転生した僕は世界に適応して生きていく   作:netai98

1 / 7
netai98と申します、連載小説を書くのは初めてですが温かい目で見ていただけるとありがたいです。


修学旅行の日、僕は転生した

「違う、違うの!お願いだから聞いて!」

うるさい……

「言い訳するつもりはない!けど、けれど!」

黙ってくれ……

「私たちって、本当の家族じゃないんだね」

だからなんだよ……!

お願いだ、お願いだからほっといてくれ……!

「……きろ」

僕に愛される資格なんてないんだ!

「起……ろ」

だって僕の父親は……!

「起きろ!さっきから寝言が煩いんだよ!」

 

頭への衝撃と痛みで目が覚める、どうやら大型バスの中ほど、窓際の席に座っていて寝ていたところを起こされたようだ。

どうやら山道を登っているようで、申し訳程度のガードレールの傍をバスが通っている。

「全く、さっきから寝言がうるさいんだよ!しかも魘されるタイプの寝言とか最悪極まりねえ!」

「ごめんよ、優斗君……でも今度は君がうるさいよ」

「おう!悪い悪い!まあお前も結構うるさかったからお相子ってことで!」

いかにもなチンピラみたいな風貌をした彼、中本優斗が僕の背中を叩きながら笑う。

「まだ、家族と話しできてないのか?」

「……うん、いつかしなきゃとは思っているんだけどね」

「そうか、まあなんかあったら俺を頼れよ!いくらでも力を貸すぜ!」

背中をバンバン叩きながら優斗が笑う。

少しどころかかなり痛いが彼からしたらただのじゃれあいのつもりなので何も言わないでおく。

 

「ちょっと優斗!また幸信に迷惑かけて!大丈夫?幸信、こんなのに叩かれて……」

「まあまあ君もそんな怒らないで……体調は大丈夫かい?何かあったら言ってくれよ?何せ僕は生徒会長なんだからね」

そうまくし立てたのは……ええと、ああそうだ、島崎瞳だ、僕の幼馴染で……ええと、ああそうだ、家族と拗れた原因だ。

それを静めたのは生徒会長の小鳥遊清史郎、僕と優斗の中間くらいの背丈でしっかりとした身体を持ち、自信にあふれている表情は見ていても気持ちがいい。

「あ、はい、大丈夫です、優斗のバングルがちょくちょく当たって痛かっただけで特に問題はありません」

「アクセサリーをつけるのはいいけど人に迷惑をかけるのはよろしくないね、なんなら没収しようか?」

「その趣味の悪いバングルをつけている精神が理解できないわね、幸信君との友情のあかしだか何だかしらないけどさ」

「皆俺に冷たい」

およよと泣くフリをする優斗を見て苦笑をする、問題ないと判断した会長も自分の席に戻り、会長に戻るように促された……生徒会女子も渋々戻っていった。

 

「それにしても悪いな、こいつが当たってたみたいで」

左腕についた拘束具を噛んだドクロの趣味の悪いバングルを掲げる、露店で売っていたのを一目ぼれして買ったそうだけどやっぱりドクロはないと思う。

「いいよ、お互い様ってやつさ、できたら右腕につけてほしいけど」

それもそうだなと優斗はバングルを外した

 

その時だった。

 

突然バスが揺れ、浮遊する感覚が僕たちを襲う。

優斗が僕を席に押さえつけたがそのせいでバングルを放してしまい、宙を舞う。

あれだけは、あれだけは無くしてはいけない

押さえつけられながらも宙のバングルに手を伸ばす、なんとか掴んだのもつかの間、窓の外を見ると木々の先端が段々と迫ってくる

 

それが僕の最期に見た光景だった。

 

 

 

 

木々のせせらぎが僕の耳を擽る、瞼から光が漏れ、その眩しさに目を更に強く瞑る。

どうやら僕は生きているらしい。

目を少しずつ慣らしながら開ける……

そこには鬱蒼としていて日の光が強く差す光景の森が広がっていた。

周囲を軽く見渡す、バスもクラスメイトも見当たらない、ここがあの世ということはないだろう、もしあの世だとしても僕が行くべきは地獄だからだ。

右手を見る、さっき掴んでいたはずのバングルがない、あの時落ちるバスの中で掴んだはずのバングルを……

刹那、頭痛が僕を襲う、そうだ、あの時バングルを掴んで、そして、死んだ筈……その後に何か、あったはずだ。

痛みにたたらを踏んでしまい、近くにあった樹に手をつき、息を整える。

 

