Fate CROSS strange FAKE 作:N40
何処までも広がっていく野原。見たこともない綺麗な花畑。その花の上で踊るように飛び蝶。空には鳥だけでなくドラゴンやペガサスなどの架空の存在も飛んでいる。
椿は生命溢れる自然の中で目一杯遊んでいた。
彼女は知っている。草原の果てには天まで届く大きな豆の木が生えていることを。 森の奥にはお菓子で出来た家があることを。家の裏側では三匹の子豚が家を建てていることを。
どんなに遊んでも疲れない。遠くへ行きたいのなら「しじんさん」に頼めば何処までも連れていってくれる。
魔法の絨毯に乗って月のすぐ近くまで運んでもらった。動物たちの奏でる音楽も聞かせてもらった。
沢山の苦しいこと、痛いことを経験してきた椿にとって今が一番世界が輝いて見える。
この時までは。
「……あれ?」
カリュブディスと鬼ごっこをしていた椿は急に足を止めた。何かの異変を感じ取ったからだ。
そのすぐ後に椿の足元が揺れる。
「じ、じしん!?」
大きな音が鳴る雷も怖いが、世界が壊れそうに思える地震もまた幼い彼女にとって恐怖の対象であった。
地震が来たと思った瞬間には頭を抱えて、その場でしゃがみ込む。
「こわいよぉ! こわいよぉー!」
笑顔はすぐに恐怖による泣き顔に変わり、助けを求めるように泣き出す。
すると、縮こまる椿に影がかかった。
「僕が傍にいるから大丈夫ですよ、椿様」
カリュブディスが覆い被さり、椿を護ろうとする。
椿は泣き顔のままカリュブディスの体にしがみ付いた。陶磁器のような体だが、冷たさはなく体温があり、それが椿を安心させる。
「あーあー。やっちゃったね。椿ちゃん、泣かしちゃったね」
遠巻きでそれを見ていたジェスターはニヤニヤと笑う。事が自分の願った方向に進んでいることへの愉快としでかした外の連中への嘲りが混ざった神経を逆撫でする笑みであった。
夢の世界と外の世界、二つの世界で何が起こっているのか把握しているジェスターは、これから何が起こるのか予想が付いていた。
「やっとあのお爺ちゃんたちが動くよ。あれのせいで自由に動けなくて暇だったなー」
自由を手にすることが出来るかもしれない。自業自得とはいえ息を潜めるように閉じ込められていたこともあって解放感から饒舌に愚痴を零す。
「彼もとっとと動いてくれればいいのにね」
椿から視線を外す。ジェスターにとって最大の障壁である偽ライダーは本を片手に佇んでいる。病院外の異変に気付いている筈なのだがまだ動く気配は無し。あの四人がいれば十分だと考えているのかもしれない。
偽ライダーの様子を窺っていると偽ライダーは開いていた本を閉じる。
「何か?」
そして、唐突にジェスターの背後に立っていた。
「別に何もないよ。ライダーのお兄さん」
ここは椿の夢の中であると同時に偽ライダーの世界でもある。椿と偽ライダーが神に等しいので何が起きても驚くこともない。
「そんなことよりも僕と話してていいの? 椿ちゃん、怖がっているよ?」
「分かっていて訊くのは愚問だと思いませんか?」
「あのおじいちゃんたちだけじゃ心配じゃない?」
「役目は果てしてくれますよ」
「そっかー」
ジェスターが振り返る。既に偽ライダーは離れていた。
「まあ、どっちでもいいけどね、僕にとっては」
主導権は未だに握れていないが焦る必要はない。じっくりとその時を待つ。
「僕がアサシンのお姉ちゃんと遊ぶまで、せいぜい盛り上げてよ」
× ×
クラン・カラティンは絶句していた。アルケイデスの拳が生み出した破壊に。自然災害のような揺れを引き起こした巨槌に。
アルケイデスは肘まで埋没した腕を引き抜き、手を開閉して握りを確かめる。
「中々、清々しいな」
生涯に於いても前例のない会心の一撃を出したアルケイデスの胸中にあるのは心地の良い全能感。呪力という力の核心に触れているような気分になる。
『泥』が絶えず生み出す呪いを呪力に変換しながら、アルケイデスは虎杖を凝視する。
(まだまだ学ぶべきことがある)
アルケイデスの頭の中で虎杖とのこれまでの戦いが再生される。
呪力を扱う呪術師はアルケイデスにとって手本。しかも、虎杖は呪術師の中で恐らくは最強クラス。これ以上無い最高の手本である。
注目すべきなのは虎杖が切断した腕を治したとき。近距離戦でも折れた筈の手首を治していた。
呪力には破壊だけでなく再生させる為の力もあるのかもしれない。
(しかし、負の力を根源としている呪力でどうすれば治癒が出来る?)
