Fate CROSS strange FAKE   作:N40

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真名開示

 真アーチャーが放つ悍ましくも恐ろしい剛射。空気の壁など物ともせず、音の壁すら超える速度に達する。

 真アサシンが操る水が錠となって愛馬の足を封じられた真ライダーは、最早回避することを諦めた。だが、それはこの戦いを諦めた訳ではない。

 真ライダーの体から一際強く発せられる魔力。神性を帯びた魔力に纏う布から湧き出る神気を練り合わせ、それを槍の形にして構える。

 真アーチャーの矢が届く前に真ライダーはその槍を投擲する。共に神気を帯びた武器が激突。その余波が荒野に広がっていく。英霊たちは不動の体勢だが、ティーネは広がる神気に吹き飛ばされそうになり、魔術を全力で行使しヴィマーナにしがみつく。

 矢と槍は互いに届かぬまま激突した場所で消失。同質の力を帯びていたせいで決着がつかなかった。しかし、真ライダーは迎撃するタイミングがギリギリであった為に神気の余波を間近で受けてしまい、肌が露出している箇所に小さいながらも無数の傷が出来ており、そこから血が滲み出ていた。

 

「我が父の力を! その戦帯の力をそのように使うか……! 私だけでなく我が父すらも辱めるまで堕ちたのか……!」

 

 弓に巻き付けられた戦帯を睨みながら真ライダーは激しく問う。

 

「言った筈だ。神の力など人の手で飼いならせばよし。貴様のようにこの身に宿すなど唾棄すべきだ……いや、もっと相応しい言葉があるな」

 

 その一言には煮詰められた憎悪、怒気が詰め込まれていた。

 

「──()()()()()

 

 真アーチャーの言葉は空気の溶け、沈黙を生む。真ライダーは絶句し、真アサシンは無尽の憎悪の根源を探るように凝視し、ギルガメッシュは──

 

「……く、はははははっ!」

 

 沈黙など知ったことかと言わんばかりに哄笑する。

 

「我も神は好かぬが、貴様のそれは最早病か呪いよ。しかも、その肉体は神の恩寵によって造り上げられたものだというのに。己の存在をそこまで忌むべきものとしながら、その英気を保つとは中々見所のある道化よ」

 

 皮肉を混ぜた称賛を真アーチャーは聞き流す。指摘されるまでもないという態度。真アーチャー自身も己の矛盾に気付いている。しかし、それでも神々を憎まずにはいられない。

 

「そこまで……そこまで己を否定するのか? ()()()()たる己を……? ならば問おう。そこまで自身を否定るするお前は……誰だ?」

 

 彼女は真アーチャーの正体を知っている。誰もが知る唯一無二の英雄であり、英雄を超えた英雄──大英雄、の筈であった。最初からズレを感じていたが、先程の言葉で彼女の中の大英雄の像と完全に重ならなくなる。

 

「私はただの人間だ。貴様の父たる戦神を含め、オリンポスの神々を否定し、蹂躙し、穢した果てに滅ぼす。それだけの為に生きる復讐者に過ぎない」

「復讐……それがお前の目的なのか?」

「ああ、そうだ。嘗ての私に纏わりつく神を肉から削ぎ、骨から削ぎ、魂から削ぎ落した、神に成り下がった男の成れの果てよ!」

 

 遠く彼方へ消えた神々へと向けるそれは怨嗟の言葉であり、無念の言葉であり、神々を呪う言葉。同時に真アーチャーの肉体から赤黒い泥のようなものが滲み出し蠢く。

 真アーチャーの体から飛び出したそれに真ライダーは瞠目し、真アサシンは険しい視線を向け、ギルガメッシュは余興のように眺めている。

 

「……そうか。貴様は最早あいつではないのだな」

 

 真アーチャーの言葉により真ライダーはあの大英雄と目の前の存在を重ねるのを止める。そうした瞬間、あれだけ激しかった真ライダーの感情は鎮まっていた。冷静さを取り戻した真ライダーの姿に、真アサシンは少しだけ感心する。

 刹那、真ライダーの体から膨大な魔力が発せられる。魔力は真ライダーの持つ神気と混ざることで純度を高め、より強い力へ昇華される。

 カリオンの足を縛っていた水の錠は迸る魔力によって吹き飛ばされ、カリオンは自由を取り戻す。

 

「ならば、私は貴様を正道に戻すとは言うまい。金色の王、得体の知れぬ暗殺者共々『敵』として排除するまでだ」

 

