ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~   作:SIS

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外伝4 最上位ギルドの視点

 

 ついに始まったビルドロボオンライン初の大規模イベント。

 

 普段からやっている企業間闘争や総力戦とは大分ルールが違うが、いずれにせよ全力で挑む事には変わらない。

 

 そういう意味ではいつも通りだ。俺達チームは緊張しながらもリラックスした状態で、まずは防壁の内で状況を見ていた。

 

「基本的には、サバイバルだっていうのは間違いない。ただ、亀になってれば勝てるってほど、楽でもないな」

 

「ああ。大事なのは状況を敏感に察知して、良い方は悪いが美味しい所をもっていく事だな」

 

 そう。これはただの領地戦ではない。

 

 フィールドには、一定時間ごとに無数のメタルインセクトが発生するという話だ。それらの猛攻に耐えしのぎながら、徐々に基地の戦力がすり減っていくチキンレースの中、タイミングを見極めて他のチームの基地を落とす。

 

 動くのが早ければ敵の防衛に撃退され、悪戯に戦力を減らす事になり。

 

 動くのが遅ければ、メタルインセクトからの防衛に手一杯になってしまう。

 

 大事なのはいつ、どう動くかだ。そう解釈した俺達のチームは、防衛は前線基地の設備にまかせ、自分達の機体はチャンスを逃さないよう機動力と攻撃力に特化している。

 

 あとは、実際の試合展開がどうなるか、だが。

 

 まだ周囲に動きはない。メタルインセクトのウェーブもはじまっていない。

 

 試合はまだまだこれからだ。

 

 と……。

 

《71ブロックの試合が終了しました》

 

「お、さっそく試合が決まった所があるな」

 

「早いな、初心者ばかりの所に上級ギルドでもぶちあたったか?」

 

 トーナメント参加条件には前線基地建設まで進めておく、というのがあるが、仲間を集めればそう難しい条件ではない。だがあくまで前提条件であり、そこまで進めているから戦える、というほど甘いものでもないだろう。

 

 俺達と同じ最上級ギルドのチームに初心者が当たってしまえば、この速度で試合も決する事もあるかもしれない。

 

 だが……。

 

《12ブロックの試合が終了しました》

 

《62ブロックの試合が終了しました》

 

《73ブロックの試合が終了しました》

 

「……なあ、なんかおかしくないか?」

 

 立て続けに鳴り響く試合終了のアナウンス。そのあまりの早さに、違和感を覚える。

 

 番号が近すぎる。まるで立て続けに、対戦相手を一瞬で蒸発させて回っている化け物がいるみたいな……。

 

「……確かに妙だな。初心者といえど、前線基地に防壁と迎撃装置さえ作っておけば、上級ギルドでも多少は攻めあぐねると思うんだが」

 

「話にあった、圧力をかける役割のメタルインセクトがそんだけ強いとか?」

 

「かもしれん、警戒しよう」

 

 話をしながら機体を上昇させ、基地の防壁の上に上がる。

 

 厚さ5mの特殊合金製の城壁、しかも内部にはパワーフィールド発生装置も仕込んである。戦略級ミサイルの直撃でも何発かは耐える防壁を盾にして、周囲の基地の様子を伺う。

 

 どの基地も動きはない。時折、対空砲らしきものが撃ちあがっているが、あれは試運転の類だろう。まだまだ試合は始まったばかり、動くには早すぎる。

 

 だが。

 

 なんだろう。

 

 胸騒ぎがする。

 

 

 

 

 

《チーム:テレサちゃんカワイイ が合流しました》

 

 

 

 

 

「え?」

 

 メッセージに目を見張る。

 

 新しくチームが合流? まだ試合が始まったばかりなのに?

 

 そりゃあ確かに、すでに試合が終わったブロックのチームは、他のブロックに接続されるという話だったが……。

 

「いや。まて」

 

 それはつまり。

 

 この、試合開始直後といっていいタイミングで、他の四つのチームを壊滅させた何か、という事か?

