ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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第八十五話 多目的というのは色々使える

 

 アイディアが決まれば早速実行である。

 

 機体のカスタマイズ自体はごく一部の変更に過ぎないので、ちょっとテレサと前線基地の設計を詰めてる間にすぐ終わった。

 

 そしたら早速前線基地に向かい、設計を入力。資材が足りるかどうかだけが心配だったが、とりあえずは問題ないようだ。

 

 まあ今から建造始めちゃうと出かけられなくなるから、建造開始はログアウト前である。

 

「ほんじゃ、昨日の続きといきましょうか」

 

『はい!』

 

 そういう訳で、再びやってきました鉱山地帯。

 

 周囲を見渡しながら慎重に進むと、早速山の陰に伏せている砲台を発見。こうしてみると廃墟の一部に同化しているのがよくわかる。

 

 とはいえ、知っていれば不意打ちを食らう事はない。逆に先制攻撃を仕掛けるべく、私はがちゃん、とグレネードランチャーの狙いを定めた。

 

「そんじゃま、テレサさんの研究結果を見せてもらおうかな」

 

『ふふふ、びっくりしないでくださいよ!』

 

 おぉう、自信たっぷりだ。これは期待しちゃうぞ。

 

 引き金を引くと、しゅぽん、とランチャーからグレネードが発射される。それは砲台の頭上で炸裂すると、周囲にキラキラと輝く金属の粉を振りまいた。それが空中に漂っている間に、指ビームの狙いを定める。

 

 発射。

 

 迸る、ピンク色のフォトンビーム砲。幾重にも枝分かれして指先から照射されたそれは、金属粒子ごと砲台を焼き払う。

 

 その瞬間、金属粒子を散布された周囲の空間が、真っ赤に赤熱した。

 

 まるで電子レンジでアルミホイルを加熱してしまった時のように、火花を散らしながら急激に空間内の物質が熱に赤く染まる。ビームの照射が終わると同時に、周囲の木々は完全に炭化して真っ黒にそまり、対象となった砲台はぐずぐずになって崩れ落ちた。その下に身を隠していたオオヤドカリも動く気配はなく、そのまま消滅する。

 

 経験値とアイテム入手の報告。間違いなく、今ので仕留めたようだけど……。

 

「……え、何今の。こわっ」

 

『あれ、お好みじゃなかったです?』

 

「いやもっとこう誘爆して爆発するかと思ってたから……」

 

 なんか実際に見ると思ったよりエグかったというか。どこぞの白い悪魔が喰らったのも確かにあんな感じではあったが……。

 

「具体的にはどういう感じの現象?」

 

『まあ電子レンジと似たようなものと言いますか。複数の金属粒子を組み合わせていまして、フォトンビームを乱反射してビームフィールドを作り出すものと、それを受けて加熱、空間そのものを焼却するものですね。ビームの直撃を受けた通常物質と同じ影響を、空間全体に波及させる感じです』

 

 原理的にはどっちかというと怪獣王を唯一倒した守護獣の奥の手みたいな感じか。ビーム攪乱膜を攻撃的に利用するみたいな。

 

 まあでも、これは使えるぞ。

 

 金属粉末の触媒そのものは単なるグレネード弾にすぎないから、連射する事で広範囲にばら撒けるし。そして指ビームは広範囲に効率的にビームを拡散できる。

 

 なるほど、この組み合わせならあの地下の蟻どもを殲滅できるかもしれない。

 

 まあ、殲滅せずとも、なんとかなりそうな手段はあるが……。

 

「よし。なかなか行けそうだし、このまま鉱山に突入しよう」

 

『ファイト、オー! です!!』

 

 そしてやってきました鉱山入口。破壊されたエレベーターは、時間が経過した事で修復しているようだ。オフラインモードだとやっぱり、自動的にマップが元の状態に復旧するのね。

 

 前回のように、エレベーターを使って地下に降りる。真っ暗な中に進むと、暗闇に無数の目が輝いた。

 

 カサカサというメタルインセクト達の動き出す気配。このままだと、前回と同じく大量の敵と戦う羽目になるが……。

 

「今回は準備してるもんね。食らえ!」

 

 ぱしゅん、とランチャーから撃ちだした弾頭が、空中で破裂。

 

 真っ白なマグネシウムの輝きが、暗い地下世界を照らし出す。

 

 それによって露になる、空間の実体。その思わぬ様相に、私は目を見開いた。

 

「えっ」

 

 私はてっきり、この地下空間は鉱山跡だと思っていた。だから、光に照らされて出てくるのは、一面、真っ黒でゴツゴツした大岩ばかりであると。

 

 だが、それは半分間違っていた。

 

 確かに、エレベーターから降りて少し進んだあたりまでは、真っ黒な岩の地肌がむき出しになったゴツゴツとした岩盤である。だがある程度進んだところから、急に地面も壁も平坦にならされ、まるで道路工事の現場のように整った地形が広がっていた。確かに段差はあって凹凸もあるものの、それはあくまで区画整備の一角といった様子であり、見れば建造途中で放棄されたと思わしき道路の様子や、柱のようなものまであった。

 

