ブラドスライムを倒して分かった事。
状態異常にもよるが……アイテムでもスキルでも、完全な無効化系の効果はこの世界には存在しないという事。まだ仮説。
麻痺とか混乱無効のアクセはあるが、多分0にするのではなく、限りなく0に近づけるだけだとラシアは思った。
ゲームだとブラドスライムは物理攻撃無効の能力を持っていたが、殴ったら倒せた。
これはゲームと違い、単純な攻撃にも色々な力が作用しているのだと思う。こんなデッカイハンマーを片手で持てる方がおかしいので、魔法の力とかもあると思う。それが攻撃にも反映されるので、物理だけの話ではなくなっているのだろう。
だから状態異常も、強烈な物があればかかると思っておいた方がいいという話だ。
だから怪獣王がやったあれだ。
Q:火に耐性がある敵はどう倒したらいいですか?
A:耐性以上の炎で焼く。
これは本当に覚えておかないと駄目だとラシアは思う。いくら火耐性を上げるアクセサリーを装備しても、熱で溶けるか燃えるよねってなるからだ。
まぁアクセが溶けるような炎の中で呼吸とかできるのか? って話にはなるので難しい所ではあるが……
とりあえずこの依頼が終わったら耐性の見直しと検証だな、とラシアは考え、自分の中である程度の答えがまとまったので、目的のスカルライダーを探す。
人気のない狩り場ではあるが、たまーに冒険者を見かける。スカルライダーを探しに来ているのか、屋敷のダンジョンに向かっているのかは分からないが。
「ラシア。このダンジョンって人気ないのか? 人がいない訳じゃないが少ないよな?」
「ここで安定して倒せるなら、他の所の方が楽で美味しいですからね。レアアイテムなんかもありますが……それこそ古城ダンジョンとか水没ダンジョンの方がね」
ラシアとダードがそんな話をしていると、近くで狼のような鳴き声が聞こえる。
ダード、ビエット、エリエスの顔つきが変わり、ダードが任せてくれとラシアに言った。
余程の時は手を貸そうと思って頷くと……面白い事に、余程の事はすぐにやってきた。
ウルフマンが四匹ほどの群れでやってきたのだ。
今までのやる気が嘘のように慌てるダードを見て、ラシアは少し笑ってしまう。
そして他のメンバーと協力して一匹だけ残し、他は間引いた。
本来なら、さぁ戦いますよ。よーいどん! とはならないが、これで勝てなければ普通に戦っても絶対に勝てない。
クランメンバーが見守る中、三人の戦いが始まった。
ウルフマンも味方を倒され、怒っているようだ。
ダードが盾を構え前衛に立ち、ビエット、エリエスと続く。
初手はウルフマンだ。目の前にいるダードめがけて接近し、大きく腕を振り上げる。
そして、刃よりも鋭い爪を振り下ろす。
ラシアと初めて会った頃のダードならもうこれで終わっているが、攻撃はちゃんと見えていたようで、しっかりと盾で受けた後に反撃する。
片手剣をウルフマンの腹に向かって横に薙ぐが、バックジャンプで躱す。だが……ダードは一人ではない。
ウルフマンがバックジャンプし、着地する瞬間をビエットが狙い、その肩に矢が突き刺さる。
空中で狙われれば躱せない。そこを狙ったのだ。
そしてエリエスがマッドフィールドを展開した後に、ガイアウォークで三人の機動力を上げる。
ここで……魔法の効果が変わっていることにラシアは気がつく。マッドフィールドはエリエスに前に使ってもらったので効果は知っている。
使うと範囲内にいる使用者以外の自由を奪う。
そこにガイアウォークを使うと、仲間達が自由に動けるようになっていた。
さっきまではウルフマンとダードが動けなくなっていたが、ガイアウォークを使ったので、ダードは自由に動けるようになっている。
何にしても……ゲームとの違いは多いなと考えながら、三人の戦いを見守った。
……
結果は……かなり危ない所もあったが、三人が勝った。
後衛組はほぼ無傷だが、ダードは結構ボロボロだ。盾も破壊され、ラシアの回復薬で治ったが腕も折れていた。
それでも勝った。
仲間を殺された個体とは違う。それでも一つ二つ前に進んでいるのだ。三人は泣いて喜び、周りのメンバー達も喜んでいる。
「ダード達がここまで頑張ってるなら、俺達も頑張らねーとな!」
「そうだな!」
「私も頑張る!」
みたいな事を言っているので、クランのリクエストに応えてこそのクランマスターだと思う。
ちょうどラシアの視線の先には、チャリオットに乗った不死の兵がいる。
死に直結するような事があればすぐに助けるので、クランメンバーには頑張ってもらおうとラシアは考えた。
……
結果は……善戦。
ただ、倒しきるには届かなかった。
やはりクランの課題になっている火力不足が原因だ。
防御も立ち回りもほとんど問題はない。むしろラシアよりも上だと思うが……やっぱり決め手に欠けるといった感じだ。
全体的にバランス型の為だ。エリエスに関しては防御特化型と言ってもいいので省いても良いが、不死属性の相手に聖属性の攻撃や火属性の魔法で倒しきれないとなると……
まぁ相手が時間湧きのボスモンスターなので、ゲーム通りのHPがあると考えると、その辺の雑魚モンスターの数十倍は余裕である。無理と言われれば無理かもしれない。
では、一日とかかけたら倒せるのでは? となるが、それも無理。こちらのスタミナが尽きるのだ。
後衛組は魔力や矢も尽きた。前衛組も疲労がたまり、まともに動けなくなる。
グオンが指示を出すにしても、後半は指示が少なくなり、間違いも出てくる。
