Fate CROSS strange FAKE   作:N40

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原作とはちょっと違った展開にします。


人間と英霊と怪物たちと

 スノーフィールド警察署。警察署長であるオーランド・リーヴは同時に魔術師であった。この偽りの聖杯戦争の真実を知っている魔術師だが、ある目的を掲げて参戦をした。

 

『人間による英霊の打倒』

 

 荒唐無稽な目標であると同時に聖杯戦争の根本を揺るがす目的である。だが、オーランドはそれを本気であり、それに必要な道具も人材も手段も用意していた。

 彼が呼び出したサーヴァント──キャスター。聖杯戦争を開戦する為の呼び水である偽りのキャスターだが、その偽キャスターが持つ逸話が昇華した能力こそオーランドが

 偽キャスターを召喚した理由である。

 道具作成というスキルにより生み出される贋作。ただし、普通の贋作ではない。本物の宝具を超える可能性を秘めた贋作である。

 偽キャスターが作成した宝具を持たされるのは、オーランドの魔術の弟子であり警察官として部下でもある男女が入り混じった三十人程の制服警官たち。

 かつてクー・フリンと戦った戦士たちの名にちなんで『二十八人の怪物(クラン・カラティン)』というコードネームを付けられた集団。

 

『君達は、正義だ』

 

 オーランドから与えられた使命と正義の名の下に一丸となって戦う。

 そして、オーランドと『二十八人の怪物』の最初の戦いであり試練が間もなく始まろうとしていた。

 

 

 × ×

 

 

 そこでは異常としか言いようがない光景があった。

 黒衣の女──偽アサシンが警察署内を縦横無尽に駆け抜ける。警察署は外からの外敵から守る為に結界を張っていたのだが、偽アサシンは潜入ではなくそれら文字通り突破してここへやって来た。

 オーランドと『二十八の怪物』たちが対処しているものの偽アサシンの状況に合わせて切り替えてくる同じ名なのに全く異なる宝具に翻弄される。

 警察署内ではオーランドが魔術工房としての側面を持つこの場所で罠を発動させて数体の魔獣や数十を超える悪霊を召喚して偽アサシンに攻撃させるが傷どころか隙も生じない。

 緊迫した様子の中、受付に置いてあるサイフォンを手に取り無料のコーヒーを紙コップに注ぐ片目に眼帯を付けた神父は騒ぎなどに目を向けず、他人事のようであった。

 聖堂教会から派遣された『監督役』ハンザ・セルバンテス。監督役の役目は戦争の進行を見届け、魔術や神秘などを秘匿し一般人に気付かれないようにすること。また、聖杯戦争で敗れたマスターを保護するという仕事もある。

 オーランドを含め今回の聖杯戦争に関わっている者たちからすれば邪魔者であり厄介者。とっとと居なくなって欲しいと思われている。

 ハンザの方は教会から言い渡された使命なのでおめおめと帰る訳にもいかない。尤も、立場としては中立なので今もオーランドたちとサーヴァントの戦いを傍観している。

 

妄想心音(ザバーニーヤ)……」

 

 偽アサシンの背中から生える第三の赤い手。それが異様に伸びてオーランドを狙う。異形な赤い手が狙うのはオーランドの心臓。偽アサシンはこの宝具で自らのマスターの心臓を抉り出していた。

 オーランドは構えていた日本刀でその手を斬る。偽キャスターにより宝具と化した日本刀であっても偽アサシンの赤い手に僅かに食い込むことで止めるには至らない。女秘書がオーランドを助ける為に大型のリボルバーを構える。

 その瞬間、赤い手の指が数本斬り飛ばされて宙に舞った。

 

「うっ!」

 

 偽アサシンは呻き、伸ばしていた赤い手を背中へ戻す。

 オーランドは冷や汗を流していた。眼前にて伸びる巨大な直刀の刃先。地面から伸びたそれが赤い手の指を切断したのだ。刃は地面に吸い込まれるようにして消えていく。

 女秘書は急な手助けに驚きつつすぐに冷静さを取り戻すと偽アサシンを銃撃。大砲のような音と共にダメージを負った偽アサシンを吹き飛ばした。

 

「無事か?」

 

 白光を放つ騎士剣を抜いたシドが登場。オーランドはシドを見て困惑する。

 

「署長さん。こいつがあんたのサーヴァントか? 見るからにセイバーって感じだが」

「──知らん。何者だ、お前は?」

 

 全く情報にないサーヴァント。オーランドを動揺させるには十分であったが──

 

「セイバー、とここでは言っておこう」

 

 

 × ×

 

 時間は偽アサシン襲撃直前まで戻る。

 警察署からの脱出を試みた矢先、警察署は停電に襲われた。その時に感じる魔力の波動をセイバーとシドは感じ取っていた。

 

