ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第115話 末路

 ラシア達は七階層のボスであるシグマロンを撃破し、この箱船ダンジョンを踏破した。

 

 パルサー達からすれば、初めて入ったダンジョンをそのまま踏破したのでとても凄い事なのだが、ラシアからすれば、面子が過剰戦力なので、そんなものだろうという感じだ。

 

 ボスを倒したが、パルサー達騎士団は部屋を調べている。ラシアも少し違和感があったので調べていた。

 

 この場所はゲームなら、空のポッドがいっぱいある部屋なのだが……人のような、白ナマズみたいな物が入っていて、何かの液体に浸かっている。

 

 部屋自体も光っているし……ポッドの中にも気泡が出たりするので、接続されている機械も動いているようだった。

 

 ただこの辺はゲームとの違いに心当たりがある。この場所はゲームでも破壊できる。

 

 というより、このダンジョンのシナリオを進めていくと、最後にこの場所を破壊するか、しないかの選択肢が出る。

 

 壊しても壊さなくてもメリットデメリットはないので、ラシアはスマホを連打していたら「破壊しない」を選んだ事があったので、残っているといった感じだ。

 

 ただ……そうなると、破壊したプレイヤーもいるはずだが、この場所は残っている。

 

 リレッサもラシアの事を知っている。場所もラシアの記憶と同じだ。

 

 だから……ラシアのゲームデータに干渉している可能性がかなり高い。

 回収した機械人形も修理できたら、ラシアの事を覚えているはずだ。

 

 そうなってくると、ゲームの世界に干渉している訳ではなくて、ラシアのゲームに干渉しているような感じになるのだ。

 

(元の世界の私ってどうなってるんだろう? 時間経過が同じならスマホの充電とか切れてるんじゃないか?)

 

 なんて事を考えていると、騎士団のお兄さんお姉さんの話が聞こえてくる。

 

「正解といった感じか」

 

「流石はラシア殿だな。どうする? 破壊するか?」

 

「ダンジョンの物は破壊しても元に戻ると思いますが……ここは少し特殊なので。どうでしょうね?」

 

 本来ならこのポッドの中には何も入っていない。液体はもちろんだが、人もどきなんかも当然入っていない。

 

 ただダンジョンのモンスターがここで作られているとかいう設定なら、それに合わせて稼働しているのかなーとはラシアは思う。

 

 そんな事を考えていると、パルサーがやってきた。

 

「こちらの方針としては……ここを壊すが、一日経ったら元に戻っているかの確認がしたい。その時は頼めるか?」

 

 さすがに……引率の先生は今日で卒業したい。

 

 ラシアは、ゲームのシナリオにあった装置を破壊すれば修復しないんじゃね? と考える。

 

 そしてラシアはパルサーを壁際まで連れて行き、小さな穴にカードキーを差し込む。

 

 すると……壁に光が走った後に小さなドアが横にスライドし、隠し部屋への道が開かれた。

 

 他の面子も集まってきたので、ラシアはその部屋へと入って行く。

 

 そこはいわば制御室だ。幾つものモニターがダンジョン内を映しており、とても広い場所だった。

 

 そして動力炉がある奥へと行くと……ゲームでは破壊していなかったので起動している。

 

 確か……ゲームの設定だと人を生け贄に魔力を生み出し続ける装置とかそんな物だ。

 

 ポッドの中にはゲームと同じで、全部同じ顔の人間が入っている。ただ……行方不明の司祭に似ている気もする。

 

 そんな……事を考えていると、ラシアの気配察知に何かが引っかかる。奥の暗い所から、何かを引きずるような音が聞こえた。

 

 皆がその方向を凝視すると……

 

 見覚えのある目と口がついた……白い肉の大きな塊が現れた。

 

 引きずっているのは垂れた自分の肉だ。皆がその気味の悪さに不快感を表している。

 

「うげっ……こいつもいるのか……」

 

「ラシア。こいつは?」

 

 モンスターの名前は……なれの果てのモノ。実験が失敗して生まれたとか、そんな感じのモンスターだ。ボスや普通のモンスターとは違い……シナリオを進めていると一度だけ戦える、シナリオ専用のモンスターだ。

 

 だけどそれなら、このシナリオを進めて一度倒したはずなのに、どうして復活しているのか? という話になってくる。

 

 そんな事をラシアが悩んでいると。

 

 幾つもの瞳がラシアを捉え、幾つもある口がしゃがれた声を出す。

 

「あああ……ラシア……ラ……シーラ……おっ、お前が、お前が!」

 

「えっ!? 何が!?」

 

 急に知らない魔物に名前を呼ばれてラシアはとても驚く。自分の名前を知っている事もだが……このモンスター喋れたの!? という驚きだ。ゲームなら話した記憶はない。

 

