暗殺教室 地球外生命体と超生物を殺す   作:ぐちロイド

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第16話 紛れ込む世界のバグ

京都の古い街並みを置き去りにし、マシンビルダーの放つ蒼白い排気光が夜の帳を切り裂く。連はヘルメットのバイザーの奥で、紫の瞳を凍りつくような冷徹さで尖らせていた。

 

スマートフォンの画面には、自らハッキングして導き出した廃棄倉庫の座標データが、紅いドットとなって点滅している。奥田の端末へその位置情報を強制同期させ、渚や業たちへ一斉に共有したのが数分前。

 

連(……待ってろよ、クソバグどもが)

 

脳内のエボルトが『ククク……いいぞ連、脳波が最高に濁っている。ハザードレベルが勝手に跳ね上がっていくぞ』と愉悦の声を響かせる。連はそれを無視し、さらにスロットルを捻り込んだ。重力を無視したマシンビルダーの駆動輪がアスファルトを削り、一瞬にして目的の廃倉庫群へと滑り込む。

 

キィィィッ!!!

 

激しい制動音と共にバイクを滑らせ、連が現場に降り立った瞬間、倉庫の重い鉄扉はすでに内側から派手にこじ開けられていた。

 

連「――遅かったか」

 

連が内部へ足を踏み入れると、そこにはすでに「決着」の光景が広がっていた。

床には、他校の不良生徒たちが数十人も、文字通りピクリとも動けずに転がっている。彼らの顔はどれも、恐怖と屈辱、そしてなぜか完璧な「美肌手入れ」を施されたかのような、奇妙にツヤツヤとした質感に変わっていた。

 

渚「連君!」

 

神崎と茅野の二人を保護し、駆け寄ってきた渚が声を上げる。その横には、すでに得物を収めて不敵に笑う業、そして涙を浮かべて安心する奥田の姿があった。

 

連「……ケッ、タコの野郎、マッハ20をフル活用しやがったな」

 

連の視線の先には、巨大なしおりを片手に、顔を「緑の特大ナメプ模様」に染めた殺せんせーが立っていた。

 

 

殺センセー「ヌルフフフ! 連君、遅かったですねぇ。先生、修学旅行のしおり第1243条『生徒が拉致された場合の迅速な救出とスキンケアについて』に基づき、すでに彼らには教育(手入れ)を済ませておきました」

 

連「無駄にページ数が多いと思ったら、そんな状況まで想定してんのかよ……」

 

連が呆れたように息を吐き、神崎たちに怪我がないかを確認して視線を不良のリーダーへと戻した。まさにその時だった。

 

――ヒュンッ!!!

 

静寂を切り裂く、一筋の鋭い風切り音。

それは、明らかに殺せんせーの脳門を正確に撃ち抜く軌道で放たれた、超高音速の「弾丸」だった。

 

殺センセー「ヌヤッ!?」

 

殺せんせーはマッハ20の反応速度で首を傾げ、弾丸を辛うじて回避する。弾丸は背後のコンクリート壁に直撃し、凄まじい火花を散らして爆発した。対先生用物質ではない、本物の「殺意」が込められた特殊弾。

 

業「誰だ……!?」

 

業が瞬時に身構え、渚が女子たちを庇うように一歩引く。

 

倉庫の奥、暗がりの天井から、シュウゥゥゥ……と不気味な紫色の蒸気が噴き出してきた。

煙を割りながら、ゆっくりと姿を現したそのシルエットに、連の網膜が激しく揺れ動く。

 

蝙蝠(コブラではない、禍々しい翼)の意匠を模した漆黒のアーマー。バイザーの奥で不気味に明滅する、赤く鋭い一対の眼。その手には、連も見覚えのある銃剣――スチームブレードが握られていた。

 

連「……嘘だろ。何で、お前がここにいる……」

 

連の喉から、乾いた声が漏れる。

 

**ナイトローグ。**

 

東都の政府特殊部隊、あるいはファウストの幹部であるはずの存在。この世界(暗殺教室)のタイムラインに存在するはずのない、純然たる「バグの権化」が、一言も喋らずにそこに立っていた。

 

ナイトローグは、殺せんせーには目もくれず、地面に倒れて震えている不良生徒のリーダーへと、音もなく歩を進める。

 

不良「ひ、ひぃっ……な、なんだお前、くるな……!」

 

不良のリーダーが恐怖に顔を歪める中、ナイトローグは容赦なくスチームブレードの刃をその胸元へと突き刺した。

グサッ、という生々しい肉体破壊の音が響く。だが、流血はなかった。代わりに、刃の隙間から、禍々しい紫色の気体――**ネビュラガス**が、不良の体内へと猛烈な勢いで注入されていく。

