ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第112話 調査

 デゴットに行ったら分かるとか訳の分からない事を言われたが……本当に訳の分からないまま、ラシアは箱船のダンジョンに行く事になった。

 

 デゴットも人選に行くからと騎士団に向かったので、ラシアも一度、宿へと帰還した。

 

「という訳で……騎士団とパーティー組んで行ってきますが……行きたい人います?」

 

 そう尋ねるとメンバー全員が行きたそうだったが……スカルライダーとの戦いが響いているようで、魔力や体力が回復しておらず無理そうだった。

 

「いっ、行きたいけど! まっ、魔力が……」

 

「俺も行きたいんですが……どうしてそうなったんですか? 帰って来たばかりですよね?」

 

「それは私も聞きたい訳で……」

 

 そんな話をしていると、奥から料理を持っておやっさんとセレットさんがやってきて、ラシアが怒られた。

 

「それはお前が悪い」

 

「なんで!?」

 

「普段から人と話しないから、変な所で相手に勘違いされてるって話だな。いらん誤解を受けないように会話しろって事だ」

 

「それは私が悪い訳ではなくないですか?」

 

「元、王族直属の騎士が昼前まで寝てて、人と会話するのが嫌とは思わんだろ。お前の目線でそういう奴がいたら、部屋で何かしてて無口で物静かな人って思わないか?」

 

「……おのれ、騎士団長め。まぁ早く司祭を探して欲しいから、手伝う分にはいいか」

 

「あそこも色々あるからな。ある程度の見当がついてて、ラシアに手伝って欲しいんじゃないか?」

 

「そうならそう言って欲しい!」

 

「会話って大事だろ?」

 

「ぐっ…………」

 

 そこまで急いで行かなくても良いので、おやっさんが作ってくれた軽食をクランメンバー達と食べながら話をしていると、セレットがラシアに質問する。

 

「ラシアちゃん。箱船のダンジョンに行くのよね? あそこってボスも月齢の王もいないけど、何かあるの? ただの狭いダンジョンよね?」

 

「ん? 普通にいますよ? 確かボスは七階層のシグマロンで……時間湧きが試作オメガロンだったはず」

 

 そう聞いてもセレットの頭の上に?マークが浮かんでいるので、先ほどおやっさんに言われた通り、ちゃんと話をすると意味が分かった。

 

 セレットが言っているのは、ダンジョンの一階層の事で、要は外回りだ。

 

 ラシアが言っているのは二階層からで、建物の中の事だ。

 

「えっ!? あそこって入れるの? ……人工物だとは思ってたけど入れるんだ」

 

 そう言われたので、ラシアは頑張って記憶を辿り、ゲームの設定を思い出した。

 

 箱船ダンジョンはゲームだと、ローウェンテニアの敵国が作った場所だ。

 

 プレイヤーはその街に行ってクッソめんどくさいクエストをこなすと、箱船ダンジョンに入れるようになるアイテムが手に入る。

 

 要は、ローウェンテニアの敵国がなんかヤバい物を作ってるから調べてこいとか、そんな感じのお使いのクエストだ。

 

 ゲームの設定では、深緑のダンジョンの司祭もこの国の出とかいう設定。

 

 ……で、ここが重要。この世界はゲームのダンジョンに行けるだけで、ゲームの街とかフィールドには行けない。

 

 ダンジョン内にある物は別だが、外にある街や施設には行けないのだ。

 

 そうなってくると……箱船ダンジョンみたいに入れない場所がいくつか出てくる。

 

 箱船や竜の巣などなど……

 

「って事は入れない場所が幾つもあるのか。それはそれで……」

 

「それで、ラシアちゃん。箱船ダンジョンの中ってどんな感じなの?」

 

「どんな感じ……」

 

 そう言いながらセレットの顔を見る。

 

 ……絶対にセレットを連れて行ったら駄目なダンジョンだった。

 

 箱船ダンジョン。極端な事を言えば、人型兵器工場だ。錬金術によりドール種という魔物が作られている。

 

 人の性能を維持しつつ、どこまで人に近い機械人形を作れるか? みたいな実験をしている場所。

 

 骨や皮といった物は機械で作り、中の柔らかい所は錬金術で作る。ゲームの設定では、それでローウェンテニアを攻撃するとかいう話だった。

 

 その前に勇者によって滅ぼされてしまったが……

 

 イメージ的にはアンドロイドとか、そんな感じに近い。ローウェンテニアが剣と魔法なら、箱船ダンジョンがあった国は鉄と錬金の国。

 

 ゲームだとこの国に行くと、ガンナーとかいう銃を使う職にもなれる。この世界だとまったく見ないから、ない職だろう。

 

 で……そんな錬金の技術などが詰まったダンジョンなので、セレットに話すと絶対に大変な事になる。

 

 連れて行けとかなったらとても大変だし……クランメンバーでギリギリ行けるのはグオンぐらいだ。

 

 ノアが弱い訳ではなく、モンスターの適性として、機械っぽい奴は無属性とかそういう扱いになり、魔法が効きにくい。

 