思考と閃きは一瞬であった。呪力の核心に触れていること、彼が積み重ねてきた経験による直感は彼に正解を与える。
アルケイデスの負った傷が盛り上がり、傷が完全に塞がる。たった二度見ただけでアルケイデスは反転術式まで習得してしまった。
「こうすればいいのか。想像以上に便利な力だ」
完全に治癒を終えたアルケイデスは改めて呪力の幅の広さを実感する。
(天才とかいうレベルじゃないな……)
黒閃に続き反転術式まで使ってみせたアルケイデスに、虎杖は驚きを通り越して呆れるしかない。
虎杖もまた呪術師として恵まれた才能を持っている。虎杖以上の才能を持つ者が居るとすれば、虎杖の先輩、恩師、そして嘗ての宿敵ぐらいだろう。そして、アルケイデスの才能は彼らを凌駕するかもしれない。アルケイデスは否定するだろうが、大英雄ヘラクレスという神々に祝福された肉体は、呪力という新たな力にも適応し、才能を存分に発揮する。
(……まさか
生得術式とは呪力を流し込むことで発動する特殊能力のようなもの。虎杖が使用した解と穿血も『御廚子』と『赤血操術』という生得術式である。
生まれながらにして肉体に刻まれているものであり、呪術師の実力の8割が才能と言われる所以であり、原則として術者一個体に一つ。虎杖は数少ない例外であり、特殊な事情で二つ持っていた。
アルケイデスは呪力というものを後天的に入手しており、元より呪力を持っていない。そうなると術式がある可能性は低いが、呪力を手に入れたことでアルケイデスの肉体に突然変異が起きてもおかしくはない。そもそも高難易度である黒閃と反転術式を異例の早さで習得していることを考える楽観視出来ない。
「訊いて良いか?」
「──何?」
「あの黒い光とこの治癒術には名はあるのか?」
「……黒閃と反転術式だ」
隠しておいてもしょうがないので名前だけ教える。
「──そうか。感謝する」
名を知ったことでアルケイデスの中でより具体的になる。ここから先はこの二つが普通に出て来ることを覚悟しておく必要がある。
「この力……まだ知るべきことがありそうだ──学ばせてもらおう」
「いいの? 俺は「見て覚えろ」っていうアナログタイプだけど?」
「安心しろ。私も
虎杖の軽口に本気なのか冗談なのか分からない返しをするアルケイデス。
会話自体は軽いが、両者から放たれる殺気は濃い。だというのにどちらも呪力が漏れ出ることはなく、その時が来るまで凝縮させている。
(一気に蹴りをつける必要がある)
これ以上呪術師としての力は見せられない。生得術式にも薄々勘付いているように見える。もし、術式に覚醒したらそこから一気に呪術の極致に至るかもしれない。
(だから、ここで終わらせる)
まだ間に合う内に。
虎杖が構える。アルケイデスは徒手空拳の虎杖への礼儀のように弓を手放した。
放された弓が地面に落ち、ゆっくりと傾いていく。それが地面に横たわった時、二人は示し合わせたかのように一瞬で距離を詰めた。
間合いにて放たれる己の拳。互いに最も信を置く武器にて相手を砕きに行く。
虎杖の右、アルケイデスの右が両者間で激突。そして、生じる黒い火花。
゛黒閃゛
黒い火花の祝福は、虎杖に微笑む。
アルケイデスの一撃は黒閃に至らず、虎杖の拳に負けて五指が全てへし折れた。ただ、黒閃の威力を考えると軽過ぎる。腕が肩の根本まで押し込まれてもおかしくない筈だというのに。
拳を砕かれたアルケイデスの右拳が跳ね上がる。それによりがら空きとなるアルケイデスの胸部。虎杖はそこへ目掛けて掌を突き出した。
アルケイデスの魂に触れたことで虎杖は最悪の記憶を呼び起こされた。アルケイデスに混じっているナニカは相当性格が悪い。切り離すことが現状不可能だと悟ると、アルケイデスを戦闘不能にする方向へ切り替える。
