ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第102話 迷いの森

 クランを作る時に結構な額を冒険者ギルドに払うメリットの一つは、外に音が漏れない会議室を貸してもらえることだろう。

 

 ……今みたいなややこしいことがあった時は、本当に助かるとラシアは思う。

 

 今、会議室にいるのはラシア、ノア、グオン、フウコウの四人だ。入ろうと思えば他のメンバーも入れるが、クランマスターが必ず全員から意見を聞く必要もないとのことだ。

 

 話を聞くのも大事だが、それと同じぐらいトップが引っ張っていくのも大事。そうしないと下が迷うからとのこと。

 

 そういう訳でLLLからは、クランマスターのラシアと、サブマスター兼前衛担当のグオン、後衛担当のノアがいる感じだ。

 

 それで……フウコウから詳しく話を聞いたラシアは頭が痛い。

 

「そういう訳にゃー。ラシアはその辺詳しそうだったから聞きに来たにゃ! 先にシチューを食った奴から消えて、最後に水だけ飲んだガーゼンが消えたにゃ!」

 

 見た目は猫獣人で語尾ににゃがついているから、深刻な話には聞こえないかもしれないが……今までで一番、深刻な話だ。

 

 ゲームの世界では、白ナマズになったプレイヤーを戻す方法は一つ。他のプレイヤーが倒すだけ。

 

 だからプレイヤーはデスペナ分を考えて白ナマズにならないと、大赤字をくらう……

 

 倒されると経験値と装備一つがなくなって、最後に入った街からスタートする。

 

 それはゲームの話だ……この世界に死に戻りなんて聞かないし、仮に無傷で倒しても体が変異していたら元に戻るの? って話だ。

 

 伝えない訳にはいかないが……クイーンフロッグではないが、この世界にはこの世界の物がある。人に戻す方法があって、それを探すのを手伝って欲しいだけということもあるので、ラシアはフウコウに尋ねた。

 

「フウコウさんは……白ナマズから人に戻せる方法とか知っているんですか?」

 

「にゅぅん? ……聞いたことないにゃ…………まさかとは思うけどラシアも知らないとか言わにゃいよな? お前は白の騎士だしなんか知ってるはずにゃ」

 

 この人は色が白いから白繋がりで知っているとか言いたいのかな? とラシアは思うが、長引かせても駄目なので伝える。

 

 白ナマズから人に戻す方法は本当に知らないと…………。

 

 ラシアが嘘を言っていないのが分かったのだろう。フウコウは一言だけ、あいつらドアホにゃと呟いた。

 

 ただラシアは思う。フウコウの雇い主はガロニアという有名な錬金術師なので、相談すればなんとかなるのでは? と思い、そのことを尋ねるが……

 

「先に戻って聞いたら、聖騎士とどこかに行ったって他の弟子達が言ってたにゃー……」

 

「じゃあ……もう助からないってこと?」

 

 ノアがそう言うので、ラシアは心の中で頷く。多分だが……もう助からない。ガロニアがその方法を知っているなら、フウコウ達に伝えているはずだからだ。

 

 ふと思ったことを尋ねる。それは危険な場所というのは知っていただろうし、どうして食べたのかという話だ。

 

「行く前にちゃんと話し合ってたにゃ。だけどベニユッドはいなかったにゃ。村に着いてからもガーゼンは度々注意してたにゃ」

 

「……」

 

「だけど研究者気質というか何というかにゃ……食べたらどうなるのか、自分の体で試したとのことにゃ。見た目も匂いも普通で、人を魔物に変える食べ物があるのか? とかそんな感じにゃ……何かあっても自分は大丈夫とか思ってたんにゃ」

 

 それで食べてみて大丈夫だったので、周りも釣られて食べてみたとのこと。ガーゼンは食べなかったが、油断していて入れてあった水を飲んでしまった。

 

 すぐにフウコウはガロニアかラシアの元に行こうと考え、何も食べていない仲間達に任せてガロニアの所に向かったが、そこにガロニアはいなかった。そしてフウコウが戻って来て仲間に尋ねると、食べた者達は次の日には消えていたとのことだ。

 

 そしてガーゼンも体調が悪くなり、村でベッドを借りて少し様子を見ていたら……いつの間にか、音もなくいなくなっていたという話だ。

 

 ラシアは思う。確実に助からない……綺麗事は言わない。白ナマズになった人間がどうなるかは、確実に見ておきたい。ガーゼン達を助けられるかどうかは、この際置いておく。

 

 ノアやグオンがもしもそうなった時に、助けられる方法を思いつくかもしれない。

 

 だからチャンスと言えばチャンスなのだ。

 

