ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第108話 騎士の依頼

 

 ラシアはパルサー宅へとやって来た。門を守る兵士達に、白の騎士様には見えませんなーとからかわれながら屋敷の中へと入り、デゴットの書斎へと案内された。

 

「よく来てくれたな。本当にいるとは思わなかったが」

 

「ダンジョンに行かない日はクランの事を考えたりしているので、大体いますよ」

 

 さっきまで寝ていたという事は言わなくても良いのだ。デゴットも、人の上に立つ奴は忙しいからなーと納得してくれたので、それでよし。

 

 そして話が始まる。

 

 まぁ簡単に言えば、信用のある騎士達を使って行方不明の司祭を探しているせいで、人手が足りない。

 

 だからラシア達に、そろそろ湧く月齢の王を倒して来て欲しいというものだった。

 

 その場所はずっと騎士団が確保していて、情報を冒険者ギルドや聖騎士には渡したくないとの事。

 

「えっ?……どこのダンジョンです? ウチのクランはBランクもいるので、そこまで高難易度の所は無理ですよ?」

 

「ギュスターブとドミナトリクスを倒した奴が言う台詞じゃないよな。緋闇のダンジョンだ。行けるだろ?」

 

「ぐわっ……また絶妙に嫌なところを。って事は……スカルライダーか」

 

「正解。お前、本当に詳しいな。屋敷の方は行かなくていいから、スカルライダーだけ倒してくれ。他のモンスターのアイテムはいらないが、月齢の王のアイテムはこちらが欲しい」

 

「あいつはけっこう良い装備を落としますからね。というか屋敷の方に行ってこいと言われた方が楽だった……」

 

「そうか? 屋敷の方は上級だろ? いやまぁ……外回りも大概だがな」

 

 緋闇のダンジョンは、ダンジョンの中にもう一つダンジョンがある、少し特殊な場所だ。

 

 外側は、とてつもなく広いフィールドが一つだけ。そこを進んで行くと大きな屋敷があり、そこもまたダンジョンになっている。

 

 デゴットが言っているのは、広大なフィールドの方にいるスカルライダーだ。

 

 骨の馬二匹が、骸骨の騎士を乗せた荷車を引っ張っている敵でチャリオットみたいなイメージだ。

 

 色々な武器を落とすし、ナイト系の職の人にはそこそこ人気の時間湧きボス。

 

 そこそこ強いし動きも速いが……不死属性なので聖属性の攻撃がとても効く。なので言うほど問題はない。

 

 問題は、周りのモンスターだ。

 モンスターが進化すると、少しヤバいモンスターが出てくる。

 

 しかも、とても広いエリアなのに身を隠す場所があまりない。

 

 その上、ラビットマンのような遠距離を得意とするモンスターも多い。

 

 ちなみにずっと夜なので少し見にくい。ゲームだと月が明るいので大丈夫だったが。

 

 月齢の王より周りのモンスターの方が問題なので……ラシア的には断りたい。

 だが騎士団には気持ちよく仕事をしてもらい、さっさと司祭の件を片付けて欲しいので受ける事にした。

 

「分かりました。受けさせてもらいますけど、正確な時間って分かりますか?」

 

 そうラシアが尋ねると、デゴットは砂時計のような物を取り出した。

 

「これを使って時間を見てるからな。……明日には出るな。という訳で任せたぞ」

 

「急過ぎる!……分かりました。けど司祭の行方は?」

 

「どこに紛れてるのかは分からんが……この国にはいる感じだな。悪い方向には行ってない。お前さんがティーガーにアドバイスしたのも相当役に立ってるという話だ」

 

 アドバイスとかした記憶はまったくないが……ラシアの知らない所で解決してくれるなら、それでいいなと思う。

 

 何かあったらまた言ってくださいと言って、ラシアはパルサー宅を後にした。

 

 パルサーは今日は仕事との事で家にはいない。ラシアが王都の冒険者ギルドに向かっていると、後ろから話しかけられた。

 

「うん?……もしかしてラシか?」

 

 その呼び方をする関西人には心当たりしかなかったので振り返ると、ティーガーがいた。

 

 本日は鎧姿ではなく私服なので……ものすごく失礼だが、子供にしか見えない。

 

 だからポロッと余計な事を言ってしまう。

 

「ええっと……ティーガーちゃんはお買い物?」

 

「うん! ティーガー。お母さんに頼まれてお買い物!」

 

「「…………」」

 

「って! ちゃうわ! 自分なにやらすねん!」

 

 やったのはティーガー本人だと思うが、余計な事を言ったのはラシアなので素直に謝っておく。

 

「まぁええねんけどな。ほんで? ラシはなんでメイド服着てるんや?」

 

 服を買いに行くのが面倒くさいとは言えないので悩んでいると、ティーガーが勝手に勘違いしてくれた。

 

「なるほどな。ラシは目立つからカモフラージュって事か。王都なんかメイドなんてアホほどおるし、噂の白い騎士がメイドの姿しとるとか誰も思わんわな」

 

