翌朝
昨日の痛みがあるのか体を引きずったアレンがやってきた。
流石に訓練にならなかったのでヒールの魔法と誤魔化して治しておいた。
まあ流石に一日で何か変わる訳もなく昨日同様にズタボロになりながら帰宅したアレンを見送り本日の目的を実行する。
昨日ガゼフストロノーフの邸宅に赴いたが留守だったのでこの国で2番目に強い蒼の薔薇に手紙を送るよう冒険者組合に出しておいた。
今日確認したところ午後からなら会えると言うことでそれまでの間この王都を観光することにする。
(道行く人々は笑顔、だが少し不安が現れているな?それに少し路地裏に行けば・・・)
さっきまでの光景と違い浮浪者が所々座っており中には死体じゃないかと勘違いするような人物もいた。
(これが王都、思っていたよりもきな臭いな。)
自身の思っていた王国よりもいっそう人間の汚れを見た気になり水篠は1人足早にその場を去った。
午後になり約束の時間となった水篠は指定された店へ行く
蒼の薔薇の構成は一通り聞いており
神官、戦士、暗殺者が2人、あと魔力系魔法詠唱者の5人
神官は蘇生魔法も使えると聞いており影の君主である水篠からしたらすごく見てみたい人物であった
カランカラン
店の扉を開き店内に入る
店は殆ど人がおらず奥の薄暗い卓に女性が5人座っていた
(あれが蒼の薔薇か)
そう判断した水篠はゆっくりと足音を立てながらその5人に近ずいていく。
まず初めに手前に座っていた忍者装束の少女2人が反応しすぐさまこちらへ顔を向ける。
その後その視線に気づいた3人がこちらに顔を向けた
ガタッ!!
奥に座っていた赤い布を被った仮面の人物と目が会った瞬間、彼女は椅子を蹴飛ばす勢いで立ち上がりそのまま硬直した
「ちょっと?イビルアイ?どうしたのいきなり」
長髪金髪の女性がイビルアイと言う女性に声をかける、が反応はなし
チラリとこちらを向いて再度イビルアイを見る。
水篠がイビルアイになにかしたのではないかと勘ぐっているようである
水篠も唐突のことであと数歩のところで立ち止まり、微妙な空間が出来上がった。
「おい、イビルアイ何突っ立ってんだよ!」
大柄な女性がバシッとイビルアイの体を叩く
それでやっと戻ったのであろうイビルアイはゆっくりと自身の椅子に座り直した
「えーと大丈夫ですか?」
「はい!大丈夫です、先程は失礼しました」
「いえ、大丈夫です」
ようやく自己紹介をし椅子に座ることができた水篠
先程の事は無かったことになったようだ
「それでお話とは」
「実はですね・・・」
その後水篠は自身の武技を取得したいという思いと報酬についてもいくらか払えるという旨を話す
が
「うーん、そうねこういうのはガガーランの方が得かもしれないわね」
「おう!そうだな俺の方が詳しいし教えられるかもしんねえ」
「でも、」「うーん、」
大きく胸を叩くガガーランに対して難しい顔の3人
ティアとティナも2人揃って首を曲げる
(なんかまずいこと聞いたか?)
