ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第114話 モンスター

 

 ロワンテ・デリーチェは人をやめてもう長い。もう昔の名前は忘れてしまった。

 

 大昔は名のある錬金術師だった。人の長年の夢である永遠の命を追求した者だった。

 

 奴隷を使い、犯罪者を使い……時には子供を拉致し、様々な実験をした。

 

 結果は当たり前だが、上手くはいかなかった。

 

 永遠の命などができてしまったら、人はきっと人ではなくなるからだ。モンスターでも動物でもない。

 

 人の形をした何かになってしまう。だから人は永遠には生きられない。

 

 だけど錬金術師は諦めなかった。本当の天才が、仮初めではあるが永遠の命はできると言ったのだ。

 

 そんな時に、ある村の話を聞いた。そこにある食べ物は人を魔物にするという、とても危険な食べ物だった。

 

 思う所があった。錬金術師はその村へと行き、奴隷達にそれを食べさせた。

 

 すると夜になると、奴隷達はどこかへと消えていった。

 

 体が強い者ほど抵抗できるのか、元冒険者で拳を使い戦う男は、他の奴隷達に比べていなくなるのが遅かった。

 

 森の中のどこかで魔物になっているはずだが……その場所は発見する事ができなかった。

 

 そしてその村で知り合った司祭に、話を聞く事ができた。

 

 第一印象は穏やかで優しい者だった。奴隷、貴族、誰に対しても反応は同じだ。錬金術師は一つの質問を投げた。

 

「どうして人を魔物にするのか?」

 

 その質問に司祭は答える。

 

「神が世の中に平等と不平等を敷いたのなら、また神である私が人を魔物にしても構わないでしょう。痛み、悩み、全てを忘れ生きるのも一つの生。人が理性で生きるのなら、モンスターは本能。生まれた時から人と決まっているのなら、後からモンスターになる方法があっても良いとは思いませんか?」

 

 一理はあると思ったが……村の食事や水に混ぜ、強制的にモンスターにする者が言う台詞ではないとも思う。

 

 面白い男だと思った。

 

 そして何度か村に通ううちに司祭と仲良くなり、教会の地下を見せてもらえる事になった。

 

 そこでは自分がやっているような、人に対する実験が行われていた。ただ、自分とは違いほぼ完成していたので、全てが稼働している訳ではなかった。

 

「この施設を使って世界を手に入れる気か?」

 

 その問いに司祭は笑いながら答えた。幸せに生きている者の幸せを壊すつもりはない。これは人の世では生きづらい者達が、モンスターになるだけの物と答えた。

 

 錬金術師はその装置をよく見せてもらった……錬金術と似ている所が多々あったからだ。

 

 それから少し月日が流れ……騎士団があの村を滅ぼした。何度もだ。

 

 ただ不思議な事に、滅ぼされても次の日には復活していた。

 

 司祭や住人達も殺されたが、次の日には蘇っていた。殺されると記憶だけはリセットされるようで、司祭は錬金術師を覚えていなかった。

 

 試しに錬金術師も司祭を殺してみたが……復活し、殺された事も覚えていなかった。

 

 復活した司祭ともう一度仲良くなり、人をモンスターにする食べ物の作り方を教えてもらったが……何度やってもダンジョンの外では再現できなかった。

 

 ダンジョンにあって外の世界にない物が使われているからだ。

 

 ただ……天才が作ったホムンクルスの製造方法と、とても似ている技術が多かった。

 

 何よりホムンクルスと白ナマズの体がとてもよく似ていたのだ。捕まえてきて解剖したが……本当にそっくりだった。

 

 そこで錬金術師は気がついた。ホムンクルスの技術を代用すれば、白ナマズをダンジョンの外でも作れるのではないかという事だ。

 

 結果は大成功。椅子の脚が壊れたから、他の椅子の脚を使いましたぐらい簡単な事で成功した。

 

 真っ白な人間が完成した。ただし……体だけ。

 

 中に何も入っていないので動かない。脳なども人と同じレベルで再現できたが……それはまだ物だった。

 

 人でも動物でもモンスターでもない。だから動かないのだ。

 

 流石に人体や肉体の事に関することは専門だったが……魂の事などは専門ではない為に分からなかった。

 

 だったらどうするか? 奪えばいい。永遠の命という言葉はすぐに人を迷わせる。怪我や病気で悩んでいる権力者に甘い言葉を囁けばとても簡単だ。

 

 街にモンスターを放ち、錬金術師達のせいにし、天才が考えた永遠の命に関する論文を盗む事に成功した。

 

 その中にはやはり魂に関する記述もあった。

 

 最後のページには天才の名と言葉が書かれていた。

 

「人は永遠に生きる事を夢見るかも知れない。だが……世の中の全てに答えはある。だけど全てを知る必要はない。それだけは覚えておいて欲しい」ガロニア・テイフォーゼスより

 

 馬鹿馬鹿しいと錬金術師は思う。知識は力だ。それを知って何が悪いという話だ。

 

 そして結果は本当に上手くいった。

 

 ここまで成功が続くのは、長年錬金術をやっている中でも……珍しいし本当に気分が良い。神が祝福しているようだ。

 

 そして錬金術師は、その辺の女性を拉致し、体を作り替え、魂を入れ替え、ロワンテと名乗るようになった。

 