『御廚子』の斬撃は二種類ある。『解』は不可視の斬撃を高速で飛ばすというシンプルなもの。そして、もう一つは『捌』。相手の強さに応じて自動で最適な一撃を出す斬撃。虎杖は捌をアルケイデスの胸に放ち、その霊核にダメージを与える考えであった。
アルケイデスが体勢を立て直す前に放つ。
(捌──)
この時、虎杖の全身に警告のような悪寒が走った。何かを見落としている、動かされている、虎杖の本能が何かを叫んでいる。
何かがおかしい。そう感じた虎杖は攻撃を中断する──直後、虎杖の右腕が内から来る衝撃により砕ける。
時間差での二重の衝撃。虎杖はこれを知っている。
(
一度見ただけで、一度受けただけでアルケイデスは虎杖の技を模倣してみせた。同時にそれは黒閃と逕庭拳という真逆の呪力操作を完璧にコントロールしていることを意味する。
大英雄という完成された土台。その凄さを改めて思い知らされる。
(あー……これは
虎杖もここぞという場面では逕庭拳を使っていた。それを喰らう立場になり、皮肉にもこの技が如何に効果的か身を持って知る。
(五条先生、これは確か大きな武器だ)
この技を見出した恩師の言葉を今になって実感する。
逕庭拳により出来た虎杖の隙。そこを狙ってアルケイデスが反撃の拳を突き出す。
(来る!)
回避は間に合わない。ならば狙われた箇所にピンポイントで呪力を集中させ、防御力を高める。
横振りの拳が虎杖の腕に命中。そして、当然のように黒い閃光が走る。
゛黒閃゛
呪力のガードを突き破り、殴られた虎杖の腕は折れて脇腹にめり込む。虎杖は腕とあばら骨が砕ける音を聞きながら両足を地面から離した。
浮いた体はアルケイデスの黒閃により殴り飛ばされ、近くの建物に激突。そのまま跳ね返って今度は地面に、そこでも威力は殺せず再び跳ねて別の建物に衝突。ピンボールのように虎杖の体はバウンドを繰り返す。
「虎杖さん!」
虎杖の体が何度目かのバウンドを経験し、最初の時と比べて跳ね返る速度も落ちている。
空中にいる虎杖へアルケイデスは弓を構えた。粉砕された五指は既に反転術式で治癒を済ませてある。
宙に浮かぶ虎杖とアルケイデスからすれば格好の的である。
「さらばだ、師よ」
皮肉ではなく呪術の手本となってくれた虎杖に心から敬意を示しつつ、その心臓を矢で射ろうとする。
しかし、直前になって虎杖の姿が跡形も無く消え去った。同時にいつの間にかフラットも居なくなっている。
「──成程。令呪を使うならばここだな」
虎杖が消えたのは令呪によるものだと察し、構えを解く。
「
自分のマスターへ毒を吐きながらアルケイデスは残されたクラン・カラティンたちを視界に入れる。
虎杖との戦いを優先してほぼ眼中に無かったが、よくよく見れば全員が宝具を所持している。人が何故宝具を持っているのか、どうやってこれだけの数を揃えられたのか疑問を抱くが、それは些末なこと。
重要なのはそれを振るうに値する勇者なのか。
「先ずは警告をしておく。我が狙いは病院に潜む幼子のマスターのみ。それ以外の命は奪うつもりはない。……だが、邪魔立てをするならば慈悲は期待するな」
邪魔をすれば殺す、と前以って伝える。警告している時点でかなり易しい対応と言えた。人間を甘く見るつもりはないが、それでも格差は存在する。それが分かり切った上で蹂躙するのはアルケイデスも気分が良いものではない。
「逃げる背を射るつもりはない。退くことは笑わん。失望もしない。己が命を優先することは生ある者として当たり前のこと。蛮勇と勇気を履き違える必要はない。勇気ある者こそ退け」
アルケイデスは存在そのものでクラン・カラティンを威圧する。しかし、語る口調は優しさを感じるぐらいに穏やかな。その言葉に飛びつきたくなりそうな程に。
「……きっと、あんたの言う事の方が正しいんだろうな」