水篠は1人考え込むとガガーランがズイっと顔を近ずけ質問してくる
「ところでよう、お前童貞か?」
「ぶっ!」
いきなり突っ込んだことを聞くガガーランに思わず飲んでいた紅茶を吹き出す
そろりと3人を見ると気まずそうに視線を合わせないようにしていた
「ガガーランにお願いするということはそういうこと」
「うん、きっとそう」
ティアとティナがうんうんとしている中ラキュースが話を振ってきた
「シュンさんはどうして蒼の薔薇に武技の指示をしてほしんでしょうか?武技なら他にもそれこそガゼフストロノーフ殿に頼めば良いのでは・・・」
水篠はガゼフが留守であったこと、王国で2番目の実力者の蒼の薔薇に武技を教えて欲しいなどを伝えました
それでもラキュースは難しい顔をしながら答えました
「そもそも冒険者同士での手の内を見せ合うのはあまりしません。それに最近龍王国で飛び級されたシュンさんがいきなり蒼の薔薇に入り教えを乞うのは違和感がありますし、何よりこれまで男性からそのような依頼は基本断るようにしておりまして・・・」
水篠は自身の素性がバレていることに驚きつつもなるほどと納得の姿勢を見せた
(なるほど、たしかにそこを見ると怪しく見えるか、それに女性だけのパーティーに男性が一時的にでもいるのは確かにまずい。これは俺の思慮不足だった)
自身の考えが浅かったことを確認しこの依頼は無かったことにしようと水篠が声を出そうとした瞬間今まで黙っていたイビルアイがいきなり立ち上がりラキュースにこう言った
「いや!この依頼確かに蒼の薔薇が承った!」
「「「ええ!!?!?」」」
「え?」
いきなりの事で困惑する5人を尻目にササッと契約書を書きサインをするよう水篠に促す
「ちょ、ちょっと待ってイビルアイ!あなた本当に大丈夫?少し落ち着いて」
「いや大丈夫落ち着いてる。ああこれほどまでにないほどに落ち着いてる!大丈夫だラキュースシュンの事は私が責任を負おう」
その気迫に押され思わず頷くラキュース達
水篠は自身に良い方向に話が進んでいき何故か混乱していた
再度ラキュース達と話し合いイビルアイが水篠の事を責任を負うという形でこの契約を結んだ
sideイビルアイ
今日はラキュースから午後に面会があると聞いている
相手は白金級の冒険者それもソロで飛び級をして上がったと聞く
正直この文面だけでも嫌なことになると思っていた私は重い気持ちを引きずりながら指定された店に入った
数分後扉の開く音と共に1人の男が入ってきた
身長は高め黒髪にどこにでもある軽装備の男だ
これが本当に白金の冒険者かという疑問を胸元のプレートが揺れ動く
あと数歩のところで私はプレートから視線を上げその男の目を見た
ドクン!
っは!
ドクン!
なんだこれは!
思はず立ち上がってしまうぐらいの衝撃を私は受けた
その深淵のような瞳まるで吸い込まれるかのように目が離せなかった
心臓が脈打ち思はず胸に手を当てるほど鼓動が跳ねる
なんなんだこれは!?!?
今までにない事が私の体に起こっていることは確か
気づけばガガーランに叩かれ思はず座っていた私は脳みそをフル回転させて考えていた
(なんだこれは!?まるで生前のように!いやそれ以上に心が脈打っている!それ以上に目が離せない、まるで何らかの異常状態にかかったような、馬鹿な私はアンデットだぞどんなわけない!じゃあこの胸のドキドキは何、シュンを見ると早くなる鼓動はなんだって言うんだ!)
その時右から左に流れていた私の耳が話し声を聞いていた
思わず
バッと立ち上がり言ってしまった
「いや!この依頼確かに蒼の薔薇が承った!」
(何言ってるんだ私は!見ろラキュースなど信じられない目で私を見つめてくる!でもシュ、シュンが困ってたから…)
その後もやつぎで来る質問や疑問に答えつつ契約は結ばれ無事水篠は本来の目的を果たして帰っていった・・・のだが
「それで?イビルアイ、さっきのこと教えてくれるわよね?」
ニコニコしながらも少しトゲのある言い方でこちらに聞いてくるラキュースそれと言葉にはしないがほかの3人も同じようで話せと目線で訴えてくる
「わ、分からないんだ。シュンの目を見るとこう胸がドキドキして血が沸騰したかのように熱くなるんだ、これはなんの魔法だ?私はアンデット異常状態には耐性があるはずなのに・・・」
1人もんもんと考えているとほかの4人は目を丸くして顔を見合せた
「それって、恋だね」
「恋だね」
「ええーうそー!イビルアイが恋しちゃったの!」
「ガハハハ!おもしれーじゃねーか!」
イビルアイの答えにみんなが一斉に驚くと今度は店が閉まるまで喋り倒すのであった。