暗殺教室 地球外生命体と超生物を殺す   作:ぐちロイド

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第9話  殺せんせーの「分身手入れ」 深淵のボードゲーム

土日という「現実逃避」の休日が終わり、忌々しい月曜日がやってきた。

椚ヶ丘中学校では月に一度、全校集会が行われる。本校舎の体育館まで、E組の生徒たちはあの険しい山道を徒歩で往復させられ、本校舎の連中からは差別と嘲笑の視線を浴びせられる。

 

連「……ハッ、誰がそんな不毛なイベントに参加するかよ」

 

連は最初から「全校集会」というイベントをスキップすることに決めていた。

朝、家を出た彼は山へは向かわず、駅前の繁華街にある行きつけのゲーセンへと足を向けた。

 

連「……よお、エボルト。今日の朝イチは格ゲーの気分か? それとも新作の音ゲーか?」

 

 

エボルト『ククク……。お前の指の運動に付き合うのも悪くないが、あの「タコ」の監視の目を潜り抜けるスリルもゲームのうちだな』

 

午前中の数時間を、薄暗いゲーセンでハイスコアを叩き出すことに費やし、全校集会が終了したであろう絶妙なタイミングで、連はマシンビルダーを駆って裏山を駆け上がった。

 

---

 

 

 

キィィッ、と静かな校舎の裏でブレーキ音を響かせ、連はバイクを空間に収納すると、何食わぬ顔で3年E組の教室のドアを開けた。

ちょうど全校集会から戻ってきた生徒たちが、本校舎での嫌がらせに愚痴をこぼしながら席に着く、休み時間のタイミングだった。

 

連「おー、お疲れさん。集会、退屈だったろ?」

 

連が適当な挨拶を投げかけると、教室内の空気が一変した。

 

前原「……暁! お前、またサボりかよ!」

 

 

渚「連君、全校集会に来なかったから、烏丸先生が困った顔してたよ?」

 

渚や磯貝が苦笑いする中、菅谷や岡島、前原といった男子連中が、殺気立った(あるいは羨望の)眼差しで連を囲い込んだ。

 

前原「そんなことより連! お前、金曜日の放課後……マジでバイクで山を降りてったよな!?」

 

岡島「俺、見たぞ! すげえ加速で崖を飛んでったのを!」

 

菅谷「あれ、どこのメーカーのバイクだ? そもそもお前、免許はどうしたんだよ!」

 

質問の猛攻に、連は耳を指でほじりながら自分の席に深く腰掛けた。

 

連「……ああ、あれか。烏丸には許可をもらってるって言っただろ。特例だ、特例。免許についても『特殊な訓練を受けたオペレーター』って名目で、防衛省が書類を通してる」

 

菅谷「ずるすぎるだろ……! 財閥の御曹司で、バイク乗りで、しかも戦闘狂って……。設定盛りすぎなんだよ、お前は!」

 

菅谷が泣き言を漏らす。

 

莉桜「まあまあ。連が本気で山道を毎日歩く姿なんて想像できないしね」

 

中村莉桜がニヤニヤしながら、速水凛香を連れてやってきた。

 

莉桜「凛香も言ってたよ。『あんな無駄な機動力、暗殺に回せばいいのに』って」

 

速水は少し顔を赤くして目を逸らしたが、「……効率が悪いのは嫌いなだけ」と短く呟いた。

 

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そこへ、シュバババッ! という凄まじい風圧と共に、黄色の超生物が教室になだれ込んできた。

 

殺センセー「ヌルフフフ! 皆さん、全校集会での侮辱に耐えた皆さんには、先生から特別なプレゼントがあります!」

 

殺せんせーがそう宣言した瞬間、彼の姿がブレ始めた。

マッハ20の超高速移動によって生み出される、精巧な「分身」。

 

殺センセー「来たるべき期末テストに向けて、先生が一人一人の苦手科目を徹底的に指導します! 名付けて『分身手入れ:試験攻略編』です!」

 

教室中に、それぞれ違うハチマキを巻いた殺せんせーが現れた。

岡島にはエロ本をエサにした英語の単語暗記、菅谷には芸術的感性を活かした古文の読解――。一人一人の弱点を完璧に把握した、超効率的な個別指導。

 

そして、最後の一人が連の机の前に現れた。

 

殺センセー「さあ、連君! あなたは数学と物理は完璧ですが、国語の漢字練習と、社会の暗記が疎かになっています! さあ、この特製ドリルをマッハで解きなさい!」

 