「……セイバーよ。アヤカのことを任せてよいか?」

「行くのか?」

「ああ。縁も所縁もない土地だが、だからといって罪なき民が傷付くことは見過ごせん」

 

 サーヴァントの襲撃と判断し、犠牲者が出ないようシドはその場へ赴こうとする。

 

「確かにこの警察署は魔術絡みの場所だ。全員とは言わないがかなりの魔術師たちも潜んでいる。恐らくは敵だな」

「そ、そうなの? でも、わざわざ行く必要なんて……」

「そうだな。だが、放っておくことは出来ん。きっとこれは儂の性なのだろう」

 

 自分の性分に苦笑するシドを見てアヤカは何も言えなくてなってしまう。

 

「良し! 分かった! アヤカは俺に任せてくれ! 君は迷うことなく自分のすべきことをしてくれ!」

 

 セイバーは快諾し、シドの背中を押す。

 

「──感謝する」

「同じ騎士、同じセイバーとしてのよしみだ!」

 

 シドは腰の鞘から騎士剣を抜く。その刀身の輝きを見たセイバーは一瞬呆けた表情となり、突然その目を輝かせた。

 

「では! 後で合流する!」

「ちょ、ちょっと待ってくれ! その剣はもしやエクス──」

 

 

 セイバーが呼び止める前にシドは瞬間移動のような速度で二人の前から消えてしまった。

 

 

 × ×

 

 

「セイバーだと!? そんな馬鹿な……!」

 

 ──シドから齎されたクラスの情報で更に動揺してしまう。呼び水として用意したサーヴァントの中にはセイバーは入っておらず、オーランドの知るセイバーはオペラハウスで逮捕したセイバーのみ。彼が偽りから真の聖杯戦争の引き金となるセイバーだとしたら、目の前にいるセイバーは完全なイレギュラーとなる。

 オーランドはフランチェスカから何も聞かされていない。

 

「その驚き様……もう一人のセイバー以外に何か知っているのかな?」

 

 オーランドは自分の失言に表情を歪める。相手に不要な情報を与えてしまった。それはハンザも同様であり、意地の悪い笑みを浮かべている。

 

「──話は後だ。今はアサシンの対処が優先だ。奴のマスターに聞かれているかもしれん」

「……私にマスターなどいない」

 

 偽アサシンが口を挟んで来る。銃撃された箇所は水晶のように変化しており、それによって銃弾を防いでいた。

 

「魔術師に仕える気などない。聖杯も望まない」

「なに?」

 

 サーヴァントから聖杯戦争を否定する言葉が出てオーランドやシド、ハンザも訝しむ。

 

「偉大なる先達を惑わした、この聖杯戦争そのものを打ち砕く」

 

 確固たる意志と決意を宿した偽アサシンの宣言。

 

「何ともまあ……随分と真っ直ぐな暗殺者もいたものだ」

 

 噓偽りなくそれを為そうとしている偽アサシンに、シドは率直な感想を抱く。アサシンというクラスの筈なのに色々と純粋で初心な印象を受ける。

 シドの感想にオーランドも内心で概ね同意する。登場の時からそうだが、警察署の結界をすり抜けて侵入するのではなく真っ向から突破して突入してきた。『二十八の怪物たち』との戦いもアサシンの固有能力である気配遮断で姿や気配を消すことなく正面から堂々と戦っている。

 シドという謎のセイバーが出て来たせいでオーランドの中で偽アサシンが本当にアサシンのクラスなのか若干疑いが生じていた。

 

「素直に君の言葉を信じようにも、あれだけの宝具を繰り出しているのに消滅の気配が無いどころか消耗する様子もない」

 

 オーランドはその疑いを偽アサシンにぶつける。

 

「君の話を信じたとして、仮に召喚と同時にマスターである魔術師を殺害したとしたら君は魔力供給も無しに丸二日も現界していることになる。アーチャーの単独行動のスキルがなければそれは不可能だ」

 

 的を射たオーランドの指摘は偽アサシンに心に僅かな疑念と同意を生んだ。しかし、偽アサシンの狂信者としての良くも悪くも揺るがない信念が、それらを「自らの未熟により先達の御業を再現出来ず、魔力をそこまで消費してしなかった」という都合の良い解釈をし、思考の隅に追いやり、すぐに心を戦闘へ切り替えさせる。

 

「……狂想閃影(ザバーニーヤ)

 

 問答無用と答える代わりに偽アサシンの髪が伸び、硬質化して刃の質を得る。

 髪は複雑な軌道を描きながら、シドに襲い掛かる。髪の刃は同時ではなく時間差を付けており、より防御を困難とさせていた。

 シドの傍に立つオーランドが日本刀を構えようとした瞬間、それらは一歩前に出たシドの斬撃により全て弾かれる。シドの周囲には一筆書きのような光の残像があるだけで剣を振るう姿を目で追い切れなかった。