 語る言葉にあるのは冷たい殺意。激昂する彼女にはまだ人間らしさがあったが、それらを排した今の彼女はそれが薄く冷徹な機械のような印象を受ける。

 全ての敵を葬ると宣言した真ライダーをギルガメッシュは一笑する。

 

「吼えたな、小娘!」

 

 先程まであった嘲りはなく戦神の血を引く戦士として己に切り替わった真ライダーへの評価を改め、それでも自分の方が遙かに優るという傲慢な矜持を以って迎え撃とうとする。

 

「王たる我をそこの復讐者と暗殺者擬きと十把一絡げにするつもりとはな! それが蛮勇であることを現世で知り、座にて後悔するがいい!」

 

 ギルガメッシュの周囲に展開される数多の宝具。それらはこの場にいる英霊たちに向けられていた。

 

「幸先が良い。初戦から半神どもを二体も撃ち滅ぼせるのだからな。神の導きなど信じるに値しないが、星が巡らす因果はあるやもしれぬ」

 

 真アーチャーは弓に矢を番え、禍々しい魔力を放つ。構えてはいないが、何処か自然体に見えるその姿こそ真アーチャーにとって最も適した構えなのかもしれない。

 

「貴様たちの因縁やなどどうでもよいが──戦争なんぞ早く終わるに越したことはない」

 

 真アサシンの体から未知なる力が放たれる。それらは他の英霊たちも初めて見るものであった。

 この中で唯一神の血を引いていない真アサシン。彼らの戦いに参加する意義などない。しかし、神と称される程の実力を持った兄を持つ。冷静で合理主義者ではあるが感情が無い訳ではない。真アーチャーの対象から外されたことに表面では何も出さないが思うところはある模様。同時に口に出した台詞も本心から来るものである。

 四者四様の力が荒れた大地の上で激突し合う──

 

『はい、おしまいっと……』

 

 ──ことを望まぬ者により舞台は強制的に切り替えられた。

 少年と思わしき声が響いた瞬間、乾いた大地は雪が降り注ぐ大森林へと変わる。

 大峡谷から寒気に満ちた大森林になったことで力を溜め込んでいた英霊たちは一瞬驚き、すぐさま自分たちの置かれている状況を把握しようとする。

 一見すれば強制転移のように感じられるかもしれないが、英霊たちはすぐにこれが転移の魔術ではないことに気付く。

 

(幻術か……しかも、最上級の)

 

 仕組みに気付いている真アサシンは印を組む。

 

 ″解! ″

 

 幻術を解く為の術を使用したが、目に映る景色も肌が感じる冷気も変わらない。少なくとも真アサシンは幻術に掛けられていない。

 

(そうなると、ワシらではなくこの空間そのものに仕掛けた幻術か……うちは以外にこれ程の幻術使いがいるとはな……)

 

 現実に干渉する幻術を真アサシンも知っているが、それには代償が必要だった。この規模の空間に恐らくリスク無しで幻術をかけているとなると相当な腕前の持ち主である。

 考えられるのは新手のサーヴァント。

 

『ダメだよ、みんな。頭を冷やさなきゃ。初日から切り札を出してどうする気なの?』

 

 雪が積もる大森林に少年の声が響く。反響して四方八方から聞こえているので何処に身を隠しているのか分かりづらい。

 

『まだ始まったばかりなんだよ? やるならせめて静かに、控えめにやろうよ。本番前の砂漠の戦いの時みたいにさぁ!』

 

 ギルガメッシュとエルキドゥの戦いを出してケタケタと笑う。

 自分たちの戦いを揶揄された上に戦いの出鼻を挫く行為にギルガメッシュの不機嫌さを露わにした。

 

「この期に及んで我の興を削ぐ賊がいるとはな。この程度の幻術で我の目が欺けるとでも思ったのか?」

『流石は稀代の英雄! 英雄王ギルガメッシュ! 貴方様の曇りなき真実を見通す真紅の眼の前にはこの様な幻術も手品でしょうね! いやぁ! その慧眼にして才気煥発! 賢者を超えた賢者の頭脳を持つ偉大にして尊大且つ傲慢なる人類の王の前では霞む霞む!』

 

 讃えているようで言葉を無駄な華美で飾る様は慇懃無礼にしか感じられず、遠回しに小馬鹿にしているようにしか聞こえない。恐らく、言っている当人もわざとそうしている。

 

「──良く喋る小僧だ」

 

 口を挟むのは真アサシン。腕を組んで相変わらず険しい表情をしている。

 

『あれあれ? 構わなかったからすねちゃったかな? 忍者さん? 君も興味深いけど、ここは大人しく──』

 

 そこでサーヴァントの言葉が途切れる。真アサシンは明後日の方向を見て話していた。

 