少しして落ち着いたと思った瞬間、後ろから物音がした。

咄嗟に樹の陰に隠れて様子を見る、見上げるほどある巨体、丸太ほどある腕と足、そして、森に溶け込むような緑色の肌。

そこには、異世界にいるような怪物がいた。

 

胸を制服の上から押さえつけて動機を抑えようとする、見つかってはいけない、そう自分に言い聞かせるも身体は震え、呼吸はまともにできないでいる。

何か打開策はないかと考えると視界の端に薄い枠が見えた。

藁にも縋る思いでそれに手を伸ばす、すると枠が広がり、そこにはこう書かれていた。

 

スキル:適応 レベル100

 

脳が文字を処理する、それを終えるまで数秒かかったがなんとか飲み込めた。

適応?適応ってどういうことだ?寒い中でも白い息を吐かないとかそういう話か?それでどうやってこの状況を打破すればいいというのだ。

内心舌打ちをした時、頭に『周囲の環境への適応』と聞こえた気がした。

つまり背景と同化して気づかれなくすると言いたいのだろう、スキルの使い方も「僕は知っている」。

目を閉じ、スキルを僕の周囲、いや、『世界そのもの』に適用する、僕は世界の一部で、誰にも気づかれない、そうイメージする。

 

カチリ、何かがかみ合うような感覚と同時に目を開く

 

目の前に先ほどの怪物がいた。

怪物は僕、いや、僕という名の背景をじっと見つめる、鼻息が僕の顔にかかるが、臭いはあまりしない、奇麗好きなのだろうか?そんな素っ頓狂なことしか考えられない。

数秒した後、頭を掻きながら怪物は背を向けて去っていく。

瞬間僕は怪物とは逆の方向に駆け出す、どうやら怪物は追いかけてこないようで、スキルの使い方は合っていたようだ。

ツタを避け、茂みを飛び越える、整備もされていない森だというのに速度を落とさずに走れることに自分でも内心驚く、何か他のスキルもあるのだろうか?

そんなことを考えながら走っていると何かにぶつかり、鼻を強打する。

鼻をさすりながらぶつかったものに目を向け、確認する。

 

それは、翼があった

それは、巨大であった

それは、角と、牙そして爪があった

 

「おや……人間かな?なぜここに?ああ答えなくていい、こっちで勝手に観るから」

 

それは、人語を操る竜であった。

 

思わず見上げる、赤い鱗は鮮やかではないがどこか神秘性を感じさせる。

一番特徴的なのは目だ、竜の目は僕を捉え、僕を、僕の中の何かを見ているように見えた。

 

「これは……なんともまあ哀れな……君に責任は全くないというのに……運がないというにはあまりにもなあ……」

失礼にも程がある、あるのだが、言い返す勇気は僕にはなかった。

「おっとこれは失礼……私の名前はボルトス、君は……うん、ユキノフ君、そう呼ばせてもらうよ」

息が詰まる、まさか心が「読めないよ?観ただけさ」割り込まないでくれ。

 

さっきからこの竜、ボルトスのペースだ、どうにかしてここを離れたいけれど脚が縫い付けられたように動かせないでいる。

ボルトスが何かを考える素振りをした瞬間―

 

「GURUUUUUOOOOOOOOO!!!!」

 

何かの叫び声が耳を刺す、キインと頭の中で何かが鳴った気がした。

「なんと間の悪い!!君はそこから……うん、絶対に動いちゃいけないよ!」

そう言い終えた直後、真横の木々が爆ぜ、先程見た怪物が吹き飛んできてボルトスの近くに倒れこむ、別個体だろうか?形相が親の仇を見たようだった。

「GOOOOOOOOO!!!!」

突然ボルトスが叫び、腕を振り上げ、横たわったままの怪物に向かって振り下ろす

 

振り下ろす、振り下ろす、何度も振り下ろす。

返り血が僕にかかり、衣服を汚す。

怪物の顔が完全に崩壊し、スプラッタな光景が辺りに広がる。

叫び声も相まってそのまま意識を手放す。

「何か手を打たないといけないね……」

最後に聞こえたのは竜のぼやきだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。