ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第111話 伊達ではない

 ラシアがデゴットに無茶難題を言われている頃、ティーガーは王都の下水道に来ていた。聖騎士の信用できる上位勢と、デルパロア大公の配下の者達も一緒だ。

 

 ラシアがそれっぽい事を言っていたので調べたら、引っかかったのだ。

 とても巧妙に隠されていたが……ほんの少しだけ、おかしな魔力の流れがあった。

 

 普段なら見過ごしてしまうような小さな物だったが……ローウェンテニア王族直属の騎士は伊達ではないという事だ。

 

「それで? ティーガーここか?」

 

「本ちゃんはここと違うやろうけど……潰しとかなあかんのは確実やろな」

 

 ティーガーより上の聖騎士がそう話しかける。

 

 その聖騎士達から見ても、この下水道は雰囲気が異常だった。確実に何かある。

 

 この部隊の指揮はティーガーになる。ラシアにこの場所を教えてもらった時、ティーガーはデルパロア大公の下へと行っていた。

 

 その時に……狙ったように送り届けられた。

 

 ロワンテの素性を探っていた執事の頭部が、とても丁寧に梱包されていた。

 

 誰がやったかは不明だが調べれば分かる。

 

 大公の性格上、売られた喧嘩は買う。配下の者達を使い、司教派の聖騎士を家族ぐるみで拉致した。

 

 一人ずつ首を刎ねていったところ、ようやく心が折れた者が、ティーガー達が進んでいる場所を詳しく話した。

 

 下水道には認識阻害のような魔術も使われており、聞いておかなければ辿り着けないような場所だった。

 

 もう一つ、首刈り大公だからこそ気がついた違和感があった。

 

 大公の配下である処刑人が首を落としている時に、首に刃物が入る感覚がおかしい者がいた。

 

 人間にしては柔らかいというか、そういう感じだった。

 

 理由は簡単。人ではない者が聖騎士の中に混じっていたのだ。

 

 警戒しながら進んで行くと、下水道にしては大きな門がティーガー達の前に現れた。

 

「違法建築もここまでやるとすごいもんやなー」

 

「ほんとだな。それで? 中は殲滅でいいのか?」

 

「かまへん。どうせ本体は別やしな。人間がおってもまともな奴ちゃうやろ」

 

 ティーガーは背負っている大剣に手をかけ、振り下ろす。すると、扉に筋が入った後に崩れ落ちた。

 

 そしてティーガー達は、ゆっくりと中に入っていく。

 

「こんにちは! カチコミに来たったでー。責任者いてますかー?」

 

 コツコツ……と足音が聞こえた後に、一人の女性が現れる。

 

「あら~ティーガーさんも、この場所を見つけられたんですか~」

 

「そやで。タレコミがあったからなー」

 

 そこにいたのは聖騎士のロワンテだった。ティーガー達からすれば仲間のはずだが……誰も警戒は解かない。

 

「下水道にー怪しい施設があると聞いてきましたが~ティーガーさん達も知っていたんですね~」

 

 口調も雰囲気もいつもと変わらない。だけどティーガー達はもう知っている。

 

「あーそういうの大丈夫やで。こっちは分かっとる。お前のお姉ちゃんか妹になる奴は貴族のお守りしてるしな」

 

「…………」

 

「なぁ。ホムンクルス……自分、何人目や?」

 

 またコツコツと足音が聞こえ、何人もの人ではない何かが集まり始める。

 

 ロワンテもいれば、寝食を共にした聖騎士もいる。ティーガーの上司にあたるような聖騎士もいれば、冒険者もいる。

 

 様々な何かが集まってきた。

 

 ただ言葉を話すのは、目の前にいるロワンテだけだった。

 

「なるほどなー。って事は……緋闇のダンジョンに子守に行ったロワンテは死んで、魂だけ帰ってきた訳やな! あんな所で死ぬって、自分ホンマに雑魚やな! めっちゃウケるわ!」

 

「……」

 

 ティーガーの煽りにロワンテは顔を歪め、質問を投げる。

 

「聖騎士のお馬鹿さんはどうやってその事を知ったんですか~? この場所にしてもそうですけど~」

 

「自分なー、人の事を馬鹿にすんのは、あんまりやめといた方がええで? 馬鹿やと思ってる相手に馬鹿にされたらムカつくやろ? ……まぁ馬鹿やから、それも分からんと思うけど……脳みそ入ってますか?」

 

「ふふっ……質問に答えられないほどのお馬鹿さんだとは思ってませんでした~」

 

「あー。馬鹿って人間に使う言葉やったな。自分って馬鹿以下やからな…………じゃあ分かりやすく教えたるわ。なんで敵に情報を教えなあかんねん。そんな事も分からんか?」

 

 煽りの耐性がないようで、今までニコニコと笑っていたロワンテの顔が、聖女とは似つかわしくない顔へと変貌する。

 

「このドチビが!」

 

「羨ましいやろ。ロリ巨乳やで」

 

 そして一匹の何かがティーガーに斬りかかったが、ティーガーは難なくその攻撃を弾いた後に、首を斬り飛ばした。

 