 そして声にならない叫び声のような声を上げ、体から腕のようなモノを伸ばし攻撃を仕掛けて来た。

 

 攻撃方法はゲームと同じだし特に気をつける事もなかったはずだが……周りの騎士達もこれぐらいなら何の問題もないようで、簡単にいなし腕を切断していく。

 

「いっ……いつまで躱せるか? お前達もモンスターとして生きるがいい……その体なら良い素材になるだろう!」

 

 えっ? この世界だとそんな効果が乗ってるの!? 流石に調査に来てモンスターに何かされたらたまった物ではない。

 

 油断さえしなければ当たるような攻撃でもないが、切り落とした腕に効果があるのかも不明だ。

 

「ラシア! どうする!?」

 

 パルサーが叫んだタイミングで、ラシアに声が届く。

 

「触れずに倒せと言うことです!」(幻聴)

 

「私達を使うのです! ラシア・ラ・シーラ!」(幻聴)

 

 この方法なら問題なく倒せる。ラシアは任せてくださいと伝えた後に、ルインブレイカーをしまい、クラックフォールでそのモンスターの自由を奪った。

 

「アカシックコンタクト!」

 

 そしてその武器の名を呼ぶ。

 

「いくぞ! イレイザーハンマァァァァ!」

 

「「了解」」(幻聴)

 

 ラシアの右手に、赤と青の美しいシンメトリカルなハンマーが握られる。

 

「ディスラクシオンツール!」

 

 そのかけ声と共に左手には小さな光るハンマーが出現し、光と共に分解され、イレイザーハンマーに張り付いて強化した。

 

 ギュスターブと違い、目の前のモンスターはまだ動けない。だからラシアにはまだ時間があり、さらに強化を重ねる。

 

 余計な被害を出さずに一撃で倒す為だ。

 

 左手をアイテムバッグの中に突っ込み、白紙のスクロールを一枚取り出し、その魔法を唱える。

 

「ダブルマジック! ギガンテックハンド!」

 

 ダブルマジックは魔法を二回発動させる魔法だ。だからラシアのギガンテックハンドも二回発動され、両腕が巨人の腕のように巨大になる。

 

 そしてイレイザーハンマーを突き出すように両手で握る。

 

「セーフティーアンロック!」(幻聴)

 

「セーフティーアンロック!」

 

 そのかけ声と共にイレイザーハンマーは、右手には青、左手には赤の巨大なハンマーに分離した。

 

 ディスラクシオンツールで+10のイレイザーハンマーを20にすると、発生する技がある。

 

 それが……ラシアが叫ぶ技だ。

 

「イレイザーープレッシャーーーー!」

 

 二つに分かれたハンマーが一つに戻ろうとする時、その間には凄まじい魔力による圧力が発生する。

 

 ハンマーとハンマーの間にいたモンスターは、空間ごと押し潰され始める。

 

「ぐ!? がっ!? ラ!」

 

 声や音も押し潰されているのだろう。何か言っているように聞こえるが……ラシアには届かない。

 

 ラシア達より大きかった魔物もどんどんと小さくなっていく。ラシア達と同じ大きさになり、バスケットボール、ソフトボール、ゴルフボールとどんどん小さくなっていった。

 

 そして……ほとんど見えなくなるぐらい小さくなった所でとどめとなる。

 

「セーフティーロック!」(幻聴)

 

「セーフティーロック!」

 

 ドゴン!

 

 二つの青と赤のハンマーは、一つのシンメトリカルなハンマーへと戻った。

 

 戦い終わって周りを見ると全員が少し引いているような気もするが……モンスターになるよりはいいと思うので許容範囲だ。たぶん。被害もほとんどない。

 

 モンスターが倒された事で切られた腕なども消滅したので、大丈夫だろう。

 

 あとはここを破壊するだけ。ゲームと同じなら動力を止めて破壊すれば壊れるはずなので、パルサー達にその事を伝え、この場所を破壊した。

 

 特に脅威ではないが、この施設が残っている限りなれの果てのモノが生まれるなら、壊しておいた方がいい。

 

 モンスターが言っていたように人がモンスターになるなら、ギュスターブの再来になる事もある。

 

 特になれの果てのモノがレアアイテムを落とすとかはない。ただいるだけのイベント用の悲しいモンスターだ。だからもう二度と生まれない方が良いと考え、ラシアはハンマーを振るった。

 

 ……

 

 体がなくなったロワンテの魂は、もう一つの場所に辿り着いていた。

 

 まだ体に上手く馴染んでいないようで体は動かせないが……声が聞こえる。

 

「にゃー。ガロ婆。こんな所にいて大丈夫にゃんか?」

 

「紅虎と白獅子がうまくやってるんだから、こっちは待っとけばいいんだよ」

 

「まーどっちもやり手にゃ。ほっといても勝ち確にゃ」

 

「そうならないから私らが呼ばれているんだろ! もう少し考えな!」

 

 ロワンテは聞いた事のある声だったので、ゆっくりと目を開ける。もう大人の体は残っていない。

 墓地の下に隠してあった、魂を保管し移動させる装置がある場所に、緊急用の子供の体があるだけだった。

 

 この体は本当に緊急用だ。子供の姿なら逃げられる。他の施設を潰された時の最後だ。

 

 ここは誰にも言っていない。なのにどうしてここに人がいる?