 

不良「ガ、アアアアアアッ!? あ、熱い、身体が……溶けるぅぅぅッ!!」

 

連「おい、やめろ!!」

 

連が叫び、飛び出そうとする。

しかし、ネビュラガスの過剰投与により、不良生徒の肉体は一瞬で分子レベルで変質を始めた。皮膚がボコボコと膨れ上がり、人間の骨格を無視して巨大化していく。全身が針のような外骨格に覆われ、意思を持たない化け物――**ニードルスマッシュ**へと変貌を遂げた。

 

「グオォォォォォォンッ!!」

 

咆哮を上げるスマッシュ。それを見届けたナイトローグは、再び身体から紫の蒸気を噴射すると、次の瞬間には影も形もなく、その場から完全に姿を消していた。

 

杉野「な、何なんだよ今の……! 人間が、化け物に……!?」

 

杉野が恐怖でガタガタと震え、奥田はショックのあまり座り込む。業の目からも、いつもの余裕が消え失せていた。

 

渚「連君、あれは一体……!」

 

渚の問いかけに、連は自身のカバンへ手を伸ばしながら、ただ一言、冷徹に言い放った。

 

連「おいタコ。今すぐ渚たちを連れてここから離れろ。……遠くまで逃げろ、マッハでな」

 

殺センセー「連君、しかし、あの生物は生徒たちに危険が――」

 

連「足手まといなんだよ! こいつは、俺の世界の『バグ』だ。あんたらの対先生用ナイフじゃ、掠り傷一つ付けられねえよ! いいから早く行け!!」

 

連の尋常ではない怒声に、殺せんせーは一瞬だけ目を見開いたが、すぐに「……分かりました。皆さん、先生の触手に捕まりなさい!」と指示し、渚たちを抱えてマッハの速度で倉庫から離脱した。

 

業「連!!」

 

 

業の叫び声が遠ざかる。

 

静まり返った倉庫に残されたのは、咆哮を上げるニードルスマッシュと、暁連の二人だけ。

 

連「……ハッ。京都ステージの隠しボスにしては、悪趣味が過ぎるな、エボルト」

 

エボルト『クハハハ! 面白くなってきたじゃないか。ファウストの残党か、あるいは世界の歪みが産んだ幻影か……。どちらにせよ連、お前のハザードレベルを示す絶好の機会だぞ?』

 

連「言われなくても……全クリしてやるよ」

 

連は異空間のストレージを解放し、腰に重厚な変身ベルト――**ビルドドライバー**を装着した。

カチャニッ、と腰に固定される金属音。

 

続いて、右手に現れたのは、蒼い龍の意匠を持つ自立型支援メカ、**クローズドラゴン**。そして左手には、眩い光を放つ**ドラゴンフルボトル**。

 

連はドラゴンフルボトルを、強烈なスナップを利かせて何度も振り始めた。

シャカシャカシャカシャカ……!

ボトルの中で液体が揺れる音が、倉庫の壁に反響する。

 

連「……湧き上がってきたぜ。俺のマグマがな」

 

ボトルのキャップを回し、クローズドラゴンの背中のスロットルへと装填する。

 

『DRAGON!』

 

クローズドラゴンが「ギャオーッ!」と電子音の咆哮を上げ、その翼を広げる。連はそれを、ビルドドライバーの中央スロットへと力強く突き刺した。

 

カチッ!

 

『WAKE UP BURNING! GET CROSS-Z DRAGON! YEAH!』

 

ドライバーから、ドクドクと脈打つような蒼いエネルギーの奔流が噴き出し、連の身体を囲むようにランナー(成形型)が展開される。

 

 

連はドライバーのレバーを、猛烈な速度で回転させ始めた。

クルクルクルクル! とギミックが回転し、蒼い龍の幻影が倉庫の天井を舞う。

 

『ARE YOU READY?』

 

連「できてるぜ……変身!」

 

『極炎のプリンス! クローズドラゴン! イエーイ!』

 

ドゴォォォォンッ!!!

 

展開されたアーマーが連の肉体へと完璧に密合し、蒼き炎の爆風がニードルスマッシュを吹き飛ばす。

湯煙の中から現れたのは、蒼と白の装甲を纏い、背中に炎の翼を背負った戦士――**仮面ライダークローズ**。

 

クローズ(連)は、首を軽く横に振って骨を鳴らすと、不敵に拳を突き出した。

 

連「さあ……お前の仕様(スペック)、俺がガチで検証してやるよ!」

 

蒼き炎を纏った拳が、スマッシュに向かって真っ直ぐに構えられた。修学旅行の裏で始まる、もう一つの「命懸けのゲーム」の幕が、今、完全に上がった。

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