椚ヶ丘中学校、旧校舎。通称「エンドのE組」。
そこに送られる者たちは、挫折の烙印を押された落ちこぼれだと世間は言う。だが、俺にとってはそんな評価など、クソゲーの初期設定に過ぎない。
俺の名前は暁連。
現在、絶賛停学中である。
連「……あー、退屈。マジでこの世界の難易度、調整ミスってんじゃねえの?」
四月の昼下がり。春の柔らかな日差しが差し込む自室で、俺はベッドに寝転がりながら携帯ゲーム機を弄っていた。画面の中では、巨大なボスモンスターが俺の操るキャラクターによって無慈悲にハメ殺されている。
俺が停学を喰らった理由は単純だ。去年の秋、中二の半ば。
同じ「素行不良の天才」として気が合っていた赤羽業と一緒に街をブラついていた時のことだ。
業『ねぇ連、あそこの裏路地。面白そうな”獲物”が群れてるよ』
連『あ? ああ、他校の不良か。……五、十、二十……。全部で五十人くらいか。業、どっちが多く狩るか賭けるか?』
業『いいよ。負けた方は一週間、昼飯を奢りね』
そんな軽いノリだった。
結果は、業が十五人、残りの三十五人を俺がボコボコにした。
狭い裏路地は、数分後には呻き声を上げる肉の山に変わった。もちろん、全員病院送りだ。普通なら退学モノだが、俺も業もテストだけは毎回満点を取る。学校側としても「便利な駒」を完全に捨てるのは惜しかったのか、長い停学期間という処置で話がついた。
だが、家でゴロゴロしている間に、俺の脳内に変な「記憶」が弾けた。
連(ああ、そうか。俺、前世で死んだ時に神様に会ったんだわ)
唐突だった。テレビのチャンネルが切り替わるように、前世の記憶と、その死に際に「退屈しのぎに力をやるよ」と笑った神の顔を思い出したのだ。
そしてその瞬間、俺の精神世界……脳の深淵に、一人の「同居人」が目覚めた。
エボルト『……ククク、ハハハハハ! やっと気づいたか、相棒。待ちくたびれたぞ』
脳内に直接響く、軽薄で、それでいて底知れない冷酷さを孕んだ声。
連「……誰だ、お前。俺の脳内に居候してる自覚はあるか?」
エボルト『居候とは失礼な。俺の名はエボルト。この星の連中が聞けば、絶望して膝をつく名前だ。だが、今の俺はお前の魂に寄生……いや、”共生”している状態だ。お前が思い出した「特殊能力」の正体であり、力そのものだよ』
エボルト。自らを地球外生命体だと名乗るその意識は、俺が前世の記憶と共に得た『ビルドドライバー』という変身ベルトのシステムとリンクしていた。
それから三週間。
俺は家でひたすらエボルトと対話し、自身の内に宿る「力」の調整を行っていた。
エボルトは最高にロックな奴だった。地球を壊すだの、文明を喰らうだの、物騒なことを平気で口にする。だが、今の彼は肉体を失い、俺という器の中でしか存在できない。
エボルト『連、この星は退屈だ。だが、お前が持っているその「変身」の力と、俺の知恵があれば……この世界は最高の遊園地になると思わないか?』
連「違いない。……ま、とりあえずは目の前の「停学明け」をどう攻略するかだな」
そんな会話をしていた時だった。
我が家のインターホンが鳴った。
ガチャリ、とドアを開けると、そこには見上げるような体格の男が立っていた。
隙のない黒のスーツ。短く切りそろえられた髪。そして、隠しきれないプロの軍人の空気。
烏丸「暁連君だな。防衛省の烏丸だ。……急な訪問で済まないが、君に話がある」
俺はニヤリと口角を上げた。ゲームのイベントフラグが立った時の、あの高揚感が胸を突く。
連「防衛省? 停学中のガキに、随分と大層なご指名じゃねえか」
烏丸「……中二で五十人の不良を病院送りにし、かつ無断欠席を繰り返しながら全教科満点を維持する少年だ。普通の中学生ではないことは調査済みだ」