 斬った感覚は人より魔物に近く、血も赤ではなく白い。

 

「なるほどな……動きは聖騎士か。本人の人格が入ってないから……別の何かか、何も入ってない状態か。まぁ何でもええか」

 

 そして戦闘が始まる。

 

 だが……戦いにはならない。この作戦には大公側からも精鋭が来ているし、聖騎士も上澄みしか来ていない。

 

 下手をすればティーガーが一番弱いかもしれない。それぐらいの強者が、この作戦には参加している。

 

 ロワンテ程度では相手にならないのだ。

 

 一瞬で全ての何かが斬り刻まれ、数を減らしていった。

 

 ……

 

 …………

 

 一時間もしないうちに決着はついた。ロワンテの頭部もその辺に転がっているが、ティーガー達は気にしていない。

 

 どこかで復活しているからだ。

 

 今回のティーガーの目的は、自分より上の聖騎士にこれを見せること。そして、大公にもこの現状を伝えること。

 

 もう一つは、行方不明の司祭の行方を見つける事だ。

 

「聖騎士側で……違法ホムンクルスの製造をしてる奴がいるとはな……」

 

「それでティーガー。ここで行方不明の司祭の居場所が分かるのか?」

 

「どやろなー。ここはたぶん製造工場やからなー。分からんかもな。ホムンクルスになった奴は洗い出せると思うけど……あるかなー」

 

「しかし、よくこんな所を見つけたな。デルパロア様のおかげでもあるが……」

 

「その辺はラシに感謝やな。忠告してくれるまで、ロワンテが人間やと普通に思っとったからな」

 

「ラシア・ラ・シーラか……流石はロディー様の元上司という事か。だがデルパロア様に喧嘩売ったとかいう話だろう?」

 

「どうなんやろな? いらん事したのはお嬢の方やからなー。ラシって喧嘩売るタイプとちゃうやろうから……邪魔すんなぐらいの事ちゃうかな?」

 

 ティーガー達、聖騎士は地下にある施設を調べていく。

 よくこんな物をバレずに地下に作ったものだという話になる。十人未満で調べるには広すぎる施設だ。

 

 そして大公の配下が、奥で人が一人入りそうな大きな壺を幾つも発見する。それは幾つものパイプでどこかに繋がっていた。

 

 ティーガーが壺を一つ破壊すると、中から真っ白な人っぽい何かが出て来た。

 

 それに見覚えがある聖騎士は声を上げる。

 

「白ナマズか? いや……目とか耳があるからホムンクルスか?」

 

 ティーガーはなんとなくだが答えが分かっている。

 

 多分だが……ホムンクルスと白ナマズのお互いの良いところを合わせたミックスだ。新しいホムンクルスと言って良い。

 

 新しい物なので法には引っかからず、現在ある魔法でも発見できない。だから色んな所に紛れ込める。

 

 その上で、白ナマズのような戦闘力を持っている。

 

「まー感じ的に……ここでホムンナマズ作って、体のコピーも作っておく感じやな。ほんで魂が入った方の体が死んだら、ここかどっかで体に入れるんやろ。さっきのロワンテ以外が話さんだのは、たぶんそういう事や」

 

「なるほどな。って事は……魂を動かす装置もどこかにあるって事か……というか分かりにくいから混ぜんな。ホムンクルスでいいだろ」

 

「ええやんけ! ……そっちは確保してある。本職に任せてあるわ……ちょっと信用でけへん奴やけど……ここまで来ると人の心を信じたいって感じやな」

 

「おいおい……大丈夫か?」

 

 割と大丈夫じゃないが……ティーガー的には本当にどうしようもないので仕方がない。画家に畑仕事しろと言うぐらいに無理があるのだ。

 

 だからそちらは任せてある。駄目でもこちらを確保していれば、すぐにはホムンクルスは再生できないはずだ。

 

 他の場所に似たような所はあるだろうが、それは不明だ

 

 ここで作られた体を、どこかで魔物にしている場所があるはずだ。そこさえ潰せれば……復活はできないはず。

 

 ダンジョンに何かを設置する事も、破壊する事も基本はできないが……ロワンテ達が使っていた体は人型の魔物の体だ。人にしては能力が高い。

 

 だからどこかにあるはずだが……隠された場所などがあるダンジョンでそれを見つけるのはかなり難しい。

 

 騎士団のデゴットにも声はかけてあるが……なかなかに難しいだろう。

 

「うーん……今後の事を考えると潰しときたいんやけどなー」

 

「確かにな。それはそうと、普通に白ナマズにしなかった理由はなんだろうな? まぁ人の街に住むのは不可能だが……」

 

「どうなんやろな? 白ナマズに必要なものが、こっちの世界では再現できんかったんとちゃうか? だからホムンクルスの技術を流用して完成させたんちゃうかな? ロワンテとか普通の人やし、見分けつかんもんな」

 

 そして、どこからともなく大公の伝令が現れて、ティーガーに伝えた。

 

 ラシア・ラ・シーラが騎士達とパーティーを組んで、箱船のダンジョンに向かったと。

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