 自分の御業を容易く防がれた偽アサシンは、もう一度髪の刃でシドを狙おうとする。直後、冷気のようなものを頭上から感じる。急いで後退すると偽アサシンが立っていた場所に無数の氷塊が落ち、潰れ合うように一つとなって最後には破砕し、跡形もなく消える。

 避けた直後の偽アサシンにシドが一気に間合いを詰める。敏捷性に優れた偽アサシンから見てもシドの動きが速いと思える俊敏さ。しかも、ただ速いというには違和感を覚える速度であった。

 回避が間に合わないと悟った偽アサシンは防御を固める。

 

断想体温(ザバーニーヤ)……」

 

 皮膚を硬質化し、水晶のように変化させる御業。女秘書が放った弾丸を防いだ宝具である。

 しかし、シドは構うことなく突きの構えに入り──

 

「身の盾なるは心の盾とならざるなり! 油断大敵!」

 

 ──詠唱と共に剣の間合い外から突きを繰り出す。

 

「強甲破点突き!」

 

 騎士剣が纏う気が曲剣の形となって放たれ、間合いの外から届かかせる。

『断想体温』に曲剣が接触した瞬間、水晶は容易く砕かれ、偽アサシンは吹き飛ばされる。

 

「ぐっ!」

 

 偽アサシンは空中で体勢を立て直して着地。足元にポタポタと数滴の血が落ちる。水晶が砕かれたことで皮膚の一部が剝がれたせいであった。

 偽アサシンは動揺していた。皮膚を剥がされた痛みよりも先程のシドの攻撃で御業が容易く破れたことで。

 

(先達の御業をこうも簡単に……いや、未熟者である私の研鑽が足りなかっただけだ。私の未熟さが御業の名を穢してしまった……!)

 

 全ては自分が未熟者であるが故。そこに帰結すると、先達の名を穢したことへの罰として何としてもシドの首を獲ろうと決意する。だが、そのすぐ後に彼女は悍ましい事実を知ることとなる。

 

 

 × ×

 

 

 椿の夢の中。素晴らしき世界と化したそこでライダーは考えていた。彼の傍にはベッドで眠る椿。サーヴァント同士の戦いによる騒音もないでのぐっすりと安眠している。

 

「さて、どうしますかねぇ……」

 

 ギルガメッシュとエルキドゥの戦いを中断させたライダーだが、あの二柱の英霊の強さは軽視してはいない。それどころかこの戦争に於ける最大の障壁だと思っている。

 真正面から戦っても負けるつもりはないが、それでも勝機は十分ではない。もっと戦力を欲している。考えている最中、癖なのか指を波打たせるように一本ずつ曲げるという手遊びを繰り返していた。

 

「……仕方がありませんね。使いますか」

 

 ライダーの手には以前使用していた黒い本の宝具とは異なる白い本。これもライダーの宝具であり、この本には極上で忠実な僕が封じられている。

 ライダーが白い本を開く。

 

『■■■■■■■……』

 

 開かれた本から更に本が飛び出し、それらが積み重なっていくと──

 

「任せましたよ、■■■■■■■」

 

 夢の世界から現実世界へ猟犬が解き放たれる。

 

 

 × ×

 

 

 オーランドたち、シド、偽アサシンによる戦いが繰り広げるかと思いきや、そこに乱入してきたのは白いスーツの青年。外部と断絶している筈の警察署内に何の問題もなかったかのように侵入してきた。

 青年は妙に高いテンションで名乗った。ジェスター・カルトゥーレと。そして、続け様自らの正体も明かす。人ならざる死徒だと。

 死徒即ち吸血鬼。人類史を肯定する英霊とは真逆の人類史を否定する存在。人間にとっての天敵である。

 ジェスターの放つ魔の気配にシドは表情を険しくしながら言う。

 

「……()()()()のような存在は何処にでもいるものだな」

 

 ジェスターを倒すべき敵と認識し、シドは騎士剣を構える。鋭い犬歯を見せながら笑っていたジェスターだが、シドを見た瞬間に眉根を寄せた。

 

「我が麗しのアサシンとの再会に余計な異物が混じっているな。失せろ。彼女の華麗で豊艶且つ淑艶な神秘の香りに萎びた老いぼれのニオイを混ぜるなっ!」

 

 今の台詞で分かるようにジェスターは偽アサシンに執着している、それも異様に。

 

「……無駄に舌が回るな」

「確かに」

 

