六分街にて
体を鈍らせないために、日課の散歩に出かける。
店番はボンプたちがいるし、お客さんだって多くない…-そんな環境で留守番ばかりは体が鈍る。
あまり遠くに行くと二人が心配するので、いつも六分街をぷらぷらするだけにしているが、それでも私には何もかもが新鮮で、楽しい。
ただ、一つ気になる事がある…やけにまわりが私を見てくる事だ…
例えば雑貨屋141で買い物をしている時、すごい視線を感じる…敵意とか悪意などなら向けられ慣れているし、気にも留めないけれど……この視線は初めてだ。
生暖かいというか…優しいというべきなのか……言うなれば未知のを向けられている。
「おや、ツイッギーちゃん。今日も可愛いねぇ」
「こんにちは、おばあさん…お世辞でも嬉しいわ」
「相変わらず謙虚なんだから…そうだ、この間のお礼…前にうちの孫と遊んでくれたでしょ?これ良かった食べて」
わたぱちキャンディー…と書かれた袋を渡された。
「ありがとう、おばあさん…後で頂くわね」
「いいえ〜こちらこそ。そうだ、これも持って行って!これも、ああ、後これも!最近の子はこういうのも好きでしょう?これもあげるわ!」
初めは手のひらで済む量だったのお菓子が、気づけば前が見えなくなるほどに積み上がっていく。
「あの、ちょっと……!こんなに貰うほど、たいしたことしてないのに……」
「そうは行かないわ!この間だって荷物運びを手伝ってくれたのにお礼はいいなんて言って……あなたくらいの年頃は、無理して我慢なんてせず、もっと欲しがって良いのよ?」
「我慢なんてしてないから…安心して…」
……どうしたものかしら……いくら言っても、聞いてくれそうにない……置く場所なんてないし……
すると、その様子を見かねてか今度は近所に住んでいるおばさまがこちらに近づいてきた。
「まったく、ウメおばあさん!それじゃツイッギーちゃんが持ちづらいでしょ?……この紙袋をあげるから…これに詰めて持って帰りなさい」
「いえ、渡すのを止めて欲しいんですが」
助けかと思ったら増援だった。
「なんだいその顔は?お菓子をもらってから口元がふにゃふにゃになってるよ?…嬉しいのが全く隠せてないじゃないか…トメ婆さんが言ってるように遠慮なんてしないで貰っちまいな」
…ふにゃふにゃなんて…私はこれで元軍人よ…そんな子供みたいな顔なんて……するはず無い。
「……気のせいです」
「ありゃ、今度は膨れちまった……ツイッギーちゃんは、表情豊かでかわいいね……ほら、悪かったよ…紙袋にプリンも3人分入ってるから許しておくれ」
「駄菓子もね、ツイッギーちゃんが好きそうなやつ、追加しておくから、機嫌直してちょうだい」
頭を軽くポンポンして、二人はニコニコとしている……私、そんなに子供に見える……?
「じゃあね、ツイッギーちゃん」
「またね〜」
二人の嵐は、ゆったりとした足取りで去って行ってしまった。
「あっ、ちょっと……お礼言いそびれちゃったじゃない」
仕方なく、大量のお菓子袋を持って帰路に着く。あの人たちはなんで私に親切にするのだろう…たかが多少の雑用を手伝っただけなのに…
まあ、今更ね。
「あっツイッギーだ!」
「ツイッギーちゃ〜んこんにちは!」
子供達がこちらに手を振って駆けてくる。
「こんにちは、二人とも…そんなに急がなくても【治安局とドロボー】をしてるわけじゃないんだから逃げたりなんてしないわ。」
最近、子供たちから教えてもらった訓練で、じゃんけんで負けた者が【治安局】となり、相手を捉えて牢へと入れる
……捕まえた人間を逃さないようにしつつ、相手を捕まるという状況判断能力と、瞬発力を鍛えることのできる素晴らしい鍛錬だ。
「でもこの前アンビーが来たらスゲェ速さで逃げたじゃんか」
「それは……彼女とは…会いずらいのよ… …それより、お腹減ってない?たくさんお菓子をもらったから一個だけならあげるわよ」
少し、困る名前が出てきたからできるだけ自然に話題を逸らす。子供はお菓子に弱いとニコが言っていたし、間違いなく釣れる。
「えぇ一個だけ?」
「そんなにあるのに〜?」
「お昼前でしょ?我慢なさい」
時刻は午後一時過ぎ程…そろそろ戻ってあのだらしない兄姉の昼食を用意しないと…
「二人とも、選んだ?」
「うん!おれはこのビックヒレカツ!」
「私は一口チョコ焼き!」
そこそこ、お腹に溜まるものを選んだわね…ご両親に叱られるかも…
「なら約束よ二人とも。食べるのは三時になったら…ね?」
「は〜い、ありがとう!ツイッギー」
「またね〜!」
二人の子供は去って行った。
「……ええ、また」
背中を向ける子供達に軽く手を振り見送った。
ほんと、子供って元気ね。
六分街は本当に不思議な場所だ。私を見ても、汚いものを見る目で見たり、不気味がったりしない……何より、外道の気配がしない。