レベルで考えたら善戦だが……ノアやグオンやフォルグ辺りが少し強くなっているように感じるので……もしかしたら職のレベルが上がっているのかも知れない。
もしもそうなら、この前倒したギュスターブが原因だろう。単純なレベルで考えても130越えのキャラを倒したのだ。ゲームの経験値で考えて一割もらっても恐ろしい事になる。
レベル100のラシアなら雀の涙ぐらいでも、ノアやグオンは別だからだ。
戻ったらもう一度、職を見てもらおうと考えながら、倒したスカルライダーのドロップアイテムを拾う。
ちなみに……全員が疲労困憊でくたばっている。
……そして何がムカつくか。スカルライダーから出たアイテムはデゴットに渡す約束だが……そういう時に限ってレアアイテムが出る。
魔石は絶対に出る物だからいいが……フライングブーツやフルプレートなんかも出ている。どこにあったんだとは思うが……チャリオットの中に仕舞ってあったのだろう。
鎧は剣士職が装備できる良い奴で、フライングブーツはアクセサリー枠で溶岩とか毒のエリアを歩けるという、かなり便利なヤツだ。
溶岩の上を歩いて焼けたらどうなるの? とか思うが……熱いということにしておこう。
やる事をやったのでささっと帰りたいが……まだまだ皆が動くには早いようだった。
そしてラシアが遠くを見ていると、視界を横断するように光が走った。
「えっ?」
その攻撃には見覚えがある。
冒険者が数人やられただけならモンスターは進化しない。ラビットマンバリスタはラスターマインという、踏むと範囲爆発を起こす罠を仕掛ける。
きっとそれにモンスターか冒険者が引っかかって、取り巻きか周囲のモンスターを大量に巻き込んだ。
だから、ラビットマンバリスタから進化したのだ
カグヤちゃんからカグヤちゃんDXになるのは早いはずだ。直線上にいる全てのモンスターが経験値になる。
遠くで、モンスターが進化する時に光る輝きが見えた。
そして……先ほどの光よりさらに力強く輝く光が、視界を横断した。
皆もその攻撃にうろたえ始める。
「ラッ、ラシアさん! ここってあんなボスいるの!?」
「いません……まともに戦っても意味はないので帰ります。パロドワさん。すみませんがゲートポータルをお願いします」
「わっ、分かりました」
パロドワが準備し始める。
そして月から糸のような物が降りてくる。
「うげっ!?」
ラシアが苦虫を潰したような声を上げる。それもそのはずだ……ゲームなら月から糸が見える時は、カグヤちゃんかカグヤちゃんDXにターゲットを取られている。
今までは他のパーティーが狙われていたために見えなかった。撤退したか、全滅したのだろう。
それでターゲットがラシア達に移ったのだ。
何が最悪かというと、距離がありすぎて誰が狙われているか分からない事と、範囲攻撃になるので全員が巻き込まれる事だ。
月から糸が見えたら逃げよう。
まさにこれだ。巻き込まれたら……ダード達は確実に死ぬ。魔法攻撃扱いになるのでグオンも死ぬ。
パロドワのゲートポータルを待っている余裕はない。
ラシアはすぐに帰還石を地面に叩きつけ、王都へと転移した。
そして次の瞬間には、ラシア達がいた場所を凄まじい光が通り過ぎた。
……
国には国の都合という事があるので、帰還石はラシアのスキルという事にして、クランメンバーには他言無用を貫いてもらう事にした。
余計な事はメンバーにも言わなくていい。
グオンとノアに、王都の冒険者ギルドへ報告へ行ってもらう。
スカルライダーのことは言っては駄目だが、他のモンスターを倒して出たアイテムや魔石の売却と、今の緋闇のダンジョンにはカグヤちゃんDXが出ているという事を伝えてもらう為だ。
報告はつつがなく終わり……全員が疲労困憊なので、今日はこの場で解散となった。
「あれ……ラシアさん何処か行くの?」
「はい。デゴットさんに報告しておこうと思いまして」
「ついて行きたいけど……気力が、魔力が……」
「無理しなくて良いので家でゆっくりしておいてください」
最後の気力を振り絞りついて行こうとするノアが面白かったが、帰って休息する事を伝えて、ラシアはパルサー宅へと向かう。
途中でメイド服に着替えたので、カモフラージュもバッチリだ。
運も良いことにデゴットはおり、すぐに倒したことを喜ばれた。
「もう少しかかるかと思ったが……さすがはホワイトナイトって所か」
「スカルライダーならドミナトリクスの方が強いですからね。あとこれ、出た装備です」
思った以上に良い装備が出たのと、ネコババされなかった事にデゴットは驚いた。
「言って悪いが……フライングブーツなら売ってるし高いから、取ってもバレなかっただろ?」
「あのですね……信用あっての依頼ですからね」
「疑ってすまなかった。流石は王族直属の騎士か。この鎧も十分良い物が出たな」
流石のラシアでも、頼まれた物を黙って貰っておくような事はしない。
あとは今の緋闇のダンジョンにはカグヤちゃんDXが出ていると伝えると、知っているようでとても驚かれた。
そしてそのまま少し世間話に入る。
「そういえばティーガーから、ラシアは何か色々知っているから、お前に聞いたらいいとか言ってたが……生き物とか生体に関係あるダンジョンって何か知ってるか?」
「またえらく抽象的な……」
そんな感じのダンジョンあったかなーと思い出すが、心当たりはいくつかある。
「箱船のダンジョンですかね?」
「よし。そろそろ決めたい。戻ってすぐで本当に悪いが……パルサーとか騎士団の連中を連れて見てきてくれ!」
「はいっ!?」