「噂の白い騎士って……何もしてませんけどね」

 

「蟻の巣とかギュスターブとか色々あるやろ。まぁギュスターブに関しては聖騎士のミスやな。ホンマにすまんかったし、ホンマに助かった」

 

 ラシア的にはその辺のいざこざは不明なので、お気になさらずにと言った具合だ。

 

 ただティーガーの性格を考えると……そういうのを放置するタイプではないと思ったので、歩きながら話を続ける。

 

「聖騎士は騎士団みたいに一枚岩とちゃうからなー。動きやすいように細かく分かれとる感じやな。何かあった時には各自の判断で動けるんやけど……他の連中が何しとるか分からん事もある」

 

「なるほど」

 

「今回の事がまさにそれやな。ウチの所とは違う所が担当やったって話やな。まー聖騎士のくくりとしては同じやから、ごめんやでとしか言えんけどな」

 

「なるほど。こちらとしては強敵でしたが……なんとか倒せたので良かったです」

 

「パル子から聞いたけど……ラシが苦戦するってよっぽどやな。騎士団も聖騎士も被害あったからなー。だけど騎士団とか聖騎士が行くと、あいつ出てこんのよな。大昔にデゴット様に刺されたのを覚えとるんやろな」

 

「やっぱり組織って色々あるんですね」

 

「まーそれももうすぐやけどな。おかんが聖騎士のトップになるって話も出てきとるし。ラシのおかげやな」

 

 何の事? とラシアが思っていると、ティーガーはラシアの腰の辺りを叩き、ウチは分かっとるから大丈夫やで! と訳の分からない事を言っていた。

 

「それでちょっと聞きたいんやけど……ラシ的にどの辺に隠れとると思う? ネズミみたいな奴やからなー」

 

 本当に何のこっちゃという話だが……ネズミと言うぐらいだから、暗く狭い所だろう。

 ゲームとかなら、よくあるのは墓地などに隠し通路があるパターンだ。

 

 だからラシアは下を指さす。

 

「下水道か……あるなら地下通路かなーと。墓地に繋がる感じで」

 

「地下か……なるほどなるほど……まだ見てへんけどあり得るな。場所で考えたら十分あり得るな!」

 

 本当に何の話だと思うが……ティーガーは一人で頷いて納得していた。

 

 そして冒険者ギルドが見えて来た所で、ティーガーも用事があった場所へと向かうようだ。

 

「ラシ! 悪いけど、もしもの時は力貸してな。そこまでの事でもないと思うけど、その時は声かけるわ!」

 

「分かりましたけど、少しの間はデゴットさんに依頼を頼まれているので、すぐには無理ですよ?」

 

「大丈夫、大丈夫! 今日明日すぐって話ちゃうからな! また遊びに行くわー」

 

 まぁクランとしても、聖騎士というかティーガーがロディーと付き合いがあった方が良いので、特に断る理由もない。

 ラシアはもう一度、分かりましたと言ってティーガーと別れた。

 

 そして宿へと戻ってくると、ちょうどノアとグオンがいたので皆を集めてもらった。

 

 夕方の時間は流石に宿の方も混んでいるので、グオンが借りている家で話し合いだ。

 

 何人かは買い物に行っているので、いるメンバーだけで話し合う事になった。

 

「いない人には戻って来たら伝えてくれたら良いんですが、デゴットさんから依頼がありまして、緋闇のダンジョンでスカルライダーの討伐をする事になりました」

 

「うーん……騎士団長から直接の依頼って凄い名誉なことなんだけど……ラシアさんを除くクランメンバーには毎回重い気がする!」

 

「ノア……諦めろ。ギュスターブはともかく、ドミナトリクスを一人で倒せるんだから姐さんに依頼が来ないはずがねぇ……」

 

 ともかくじゃなくてギュスターブの方が強かったとラシアは言いたいが、過ぎた事なので置いておく。

 

 他のメンバーに緋闇のダンジョンの事を聞くと、グオンのクランにいたゲニツやエンセトは知っているとの事だった。

 

 ただ、エリエスは知らないらしい。

 

 また全員が集まった時に詳しく話すが、先にエリエスにも伝えておく。

 

 そこでラシアは、一つ思い出した。

 

 緋闇のダンジョンは、エリエスやダードの仲間達を殺したウルフマンと同種の敵が出現する場所でもある。

 

 伝えない訳にはいかない。別の個体なのは間違いないのだが……少し言いにくいなと思いながらも、その事を話した。

 

 結果は……何かみなぎっていた。

 

「なるほど! リベンジですねリベンジ! あの頃は歯が立たなかったですが、今の私は違います! 敵討ちですよ敵討ち!」

 

 どう反応して良いかはラシアには分からないが……本人がやる気なので良いなという事で納得した。

 

 そして翌日を迎え、ラシア達は緋闇のダンジョンへと向かった。

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