─よかった。
失くしたと思ってたんだ。
アンタが持っていてくれたのか。
ありがとう─
「…とても大切にしてるものなんだね」
─ああ。このクマの根付は特にね。
アンタならわかるだろう?─
「…なんとなくは」
─…アンタも私と「ご同類」か?─
「いいや、君とは違うよ。
旅人ではあるけどね」
─そうだな。アンタは違うようだ。
アンタは何のために旅をしてるんだ?
「探しているんだ。…本当はもう、
探してはいけないのかもしれない。
でももう一度、会いたいんだ。
どの世界にも『彼女』はいなかった…」
─そうか。アンタ、世界と世界を渡っているのか。
たった一人を探して。
…この無数の世界のどれかにいるとしても、
途方もない旅だぞ。
この満天の数多の
それでもアンタは征くのか?─
「ああ。俺にはもうそれしか存在する理由がない」
─アンタの旅は長く永く
果てしないものなんだろうな。
私はもう『ゴールデンレコード』は
果てに届け終えたのでね。
気ままに旅をしているよ。
気まますぎて本来還るべき
『0.12ピクセルの青』も
見失ってしまったといったところだが。
まあ、なんとかなるさ─
「君の旅は、『届ける』ための旅だったのか」
─ああ。黄金の旅路はそのためのものだった。
静寂から続く、深い衝撃とは違う旅路。
『ゴールデンレコード』は
新たな夢の旅路になり、凱旋への覇道になり、
荒海の航路になり、続いていくだろう─
「それは…本当に果てしない旅だな」
─もう、私の旅ではないさ。
しかしアンタ、平気なのか?
何もかもがもうボロボロじゃないか。
まあボロについては
私も人のことは言えないがな。
色んな世界を見てきたんだろう?
旅の話を聞かせてほしいもんだが─
「…いくつもの世界を見てきたよ。
だがもう忘れてしまった。
彼女がいない世界のことは…。
…君と出会った思い出もやがて消える」
─『雨の中の涙のように』?─
「…終わりの時が来るとしたら
俺自身が擦り切れて消えてしまう時だ。
なにしろ諦めが悪い性分でね」
─だろうな。
アンタはそういう人だ─
「…あまり時間はないようだけどね。
そもそも、俺はもう存在してはいけないらしい」
─誰がそう決めたか知らないが、
アンタは今こうして立って歩いてるぞ。
存在しているじゃないか─
「…まだ旅を続けていいということかな」
─そうだろうな。
それについさっき自分で言ったんだろう。
諦めが悪い性分だ、と─
「それもそうだ。俺の旅の終わりは俺が決める」
─そうさ。誰かに決められるもんじゃない。
…そうだな、アンタの旅にささやかながら
私から餞別を送ろう。
クマを見つけてくれた
礼もしなくちゃならんしな─
『───』、これがアンタの名前だよ─
「…‼ああ、そうだ、
俺は昔、そんな名前だった…!」
─アンタ、よほど長い旅をしてきたんだな。
自分の名前すらも忘れちまうほどに。
まさか、尋ね人の名前は忘れちゃいないだろうな?
「彼女の名前は…『タマモクロス』だ」
─そっちは忘れてなくて安心したよ。
うん、やっぱり「名前」を思い出したら
アンタちょっとはしゃきっとしてきたぞ。
さっきまで死人みたいな顔をしてたからな─
「ああ、これでまだ、当分は旅を続けられるよ」
─偉大なる戦士よ、どうか、いい旅を。
貴方が旅路の果てに
その人と会えますように─
「…ありがとう。
君も、良い旅を。…『ステイゴールド』」