クラン・カラティンの一人、ジョンが口を開く。言った本人が声を出した後に驚いた表情をしていることから無意識に答えてしまったのだろう。
「ほう? ならば貴様はここから逃げるのか?」
「逆だ。俺は……逃げない。どう足搔いても勝てないって分かっているさ……でも、あんたの言った通りに逃げて、子供を見捨てたっていう事実を背負ってこの先、生きていく勇気は……俺には無い!」
勇気が無いから逃げることが出来ない。そう告げるジョンにアルケイデスは裘越しに笑う。
「──ふっ。勇気が無いからこそ敢えて蛮勇の道を選ぶということか。安心するがいい。それこそが勇気だと私が保障しよう」
ジョンのそれを勇気と認め、だからこそアルケイデスは立ち塞がる彼を敬意と共に叩き潰そうとする。同時にアルケイデスはジョンを警戒していた。ジョン自身は魔術を扱えるだけの人間に過ぎないのは分かっている。アルケイデスが警戒しているのは彼の武器──ガントレットの方であった。
極度の緊張で荒い呼吸を繰り返すジョン。見開いていた目の乾きを潤す為に無意識に瞬きをする。アルケイデスはその一瞬を見逃さない。その瞬きの間にジョンは物言わぬ肉塊になる──筈であった。
瞬きの後、アルケイデスは動かなかった。ジョンの気迫に押された、などという都合の良い話ではない。
ジョンに意識を捉えていたら不味い相手が出現したのだ。
「……何者だ」
アルケイデスの問い。彼はクラン・カラティンを見ていない。クラン・カラティンのメンバーはその視線を辿り、スノーフィールド中央病院の方へ見た。
病院前、そこにはローブを纏った四人の男たちが立っている。一部装飾は違うが共通した黒のローブで口元しか見えない。その口元の皺の具合からして年齢はバラバラであり、一番上は初老、一番下は青年ぐらい年の差が離れている。
四人は答えることなく前に出てくる。アルケイデスは弓を構え、矢を番える。
「幼子の英霊……ではないな。守護者か」
四人が英霊ではないことはアルケイデスも見抜いていた。問題なのは、英霊ではないにも関わらず英霊クラスの力を四人から感じたことだ。
アルケイデスは四人の実力を測る為、全力の一射を放った。
音速の矢がソニックブームを発しながら飛ぶ。頭上を通過していく矢にクラン・カラティンらはすぐさま防御魔術を展開。ソニックブームが防御魔術に叩き付けられるとクラン・カラティンたちは呆気無く吹き飛ばされる。
アルケイデスの矢が横並びの四人に命中する寸前、矢は軌道を変えて真上に飛んだ。四人内の一人、青と緑のストラを掛けた人物が何かをした。
矢を弾いた彼はそのまま前方に跳躍。黒と金の靄に包まれるとその姿が変わる。
全身を覆う黒い鎧。頭部の仮面は赤い複眼になっており、鎧には金の装飾が施されている。背中には六枚の羽らしき飾りがあり、金と黒で統一されている中で両肩の装甲だけは丸みのある青い金属になっている。
飛び掛かった勢いのまま片手持ちの戦斧をアルケイデスの首筋に叩き込んだ。しかし、神獣の裘が受け止め、その刃を通さない。
すると、もう一方の手に持っていた蛮刀を戦斧の上に打ち込む。
「むっ……!」
一瞬だがアルケイデスの膝が折れる。大木のような姿が、神話に名を残す英雄が、名のも知らぬ怪人に力負けしたのだ。
「貴様……!」
地を蹴り付け、怪人を膝で突き飛ばす。敢えて折れた方の膝を使ったのはアルケイデスの意趣返し。
アルケイデスの膝蹴りをまともに受けても怪人は健在であり、両手の武器を突き立てて吹き飛ぶ速度を殺す。アルケイデスの膝を貰ってたった数メートル程しか後退していない。
距離が開くとアルケイデスはすぐさま矢を射る。すると、アルケイデスと怪人の間にもう一人別の怪人が割って入る。