 その間に蠢いているのが、兵隊蟻型のメタルインセクト。だがしかし、彼らは照り付ける照明弾の輝きに怯んだように、それらの陰から出てこようとはしない。

 

 ついには諦めたように、踵を返して闇の向こうへと去っていく。

 

 目論見そのものは成功だ。

 

 あの時、地上にまで追いかけてこなかった事や、ビームの迎撃に明らかに怯んで動きが鈍った様子から、強い光が苦手じゃないかと推測を立てたのは間違っていなかった。これで安全に探索ができそうだが……。

 

「とりあえず、兵隊蟻はどうにかなるか」

 

『それはそうなんですけど、なんか、あまり鉱山っぽくないですね……』

 

「早とちりだったか。しかし、じゃあなんだ、ここ?」

 

 首をかしげるが、考えていてもしょうがない。調べればわかる事だ。

 

 私は照明弾の次弾を装填しつつ、明かりの照らす工事現場へと機体を進める。

 

 このあたりは、伸びてきた道路の終端っぽい雰囲気がある。つまり、この先道路を辿っていけば、その根元に辿り着くはずだ。

 

 果たして、何があるのか。

 

 わくわくしながら私は先に進んだ。

 

 

 

 道中で出くわす兵隊蟻を照明弾で追い散らしつつ、道路をひたすら遡る。奥に進むにつれて周囲の様子も整っていき、今はもうほとんど、地下空間に広がるハイウェイのような様子になっている。油断すると橋げたの下から襲い掛かってきそうな兵隊蟻を経過しつつ進み続けた私達の視界に、ふとぼんやりと青い光が見えてきた。

 

「何か、奥にある……?」

 

 近づくにつれて、兵隊蟻達の数も加速度的に減っていく。

 

 やがて高速道路のゲートのような施設を潜って先に進んだ先に見えてきたものは……。

 

「おぉ……」

 

『地下都市……?』

 

 そこにあったのは、巨大な地底湖。途方もなく巨大な地下空洞に広がる、やはり途方もなく広がる大きな湖。対岸が見えない海のようなそれは、現実で見た琵琶湖を思い浮かばせる。

 

 その水は、何やら青白くぼんやりと光っている。地下にウラン鉱石でもあるのだろうか、とコクピットの検知器にちらりと目を向けるが、ガイガーカウンターの類は反応していない。

 

 とりあえずは青く光って綺麗なだけで害はないらしい。

 

 そして、その湖の真ん中に、大きな都市が浮いていた。

 

 透明なドーム状の外壁に包まれた、高層ビルの立ち並ぶ未来都市。ビルの間には螺旋状に道路が渦巻いていて、まるで90年代に描かれた夢の未来都市のような雰囲気を受ける。その都市から湖を渡って伸びる20車線ぐらいある道路が陸に繋がり、その一部が私達が遡ってきた道路に繋がっていたようだ。

 

『凄い、地下都市です! 人間は住んでいるんでしょうか?』

 

「……どうだろうな」

 

 背後でテレサがはしゃいているが、私はどうにも違和感を拭えなかった。

 

 街には電気が通っているようでビルはどれも光り輝いているが、一方で街の中を車が走っていない。それに凄いたくさん道路があっても、これまでさかのぼってみた限りどれもどこにもつながってはいなかった。向かう場所がないのに、こんなに道路を広げてどうするんだ?

 

 まるで、大都市、というカタチだけをなぞった精巧なレプリカのようにも見える。

 

 それに何より、あの湖。

 

 光っていて、湖面が見通せない。何かが潜むには絶好の隠れ家だ。

 

「……とりあえず、あの街にいってみよう」

 

『はい! 私達以外の人間に会えるかもしれませんね!』

 

 テレサの返しに、しかし私は妙な罪悪感を覚えた。

 

 人間など、居る筈がないのだ。テレサは自分をそう思っているだけのAIで、オフラインモードのこの世界では他に人間の意思など介在しようもない。彼女がどれだけ望んでも、私以外の人間はこの世界には存在せず。

 

 どこまでいっても、二人きり。

 

「……いや、どうでもいいか。あ、それと警戒は続けてくれ。嫌な予感がする」

 

『? 了解しました』

 

 スラスターで一気に進まず、サブエネルギーを温存しながら慎重に湖に近づく。

 

 都市に繋がる道路を半分ほど渡ったところで、周囲の景色に変化があった。

 

 ごぽごぽ、と泡立つ湖面。光り輝く湖の輝きが不意に陰り、同時に背後のテレサから警告が飛んだ。

 

『これは……金属反応、急速に接近中! 大きい……A級メタルインセクトと推測! 警戒してください!』

 

「やっぱりボスがおいでなすったか!」

 

 慌ててスラスターでバックして距離を取る。

 

 直後、側面に見えていた湖面が爆発したように水柱を噴き上げ、その中から巨大な何かが飛び出してきた。それは空中に躍り上がると、都市に続く道路に地響きを立てて着地する。

 

 滝のように水を全身から滴らせながら起き上がる濃緑色の巨体は……。

 

「蟹型……シオマネキ!?」

 

 

 

◆◆

 

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