烏丸と名乗った男は、俺の部屋に入ると、一枚の写真を取り出した。
そこに写っていたのは、月を七割ほど破壊したとされる「三日月」の残骸と……黄色い、タコのような奇妙な生物だった。
烏丸「この超生物を知っているか」
連「ニュースで見た。月をぶっ壊した犯人だろ?」
烏丸「そうだ。そしてこの生物は来年三月、地球も破壊すると宣言している。現在はなぜか、椚ヶ丘中学校の3年E組で担任教師をしている。我々防衛省は、生徒たちにその暗殺を依頼しているんだ」
烏丸の目は真剣そのものだった。
国家機密。地球の危機。暗殺。
普通のガキなら震え上がるか、冗談だと笑い飛ばす内容だ。
だが、俺の脳内でエボルトが狂喜の声を上げた。
エボルト『ククク……面白い! なあ連、聞いたか? 地球を壊そうという不届き者が、俺たちの他にいるらしい。それも、最高速度マッハ20で動くタコだそうだ』
俺は、烏丸の言葉が終わる前に即答した。
連「いいぜ。その暗殺、引き受ける」
烏丸「……即答か。覚悟はできているのか?」
連「覚悟? いや、そんな高尚なもんじゃねえよ。最高に面白そうな”クソゲー”だと思っただけだ」
俺は立ち上がり、机の上に置いてあった蒼いボトル……「ドラゴンフルボトル」を指先で弄んだ。
連「ただ、一つ言っておくことがある。……烏丸さん、あんたが探してる『地球外生命体』は、そのタコだけじゃないぜ」
烏丸「……何?」
俺は一歩前に出る。
エボルトに意識のチャンネルを半分渡す。
次の瞬間、俺の瞳にどす黒い光が宿り、口調が変化した。
エボルト「よお、防衛省の。このガキの体には、俺っていう先客がいてね。……『エボルト』。そう呼んでくれ」
烏丸の表情が凍りついた。プロとしての本能が、俺……いや、俺の中にいるエボルトの危険性を察知したのだろう。彼は瞬時に戦闘態勢に入りかけるが、俺はすぐに意識を引き戻し、元の不敵な笑みに戻した。
連「驚かせたな。まあ、二重人格みたいなもんだと思ってくれればいい。とにかく、俺はそのタコ……殺せんせーだっけか? そいつを殺す戦力としては、最適だってことだ」
烏丸はしばらく無言で俺を凝視していたが、やがて短く溜息をついた。
烏丸「……信じがたいが、君の今の『変貌』は、常人のそれではない。……いいだろう。暁連、君のE組への編入を許可する。ただし、君の中にいる『それ』が暴走しないよう、常に我々の監視下に置くことになるが」
連「好きにしろよ。監視されるのは慣れてる。……それより、楽しみだな。椚ヶ丘の裏山」
烏丸が去った後、俺はビルドドライバーを腰に当てた。
カチリ、という機械音が部屋に響く。
連「なあ、エボルト。賭けようぜ」
エボルト『ほう、何をだ?』
連「どっちが先に、あのマッハ20のタコを料理するかだ。俺が勝ったら、お前はしばらく俺のゲームのレベリングを手伝え」
エボルト『クハハハハ! いいだろう、相棒。もし俺が勝ったら……この星の文明の最後を、特等席で見せてやるよ』
二月三日生まれ、十四歳。
趣味はゲーム。特技は戦闘。
そして、体内に銀河最凶の地球外生命体を宿した暗殺者。
俺の、そしてエボルトの、狂った中学三年生が幕を開けた。
連「さて……まずは挨拶代わりだ。誰からイジり倒してやるかな。業、速水あたりは驚いてくれるだろうか」
俺はワインレッドの髪をグイッとかき上げ、紫の瞳をギラつかせた。
E組という名の戦場。そこは俺にとって、世界で最も贅沢なゲーミングルームになるはずだ。
連「変身」
小さな声と共に、部屋の中に蒼い炎のようなエフェクトが揺らめいた。
それは、これから始まる波乱の序曲に過ぎなかった。
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