 

 咄嗟に周囲を見渡すと、山の向こうに虹色の光の柱が立つのが見えた。恐らくあれが、合流してきたというチームの前線基地だ。

 

 山陰に、濃い青色の大型構造物が聳え立つ。分厚い防壁で固めるのが鉄則の前線基地にしては珍しい、高層ビルか砦のような、敷地一杯に背の高い建物が敷き詰められた奇妙な基地……。

 

「…………え?」

 

 それが。

 

 見ている前で、動き出した。

 

 ズゴゴゴゴ、と空気が唸るような音を立てて、巨大な建物が浮かび上がると、地面に地響きを立てて着地する。そうして交互にビルが動き、その向こうの巨大な中枢構造物を、前にひっぱって……。

 

 いや、違う。

 

 あれは……。

 

「あるいて……る……?」

 

 言葉を失う俺の目の前で、山の陰から巨大な質量が身を起こす。

 

 山陰から、足裏から噴射するジェットエンジンの推力によって歩みを進める巨大な化け物……その全容が明らかになる。

 

 それは、二本足の巨人だった。

 

 腕は無く、胴体部分は一つ目の巨大な怪物の頭のよう。そこから地面に向けて二本の脚が生えて、その途方もなく巨大な体を支えていた。

 

 大きさはそれこそ、前線基地の敷地一杯。それを全部、強固な特殊合金で埋め尽くしたような、それは動く城塞そのものだった。

 

 正面には、巨大なリング状の発振器らしきもの。バシャバシャ、とそのリングを囲むように何かしらの誘導装置が展開されると、ピンク色の光が徐々に集中していく。

 

 ヒュインヒュインヒュイン……と高まっていく音。

 

 慌てて城壁に身を隠した直後、分厚い壁ごしでもはっきりとわかるほど、世界を照らすほどの光量が迸った。

 

 音はない。

 

 あまりの爆音に、世界が静寂に包まれている。

 

 数秒遅れて地響きと……そして何かが爆発したような轟きの名残が耳に届いた。

 

 

 

 

 

『チーム:エディンバラ が敗北しました』

 

『チーム:ブリッツ が敗北しました』

 

 

 

 

 

「嘘だろ……」

 

 システムからの報告に、ライバル達の基地があった場所に目を向ける。

 

 そこには、何もない。

 

 ただ、まるで巨大隕石が落ちてきたみたいな台地を深く抉る亀裂と、その軌道上に二つのクレーターがあるだけだ。

 

 それらが何の跡かなんて、考えるまでもない。

 

 一応、プレイヤー機は何機か運よく離脱したのか生き残ったようだが、拠点を破壊されたら失格だ。すぐに、それらの反応もレーダーから消える。

 

「二つの前線基地を防壁ごと、中枢まで一撃……!?」

 

 あり得ない。一体何がどうしたらそうなるのか。

 

 明らかにゲームバランスを著しく逸脱している。

 

「お、おい、なんだありゃ!?」

 

「わからない、だがどう見てもプレイヤーの機体じゃないだろ!? あんなくそでっかいものは作れる筈がねえ!」

 

「とにかく、反撃だ! あのビームの二発目が来る前に倒せ!!」

 

 リーダーの意見に反論はない。

 

 すぐさま、防衛設備の全力を傾けての攻撃が始まった。対空砲、迎撃砲、ミサイルランチャー、あらゆる火器が巨大兵器に降り注ぐ。そしてそれは生きのこった他の三つのチームも同じようだ。

 

 四方から殺到する攻撃が命中し、爆発の炎と光に包み込まれる巨大兵器。

 

 仮に防備を万全にした前線基地の防壁でも、ある程度の損害は免れられない集中砲火だ。

 

「よし、これならある程度は……」

 

 あれだけの攻撃を受けたんだ、どんな化け物でも無傷では済まないはず。

 

 それこそ、あの現時点で攻略不可能とされるレイドボスでもない限りは……。

 

「…………嘘だろ」

 

 そして、炎の中から姿を現す巨大兵器。

 

 装甲には、およそダメージと言えるようなものが見当たらない。まるで強風が吹いたように煙が晴れると、何事もなかったかのように巨大兵器は一歩、歩みを進める。

 

 その機体側面が、何やら紫色に光っている。左右側面に張り出した、魚のエラみたいな部位。そこで光が循環して……ぱぱぱ、と紫色の光が放たれる。

 

 一発一発は、小さな弾丸程度の細やかな粒子。それが防壁や防衛設備に降り注ぐと、一斉に大爆発を起こして基地を揺るがした。

 

「なんだ、粒子兵器!?」

 