 

「お? 目が覚めたにゃー。ガロ婆は私達の後ろにいるにゃ」

 

「年寄り扱いするんじゃないよ!」

 

 ロワンテは辺りを見渡すと……そこには錬金術師のガロニアと冒険者のフウコウ、他にも何人かの冒険者がいた……

 

「オッ、オマエタチ、ドウシテ……ここに?」

 

 声が出しにくいが、子供の姿だからだろうか……考えもまとまらない。

 

 ガロニア達が自分を見て驚いている。

 

「ガロ婆! こいつしゃべったにゃ!」

 

「……ふーむ。興味深い。魂に記憶はあるが……モンスターの魂と人の魂は同じといった所か。だけどマウスマンに声帯はないはずだ。どうして声が出た?」

 

 頭が重く何を言っているか分からなかったが、ロワンテが鏡に映る自身の体を見ると……そこにあったのは子供の姿ではなく、マウスマンの体だった。

 

 ロワンテは驚き声を上げ、鏡に近づき自身の体を触るが……どうして体を触っているのだろう。

 

「もう……まともに考えられないだろう? 魂に記憶はあったとしても、それを再生する体が小さいと思い出せないんだよ」

 

 鏡の前で固まるロワンテに、ガロニアは話を続ける。

 

 一つだけどうしてもやってみたい実験があった。それはモンスターの魂を人の体に入れる事と、その逆もだ。ただ……いくらガロニアでもそれはどうかなと思っていた。

 

 ただ相手が魔物になった物なら別だ。聖騎士達に協力する代わりに許可をもらった。

 

 だから……ロワンテが入るはずだった空の子供の体にはマウスマンの魂が入り、マウスマンの体にはロワンテの魂が入っている。

 

「ドウジテ……ゾンナことが……デキル」

 

「まだ話せるのかい。流石にモンスターになって長いだけあって耐性があるのかな? まぁ最後に答えてあげるよ。あんたが使った研究は私が一度通ってる所だし、研究結果なんざ、全て覚えているだけの話さ」

 

「……うぞだ」

 

「嘘でも本当でもどっちでもいいけどね。だからこの施設の使い方も分かるんだよ……魂がモンスターなら体もモンスターになる。大昔に言った事を忘れたかい?」

 

 その答えにロワンテはもう答えられない。魂が体に定着したので彼女はもうマウスマンだ。

 

 そしてその施設の動力をガロニアが止め、フウコウがそのマウスマンの首を刎ねた。

 

「これで終わったにゃー。この施設はどうすんにゃ?」

 

「焼いて終わりだね。フウコウ、そのガキを連れて上がりな。私は火をつけてから上がる」

 

 わかったにゃーとこの場に合わない返事をしてから、マウスマンの魂が入った子供を連れて、フウコウは上へと上がっていった。

 

「……まったく。どいつもこいつもなんで永遠の命にこだわるんだろうね。研究を完成させたいからならまだ分かる。永遠に生きて何かがしたいのなら意味はない。そんな事も分からないのかね……」

 

 ガロニアはマウスマンの死骸を見ながら、かつて一緒に学んだ友の事を思い出し……施設に火をつけた。全てが灰になる事を祈ってだ。

 

 ガロニアが地上に上がると聖騎士達が来ていた。自分に依頼を頼んだ聖騎士の紅い虎も来ている。

 

「ガロニアー終わったかー。自分が墓地から出てくると、その手のモンスターみたいやな!」

 

「うっさいよ! ほっときな!」

 

「それで終わったんけ?」

 

「ああ。終わったよ。これでもうロワンテもホムンクルスになった者も復活できないよ。白獅子の方も上手くやってるんだろ?」

 

「さっき戻ってきたって話やから上手くやっとるやろ。ロワンテも倒されたからこっちに移ったはずやしな」

 

「だったらもう大丈夫だね。ホムンクルスで復活したとしても、モンスターにしないと体は弱いから数年しか持たないはずだ」

 

「なるほどなー。その辺まとめて戻って整理しよか」

 

 ここに誰も来られないように騎士と聖騎士が守り、火が収まってからさらに徹底的に破壊された。

 

 騎士団、聖騎士、錬金術師、ラシアの活躍により……長らく狡猾に生きた錬金術師の企みは潰された。

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