ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第116話 古き友人

 箱船ダンジョンの調査が無事に終わり、少し落ち着いたので、ラシアは持って帰ってきた機械人形を組み立てている。

 

 パルサー達騎士団が、ちゃんと施設が壊れているのか確認に行きたかったらしいので、カードキーを貸してあげた。

 

 すると……ゲームの仕様と同じで、あの場所は壊れたままとなっているようだ。

 

 試しに他の場所も壊しておいたが……他の場所は修復されて元通りだそうだ。

 

 その辺は特に重要ではないのでラシア的には良いのだが……デゴットに教えてもらったところ、あの村の司祭が見つかった。

 

 と……いっても、もう殺害された後との事。

 

 あのロワンテとかいう聖騎士がなんか色々やっていて、騎士団と聖騎士で解決したそうだ。

 

 正直、色々あってというには……少しグロい内容だった。

 

 簡単に言えば人のクローンを作って、それをモンスター化して魂を入れ替えるとかそんなのだ。

 

 この前ラシアが思っていたヤツだ。

 

 体を作って置いておけば、今使っている体が壊れた時に魂を入れ替えて長生きし放題というヤツだ。

 

 それをロワンテがやっていたそうだ。

 

 王都の地下でホムンクルスとして体を作り、それをどこかのダンジョンに持っていって魔物化させ、そこで保存しておく。

 

 魂を移動させる装置もどこかにあったらしく、それも破壊したとの事だ。

 

 ラシアは自分が関係ない所で色々あるんだなーとデゴットの話を聞いて思うが、そんな重要な事を無関係な自分に言って大丈夫なのかとも思った。

 

 あと、問題なのが……騎士や聖騎士、貴族の中に、その新型のホムンクルス? モンスターの体を使っている者がいた事だ。

 

 薬で食人行動は抑えてあるので……人と何も変わらない。

 

 これが……大問題。

 

 大公は分かりやすい。全員殺せ。で終わりだが……騎士も聖騎士もそんな事はできないし、したくない。

 

 昨日まで隣で一緒にご飯を食べていた者を、いきなり殺せとか言われても無理なのだ。彼らも悪い事がしたくて肉体を手に入れた訳ではない。

 

 怪我が辛い、病気が辛い等だ。仮初めとはいえ、永遠の命に魅了された者もいるが……

 

 結果は…………現状維持の保護観察といった感じだ。名前などは公表せずに、このまま普通に生活してもらう。

 

 何かあれば即座に処分するが、何もなければ人として生きていいという判断だ。

 

 食人衝動を抑える薬も錬金術師達が作れるので何も問題はない。国としてもサンプルが少ないので、どういう体なのか気になる所だそうだ。

 

 寿命とかその辺はどうなんだろうとラシアは思うが……悪い事をせずに人として生きたいなら何でもいいと思う。

 

 出来の悪い仮面ラ○ダーみたいな物だ。是非ともお国のために働いて欲しい。

 

 あと重要な事だが……ダンジョンから連れ出された者は、この世界で死ぬと本当に死を迎えるらしい。

 

 だからロワンテに殺された司祭も……騎士団が確認してくれたが、深緑のダンジョンのあの村で復活していないとの事だ。

 

 それだったら……あの村の人達をこの世界に連れて来て……とは思うが、正直何があるか分からないのでやらないのだろうとラシアは思う。

 

 ただ……話だけ聞くと、本当ですか? となるので、どこかに司祭がいて、あのシチューを作っているような気もしてわりと気分が悪い。

 

「まぁこれ以上は考えても仕方がない。私に危害がなくて騎士団が解決したというならそれで良し!」

 

 元の世界に帰るのが重要なので、国のいざこざはこの国の人に任せようと思いながら、ラシアは四角い機械人形を組み立てていく。

 

 前の浴槽みたいに壊れたら話にならないので、おやっさんに頼んで手入れをしてもらってある。

 

 ここで少し面白い事があった。

 

 何というか、部品一つ一つを手入れする必要がないのだ。ネジ一個にではなく、パーツにブロン鋼が馴染んでヒビなどが修復された。

 