「だが、そのお喋りのおかげで把握した」

『え? うわ! こっわ! こっち見てるよー!』

 

 少年の声に驚きが混じる。幻術で姿が見えない筈なのに真アサシンは声の主がいる場所を見つけていた。ただし、凡その位置を把握しただけであり攻撃をすれば十中八九外れる。真アサシンは無駄なことはしない。やるなら仕留められる段階になってからだ。

 

「くっ! 驚かせる筈がその役目を奪われるとはな。道化にすらなれんぞ貴様は」

 

 優位が崩れかけて驚く様を嘲笑するギルガメッシュ。

 

『ちぇー。一本取られたっていうやつ?』

 

 少しすねる謎のサーヴァント。すると、大森林の樹木が数十本まとめて吹き飛ばされる。

 

「何のつもりだ! ふざけるな! 私と奴の戦いを妨げるな!」

 

 真アーチャーとの戦いを散々邪魔されてきた所に特大の横槍を入れられ、激昂した真ライダーが手当たり次第に周りを破壊している。幻術というのにその破壊はリアルでとても幻のようには見えなかった。

 

『ははっ! そっちのお二人さんと違って彼女はリアクションが良いね! 魔術を仕掛けた甲斐を感じるよ!』

 

 真ライダーの反応に下がっていたテンションが元に戻る。

 しかし、真ライダーの破壊もそう長くは続かなかった。弓を構えるが、矢を放す指が急に止まる。

 

「なに……? 退けというのかマスター! しかし……」

 

 マスターから念話による撤退指示を下され、真ライダーは食い下がろうとするが、続けて何かを言われたのか武器の弓を仕舞い、戦闘態勢を解除する。

 

「……解った。マスターに従おう」

 

 真ライダーはこれ以上の戦闘を止め、謎のサーヴァントの望んだ展開になる。

 

「ここまでだ。金色の王、己を偽る復讐者、そして謎深き暗殺者よ。次は戦の礼を踏まえ、一人の戦士として相対すると誓おう」

 

 真ライダーの宣言に一瞬呆れた表情を浮かべるギルガメッシュ。

 

「この場よりみすみす逃がすと思っているのか?」

 

 だが、すぐにそれを獰猛な笑みで覆う。

 

「だが許す。幸運であったな。貴様が戦士として戦うというのなら、我は玉座にて待っていてやろう。そしてその時は王として貴様を裁定してやる。この恩赦有り難く受け賜るがいい」

 

 ころころと感情を変えるギルガメッシュであるが、エルキドゥとの再会という悦び、猛っているので根底は機嫌が良い。故に一方的に参戦して最初に離脱を決めた真ライダーに対しても上から目線ではあるがこの場は見逃す。

 そして、ギルガメッシュは沈黙を続けている真アーチャーに言葉を投げかける。

 

「雑種よ。最早真名を隠す意味などあるまい。半身たる神の栄光を捨て、それを穢すというのなら、それを為す者の名をこの世界に刻み込むがよい。真の名で神々を震え上がらせてみよ」

 

 英霊にとって隠すべき真名を晒せという常識外れの要求。これに真アーチャーも肩を一回震わせる。顔が隠れていて表情が見えなかったが、そのふてぶてしい物言いについ笑ってしまったのかもしれない。

 

()()()()()()()()()()()

 

 真ライダーはその名を聞くと同時に目を見開いたが、すぐに諦めたような表情になる。

 

「アムピトリュオンとアルクメネの子にして、ミュケナイ王家の血を引く者なり」

 

 ティーネはその名が示す意味を少しの間理解出来なかった。だが、記憶の中から引き摺り出された情報が脳内で提示された時、全身から冷や汗が噴き出す。

 

(ヘラ、クレス……!)

 

 思わず口に出してしまいそうになった言葉を呑み込む。大英雄ヘラクレスの幼名、人としての名。それがアルケイデス。

 ギルガメッシュに勝るとも劣らない英霊が参戦していたことに動揺を隠せない。

 

「金色の王。私の生きた時代より遙かに古き、そして最も強き王よ。次こそはその最奥に潜む神の力を蹂躙してくれようぞ」

「まだ吼えるか」

「貴様は王であるが戦士ではない。貴様に向ける言葉は変わらぬ。戦士として貴様は──」

 

 一拍置いた後、はっきりと言い放つ。

 

()()

 

 ギルガメッシュは感情を荒立たせることなく一笑する。ギルガメッシュは王であり、その玉座を降りるつもりはない。戦士として弱いと言われてもギルガメッシュからすれば聞き流す程度の雑音である。

