暗殺教室 地球外生命体と超生物を殺す   作:ぐちロイド

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第11話 ざわめきの伝播 波紋の広がり

椚ヶ丘中学校本校舎。そこは、選ばれしエリートたちが「勝利」という美酒を啜り、敗者を「E組」というゴミ捨て場へ追いやることで自らの価値を確認する、冷徹なヒエラルキーの頂点だ。

 

期末テストの成績が掲示板に張り出されたその日、廊下を支配していたのは、勝利の凱歌ではなく、凍り付くような「困惑」と「屈辱」の静寂だった。

 

生徒a「……ありえない」

 

誰かが、震える声で呟いた。

掲示板の最上段。学年1位の欄に刻まれているのは、五英傑のリーダーである浅野学秀の名前ではない。

 

**【第1位:暁 連(3年E組)】**

 

その文字が、本校舎の生徒たちのプライドを無慈悲に踏みにじっていた。

 

---

 

 

 

生徒A「暁連って……あの停学明けの?」

 

生徒C「何かの間違いじゃないのか? あいつは暴力沙汰でエンドのE組に落ちた、ただの不良だろ!」

 

生徒B「しかも聞いたか? 物理と数学、あいつ三十分どころか三分で解き終わって、残りの時間ずっと寝てたらしいぞ」

 

廊下は、まるで火薬庫に火が投げ込まれたような騒ぎになっていた。

特に、今回こそはE組を完全に叩き潰すと豪語していた「五英傑」たちの衝撃は計り知れない。

 

小山「……三分? ふざけるな、あの問題を三分でだと!?」

 

数学の天才、小山夏彦が掲示板を拳で叩いた。彼は今回、理事長が用意した「大学レベルの難問」に翻弄され、数問を落としている。それを、E組の「ゴミ」が瞬殺したという事実は、彼のアイデンティティを根底から揺るがすものだった。

 

生徒J「暁不動産の御曹司だか何だか知らないが、所詮は親の七光りだと思っていたのに……」

 

生徒G「いや、あいつの本性は『戦闘狂』だ。去年のあの事件、見ていただろう? 相手が五十人いようが、無表情で肉の山を築き上げたあの怪物を」

 

生徒たちの脳裏に、かつて本校舎を震撼させた暁連の「暴威」が蘇る。

端正な顔立ちをワインレッドの髪で彩り、冷徹な紫の瞳で周囲を見下す少年。彼は学力においても、暴力においても、この学校の「枠」に収まりきらない異物だったのだ。

 

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生徒会室。

外の喧騒とは対照的に、そこには重苦しい沈黙が流れていた。

部屋の中央、豪華な椅子に座る浅野学秀は、手元の成績表をじっと見つめていた。

 

498点。

凡百の生徒からすれば神の領域だが、暁連の「500点」の前では、敗北の証明書でしかない。

 

小山「……学秀。あいつ、本気を出したようだな」

 

五英傑の一人がおそるおそる声をかけるが、学秀は無言のまま、手に持っていた高級な万年筆をミシリと軋ませた。

 

学秀「……暁連。あの日、父さんに逆らってE組に落とされた時、彼は笑っていた。『これでこの退屈なゲームも少しは難易度が上がる』とね」

 

学秀の脳裏に、連との最後の会話がフラッシュバックする。

本校舎という整備された「イージーモード」を捨て、あえて底辺へと降りていった怪物。

 

学秀「彼は僕たちを敵とも思っていない。ただ、この学校というシステムを、最高難易度で攻略(クリア)しようとしているだけだ。……屈辱だな。僕たちが死に物狂いで守っている『1位』という場所を、彼は片手間の暇つぶしで奪っていった」

 

学秀の瞳に、激しい対抗心と、それ以上に深い「恐怖」が宿る。

自分たちがどれだけ努力を積み重ねても、暁連という男は、常にその一歩先で「飽きた」という顔をして待っているのだ。

 

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一方、理事長室。

淺野學峯は、窓の外から見える裏山の旧校舎を見つめながら、優雅にコーヒーを口にしていた。

デスクの上には、暁連の満点の答案用紙。

 

學峯「……ヌルフフフ、とは笑わないのかい? 殺せんせー」

 

独り言のように呟く理事長の背後には、誰もいない。だが、彼は確かに感じていた。E組という実験場で、自分が想定した以上の「化学反応」が起きていることを。

 

學峯「暁連。……君の母親、玲奈さんからは『息子を存分に遊ばせてやって』と言われていたが……。まさか、私の作った試験(迷宮)を、入り口で爆破して通り抜けるとはね」

 

理事長は、連の答案に記された完璧な論理の構築をなぞる。

そこには迷いがない。まるで、最初から正解を知っているかのような、あるいは「世界そのものを書き換えている」かのような、不気味なほどの正確さ。

 

學峯「……面白い。E組という環境が、君という『刃』をどこまで研ぎ澄ませるのか。あるいは、君の中に住まう『何か』が、この学校を飲み込むのか」

 

理事長の瞳が、獲物を狙う蛇のように細められた。

 

---

 

 

 

本校舎の食堂。

いつもはE組を嘲笑う会話で溢れる場所も、今日はどことなく居心地が悪い。

「暁連が1位」

その事実は、本校舎の生徒たちが心の拠り所にしていた「E組=劣等生」という大前提を、根本から破壊してしまったからだ。

 

 

絶望に近い嫉妬が、生徒たちの間に蔓延していく。

彼らにとって暁連は、もはや「倒すべきライバル」ではなく、触れてはいけない「別次元の災厄」になりつつあった。

 

全校生徒の視線が、物理的にも精神的にも、裏山の旧校舎へと引き寄せられていく。

そこには、自分たちには決して手の届かない「自由」と「力」を謳歌する、ワインレッドの髪の魔王が君臨しているのだ。

 

椚ヶ丘中学校本校舎。

かつて絶対的な正解の場所だったそこは、暁連という一人の「イレギュラー」によって、今、静かに崩壊の足音を聞き始めていた。

 

學峯「暁連……次は、暗殺という戦場で君を査定させてもらおう」

 

理事長の呟きだけが、主のいない部屋に冷たく響いた。

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