ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第104話 白ナマズ

 

 フウコウが探していた行方不明の貴族もガーゼン達も見つかった。口癖の不幸にゃ……と言いながら遺品の整理をしている。

 

 そんなフウコウを見ながらラシアは思う。

 

 もう少しこう……立ち入り禁止にするとかできないものかとは思う。だけど……その辺は元の世界と一緒で、駄目と言われても行く奴は行く。

 

 食べたら駄目と言われても食べる奴がいる。自分は絶対に大丈夫と思ってる人が、世界には一定数いる。だから言ったところで無駄なのだろう。

 

 デゴットは何度も村を滅ぼしたと言っていたし、国としてはやることはやっているのだろう。注意喚起は今でもしている。

 

 こうなってくると、もう自己責任だ。

 

 だけど……そこまでラシアは割り切れる訳ではないので、なんとも虚しい。

 

 そこでラシアはふと思った。ダンジョンにいるNPCの記憶ってどうなってるの? って話だ。

 

 近くにいるノアに相談してみると、少し知っていた。

 

 自分達と同じように覚えているが、殺されるなりすると、殺される前の状態にリセットされるとのことだ。

 

「なんかそんな感じのことを図書館で読んだけど、合ってるか分からないよ?」

 

「何処までの期間を覚えているかも気になりますが……まぁいいか。それで、この亡くなられた冒険者の皆様はどうするのがいいんですかね?」

 

 ノアもうーんと悩み始めると、グオンとフウコウがやってきてアドバイスをくれた。

 

「姐さん。流石にクランでできることを超えてますから、報告が無難ですぜ」

 

「被害者が多すぎるにゃ! ……身元の確認するにしても多すぎるから任せた方がいいにゃ」

 

 流石にその方が楽だとは思うが……どうしてこの場所の行き方を知っていたの? って聞かれたらどうするのとはなる。だけど、こうなった人達も帰りたいだろうから、ラシアは色々と諦めて冒険者ギルドへ報告することを決めた。

 

 何か言われても、花を添えたらここに行けたと言えば、たぶん大丈夫だろう。

 

 それで押し切る……たぶん無理だけども。

 

 そしてゆっくりと日が沈み始め……ここからが本番だ。このエリアはただの羽化場だから何もない。ずっといれば誰かが来て白ナマズになるだろうが……そんなところは見たくない。

 

 このダンジョンには昼夜がある。そして夜は白ナマズが出始める。

 

 ここでガーゼンがなった白ナマズを倒しておかないと、被害が増えるだろう。Xランクの冒険者が白ナマズになった時、どの程度の強さになるのかは分からない。

 

 だけど一番弱いのは今日だ。誰かを倒して強くなったらと考えると……

 

 後は騎士団が教えてくれた。ギュスターブという白ナマズ。この辺も気になる。

 

「フウコウさんはどうします? 私達はこのまま白ナマズを倒しに行きますが……」

 

「ワッチらは夜にほとんど来ないから、お前らについて行くにゃ。戻る時にガーゼンの白ナマズに出会ったら全滅にゃ。このメンバーで倒せるのはラシアだけにゃ」

 

「分かりました。では私が先頭を歩くので、グオンさんは一番最後をお願いします。白ナマズの見た目は全部同じはずなので、警戒だけは怠らないでください」

 

 全員が頷いたので、ラシアを先頭に羽化場を後にした。

 

 ……

 

 …………

 

 ラシアが羽化場を出た頃、パルサーも部下を引き連れ、ダンジョン内で白ナマズを倒していた。

 

「聞いていたより……遭遇率が高いな。聖騎士共め。仕事をしていなかったのか?」

 

 この深緑のダンジョンには、聖騎士達が定期的に巡回し白ナマズを間引くのが仕事の一つだ。それなのに遭遇率を考えると、確実に倒していない。

 

「ティーガーが戦わないというのは考えにくい……司教派の馬鹿共か?」

 

 なんだかんだでパルサーはティーガーのことは認めている。騎士と聖騎士で命令系統は違うが、騎士団の役職で考えるとティーガーは自分より上の立場だ。

 

 純粋な武力に関しては自分の方が上だが……知力などを含めると、やはりティーガーには劣るなと考えている。

 

 頭が悪そうに見えることがあるが……かなり頭が切れるのがティーガーだ。いつも先のことを考えている。一つ上の学年になるが……常に成績は一位をキープしていた。

 

 言うと調子に乗るから、パルサーが褒めることはない。ちなみにパルサーは学年で十位とかそれぐらいで……エリゼはお察しだ。

 

 そんなことを考えながら、パルサーは報告があればその方向に行き、白ナマズを倒す。

 

 強さにばらつきがあるのが白ナマズだ。ラシアが言っていたことが本当だろう。元の人間の強さが反映される。

 

 人間とは到底思えない姿をしているが……動きは人。

 

