連星のアクルクス ~星渡る稀人~   作:南天 ヤスカド

1 / 8
旅人たちの邂逅

 ─よかった。

  失くしたと思ってたんだ。

  アンタが持っていてくれたのか。

  ありがとう─

 

「…とても大切にしてるものなんだね」

 

 ─ああ。このクマの根付は特にね。

  アンタならわかるだろう?─

 

「…なんとなくは」

 

 ─…アンタも私と「ご同類」か?─

 

「いいや、君とは違うよ。

 旅人ではあるけどね」

 

 ─そうだな。アンタは違うようだ。

  アンタは何のために旅をしてるんだ?

 

「探しているんだ。…本当はもう、

 探してはいけないのかもしれない。

 でももう一度、会いたいんだ。

 どの世界にも『彼女』はいなかった…」

 

 ─そうか。アンタ、世界と世界を渡っているのか。

  たった一人を探して。

  …この無数の世界のどれかにいるとしても、

  途方もない旅だぞ。

  この満天の数多の世界たち(ほしぼし)を見ろよ。

  それでもアンタは征くのか?─

 

「ああ。俺にはもうそれしか存在する理由がない」

 

 ─アンタの旅は長く永く

  果てしないものなんだろうな。

  私はもう『ゴールデンレコード』は

  果てに届け終えたのでね。

 

  気ままに旅をしているよ。

  気まますぎて本来還るべき

  『0.12ピクセルの青』も

  見失ってしまったといったところだが。

  まあ、なんとかなるさ─

 

「君の旅は、『届ける』ための旅だったのか」

 

─ああ。黄金の旅路はそのためのものだった。

  静寂から続く、深い衝撃とは違う旅路。

  『ゴールデンレコード』は

  新たな夢の旅路になり、凱旋への覇道になり、

  荒海の航路になり、続いていくだろう─

 

「それは…本当に果てしない旅だな」

 

 

 ─もう、私の旅ではないさ。

 

  しかしアンタ、平気なのか?

  何もかもがもうボロボロじゃないか。

  まあボロについては

  私も人のことは言えないがな。

  色んな世界を見てきたんだろう?

  旅の話を聞かせてほしいもんだが─

 

「…いくつもの世界を見てきたよ。

 だがもう忘れてしまった。

 彼女がいない世界のことは…。

 …君と出会った思い出もやがて消える」

 

 ─『雨の中の涙のように』?─

 

 

「…終わりの時が来るとしたら

 俺自身が擦り切れて消えてしまう時だ。

 なにしろ諦めが悪い性分でね」

 

 ─だろうな。

  アンタはそういう人だ─

 

「…あまり時間はないようだけどね。

 そもそも、俺はもう存在してはいけないらしい」

 

 ─誰がそう決めたか知らないが、

  アンタは今こうして立って歩いてるぞ。

  存在しているじゃないか─

 

「…まだ旅を続けていいということかな」

 

 ─そうだろうな。

  それについさっき自分で言ったんだろう。

  諦めが悪い性分だ、と─

 

「それもそうだ。俺の旅の終わりは俺が決める」

 

 ─そうさ。誰かに決められるもんじゃない。

  …そうだな、アンタの旅にささやかながら

  私から餞別を送ろう。

 

  クマを見つけてくれた

  礼もしなくちゃならんしな─

 

  

  『───』、これがアンタの名前だよ─

 

「…‼ああ、そうだ、

 俺は昔、そんな名前だった…!」

 

─アンタ、よほど長い旅をしてきたんだな。

  自分の名前すらも忘れちまうほどに。

  まさか、尋ね人の名前は忘れちゃいないだろうな?

 

「彼女の名前は…『タマモクロス』だ」

 

 ─そっちは忘れてなくて安心したよ。

 

  うん、やっぱり「名前」を思い出したら

  アンタちょっとはしゃきっとしてきたぞ。

  さっきまで死人みたいな顔をしてたからな─

 

「ああ、これでまだ、当分は旅を続けられるよ」

 

 ─偉大なる戦士よ、どうか、いい旅を。

  貴方が旅路の果てに

  その人と会えますように─

 

「…ありがとう。

 君も、良い旅を。…『ステイゴールド』」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。