連は目の前に突き出されたドリルを、一瞥もせずに横に払った。

 

連「断る。必要ないね」

 

殺センセー「ヌヤッ!? 断る!? 連君、期末テストで本校舎の鼻を明かしたくないのですか!?」

 

連「鼻を明かすのは当然。だけど、こんな作業ゲーをやる必要はない。俺は一度見たものは忘れないし、論理的に導き出せる答えを暗記するのは時間の無駄だ。実際、俺はノー勉で毎回100点取ってるだろ?」

 

殺せんせーの顔が、悔しそうな「紫の×点」模様になる。

 

殺センセー「……う、うぬぬ……。確かに連君の成績は完璧ですが……。しかし、授業をサボってまでやるべきことが他にあるのですか?」

 

連はニヤリと口角を上げ、カバンの中から一つの箱を取り出した。

それは、世界的に有名な超高難易度の戦略ボードゲームだった。

 

連「……代わりに、これで勝負しようぜ。殺せんせー」

 

---

 

 

 

殺センセー「ボードゲーム、ですか?」

 

連「そう。ただの暗記テストより、こっちの方が『脳の暗殺訓練』になるだろ? 運の要素を排除した、純粋な戦略シミュレーションだ。……あんたが分身して他の奴らを教えてる間、本体(オリジナル)の意識を半分、俺との対局に割いてみろよ」

 

教室中の注目が、二人に集まった。

 

前原「おいおい、連。殺せんせーを相手にボードゲームで勝負か?」

 

寺坂「マッハ20の思考能力に、勝てるわけないだろ……」

 

業が興味深げに立ち上がり、連の背後に回った。

 

業「面白そうだね。……連、負けたら罰ゲームね」

 

殺センセー「……ヌルフフフ。いいでしょう。先生、受けて立ちますよ! ですが連君、先生は分身していても思考の精度は落ちませんよ?」

 

対局が始まった。

連は淀みない手つきで駒を動かしていく。

それは、ただのゲームではなかった。連の中にいるエボルトが、盤面全体の可能性を瞬時に計算し、連の脳に直接「最適解」の断片を流し込んでいく。

 

連「……左翼を捨てて、中央を突破する。……甘いな、タコ」

 

殺センセー「ヌホッ!? ここでその一手を……!?」

 

殺せんせーの顔に、驚愕の縦線が入る。

分身して他の生徒たちを教えている殺せんせーたちが、一斉に「あわわわ」と狼狽し始めた。

 

莉桜「先生、集中して! さっきから英語のスペル、間違えてるわよ!」

 

中村の突っ込みも耳に入らないほど、殺せんせーの思考は連の繰り出す「罠」の迷宮に引きずり込まれていた。

 

連は、あたかも冷徹なAIのように、あるいは獲物を追い詰める捕食者のように、着実に殺せんせーの王を包囲していく。

 

連「……あんたの弱点は、マッハ20で『動ける』からこそ、一つの盤面をじっくり俯瞰する意識が散漫になることだ。……詰み(チェックメイト)だ」

 

連が最後の一手を打った瞬間、教室に静寂が訪れた。

 

盤面の上では、殺せんせーの軍勢は完全に壊滅し、退路を断たれていた。

分身していた殺せんせーたちが、ポフンッ! と音を立てて消え、最後の一人となった「本体」が、がっくりと膝をついた。

 

殺センセー「……ま、負けました……。先生、暗算の速度では負けない自信がありましたが、これほどまでに先を読まれるとは……」

 

連「……ハッ。いい暇つぶしになったぜ」

 

連は駒を片付けながら、満足げに鼻を鳴らした。

周囲の生徒たちは、信じられないものを見る目で連を見つめている。

 

エボルト『連、お前も性格が悪いな。わざと一手遅らせて、奴に希望を持たせてから叩き落とすとは』

脳内のエボルトが愉快そうに笑う。

 

連「……攻略ってのは、相手が一番自信を持ってる場所で勝ってこそ、意味があるんだよ」

 

連はワインレッドの髪をかき上げ、窓の外の景色を眺めた。

期末テスト、そして暗殺。

無理ゲーであればあるほど、彼の血は熱くたぎる。

 

連「……さて。次はどんな『クソゲー』を俺に見せてくれるんだ、殺せんせー?」

 

夕暮れに染まり始めた教室で、連の紫の瞳は、次の標的を既に捉えていた。

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