「そんなもんあるのか!?」

 

 ざわめきながらも反撃を続行する。正直どう戦えばいいなんて検討もつかないが、このままやられる訳にはいかない。

 

 生き残った防衛設備やプレイヤーからの反撃が巨大兵器に降り注ぐ。だがその攻撃のほとんどは、奴の装甲に触れる前に空中で見えない壁に当たってはじかれる。

 

 皮肉な事に攻撃の密度が落ちた事で、今度は何が起きたのか理解する事ができた。

 

「斥力場装甲!?」

 

 エフェクトには見覚えがある。このゲームにおいても最も強固な非実体防御システムの一つである、斥力場装甲。だがあれはサブエネルギーの消費が激しすぎて、ごく一部のB級プレイヤーが趣味で使っている程度の代物だ。あれだけの巨大兵器の全身を覆うような規模のものを展開するなんて聞いたことがない。

 

 無限のエネルギーでも奴はもっているのか?!

 

「だ、ダメだ効いていない!」

 

「あきらめるな、いつまでもあの防壁を展開できるはずがない! 撃ち続けろ!」

 

 弱気になった仲間を鼓舞しつつ引き金を引く。

 

 だが、本当にそうか?

 

 斥力場装甲を突破できたとして、その下の装甲を生き残ったメンバーの攻撃で破壊できるか? 当然の疑問が頭をよぎるが、それを噛み殺して攻撃を続ける。

 

 このまま訳が分からないまま一方的に倒されるのだけはご免だった。

 

 だがしかし、そんな抵抗を他所に、巨大兵器が新たな動きを見せる。機体上面の装甲がぱかぱかと展開され、ハチの巣のようにランチャーが開口される。そこから次々に発射されるのは、防衛設備で使われるような垂直発車式の大型ミサイル。上半身を覆い隠すほどの噴煙と共に打ち上げられたミサイルが、はるか上空でUターンしてこちらに降り注いでくる。

 

「迎撃しろ!!」

 

 当然、即座に基地の高射砲が迎撃にうつる。打ち上げられる対空砲の弾幕が、基地の上空でミサイルを撃墜、爆発四散させる。

 

 だが……。

 

「……なんだ?」

 

 発生した爆発はごく小規模なもの。代わりに、何か茶色い粉末のようなものが空に上がった爆煙から降り注ぐ。

 

 大量の粒子が降り注ぎ、視界がセピア色に染まる。何かしらのBC兵器かと判断してスキャニングを試みるものの、解析結果は単なる金属粒子以上のものではない。

 

 一体、何を……?

 

 困惑していると、巨大兵器に新たな動きがあった。機体上部に搭載されていた副砲がいくつも起き上がり、砲口からビームの光を輝かせる。

 

「攻撃が来る、退避しろ!」

 

 たかがビーム兵器、と侮るような事はない。警告を上げるまでもなく、皆が一斉に防壁に身を隠す。ただ直進するだけのビームなら、防壁に隠れればやり過ごせる……そのはずだった。

 

「な……っ!?」

 

 だがその予想は、閃光が防壁の向こうで瞬くと同時に急上昇をはじめた外気温と、コクピットで鳴り響く警告音に否定された。

 

 周辺温度が異常な上昇を見せている。瞬く間に外気温が400……600……1000!? 空気がプラズマ化して、視界が真っ赤に染まっている。一瞬で機体の冷却機能が限界を迎えて、オーバーヒートを起こした機体が擱座する。ディスプレイが火花を散らし、プレイヤーのHPが減っていく。

 

 一体何が起きているのか。

 

 それも理解できないまま。辛うじてノイズまみれのモニターに、あの巨大兵器の姿が写る。

 

 燃え盛る防衛設備を前にたたずむ、二足歩行の巨大な一つ目の怪物。その巨大な黄金の瞳に、じょじょにエネルギーが集まっていき、そして。

 

 

 

 すべては、光の中に溶けて崩れた。

 

 

 

 

 

 

 

《“タイタンコア”に 撃破 されました》

 

 

 

 

 

『チーム:俺たち一番 が敗北しました』

 

『チーム:アイアンフォートレス が敗北しました』

 

『チーム:ラグナロック が敗北しました』

 

 

 

 

 

《23ブロックの試合が終了しました》

 

 

 

 

 

◆◆

 

 

 

 

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