 なんとも突っ込み所が多いが……無視だ無視。と考え、ラシアはパーツを組み立てていく。

 

 四角いポストに腕と車輪のついた足がある、ロボットというか機械人形だ。

 

 動力部以外を組み上げると、音が鳴った。

 

「現在は……予備の魔力で起動しています。魔導エンジンを入れてください」

 

 ダンジョンでたまに取れるやつでいいのかなーと思うが、今から取りに行くのは面倒くさいので、この前ティアちゃんにあげたやつを借りる事にした。

 

「ティアちゃん。悪いけど、この前あげた魔導エンジン少し貸してほしい。もしもの時はまた取りに行くから」

 

「いいよー」

 

 いつの間にかティアは自分用のアイテムバッグを持っていたようで、そこからゴソゴソと取り出した。

 

 ラシアは礼を言ってそれを受け取り、ティアと一緒に部屋へと戻る。

 

 そして魔導エンジンをはめ込むと、再起動しているのでしばらくお待ちくださいと言われたので、ティアと世間話をしながら待つ。

 

「そういえば姫様は? 買い物?」

 

「んーなんかね。商人の人達の相談に行くっていってたよ。何かの商談かと思う!」

 

「へー。姫様も色々やってるのか。ティアちゃんから見て危なそうな事してない?」

 

「うん! よく一緒に行くけど大丈夫!」

 

 暇な時は勉強を教えてもらったり、召喚した蟻の使い方を教えてもらったりしているそうだ。

 

 そんな話をしていると、再起動が終わったようで機械的な音声が流れる。

 

「古い魔力を排出します。背後に立たれている方は気をつけてください」

 

 たぶん背後は窓の方を向いているし、もしもの事を考えてラシアはティアの前に立った。

 

 そしてピーっと電子音のような音が鳴った後に、凄まじい爆発音が発生し窓を吹っ飛ばした。

 

「ラシアさん……窓大丈夫?」

 

「だいじょばないけど……被害はいつもと比べて少ないからたぶん大丈夫」

 

 ティアが大小の問題? と心配していると、機械人形のレンズがラシアを捉えて言葉を話した。

 

「おお! 我が友ラシアよ。元気そうでなにより。私はどれだけ寝ていましたか? ここは?」

 

 ティアにラシアさん友達いたの? と少し驚かれるが、ちゃんといると言ってから、ラシアは簡単にだがこの世界の事などを伝えた。

 

 言い終えると、機械人形の癖にわりといい加減な性格なので、自信満々によく分からない事がよく分かったと言った。

 

「お前は……それで大丈夫なのか?」

 

「気にするな友よ。簡単にまとめれば、友が直してくれて新しい国で新たな人生が始まったという事」

 

「人生……」

 

「人形の生だから人生」

 

 まぁ敵ではないのでヨシだと思っていると、ティアがこの人形の名前を聞いてきた。

 

「NTXーU3型……どうのこうのって名前だから、ナットンって呼んであげて」

 

「友よ。またその名で呼びますか。なんでもいいですが。ティアさんでしたか? 私の事は好きに呼ぶと良いです」

 

 この辺は仕方ない。ゲームで名前を呼ぶ時に選択肢が出るのだが、その時にナットンの名があって、ラシアがそれを選んだからだ。

 

「わかった! じゃあナットンね」

 

 そして……少し話をした所、やはりというかなんというか、姫様と同じでナットンもラシア以外のプレイヤーの記憶を持っていなかった。

 

 壊れる前にそれっぽい人達は何度も見た事があるが、カードキーを作って箱船ダンジョンに侵入したのはラシアだけという話だ。

 

 プレイヤーからするとシナリオを進められるのは一回だけなので、そりゃそうだという話になる。

 

 だからラシアの記憶というよりは、ラシアがスマホでプレイしていた世界が再現されているのかなーという話になってくる。

 

 ただ、ラシアの記憶の再現かも知れない。

 

 ただそうなってくると、なれの果てのモノが復活していたのも分からないし、そうだとしても確認のしようがないので難しい所ではある。

 

 この辺をどう調べていくのが……良いのかなーと考えていると、セレットが一階から上がってきた。

 

