなると人数が多い方が有利だが、どうやら1チーム最大3人、というルールが決められており、数に物を言わせる事が出来ないようになっているようだ。
そうなってくると戦局が硬直しそうなのだが、どうも専用フィールドには無数のメタルインセクトが配備されており、それらがウェーブ発生と共に襲い掛かってくる形になる様子。
早速SNS上では戦略について議論が始まっており、有識者の意見をまとめると額面通りの領土争奪戦にはならず、どちらかというとサバイバル戦になる、という見方のようだ。繰り返し襲ってくるメタルインセクトの攻撃に、限りある戦力が枯渇していったものから他のプレイヤーの餌食になる。
つまり基本的には防衛戦だ。だが、目ざとくウェーブの間に他プレイヤーの拠点にちょっかいをしかける事で疲弊させる事により、状況を有利に進める事が出来る。いろんなタイプの機体が活躍できそうなルールだ。
少々、初めての大会にしては変則的なルールに聞こえるが、単なる総力戦、実力や物量に物をいわせた集団戦は普段からギルド間戦争で行われているからだろう。それに3人という人数制限ならば、中立ギルドや野良プレイヤーも参加しやすい。
まあ私はぼっちなんだが。友人を誘っても二人……そもそもアイツもアイツの付き合いがあるだろうしなあ。
「……ううむ」
それでもせっかく前線基地を入手して参加条件は満たせてるしな。せっかくだから参加するだけ参加してみるか、見た所人数が不足してるとその分基地の防衛設備に使えるコストに補正が入るみたいだし。
「楽しみだな」
不安はあるが、素直な気持ちでそう思う。やっぱ多人数参加するオンラインゲームはこういうお祭りが無いとね!
翌日。
私は工業地帯のホームに戻るべく、テレサと共に荒野を渡っていた。スラスターによる大ジャンプで、出来る限り台地を渡って敵との遭遇を避けて移動する。
正直、手間である。
「カスタマイズする為にいちいち戻るの、不便だなあ」
『ですねえ。前線基地でカスタマイズできればいいんですが』
「そのためには特別なアイテムが必要らしいからなあ」
ちなみにその必要なアイテムことマテリアル3Dプリンターについても入手方法を調べてみたが、結構大変なようだ。基本的にはボスドロップで、上位ギルドが徒党を組んで挑むようなレイドボスか、非常に珍しいレアエネミーからしか入手できないらしい。
そのうち、私が手を出せそうなのがレアエネミーだ。実は、私はその該当エネミーに出会った事があるらしい。
いつぞやの、人をコクピットから振り落として落下しさせてきた大クモである。あれがそのレアエネミーだったらしい。
まあ、非常に価値のあるアイテムやレアエネミーに、よくわかってない初心者がたまたま遭遇して色々無駄にするっていうのは、ゲームあるあるである。なんだろうねアレ本当。
あれを探すというのも一つの手なのだが、レアエネミーというだけあって遭遇は大変らしく。そもそも勝てるかどうかもわからんので、まずは戦力を充実させる方が先決だ。
「まあおいおいね。っと、到着ー」
『お疲れ様でした』
見慣れてきた工業地帯のホーム出入口に辿り着き、機体を着地させる。
さて。
連日の戦いで、大きな損傷はないものの大分機体も汚くなってしまっている。カスタマイズついでに綺麗にしてやらないとな。
そういう訳で早速イコンに戻って、カスタマイズ画面を開く。横からひょこっと覗き込んでくるテレサにも慣れてきた。
「さーて、まずは武装カタログだな。照明弾があればいいんだが……」
調べてみると、それそのものは問題なくあった。それ単体で使用するものではなく、発射装置と組み合わせて使うものらしい。爆弾とか投射するグレネードランチャーから、肩とかにくっつけるマルチランチャーまで、その対象は幅広い。
「んー。とりあえず、機体の肩にでも発射装置をポン付けするか?」
『あ、まってください、ショウさん。ちょっと私から提案が』
珍しい。あんまりカスタマイズには口を出して来ないんだが。
「ほいほい、どうぞ?」