姿の造形は最初の怪人とほぼ同じだが、左肩のみ丸みのある形をした真紅の装甲になっており、またそこから同色のマントを付けていた。得物も異なり、最初の怪人が蛮刀と戦斧の二刀流なのに対し、この怪人は刃の側面に目の意匠がある大鎌を武器としている。
第二の怪人が大鎌を振るうとどういう仕組みなのか射られた矢は大鎌の軌道に巻き込まれ、同速でアルケイデスに投げ返された。
射った直後のアルケイデスに返ってくる矢。アルケイデスは素手でそれを掴み取る。すると、矢が急に燃え出したかと思えば爆発してアルケイデスを吹き飛ばす。
急な展開に状況についていけてないクラン・カラティンたち。
「ハハハッ」
笑い声が聞こえた。次の瞬間、クラン・カラティンたちが崩れ落ちる。
「う、ぐっ!」
「おおお……」
「う、うぅ……!」
呻くクラン・カラティンたち。彼らは全員利き手と利き足に刺突痕、もしくは切創が出来ていた。
武器を落とし、立てなくなり初めて痛みを認識する。
「ハハハッ」
そんな彼らを笑うのは第三の怪人。
最初と第二の怪人と姿は同じだが、今度は右肩に金の肩当てを付け、金のローブを翻している。その両手にはレイピアを握られており、それによりクラン・カラティンから攻撃と機動力を奪った。
入る余地の無い戦いで傍観者になりつつあったクラン・カラティンを、強制的に戦場へ引き摺り込む無情の急襲。
「ハハハハハ」
それを無様と見下すように、戦いを愉しむように怪人は笑う。
思わぬ形で反撃を受けたアルケイデスだったが、爆炎の中から現れた彼はほぼ無傷であった。大半の部分は裘によって防いでおり、手足などの火傷もすぐに治してしまう。
「くくく……クハハハハ! フハハハハハッ!」
新たな局面に入った戦場に落とされる哄笑。全員が空を見上げると建物の屋上から黄金の弓兵──ギルガメッシュがこちらを見下ろしている。
「見ない間に道化として一芸でも磨いていたか? だが、人形と戯れるとは寂しい奴よ」
拠点としているクリスタル・ヒルからこの騒ぎに気付き、降臨した。ギルガメッシュに気付かれないように隠密で行動する筈であったが、数々の妨害でそれも水泡に帰す。
「貴様まで来るか、強き王よ」
「──ほぅ?」
アルケイデスを見てギルガメッシュは片眉を上げる。
「随分と大人しくなったものよ。荒れ狂う神々への憎悪と憤怒はどうした? 所詮は叶わぬ夢と知って醒めたか?」
「怒りも憎しみも内に秘めておくものだと学んだだけだ。喚くだけなら赤子でも出来る」
「──ふん。小さくまとまったものよ。つまらぬことを学んだな」
「いや。得難い経験だ。英霊となって成長する喜びを知るとは思わなかった」
ギルガメッシュとアルケイデスの両者の間に入る余地の無い空気が生じる。
だが、それがどうしたと言わんばかり黒のローブの男がアルケイデスへ近付いていた。四人の中で最も老いた容姿をしている男である。
両者の間に一歩踏み込んだ瞬間、ギルガメッシュの赤い目が殺意で輝く。
「人形風情が誰の前を横切っている!」
『王の財宝』が展開され、十を超える宝具の原典が射出された。
ローブの男を貫く──刹那、撃ち出された宝具の原典らが空間に吸い込まれるように消えた。
そして、ローブの男もまた姿を変えた。
先に出た三人とは違い、他と区別するような肩当てもマントも無い。恐らくはオリジナルと思われる黒の装甲と金の装飾のみで構成された姿をしており、双剣を握っていた。
彼らは武を究めた後に各々が自分の進むべき道を見出した者たちの──残骸。
剛の道を突き進むスパルタン。
全てを変幻自在に変えていくハイランダー。
速さを表す名となったディアゴ。
剣技を極限まで究めたクオン。
消えた宝具がクオンの周りに出現し、それらが纏めて射ち出される。究めた剣技の果てに編み出された技だが、最早原理が分からず異なる理のようにしか見えなかった。