 だから普段から暴れた冒険者を鎮圧している騎士団からすれば、割と楽に倒せる相手だ。

 

 少し悲しい話だが……手加減しなくて良い分、白ナマズを倒す方が楽だ。

 

 きっとこいつらは元に戻らない。加減などしてこちらが死んでしまえば話にならない。

 

 何匹目かの白ナマズの心の臓を貫き、ふぅっとパルサーは息を吐き出す。

 

「パルサー様、お見事です」

 

「ああ。現状は? 思った以上に数が多いな」

 

「はい。村にいた冒険者達に話を聞いたところ、最近は白ナマズの数が多いので、夜に活動する冒険者はほとんどいないとのことです」

 

「それはいつぐらいからか分かるか?」

 

「私が聞いた冒険者の話だと、ここ数年はもうそうだという話でした」

 

「本当に聖騎士共は……」

 

 パルサーが大きくため息をつくと同時に、他の騎士が大慌てで走ってきた。

 

「パルサー様! 強力な個体が出現しました! 数名がやられました!」

 

「っ! 分かった! すぐに行く」

 

 パルサーは伝令の騎士と共にその場に向かうと、一匹の真っ白い白ナマズがいた。体には傷などはなく……たぶんだが、なったばかりのモンスターだろう。

 

 倒した騎士達を、パルサーのことを気にも留めずに食っている。

 

「私が倒す。下がっておけ」

 

「わっ、分かりました」

 

 食べられている騎士達が弱い訳ではない。騎士も聖騎士も弱い者はなれない。この白ナマズが強いのだ。

 

 パルサーが槍を構えると、白ナマズも食べるのをやめ、パルサーの方を見つめる。そして、右腕を大きな剣に変化させた。

 

 元が人だから、その人が使っていた武器を使う。だからこの白ナマズは大剣使いだ。

 

 白ナマズは一瞬でパルサーとの距離を詰めて攻撃範囲に入る。

 

(速い!)

 

 そう思う頃には剣を振り上げていた。

 

 そしてすぐに振り下ろした。

 

 周りは斬られた……と思ったが、そんなことはない。

 

 パルサーは簡単にその攻撃を流し、すぐに並みの者ならそれで終わる突きを白ナマズの頭に向かって放つ。

 

 だがそれを白ナマズも避ける。

 

 ただ無傷という訳ではなく、白い顔には赤い線が入り、血が流れ始め、生えている髭のような触手が一本飛ばされた。

 

「今ので決まると思ったが……なかなかやるじゃないか。S……いや。Xランククラスの元冒険者か? ……まぁ返事が返って来るとは思っていない。安らかに逝ってくれ」

 

 その白ナマズは怒ったようにスキルを使い、パルサーに攻撃を仕掛けていくが……パルサーはその攻撃を全て見切り、流していく。

 

 パルサーの職はルーンランサー。

 

 ソードマンからナイトになる時に枝分かれする職業で、ソードマン→ランサー→ハイズランサー→ルーンランサーとなり、ティーガーのドラゴンナイトと同格になる。

 

 ナイト職のように剣や魔法を使いバランスよく強いタイプではなく、槍やハルバートや戦斧をメインに扱う。

 

 魔法はほとんど使えないが……物理攻撃や物理攻撃への軽減スキルが多い。リーチもあり投擲によるスキルもあるので、魔法が弱いという欠点を除けば、同列では最強クラスの職だ。

 

 その上で騎士や聖騎士は、冒険者に比べてスキルが最適化されている。だから同じXランクでも、騎士や聖騎士の方が一つ二つ強さが上だ。

 

 そんなパルサーだ。白ナマズがバランスを崩したところを見逃すはずもなく……その腕を斬り落とした。

 

 パルサーに勝てないと分かったのだろう……白ナマズは逃げ出そうとするが……パルサーは最後の手向けとして槍を投げ、その命を奪った。

 

 すぐに槍を拾い呼吸を整える。このレベルの白ナマズがいれば、今回来ている者達ではキツい者達もいるからだ。

 

「まだ何がいるか分からん! 怪我人の手当をし、備えろ!」

 

 すると…………ペチャペチャと音がする。

 

 パルサーが振り向くと、背中に折れた槍などが幾つも刺さった傷だらけの白ナマズがいた。

 

 いつからいた?

 

 先に倒れた騎士達を食っている。

 

 慌てて構えた時には……音よりも速く接近されていた。

 

 攻撃がスローモーションに見える。白ナマズの手が自分の首を狙っているのが分かった。

 

 ああ……自分は死んだなと。パルサーは思った。

 

 そのタイミングで、とても綺麗な金の色をした糸が風に乗ってやってきた。

 

 力強い手が自身の体を守るのが分かった。

 

 硬い者同士がぶつかり合うような激しい音がした後に、横から声が聞こえた。

 

「まっ、間に合ったー! ……パルサーさん。大丈夫ですか?」

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