 シドはジェスターの饒舌さにうんざりとし、ハンザはコーヒーを飲みながらそれに同意して忍び笑いをする。

 余裕を感じさせるハンザとは対照的にオーランドと『二十八の怪物たち』は内心穏やかではない。当初の目的は偽アサシンに宝具と人間の力で対抗する筈であったが、シドやジェスターの登場でそれも叶わなくなってしまう。オーランドは部下たちに下手に動かないよう指示。『二十八の怪物たち』もサーヴァント二柱と死徒一体の状況では宝具を構えて事の成り行きを見守ることしか出来ない。

 そんな状況下で最も衝撃を受けているのは偽アサシン。葬った筈のジェスターが中年男性から青年へと姿を変えて蘇った。しかも、その存在は忌むべき死徒。そんな魔力に身を穢されていたこと、それに気付けなかった自分の未熟さ。

 彼女は自分の未熟さに恥と憎しみを覚えながらも己の穢れを雪ぎ、祓う為にジェスターを屠る為に動く。

 

「狂想閃影……!」

 

 偽アサシンの髪が広がり、刃となってジェスターへ伸びていく。

 

「ハハハハハ! 私の魔力を使って私を殺すのかい! 穢れと分かっていても信念を貫く姿は本当に美しい! 君は私を殺し、私は君を穢す! まさに相思相愛じゃないかぁ!」

 

 偽アサシンの髪の刃すら喜んで受け入れるよう両手を広げて待ち構えるジェスター。

 その時、オーランドの全身が痛みを訴える。偽アサシンが突入して来た時と同じ結界が破られたことで魔術回路に負荷がかかったのだ。

 次の瞬間、警察署入り口に開く。扉が開いたのではなくくり貫いたように穴が開いたのだ。続いて偽アサシンの髪の刃も先端が入り口のように消失する。偽アサシンは危機感を覚え、すぐさま下がった。

 何かが警察署内に入ってきた。しかし、その何かが見えない。

 

「誰だぁ! 私とアサシンの逢瀬を邪魔する無作法者はぁ! 万死で足りると思うなよ!」

 

 ジェスターは誰にも見えないそれを感知し、激昂のまま殴り掛かろうとする。その時、バシャリという音が鳴り、ジェスターの顔が黒く染まる。

 

「見えないなら色を付ければいい。──ああ、お前は()()()()

 

 今まで傍観していたハンザがジェスターと見えない何かに飲みかけのコーヒーをかけた。

 

「……」

 

 無言で睨んでくるジェスターにハンザは肩を竦める。

 

「砂糖とミルクが欲しかったか? 生憎、俺はブラック派だ」

 

 静かに憤激するジェスターにハンザは煽る冗談を飛ばしながらコーヒーによって浮き出たそれを注視する。

 バレたのを悟ると空間に浮き出るように姿を晒す。

 

「──成程。ここまでストレートに化物と呼べる奴も珍しいな」

 

 白い兜のような頭部にスリット状の目が三対。唇が無いせいで鋭い牙が剥き出しとなっており、それは後頭部まで連なっている。

 外骨格を思わせる白い体には肩から反対の脇腹、脇腹から反対の腰まで交差しているチャックのような装飾。その装飾は左腕、左脚にも巻き付けられている。

 強い魔力の気配を感じる。しかし、どう見ても英霊には見えない謎の怪物は威嚇するように叫ぶ。その声は赤ん坊の鳴き声と女性の叫びを混ぜたような耳障りな声であった。

 

「お前のお仲間か?」

「……何故そう思う?」

「白いから」

「はははは! そうか白いか! 確かに!」

 

 愉快そうに笑った後──

 

「私とこれを低年齢向けの知育本のような雑なまとめ方をするんじゃない!」

 

 スイッチの切り替えのように激怒し、怪物を掴んでハンザに投げつけようとする。

 その瞬間、怪物の胴体が花弁のように開き、自身を覆い隠す程広げられると伸ばされたジェスターの手を肘まで喰らう。

 

「死徒を……!」

 

 死徒が喰われる光景にオーランドたちは驚く。

 

「そんなものを食べたら腹を壊すぞ……」

 

 ハンザは怪物の悪食さに呆れる。

 ジェスターは舌打ちし、喰われた腕を一振りすると再生していた。ジェスターにとってはどうとでもなる傷だが、捕食側が喰われたという事実が屈辱的であった。

 偽アサシンは次々と現れる障害を越えるべき試練と捉える。

 シドは騎士剣の柄を握り締め、誰が動いてもすぐに対処出来るよう静かに構える。

 人間、英霊、死徒が入り乱れる戦場に最後に現れた怪物。これこそがライダーが解き放った宝具。

 名をカリュブディス。英雄ですら戦うことを避けた魔物の名を冠する怪物(メギド)である。

 




もっと乱戦にしてみました。
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