『えっとですね、触媒を用いてビームの威力を上昇させられないか、って話があったじゃないですか。留守の間に色々試してみて、それなりによさげな触媒を発見したんです。で、どうせならこれもカプセルに詰めて射出したらいいと思うので、あんまり簡易的な発射装置ではなくて、戦闘を想定したしっかりしたものを選んだ方がいいと思います』
「ふむふむ」
そういやそんな話もあったな。
となると、そうだな。
ちょうどプレイヤーがレベルアップしたから、積載量にスキルを割り振って、それで出来た猶予を使って、グレネードランチャー付きマシンガンを装備してみよう。これならビームの冷却中でも戦闘力は維持できるし、照明弾や触媒弾も発射できる。ちなみに煙幕弾は目が飛び出るぐらい高いから無しだ、ナニコレ。
あとついでにメガアームにも手を加えるか。思った以上に白兵戦を行う機会が多かったから、手の甲に斥力場発生装置を取り付けてみる。これで敵の攻撃を防御できるし、格闘戦時には逆に掌を畳みこめば、斥力場を直接相手にぶち込む事が出来る。サブエネルギーとの兼ね合いが難しいが、決定力があった方が多分楽だろう。敵を仕留めてからならいくらでもビームの冷却を待てるしね。
こんなもんか?
メガアームに機能を集約してる分、本体はあんまり弄るところがないなあ。
「うーん。テレサさん、他に何か意見はある?」
『え? んーと、“グレイタイタン”については、特に……』
「ては、って事は、他には何か意見があるのかい?」
放置されてる2号機の事だろうか。あれは、前線基地コンテナを運搬する為の機体に改造しようと思ってるけど……。
『ああ、いえ。その、前線基地の事でですね……えっと。その、これ』
「ん?」
何やら、テレサが小さな記録装置を端末にセットする。すると、画面に何かしらの3D映像が映し出された。これは……基地、か? なんか鍋みたいな形状だけども。
『えっとですね。覚えてます? 前線基地の地殻にある、でっかいメタルインセクトの死骸とそれに群がるのを焼き払いましょうって、話』
「アアウンウン全然オボエテルヨ。それで?」
『そのですね、あの基地に設置してあるビーム砲、威力は凄いんですけど動かないから狙いが付けられないじゃないですか。だからその、“動く基地”を作ってしまうのはどうかと思って、設計してみました!』
おいおい、キラキラした瞳でとんでもない事を言い始めたぞ。
「具体的にはどうするの?」
『えっとですね。基地は土地に固着する形で建設されますが、その敷地を全部鉄にしまして。境界面に爆薬を設置すれば、完成後にそれを爆破する事で土地との繋がりを切り離せると思うんですよ。そしたら、外壁に設置したロケットブースターで、強引に……』
想像以上に力技過ぎるんだけど!?
お、おかしい。AIはもっとスマートに話を進めたがるはずだ。あの純粋で無垢で理屈屋だったテレサがどうしてこんな発想を!? 一体何に悪い影響を受けたんだ!?
それはともかく。
発想そのものは悪くない。だが私に言わせると、まだ彼女の設計には“照れ”がある。
「ま、まあ、言いたい事はわかった……だがテレサ、君はこれでいいのかい?」
『え……?』
「ただ焼き払うだけでいいのかい? あの、君の嫌悪する残骸を、ビームで炙るだけで君は満足なのかい? もっと、こう、徹底的にやってしまわないとは思わないか?」
諭すような私の言葉に、ごくり、と唾を呑むテレサ。
そんな彼女に、私はかちゃかちゃ、とカスタマイズ画面を弄って、こちらのアイディアを伝えた。
「例えば、こういうのは、どうだい?」
『そ、それは……そうです。本当は私も、そうしたかったのかも……でも、形にならなくて……』
「ふふふふ……まあ、そっちの発想はこっちに一日の長があるからね。任せたまえ」
いやあ、それにしても面白い事を言いだすなぁ。
テレサも段々ロマンが分かってきたよーじゃないか。
あっははははは!!
あれもしかして一番悪影響与えてるの私じゃない??
まあいっか。
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