この街は、どこを歩いても…誰に会っても温かい。
「おっ!ツイッギーじゃんか!スゲェ荷物だな」
「……ビリー?またあの精神トレーニングをしてたの?」
邪兎屋のビリーが、気さくに話しかけてくる。
「……あ〜やっぱお前とアンビーって姉妹だな、前にも似たこと言われたわ」
「そう?隊ちょ……アンビーも変わらずそうで安心したわ」
「アンビー、会いたがってたぞ」
「…そうね…会うたびに四肢の心配と、お金がないのにご飯を奢ろうとするところを直してくれれば、私も会いたいわね」
「マジかよ、そんなことしてたのかアイツ」
私には姉がいる…色々とややこしいし色々と揉めたこともあったが…少なからず私と彼女は和解している。
ただ、過保護なのと金欠なのにハンバーガーを奢ろうとするから会うたびに申し訳なくなる。
「そうだ、ビリー…ニコと今度話がしたいって伝えておいて」
「お、おう…因みに、どんな話しかって聞いてもいいか?」
「溜まったツケについてと、会員証の使い回しの件ね」
「ハ、ハハハ…穏便に頼む!」
「それはニコの出方次第よ」
「ヒッ……それじゃあ俺はここらでお暇させてもらうわ!じゃあな!」
ビリーは、そそくさと逃げるように帰宅する……いつ見ても、忙しないわね…….彼。
そうしてビリーと別れカフェに立ち寄る…
すると偶然居合わせた明けの明星お姉さんと出会い、出会い頭に抱きつかれた。
「ツイッギーちゃん!会いたかったわ!ずっとお礼が言いたくてね…この前私が依頼を仲介した子、ツイッギーちゃんが助けてくれたって……本当にありがとう!」
「大袈裟よ…依頼のついでに居合わせただけだし…あと、街中でバレそうなこと言わないでちょうだい…お互いグレーな職業なんだから」
涙目で私に抱きつき、ひとしきり頭を撫でられ、感謝を告げられ….かと思えば「バイトの時間!」と今度は駆け出して行った。
「またね〜ツイッギーちゃん!今度必ずお礼はするからね!」
「……忙しい人。」
これだけではなかった。ラーメン屋の方に寄ってみると、チョップ大将に話しかけらた。
「ツイッギーちゃんじゃか!この間は皿洗い手伝ってくれてありがとよ!」
「いいえ、いつもアキラとリンがお世話になってるから」
「…くうぅぅッなんていい子なんだ…少しはあの二人もお前さんを見習ってくれねぇかねぇ…」
「大袈裟よ、あなたも、皆んなも…これくらいのことで」
貴方達が私にしてくれたことに比べたら、こんな事恩返しでもなんでもないのに。
みんな、私が四肢が偽物であることも、この眼帯が見えていないわけでもないのに…どうして優しくしてくれるのだろう…
「大袈裟なもんかよ…ほら、良かったらラーメン食べてきな。一杯くらいなら奢るぜ?」
「…お金は、払うわ…その代わり二人を連れてきてもいい?ここで食べるラーメンは大勢の方が美味しいから」
「あたぼうよ、とびきり美味いのを作って待ってるぜ」
「ありがとう、大将。」
そうして、我が家に帰りもらった荷物を二人に預ける。
そのたくさんのお土産を見て、二人はこちらを優しげに見つめてくる。
街で感じたこの生暖かい視線…やっぱり苦手……なんというか、居心地が悪くなる。
「なによ、その目は」
「別に〜…ほんと可愛い妹ができたなぁ〜って」
ニヤニヤと腹立つ顔をして…ああもう、抱きつかないで…暑苦しい…なんで皆んな私に限ってこんなに距離が近くなるのか。
「……それより二人とも、チョップ大将が(私にだけ)奢ってくれるらしいから、お昼にしましょ?」
「それは本当かい?……なんだか悪いな」
「チョップ大将、女の子には優しいからね〜今日はなんにしようかな〜」
「…あまり高いのはダメよ?」
「わかってるって〜」
私とリンでアキラを挟み手を握る…。
この手で暖かさを感じることは出来ないけれど、胸の辺りが妙に落ちつく…
……やっぱり、不思議な街。
理由はさっぱり分からないし、鬱陶しいと思うこともある。
……なのに、嫌いになれない。
本当に……不思議な街。
いかがでしたか?ツイッギーには大勢に囲まれて幸せになってもらいたい……けど本編見る限り主人公の命が危ういんだよなぁ…
次回はなんも決まってないです。
それと沢山の感想、ありがとうございます。
ツイッギーとの再会、どっちが見たい?
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アンビー・デマラ
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11号(ハリン)
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シリアスよりもツイッギー愛されが見たい