 ただ一通りは完成したが……まだまだ手直しする所は多かった。ホムンクルスの特性で体の寿命が短いのと、白ナマズの特性である人を食べたくなる衝動がある。

 

 食べたくなったらその辺の奴隷でも食べれば良いので問題はないが……寿命が短いというのが問題だった。

 

 ただこれも……解決する事ができた。この新しいホムンクルスの体を、もう一度モンスターにしてしまえば良かったのだ。

 

 そしてロワンテは巧みに人を誘導し、司祭をダンジョンから連れ出し力をつけていった。

 

 そして司祭と話しているうちに、ダンジョンの中にも歪だが世界がある事を知った。

 

 その中で箱船ダンジョンに入れる方法を知っているとの事で、ロワンテは司祭とその場所へと向かった。

 

 中のモンスターは手強かったが……そこに答えがあった。そこには人を白ナマズにする原型のような装置があった。壊れている物もあったが、使える物ばかりだ。

 

 そして本当に完成した。その装置を使ってみると、ホムンクルスをモンスターにする事ができた。

 

 体の性能が上がるのが分かった。食人衝動は起こるが、筋力、魔力共に……大幅に増加し、ホムンクルスのように体が劣化しない。新しい生命ができた。

 

 その体に魂を入れれば完成だ。多少の手間はあるが……永遠の命の完成だ。

 

 ただその装置を使うには……魔力を持った人間が必要だった。

 

 だから……ロワンテは司祭を使った。ダンジョンから連れ出した人間は総じて強く、体が頑丈だ。

 

 だから装置に司祭を組み込んだ。弱ってくれば司祭のホムンクルスを作り、魂を入れ替えれば問題ない。

 

 死んだところで、魂を入れ替える装置を隠してある。ロワンテは何度も成功し、協力者達に永遠の命を売り出した。

 

 ……すべては上手くいっていたはずだった。

 

 だけどこの箱船ダンジョンに、この国の精鋭達がやってきた。

 

 一人でも、ロワンテが戦って勝てる者はいない。

 

「こっ、こうなったら……」

 

 焦りの顔を浮かべながら、ロワンテは施設の裏へと消えていった。

 

 そんな事になっている間に、ラシア達は……時間湧きのボスである試作オメガロンを撃破していた。

 

 このボスを倒せた時点で、このダンジョンに敵はいない。基本的にボスより時間湧きのボスの方が強いからだ。

 

 オメガロンは人と機械のハーフのようなボスだ。この工場では人、魔物、機械についての研究もしているので、そういう感じのボスになる。

 

 六階層、七階層に行くと、SF世界で見るようなガラスの入れ物に人っぽい物が入っているオブジェクトがあったはず。

 

「うーむ。我らだけでは勝てなくはないが……ラシア殿がいると余裕だな」

 

「その通りでありますなー」

 

 そう言って笑う騎士団のお兄さんお姉さんを見て、ラシアの心境はよく言うなーといった感じだ。

 

 確かにラシアも攻撃したが……いなくても絶対に勝てる。連携が桁違いだからだ。

 

 ロードランサーがインペリアルナイトの背中越しに投擲しても、首を傾げただけで躱すとか普通にしている。

 

 パルサーが少し苦戦したように思えるが、支援もあるので特に危ない事もなく撃破された。

 

 そしてラシア達は今、四階層にいる。少し寄って欲しい所があったので、寄ってもらった。

 

 それはゲームだと、このダンジョンに入る為に仲良くなるロボット、機械人形がいるからだ。

 

 ゲームのシナリオを進めると、このダンジョンの人達にバレて追われる形になる。その時に庇って代わりに壊れてしまう、ヘンテコな機械人形がいるのだ。

 

 ゲームならそういうキャラで、壊れたらただのオブジェクトになるのだが……機械人形はどっち扱いになるのか少し気になるからだ。

 

 そしてその場所に辿り着くと……やはり壊れた機械人形があった。発砲されて、動力部の魔導エンジンが壊れて動けないのだ。

 

 ゲームだと後で来た時に調べると、壊れた魔導エンジンが手に入る。そんなイベントだ。

 

「ラシア。それは?」

 

「はい。ここから抜け出す時に助けてくれた人形ですね。ゴーレムと言った方が近いのかも知れません」

 

 少し考えていると、ビショップのお姉さんが教えてくれた。

 

「気になるなら持って帰っても大丈夫ですよ。人や魔物をダンジョンから出すのは見過ごせませんが……アイテムバッグに入るなら物扱いですので。武器とかなら後で届け出て欲しいところではありますけどね」

 

 そんな事を言ってくれたので、ラシアは機械人形に手を触れてアイテムバッグに入れようとする。

 

 するとすんなりと入ったので、人でも魔物でもなく……アイテム扱いという形になった。

 

「確かに鉄の塊みたいな物だったしな。アイテム扱いか……メカスライムとかボルトゴーレムはモンスター扱いなのに意味不明だな」

 

 パルサーの言う事はもっともであるが……上手くいけばこのダンジョンに入る為に必要なカードキーが量産できるので、まぁ良いかの精神だ。

 

 そしてラシア達はさらに進んで行き、ようやく最深部へと辿り着いた

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