 アルケイデスの体から滲み出る泥のような魔力が彼を覆い、幻術の世界に穴を穿ち、その穴を通じて消え失せた。

 

「奴が真名を名乗った以上、私の真名を隠すのも無意味だな」

 

 戦士としての作法なのか真ライダーもまた真名を明かす。

 

「我が名は、ヒッポリュテ! 戦神アレスとアルテミスの巫女たるオトレーレの間に生まれ子!」

 

 ヒッポリュテ。ティーネはその名もまた知っている。彼女は──

 

「誇り高き部族、アマゾネスの戦士長である!」

 

 ギリシャ神話に伝わる神と精霊を祖とする部族。

 ヒッポリュテは名乗り終えた後、馬を走らせ光の粒子となって消えてしまった。

 

『それじゃあ、僕も退場させてもらうねー。後は二人でゆっくりと話し合いでも殺し合いでもどうぞ。バイバーイ!』

 

 無邪気な声を残響させると、大森林は揺らぎ始め渓谷へと置き換わっていく。幻術が解けていく様子から謎のサーヴァントは完全に離脱した。

 残るはギルガメッシュと真アサシンのみ。最後に残ったのが得体の知れないサーヴァントということもあり、ティーネは緊張する。下手をすればまた戦いが始まるかもしれない。

 真アサシンはギルガメッシュたちを一瞥し、指を組む。何か仕掛けてくるかと思い、ティーネは表情を強張らせるがギルガメッシュは『王の財宝』を展開させなかった。

 

「ここで貴様だけ名乗らず去るのは無粋であろう」

「知らん。ワシまで名乗る必要などない」

 

 真アサシンは知った事かと言わんばかりの態度。

 

「名乗ったところで益もないが不利益もないだろうに──()()()()

 

 ギルガメッシュのその一言に真アサシンの目付きが変わる。ギルガメッシュは既に見抜いていた。真アサシンの力は偽ライダーと同じこの世界に属さないものだということに。

 

「……ふー」

 

 真アサシンは溜息を吐いた後、ギルガメッシュに眼光と飛ばす。

 

「──二代目火影、千手扉間」

 

 遂に真アサシンこと扉間も真名を明かした。ティーネは格好と扉間という名前から日本の英霊と思い、条件に当てはまる者を探したが彼女の知識の中では千手扉間という英霊は見つからなかった。

 

「無駄だ。先程も言ったようにこやつは異邦者。英霊であったとしても他の世界の英霊よ」

 

 ティーネはギルガメッシュの言っていることの意味を理解し、顔色を変える。

 

「そんな……! それは最早──」

 

 恐ろしくて先の言葉が続かない。異なる世界と世界を繋ぐなど魔法の領域。聖杯にそこまでの力があることに戦慄する。

 

「何かしらの偶然かは知らんが、少なくとも退屈はせんな」

 

 異世界の英霊相手でもギルガメッシュは高慢な態度を崩さない。崩す必要もない。如何なる世界の住人が相手だろうと自分という王が絶対であると揺るがない自信があるからだ。

 扉間も名乗るつもりはなかった。そもそも、この戦い自体を扉間は望んでいない。監視に徹するつもりだったが、ファルデウスの要望により戦うこととなった。それなりに得たものはあったが、扉間も相手に手札を見られた。結果からすればプラスマイナスゼロ。

 扉間が真名を明かしたのはファルデウスへの意趣返しの意味もあった。

 

「さらばだ」

 

 扉間の姿が煙となって消える。また空間転移かと思ったが、眉間に皺を寄せたギルガメッシュの表情を見るに違うらしい。

 

「まさか、分身如きで我の前に現れるとは……つくづく礼儀を知らぬ奴よ。──まあ、よい。我が目でも見破れなかったことは褒めてやる」

 

 この戦場に扉間は最初から居ない。居たのは本物と見分けのつかない分身。本体は今もファルデウスの傍に居り、この戦いの最中ずっと彼の背後に立って圧をかけていた。

 

「──くっ」

 

 笑い声を洩らしたギルガメッシュにティーネはつい訊いてしまう。

 

「その……見間違えでなければ愉しそうに見えますが?」

「愉しそう? 確かにな。我が威光がこの世界を飛び越えて更なる世界へ届くと思うと多少は愉快だな」

 

 

 




【CLASS】アサシン
【真名】千手扉間
【属性】秩序・善
【ステータス】筋力C 耐久C 敏捷A+ 魔力A 幸運C 宝具EX
【クラススキル】
気配遮断:A+
感知能力:A
忍術:A+++
火の意思:EX

別作品のサーヴァントたちの宝具は測定不能という意味で全員EXにします。
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