 そんな場所に製造職のセレットを連れて行くのは無理なのだ。だから余計な事は言わずに、魔法が効きにくいモンスターが多く強い場所だと答えておいた。

 

「うーん。行ったことない場所だから気になるけど……ラシアちゃんがそこまで言うなら、よっぽどの場所なのね」

 

「珍しい物は出ると思いますが……無理して行くような場所ではないかと」

 

 良い感じに諦めてくれそうなので、ラシアはささっと軽食を食べてから、今日は戻って来られないだろうと皆に伝えた。

 

 ノアもグオンも行きたそうだったが、こればかりは仕方がない。ラシアは行ってきますと言って宿を出た。

 

 流石にメイド服で行くのもどうかと思うので、いつもの軽装を着て冒険者ギルドから王都に渡り、騎士団の兵舎に行くと……パルサーが待っていた。

 

「お待たせしました」

 

「こちらも準備が終わった所だから問題はないな」

 

 先を歩くパルサーについて行く。

 

 初めての騎士団だが……なんか狭く暗い感じの所を歩かされ、ラシアは微妙に不安な気分になってくる。

 

 そして着いた先も小さめの部屋で、デゴットとなんか強そうな人が五人ほどいた。

 

「ラシア。早速で悪いが頼んだぞ」

 

 ラシアはおやっさんに言われた事を思い出す。ちゃんと話をしろ、だ。

 

「何か間違いがあっては駄目なのでちゃんと聞きますが……箱船ダンジョンの調査でいいんですよね?」

 

「そうだぞ? それ以外に何がある? あそこは前から不明な所が多いからな。調査だ」

 

 流石に騎士団長がそこまで言うので間違いはないはずなのだが……なんかおかしい。メンバーもこの中ではパルサーが一番弱いぐらいだと思う。

 

 だけど気にしても仕方ないので、いつものようにラシアですと簡単に自己紹介をすると、パルサーには呆れられたが、他の人達はそれで良しと頷いていた。

 

 そしてラシアはその場で聖銀鋼の鎧に着替え、ラシアを含めて六人のパーティーで王都の冒険者ギルドに向かうと、凄まじく多かった人達も斬って割ったようにスパッと道ができてしまった。

 

 ラシアは思う。たぶんこの人達のせいだが……怖くて何も聞けない。

 

 そしてゲートポータルを通り、箱船のダンジョンへと辿り着いた。

 

 ……

 

 時を同じくして、ロワンテは復活していた。

 

 場所は箱船ダンジョンの奥にある施設だ。

 

「ごほっ……はぁはぁ……いまいましいドチビが……」

 

 ロワンテは自身の首を刎ねたティーガーの事を思い出し、呪詛を吐く。ようやく魂が体に固定されたので、近くにあった服を身にまとう。

 

 体の替えさえあれば何度でも復活する事はできるが……自身が死んだ時の記憶も覚えている。それは気持ちの良い物ではない。

 

 ただ……そんな事はどうでもいい。どうして聖騎士、いやティーガー達にあの場所がバレたのかという話だ。

 

 あの場所は認識阻害もかけてある。知っている者も、死に直結するような恐怖がない限りは話す事はできない。

 

 仮初めだが、いわば永遠に生きる方法だ。それを誰かに話す馬鹿などいないはずだ。

 

 それなのにバレた。自分が新種のホムンクルスだという事もバレていた。

 

 ロワンテは近くにあった水を手に取り、口に含む。

 

 どうしてバレたかという事も調べなければ駄目だが……しばらくは様子見だ。バレた場所は、いわば体を作る為の場所。そこまで重要ではない。

 

 魂を動かす装置や、この場所の方が遙かに重要だ。だからここで身を隠し、少し落ち着いてから顔を変えて紛れる。

 

 ロワンテはこうやって何年も騎士団や聖騎士に紛れ込んでいたのだ。

 

 だから今回も上手くいく。

 

 だが……どうして今回はバレたのかという話だ。そこだけが本当に疑問だ。

 

 ただ、この場所は誰も入る事ができない。だからこそ身を隠すならここなのだ。

 

「ありがとうございます。司祭様」

 

 ロワンテは自身に聖職者としての技を教えてくれた司祭に感謝を告げると……このダンジョン特有の機器が点滅し始めた。

 

「なっ、何事!?」

 

 モニターに映るそれを見ると、今まで開いた事のなかった扉が開き、数名の人が入ってきた。

 

 ……

 

「ラシア。この箱船ダンジョンはどうやって入るんだ?」

 

「私が鍵を持っているので入れるんですよ。ちょっと待ってくださいね」

 

 これでゲームの仕様と違って入れなくなっていたら笑うなと思いながらラシアが探すと、目的のカードキーを入れる細長い穴が見つかった。

 

 この辺はゲームと同じだなと思いながら、ラシアがゆっくりとカードキーを差し込む。

 

 すぐに読み取られ、壁一面に光が走った後に、扉がゆっくりと開かれた。

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