「ラシアちゃーん。お話もいいけど、そろそろ謝りに行かないとお父さん、ご機嫌斜めちゃんになってるわよー」

 

 ラシアが苦虫を噛み潰した声を出し、ティアが笑っていると、セレットの瞳がナットンに固定された。

 

「……ええと。小型のゴーレム?」

 

「せっ、説明が難しい……ゴーレムというか機械人形だけど……」

 

 そういってラシアが悩んでいると、ナットンが自己紹介をする。

 

「奥さん。こんにちは。私はナットンです。ラシアの友人という事でどうぞよろしく」

 

 長い長い沈黙があった後に、セレットはとても驚き声を上げる。

 

「ゴーレムが喋ってる!?」

 

 ……

 

 …………

 

 それからは後は時間切れ。ラシアは謝りに行かなかったので、上がってきたおやっさんに正座させられている。

 

「それで? このゴーレムはどうするんだ?」

 

「私はゴーレムではありません。機械人形ですがどっちでもいいです。ナットンです」

 

「なんか……えらい適当なやつだな……」

 

「お金の計算とか掃除とか全然できるので……こそっと宿に置いといてもらえればと思います。戦闘以外なら何でもできるはずなので……」

 

 おやっさんがまた変なのが増えたなと大きなため息をつくが、セレットからは流石に待ったがかかる。

 

「ラシアちゃん。今回は流石に見過ごせないわ。会話ができるゴーレムとか前代未聞よ。これは国に報告して研究を進めるしかないわ。きっと今の錬金術より一つも二つも先に進むわ」

 

 凄い良いこと言っているし、目がキラキラしているので……セレットの研究者としての心に火が灯ったのだろう。

 

 だけどラシアは……もうセレットの攻略法を知っている。おやっさんに動く許可をもらってから、ナットンと内緒話をする。

 

「さて……セレットさん。交渉をしましょう」

 

「嫌よ! またそうやって私を賄賂で釣る気でしょうけど……今回はラシアちゃんの頼みでも無理よ!」

 

 結果は楽勝だった。

 

 前に出したミミックボックスをプレゼントする事と、ナットンがセレットの部屋を片づける事。それと、無茶は駄目だが、ナットンの体の研究を了承した結果……すぐに堕ちた。

 

「分かったわ。とりあえず……ナットンは人前では話さないでね。話してもそういう音声が再生されてるって言っておいて」

 

「了解です」

 

 セレットの弟子達も、セレットの弟子というだけあって……自分が学んでいる錬金術より進んだ物を学べるなら黙っておいた方がお得、という感じで落ち着いた。

 

 この師にして弟子ありだ……

 

 なんて事を話しているとリレッサが戻ってきて、ラシアに客が来ていると伝えた。

 

「ラシア。珍しいお客さんが……うん? ……もしかしてボルトルデの機械人形?」

 

「私の国を知っているとは……データ照合。ローウェンテニアの神童ですか?」

 

 二人とも知っていた事に驚くが、リレッサはラシアからそういう人形がいたと聞いていたらしい。

 

 それにローウェンテニアの技術系統ではないので分かったとの事。

 

 ナットンに至っては、重要人物、危険人物としてデータに残っているとの事だった。

 

「え……姫様って危険人物?」

 

「あのですね……敵国から見れば誰でも危険人物ですよ。ラシアもそうでしょう」

 

「はい。データにはありますが。リレッサ・ロード・ローウェンテニアが五人いれば、ボルトルデは簡単に滅んだと言われています」

 

「国がそんな簡単には滅びません。それに私はただのリレッサなのでよろしくお願いします」

 

「分かりました。リレッサとして再登録しておきます。私はナットンとお呼びください」

 

 とりあえずナットンはティアのアイテムを借りて動いているので、ティアの部下ではないが、何かあったらティアを守るように頼んでおく。

 

 そしてラシアは一階へと向かう。

 

 客って誰だろうと思いながら降りると、元気な関西弁が聞こえた。

 

「ラシ! 遊びに来たったで!」

 

「ティーガー! ラシア隊長にその言い方はやめ!」

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