 ただ……なんとも言えない変な感覚だけは体を抜けていく。宿を襲撃し、ティアに怪我をさせた人物だ。それでも、こんな最期にならなくても良いのでは? と思う。

 

 パルサーとも仲良くなれた。友人とまでは言わなくても良いが……敵対しない関係もあったと思う。

 

「分かりました。探す協力はさせてもらいますが……白ナマズが落とす物はこちらがもらっても?」

 

「それは大丈夫にゃー。依頼料払うつもりだし、ドロップアイテムは拾った者の持ち物にゃ。助からにゃいとしても……最後は見届けるべきにゃ」

 

「では、一度クランメンバーと話して準備しますので、フウコウさんも準備しておいてもらえますか?」

 

「わかったにゃー。残ってる仲間にも伝えて準備し直すにゃ」

 

 フウコウはすぐに出ていき、グオンに頼んで待機している者達を部屋に呼んでもらった。

 

 そしてフウコウから依頼があったことと、いなくなったガーゼン達を探すことになったことを伝えた。

 

 特に反対意見などはなかったが……ラシアが依頼を受けたことだけは少し意外だと思われた。

 

「私はラシアさんに何回も助けてもらってるから分かるけど……グオンさんは意外?」

 

「そこまで意外ってこともないが……冒険者としての付き合いができるぐらいしかないからなー。姐さんは断るかなと思ったな」

 

「今回は放置するとよろしくないので……私がいない時でも深緑のダンジョンなら皆さんにちょうど良い狩り場ですからね」

 

 今回の何が駄目か……白ナマズの強さは元の人間の強さに依存する。ガーゼンはXランクだ。そのレベル帯のモンスターに出くわすと……グオンでも勝てない。だから被害が大きくなる。

 

 流石にラシアは知らない人の命などどうでも良いとは思わない。

 

 あと少し気になるのはレベルだ。モンスターは普通は進化だが……白ナマズは元人間だ。人を倒しまくってレベルが上がりまくったら? そうなると想像がつかないのだ。

 

 きっと今までもガーゼンのようなXランクもいただろうが……その辺も不明だ。

 

 あと危険なのは、レベル1の白ナマズとレベル100の白ナマズの見た目が同じことだ。なので……ダード達に危険だがどうする? と尋ねると行くとのことだった。

 

 危ないのは確かに危ないが、人手が欲しいのでダード達の意見を尊重し、LLL全員で行くことになった。

 

「ダンジョンには行くつもりだったから……準備ってできてるけどどうするの?」

 

「白ナマズの羽化場に行きたいので、少し準備が必要です」

 

 どういう関係性かは明言されていなかったが、深緑のダンジョンにある忘れ去られた魔女の墓に花束を供えると、ゲームだと木々が動いて羽化場に行けるようになる。

 

 ここにプレイヤーがいるわけではないが、様々な物が落ちているグラフィックが描かれているフィールドだ。

 

 だから行方不明者のガーゼン達のヒントも、たぶんここにあるだろうとラシアは考えた。

 

 そしてグオン達には待ってもらい、ラシアはノアを連れて近くの花屋へと向かった。

 

 すると……面白いことにおやっさんがどんな花を買うか悩んでいた。

 

「お父さん、何やってるの?」

 

「なんでここにいるんだよ……って思ったが、笑い事じゃねーって感じの顔してるな」

 

 どんよりとした気分だったが、ラシアはおやっさんの顔を見て少し元気になる。

 

「ろくでもない緊急依頼です。おやっさん、今日は帰れないと思うから、姫様とティアちゃんに伝えといてください」

 

「分かったが……気をつけてな」

 

 ラシアはふと思う。ノアがいるんだから、セレットさんが好きな花を聞けばいいのでは? と。

 

「ノアさん。おやっさんがセレットさんに花をプレゼントするらしいけど……どんな花が好きなの?」

 

 流石は娘なだけあって母親の好みは知っている。すぐにこれと指を差して教えてくれた。

 

「だそうですよ。おやっさん」

 

「えっ!? お父さんお母さんにお花プレゼントするの!! なんか素敵だね!」

 

 からかわれておやっさんの顔は赤くなるが、ラシアとノアに礼を言って大きな花束を買った。

 

 ラシア達も小さめの花束を買い、それをアイテムバッグにしまってから、おやっさんと別れて冒険者ギルドへ戻っていく。

 

「偏見ですけど女の人ってお花好きですよね」

 

「あれ? ラシアさんってお花嫌い?」

 

「好きですよ」

 

「そうだよね~。綺麗だもんね」

 

「はい。会話しなくて良いですし」

 

「それは何かおかしいよラシアさん!」

 

 そんな話をして待っていると、フウコウが五人のパーティーでやってきた。そして軽く自己紹介をしてから、ラシア達は深緑のダンジョンへと向かった。

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